【無料回】靴業界まとめ各社の違いはどこにあるのか(ABCマート・チヨダ・リーガルコーポレーション・ロコンド)

最近はコーヒーをめちゃくちゃ飲んでいるんですが、昔からコーヒーを飲んで寝れなくなったりした経験が全くないので、カフェインについては大きな陰謀が働いている妄想をしています
積極的に陰謀論者やってます。

さて、これまで数回にわたって靴業界について取り上げてきました。

具体的には、ABCマート、シュープラザや靴流通センターを運営するチヨダ、中~高価格帯の革靴をメインに取り扱うリーガルコーポレーションを取り上げてきました。

そして今回はまとめとして、以前取り上げた靴のECがメインのロコンドを加えて比較してみていきます。

それではまずは事業内容から見ていこうと思います。

ABCマートはもちろん靴の小売りを行う店舗のABCマートの運営がメインで、その商品展開に特徴があります。

というのは商品は単純にメーカーから仕入れた商品ではなく、自社で製造した商品が多く、自社ブランドやVANSなどの有名ブランドとライセンス契約によって製造した商品、さらにはナイキのようなナショナルブランドの商品も企画から携わった商品が売られていて、そういった自社で製造にかかわった商品の売上が過半数を占めている企業となっています。

いわゆるSPA(製造小売業)のような企業です。

続いてチヨダは、靴流通センターやシュープラザ、さらには衣類のマックハウスなども運営している小売りメインの企業となっています。

リーガルコーポレーションは中~高価格帯の革靴の製造をメインとしている企業で、その革靴を自社の直営店で販売する他に、他の百貨店や他の靴量販店などへの卸も行っています。

最後にロコンドは靴のECを行っている企業です。
その特徴としては返品が可能だというところにあります、靴はやはり自分で履いて決めたいという需要が大きくなかなか伸びてこなかった靴のEC業界において返品を容易にしたことで成長してきた企業です。

近年はYoutuberのヒカルさんとRezardというブランドを作って人気となるなど、Youtuberなどのインフルエンサーと組んでブランドを作りアパレル全体の商品で成長している企業となっています。

それでは各社について見ていきましょう。
これから取り上げる数字は決算期の違いから、ABCマート、チヨダ、ロコンドは2021年3~5月の四半期、リーガルコーポレーションは4~6月の四半期となっています。

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まずは時価総額という市場からの評価を見てみると、2021年8月時点で
ABCマート:4795.5億円
チヨダ:316.9億円
リーガルコーポ:61.8億円
ロコンド:153億円
となっており明らかにABCマートの評価が突出している事が分かります。

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売上規模としては、ABCマートが明らかに大きくそこからチヨダ、さらに大きく離れて、リーガルコーポレーション、ロコンドとなっています。

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そしてPSRという時価総額は売上高の何倍あるのかという、売り上げ水準に対して市場からどれだけ高い評価を受けているのかという数字を見てみると
ABCマート:7.6倍
チヨダ:1.4倍
リーガルコーポ:1.4倍
ロコンド:6.6倍
となっており、売上規模も大きく評価が高いのはABCマート、売上は小規模ながら評価が高いのがロコンドとなっています。
ABCマートの評価が非常に高いことが分かりますね。

それでは続いて各社の違いについて見ていきましょう。

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まず大きな違いは各社の粗利率となっています。
ロコンドは圧倒的で84.2%です、というのもロコンドだけはECの手数料ビジネスを中心としていますから粗利率が高いです。

ロコンドは、靴を売りたい人向けにオンライン上の販売する場所と集客力でという、モノがない商品を売っていて、その他の企業は靴を買いたい人向けに靴という実際のモノを売っているので粗利率が変わってきます。

そして実際の靴というモノを売っている3社でも粗利率に大きな差が出ています。
明らかに高いのがABCマートで52.6%となっています、商品力の差もありますが、これは自社で製造している商品の比率が高いので高い粗利率を出せている事も要因です。

①靴を作る人②靴を売る人という参加者がいて、同じ100円で50円の原価のものを売ると、作る人と売る人が別であれば2人で利益を分け合う事になるので利益率変わるよねって話です。
ビジネスモデルによって利益率が変わるという事ですね。

また、リーガルコーポレーションの粗利率は低くなっています。
これは中~高価格帯の革靴を提供していますから、いい商品を製造するために原価に力を入れていると考えられます。
さらに大量生産品を作るわけではないのでABCマートと比べ、スケールメリット(いっぱい作ると安く作れる)も働かないので原価率は比較的高くなっているのでしょう。

高価格帯の商品だと、例えばルイヴィトンなんかをやっているLVMHの粗利率は7割弱ですから、ブランド価値向上によってさらに高い値付けが出来るようにならないと苦しそうです。

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そしてそういった粗利率の違いもあって営業利益率を見てみると、ABCマートとロコンドが13%超の高い利益率で、チヨダはわずかながら営業黒字で、リーガルコーポレーションは赤字となっています。

各社で大きな違いが出ていますね。

続いて、ABCマート、チヨダ、リーガルコーポレーションの靴事業の店舗展開の違いについてもう少し詳しく見ていきましょう。

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まず靴事業の店舗での売上としては、ABCマートが明らかに大きく、そこからチヨダ、リーガルコーポレーションと大きく離れていて、そして利益率としても3社で大きな違いが出ています。

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店舗数で見ても、ABCマートが最も多いですが売上規模と比較するとチヨダの店舗数も多いですね。

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なので店舗当たり売上高を見てみると、ABCマートが1億8200万円と圧倒的で、チヨダは7600万円、リーガルコーポレーションは8300万円となっています。

これはABCマートが比較的大型の店舗が多いという事もありますがそれ以外の大きな要因もあり、それはもちろん商品力です。

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靴事業のみの在庫の金額は分からなかったので企業全体の水準になってしまいますが「在庫回転日数」というどのくらい効率的に在庫が掃けているのか(短いほど早く在庫が掃けている)を見てみると
ABCマート:63.6日
チヨダ:109.3日
リーガルコーポレーション:126.6日
となっていて、ちなみにこれはコロナ前から同程度の差がついています。

つまり商品力の高いABCマートは商品が早く売れているので店舗当たりの売上も大きいですし、利益率も高いという事ですね。

店舗の単純な人気として大きな差があるという事です、ABCマートでは自社で商品を製造していますからそれが上手くいっているんですね。

続いてコロナの影響からどの程度回復してきているのかについて見ていきます。

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まず売上高のコロナ前(2期前)比は、ロコンドは168.5%と大きく成長していて、そこからABCマート、チヨダ、リーガルコーポレーションとなっています。

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その結果営業利益率の変化としても、大きく伸びたロコンド、そこから悪化した順ではABCマート、チヨダ、リーガルと差がついてしまっています。

やはりECは伸びていて、そこから人気のABCマート、チヨダと続いていて、革靴中心のリーガルコーポレーションは最も回復していません。

やはりビジネスシーンでのカジュアル化やテレワーク化がこの1年で大きく進みましたから、回復するというよりは市場自体が縮小してしまったという事が大きな要因でしょう。

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ちなみに2020年度の通期の各社の商品別の売上を見てみると、ビジネスシューズの売上は各社とも大きく悪化していますが、下落幅としてはリーガルコーポレーションの下落幅が大きく、ABCマートは最も小さい下落幅となっています。

革靴やビジネスシューズは低価格化も進んでいるようです。
革靴を履く機会が減っていますし、ビジネスでもカジュアル化が進む中で、安物で十分という方が増えているのでしょう。

市場縮小だけではなく、低価格化も進んでいると考えるとリーガルコーポレーションは最も厳しい状況にいそうです。

という事で、ECのロコンドは成長が続いています。
リアルな店舗をもつ靴の小売りとしてはABCマートが、規模や商品力としても圧倒的となっていて、中~高価格帯の革靴を提供するリーガルコーポレーションは最も業績が悪化しており、市場環境としても苦しい状況が続きそうです。

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