【無料回】サカイ引越センターの決算から考える、コロナ禍での引っ越し事情と今後の業績

ここ数日のどが痛くて、それが気になるせいか食事時に無意識にごはんを丸のみしていました
多分、魚の小骨とかに使うやつです。
普通にちょっと苦しい思いをしただけです。

さて、以前はEC業界を取り上げてきましたが巣ごもりもあり、成長している企業が多いです。
なのでEC化とともに需要が増える物流企業の現状が気になるという事で、今回からは物流業界を取り上げていきます。

そんな中で今回取り上げるのは株式会社サカイ引越センターです。

もちろんその社名の通りで引っ越しのサカイをやっている企業です。
純粋な物流企業といっていいのかは分かりませんが、このコロナ禍での引っ越し業界が気になるという事で取り上げていきます。

まずはサカイ引越センターについて少し見ていきましょう。

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売上高は引っ越し業界では7年連続で№.1で、引っ越し業界のトップとなっています。

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事業内容を見ていくと、引っ越し事業の他に電気工事業やクリーンサービス(部屋の清掃)業などいくつかの事業を展開しています。

基本的には引っ越しとそれに付随するサービスという形ですので、ある程度引っ越し事業に連動しますし、引っ越し事業の売上が全体の9割弱ですので基本的には引っ越し事業中心の企業です。

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また、直近では法人売上が47%となっていて法人売上の規模も大きく、例えば大学のキャンパス移動など大型の案件も請け負っています。

とはいえ大型案件の売上は10億円ほどのようですから、基本的には通常のよくイメージされるような引っ越しがメインだという事ですね。

続いて引っ越し業界についても少し見ていきましょう。

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業界全体としては少子高齢化が進む中で縮小市場となっている事が考えられますが、実はそうではなく単身世帯を中心に引っ越しの件数は増えているようです。

ここ4年間でも、引っ越し件数は増加傾向で、引っ越し市場の単身世帯比率は2017年が45%ほどだった所から2020年には51.1%まで増加しています。

今後に関してもテレワーク化など住む場所にとらわれない働き方も増えていますし、単身世帯が積極的に引っ越しをするような状況は続きそうです。

サカイ自身も今後も単身世帯を中心に引っ越し需要は安定して推移するという見通しを立てています。

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また、引っ越し業界の大きな課題はやはり労働力不足です。
有効求人倍率では、ドライバーは全種平均の2倍となる2.2%になっています。

さらに5日間の有給取得の義務化や、時間外労働の上限規制など長時間労働は難しくなっていますし
デリバリー需要が増加している事も含め、今後も物流業界全体での人材獲得困難な状況が続くとしています。

将来的には自動運転なども含め自動化によって課題を解決していくしかない業界ですから、そのための投資も進んでいて自動化によって仕事が大きく減る可能性が高い職業でもあります。

となると、労働環境も厳しい中で今からドライバーになる人材も増えにくい事が考えらますので、やはり自動化が進むまでのしばらくの間の人手不足はかなり大きなものになるでしょう。

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なのでそういった労働力は不足もあって、単価の低い単身比率が上がる中でもここ数年は単価が上昇傾向となっています。

直近では単価は下がっていて以前の水準に戻りつつあるとしていますが、人手不足によって引っ越し価格は高騰傾向にあるようです。

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そしてそんな状況下でサカイは、受付件数が増加し自社対応では限界が来ているとしていて、増加する単身世帯への対応が重要だとしています。

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単身世帯が増えて、1件当たりの引っ越しの荷物の量は減っていて、ドライバー不足も進んでいます。
となると複数人の荷物を効率よく運搬する事も重要になるでしょう。

そういった事も含め、パートナー企業との連携によって効率的な配送を行うとともに需給のひっ迫にも対応しようとしている様です。

自前主義から脱却して、パートナー企業へのノウハウや技術教育を行うとしています。

今後の見通しとしても自社で対応するのはもう無理な状況にきているという事ですね、そんな中で新たなビジネスモデルの確立を図るとしています。

ビジネスモデル自体の変化や、大きな業界再編が進む可能性がありそうです。

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そして、単身世帯の方が単価が低いですから
引っ越しだけではなく、電気やガス、インターネットなどの各種手続きもワンストップで提供したり
家電のなどの買い物もワンストップで提供することによって単価の上昇を目指していくようです。

人手不足は続きますので、当然それだけコストがかかるという事で引っ越しだけで収益性を上げるのは難しいですから
こういった付随サービスでどれだけ収益性を上げられるかは非常に重要でしょう。

それではそろそろ業績を見ていきましょう。
まずは2021年3月期の業績からコロナ禍での変化を見ていきます。

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売上高は0.5%減の1003億円、営業利益は0.5%減の111.3億円、純利益は14%減の76.9億円となっています。
減収減益ながらも横ばいといった水準です。

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四半期ごとの売上の推移としては、やはり1Q(2020年4-6月)は大きく減少しているものの、2Q~4Qは前期比で増加しています。

1Q(2020年4~6月)は本当にステイホームといった方が多かったので、引っ越しも減少したものの
それ以降は1Qに引っ越しできなかった層の引っ越しが進んだり
テレワーク化の浸透など住環境への投資を考える方も増える中で増加傾向にあったと考えられます。

その結果トータルでは横ばいだったという事ですね。

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そして引っ越し事業では、取引単価は6.4%減ったものの取引件数が6.4%増加した事で売上は横ばいだったとしています。

単身者の引っ越しが増加して単価が下落した一方で、引っ越し自体は件数が増えコロナ禍でも活況だったんですね。

ちなみに売上が横ばいで営業利益も横ばいだったものの、その利益の内容は変わっています。

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粗利率を計算してみると、41.5%→35.9%と大きく悪化していて、販管費は306.8億円→281.2億円と25.6億円も減少しています。

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外注費が増加して粗利率が低下したもの、管理人件費が大きく下落して販管費が減少した事が影響しています。

引っ越し会社などは特にそうですが、繁忙期が決まっていますから
繁忙期に合わせて自社で人員や、車両などを保有するとそれ以外の時期では過剰なコストとなってしまいます。

なので、基本的には繁忙期は車両にせよ人員にせよ外注に頼るのが一般的です。
コロナ禍で需要の見通しが立ちにくい状況でしたから想定以上に外注が増えてしまった事が考えられます。

管理者の人件費の削減など効率化を進める一方で、コロナ禍での大きな変化に対応しきれず外注が増加した事によって粗利率と販管費が大きく変化していたんですね。

今後も人手不足が続きますし、ドライバーや実際に引っ越し作業をする作業員の方へのコストは減らせません。

となると外注コストの増加や管理費の削減という傾向は今後も続きそうです。

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例えば音声ガイダンスの自動化なども進めていたりしますし、こうした自動化で削減したコストを運搬作業側へ回していく事になるのでしょう。

続いて、直近の2022年3月期の2Q(2021年4~9月)の業績を見ていきましょう。

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売上高は4.9%増の504.9億円、営業利益は17.5%減の48.6億円、純利益は20.6%減の32.3億円となっています。

どうやら今期は増収ながらも減益となっているようです。

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売上面では取引件数は3.2%増、引っ越し単価も1.8%増と、取引量、単価共に増加しています。

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コロナ前と比べてみても、売上は1.6%増と伸びていますが営業利益は32.3%減と大幅減益です。

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利益面が不調だった要因としては粗利率は39.1%→37.4%と悪化傾向が続き、さらに販管費も前期比で11億円ほど増加してしまっています。

前期は管理人件費の削減など、販管費の抑制で利益水準を保っていましたが、コロナによる一時的な要因もなくなり、削減余地が小さくなっていたのでしょう。

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さらにコロナ禍での従業員のモチベーション維持のためにも、コロナ禍手当を支給した影響もあったようで、総人件費は5.1%増になったとしています。

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また原価面では傭車費(車とドライバーの外注費)が増加した影響が大きかったとしていて、傭車件数、傭車費は51%増となってしまっています

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1Qでは3月に緊急事態宣言が解除されて、法人需要が一時的に急回復したものの、それによって傭車先がキャパシティーオーバーを起こして、自社作業も圧迫され過度な負担が掛かり
勤務調整が必要となった事で、大きく傭車件数が増加してしまったとしています。

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さらに2Qに関しては、コロナの感染者増加によってクラスター防止のための臨時休業が増加した影響と、ワクチン副反応による休業が増加した影響で傭車費が大きく増加したとしています。

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また、今期に関しては東京オリンピックの影響もあり交通規制もある中で関東圏の問い合わせは4.3%減少して一時的な悪影響もあったようです。

そもそもの人手不足に加えて、コロナの影響もあり利益を圧迫する結果となっていたんですね。

なので、コロナ前と比べても売り上げは伸びつつも大幅減益となっていたわけです。

そもそもが人手不足ですから大きな収益性の向上は難しいですが、コロナで見通しが立ちにくい状況で庸車費が増加していた側面はありますので、今後はある程度利益水準の回復は考えられそうです。

という事でサカイでは、単身者の引っ越し需要の増加を受けてコロナ禍でも売上は保てていて、今期からはコロナ前を上回るような売上となっています。

しかし、その一方で人手不足によるコスト増加や外注費の増加によって利益面は悪化しています。
コロナの影響も利益に影響を及ぼしていましたから今後はある程度利益面の改善は進むと考えられますが
自動化が進むまでは人手不足が続くでしょうから、売上は伸びつつも利益率が悪化した状況は続く可能性が高いと考えます。

人手不足の状況では、引っ越し作業自体では利益率の向上は難しいでしょうから、付随サービスによって単価を上げて収益性を上げていけるかに注目です。

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