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『UMAJOに魔法をかけられて』〜第一話 ルーティン〜 イカるの恋愛競馬小説

「ルーティン」


それは

イチローで言うと
打席で必ず刀の様にバットを立てる動作


五郎丸で言うと
キックの前に人差し指を合わせる動作

僕で言うと
毎朝、苦くてあまり好きではない


コンビニの100円コーヒーを買う動作だ


今日も僕は会社に行く前の
ルーティンをするため
コンビニを訪れた‥

『おはようございます!』


今日も聴き心地の良い声のあと


"コーヒーレギュラーお願いします"
と僕が言う前に


『こちらですよね!』


先に紙のコーヒーカップが出てくる


きっと素敵な笑顔だったと思うが
いつも下を向く僕にその顔は見えなかった


紙コップをマシンにセットし
Rのボタンを押した
マシンのすき間からレジが見えた


『おはようございます!』


店員さんは又
お客の注文の前にタバコを一つ取り
お会計を始めた


「気の利くお姉さんは
 今日も相変わらず美人すねぇ!」

織田裕二に似た刑事風の男が
お会計をしながら言った


『毎日言われても嬉しくありませぇぇん!』


120点の返しに笑い声が響いた


コーヒーマシンの隙間から見えた
その笑顔は
予想通りの素敵な笑顔だった



「そう言えばおねぇさんの名札って
 スガワラっすか?スガハラっすか?」


『スガ・ワ・ラです!
なんですかスガハラって
新種のハラスメントですか!』

「綺麗すぎるハラスメント
 "スガハラ"であなたを逮捕します!」

『はいはい‥日本は平和ですねー』


僕もいつか‥

下の名前すらまだ知らぬ

菅原さんとの
そんな淡いやりとりを願い
店を出た‥

"月曜日が嫌いだ"

と言う人は多いが

僕は月曜が大好きだ


理由は2つ


1.菅原さんに会えるから


2.少年ジャンプが買えるから


少年ジャンプには僕に足りない
ポジティブが溢れている

そして

苦手な‥淡い恋物語も

今日も出勤前に菅原さん&少年ジャンプを
求めてコンビニに寄った


ジャンプを片手に菅原さんのレジに向かうと


4人待ちの行列になっていた


無表情な店員がそれに気が付き


反対側のレジに入った


‥‥‥‥‥。


誰も行こうとしない


「お待ちのお客様こちらへどうぞ‥」


無表情店員の圧力に負け
2人目がハズレレジへ


運命の分かれ道

さぁ‥。どっちだ‥。

「お待ちのお客様こちらへどうぞ‥」



月曜日の嬉しい事が1つ消えた

無表情店員は無愛想に
少年ジャンプの
バーコードをスキャンした


すると‥



「みかちゃーん!
 コーヒー豆補充おわった?」

ベテラン風おばさん店員の声が
店の奥から聞こえた


『あっすいませーん!忘れてましたー!』


消えたはずの嬉しい出来事が
突然転がり込んできた


難易度★★★★ミッション
「君の名は。」



そんな僕にとって
そんな人生最大のミッションを
ベテランおばさん店員は
いとも簡単にクリアしてくれた


君の名は。

「菅原みか」

おそらく漢字は、美しく香るで

" 美 香 "


だろうな‥と
ベタな想像を勝手にしながら

いつもよりも
"美しく香る"
苦手なコーヒーを口に運んだ‥

陰キャな僕には到底ありえない‥

漫画のような話だが‥


いつか‥



"美香って呼んでみたい"


砂糖を入れすぎたせいなのか
今日のコーヒーは

いつもより甘かった‥

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