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『UMAJOに魔法をかけられて』〜第五話 ミカッテヨンデイイ〜

「情けは人の為ならず」


"甘やかし過ぎてはいけない
厳しくしろ"って意味だと思ってた


でも‥本当の意味は‥


人に与えた
優しさはいずれ
自分に返ってくる事だと



母が教えてくれた

今日も店の前に落ちている
潰れたタバコの空箱を拾い‥


店のドアを開けた時
近くにいた人が入り切るまで
扉をキープした

「おにぃさん‥ありがとねぇ‥」
おばあちゃんの笑顔で
僕の気持ちも穏やかになった

今日も"情けは人の為ならず"


『いらっしゃいませ♪』


菅原さんの声を聞きながら
スポーツ新聞を持ちレジへ

下を向き‥
新聞を勢いよく広げて‥

「サンライズフレイム!」

『0.28秒!最速ですっ!』

本当は"ミカッテヨンデイイ"と
思いっきり言いたかったが‥
我慢した‥

そして、今日はさらに
いつもと違う
"ニーボクロチキン"の
御決まりのネタをやってみた

「なんと‥今回この馬に"印がでています!」



『おっ"印"?それは蛯名さんが考えた
印ということですか?』

さすが"ニーボカー"
すぐにノッてくれた

「違います馬に出てます!」

『なんという"印"でしょうか?』

「えーこちら"愛のしるし"です!」

『愛のしるし‥?それは‥?』

「えっとーー‥‥」


『あははっ!もぅ‥ ちゃんと
考えてから言ってくださいよ』


「そうですよね!やっぱり
 ネクロさんには敵いませんね‥」


『今日の根岸ステークス楽しみですね♪』


「はいっ!楽しみです!
 フェブラリーに繋がりますからね!」


本音はその1つ前の東京10R"節分S"と
言いたかったが‥ここもグッとこらえ
コンビニを出た‥


自宅に戻り
休日だったがスーツ姿に着替え

気合いを入れた

今まで一度も馬券を買った事もなく‥
馬券は買わないと決めてた‥

僕は
今日‥人生初‥

馬券を買いに行く‥

一世一代の大勝負をするため‥

「よっし!!」

僕は玄関に座り

"少し強くなるために"

ボロボロで"壊れているが"

仕事の商談成立歴のある
縁起の良い勝負靴を履いて
"WINS"へと向かった‥

目的地の大勝負場所に到着‥

僕はネクタイを締め直し
足を踏み入れた‥

買い方はググって知識はあったが

WINSの店内配置まではわからず
オロオロしてしまった‥



すると‥

『兄ちゃん!初めてかい?』

振り向くと
やや歯が特徴的なおじさんが
親切に話しかけてくれた


「デパさんまたビギラック狙いですか」

さらにつづけざまに
横から背が小さめの若者が言った


『うるせぇ!小僧!!』

「この人は初めて馬券を買う人と
 同じビギナーズラック馬券を
 買うデパさん!」

『黙れピンハイ!貴様なんて
ちっせぇ馬ばっかり買って
 回収率さがってしまえ』

「あの時だって出歯さんが
 買ったから負けたんですよ!」


何やら言い争いが始まったが


20程歳の離れた2人の言い争いは
とても楽しそうで


世代を超えた交流が垣間見れる
この場所が好きになった

『それで兄ちゃんは
今日は何を買うんだ?』


「東京10レースの
 "ミカッテヨンデイイ"です!」


『メインじゃなくて10Rか!おいっ!
コイツはまた夢があるなぁ!』

デパさんの見ていた新聞の10番
"ミカッテヨンデイイ"は
無印だった‥


「今日は人生一世一代の
 大勝負に来たんです!」

入りすぎた気合いで
声が大きくなってしまった


『よっしゃ!まかせろ!
これは俺が1番待っていた展開だ!』



デパさんという人が耳からペンをとり
スラスラと書き出した

「どうせまたあの買い方でしょ」

隣からピンハイさんが言った

『さぁ!人生の大勝負!
あとは好きな金額だ!』

購入シートはマークされており
あとは金額を残すのみとなっていた

私は予定通りの金額をマークし
人生一世一代馬券を購入した

『おいっビジネスマン!
これが一世一代の大勝負馬券か!?』

「はい!私にとってはこれが一世一代の
 大勝負馬券なんです!
 この馬券に人生の全てを賭けます!」

『おいっ!一世一代が200円とは!
ジャパニーズビジネスマンも不景気だな!』


僕はいつか‥
彼女の事をいつか‥
"ミカ"と呼べる事を願って
想いが君に届く様叫んだ!!

「がんばれ!
 ミカッテヨンデイイ!」

『俺も最初同じことしたー!』

ピンハイさんが隣で腹を抱えていた

『ミカッテヨンデイイ14頭中の14番人気!
単勝で150倍を超えてる!来たらやばいぞ』

 デパさんも馬券を買ったらしい

まだ的中してもないのに喜んでいた

僕が購入した一世一代の
大一番レースは

こうして発走時刻をむかえた‥


奇跡を信じて‥

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