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2023年 日本語ラップ周辺 ベスト50 (Album, EP&ミクステ)

押忍!
Twitter(現X)上の音楽好きの方々と日本語ラップの界隈が絶妙に遠く、スルーされてしまう最高の作品が多いという自意識過剰な使命感からこれを書きました。
レビューの内容はツイートの延長みたいなものですが、楽しむ一助になれば幸いです。

(※都合により、アーティストを1名削除致しました。2023/1/15)

1, Watson - Soul Quake

1曲目から魂が震えるビートとラップ。言うこと無し!Koshyとワッションに最大のアッツーを捧げます。マスタリングは名門Metropolis StudiosのStuart Hawkes氏(最近の日本語ラップだと田我流 - Ride On Time以来)に発注しているようで、メジャーと遜色ないクオリティー。聞けば聞くほど楽しくなってくるワトソン節はもはやジャンルだが、やはり本家は圧倒的。下はKoshyのプレイリスト、間違いなく現在の日本を代表するビートメイカー。


2, Die, No Ties, Fly - SEASONS

ジャケの三体の魔物は逆ディメンターで、スピットするたびにナードな本心をくすぐり、丸裸にし、最終的には幸福な気持ちに導いてくれる。結局、自分が居たい場所は音の近くで、地元が好きだ、そんなセーフスペースを感じる作品であった。ぜひFlavaでライブ観たいです。下のリンクはVOLOJZAさんのDie, No Ties, Flyのまとめです。“03“と“FOMA“が同じくらい好き。


4, MUD - Make U Dirty 2

自身の地元・町田でのリリースパーティーは最高だった。彼はKANDY TOWNの中でも最も原色のヒップホップに影響を受けているだろう。信念のある親方気質で、暑い夏の日でも黙々とクールに仕事をこなし、クールダウンでも大事なものは決して見失わない。シーンの反応はあまり感じられなかったが、地元や友人達も聴いててかなり盛り上がった。“Resetter“、”Yellow Monkey”がマイベストトラック。

5, SAW - AZMATIC

「Under Dog 見失わぬ希望~」はOutroで2人の息子達が楽しげに唱えているリリックであるが、ジャケットの彼の目はそれ以上を現しているように感じる。もしかしたら諦めの眼差しかもしれない。だが憧れからここまで、意地でも美学を持って続けている。そんな人間はだれも止められやしない、紛れもなく才能である。”Day one”がマイベストトラック。BESが客演の”Vision OG”も必聴。

6, bringlife - BRINGLIFE THE MOVIE VOL.1 ~Return to Ofuna~

感情の糸が切れてしまいそうな問題だらけの日常、それをすべて受け入れてくれる地元と友人、そして音楽。毎曲ごとに挟まれる友人同士のskitは社会の喧噪と青春の葛藤を感じさせる邦画のワンシーンのようで、スッと引き込まれる。ジャケットのようなまぶしすぎる晴れの日、地元を当てもなく散歩している時にでも聴いてほしい。持つべきものは小さな希望かもしれない。このやばいビートは全て35枚目でも紹介するNaked Under Leather。下の”運命”っていうヘッダーのリンクはポッドキャストで、良い事をゆるゆる話したり、良い音楽を紹介してくれたりします。

7, rkemishi - 正夢

煙がかったようなアルバムの統一感、間違いのないビート、客演、ジャケットまで、体裁の整ったスタンスは彼が東京のアンダーグラウンドの仕事人であることを十分に感じさせる。彼の話は一般人にとっては夢であるが、暗躍する一部の人間には正夢なのである。”煙幕”、”憂國”が個人的ベストトラック。

8, Henny K - “K”

気合い十分のかまし屋、何者にも屈しないスタンスはまさにSIMILAB全盛期のMARIAを彷彿とさせる。ニート東京ではゴーゴーダンサーからラッパーの転身を語っているが、ラスト2曲で彼女がどこからきてどこへ向かうのか、がリアルにスピットされている。DJ JAMのスタジオを中心に東京のトラップの震源地となっているBRAVURA RECORDSからリリース。間違いなくアップカミングなラッパー。後述のQ/N/Kでの客演も超スキルフル。

9, YDIZZY - SymdromeV

kamuiも自身のポッドキャストで年間ベストに本作を挙げていた、理由はぜひ聞いてみてほしい、全面同意である。トラブル、激情、無痛、受容を経て感覚を取り戻し、水面に上昇していくようなトリップ感があった。特にラストへ向かう流れは圧巻である。自分も”SIMF“が1番好きです。

10, ShowyVICTOR - REVENGE

『まじ愛を持つため ここに生まれてきた』(3, どれにしよう)というラインがある。愛に気づき、自身が変化したことをラップスタアでも述べていた。私も彼がこれからさらに愛を以て人の心をつかみ、多くのヘッズに何かを与えられる存在であると信じている。このアルバムに素晴らしいビートを提供したビートメイカーの中でも、特にPuckafallに2024年は期待したい。

11, Moment Joon & Fisong - Only Built 4 Human Links

GOLDNRUSH PODCASTの渡辺志保さん回で日本のヒップホップについて『(ヒップホップのルーツへの)道は残しておいて欲しい』ということを述べていた。現状、日本においてそれを一番体現しているのはラッパーはMoment Joon、そしてFisongではないだろうか。一曲目の"Way Back/根&傷”でのMomentのバースがもっとも顕著だが、Fisong、D-SETOらもそのマナーの上で詩を吐き出していく。現行のGriselda周辺のようなBoomBap、ハードなトラップ、ドリルとサウンドの変遷をたどるような展開を見せて、落ち着いたビートに移行する。漢字一字の副題が曲のテーマやムードを司っている、このパートでは"Dream Don't Die pt.2/梦”が一番好きである。二人の詩も好きだが、Momentの歌のメロディーはいつも優しく、寄り添ってくれる。最後の曲は、二人の見えているその景色に両手を上に掲げたくなる。Fisongの魂を変えたMoment、それに応えて今度はMomentの魂にもう一度火を灯したFisong、この2人によって新たに魂は繋がっていくだろう。

12, Jinmenusagi - DONG JIN REN

アルバムのどこを取っても Jinmenusagi色に染まっている。最近開設された後輩チャンネルの動画で、研究に研究を重ねてオリジナルのドラムキットもじっくり作ったと語っている(恐らく今までもそうだろう)。ビートもラップのオリジナリティも120%で、聞いてるだけで彼の世界観に十二分に浸かれる。『俺が信じているのはラップの稼ぎだけ』(3. GOAT)と言っている通り、インディペンデントとしての彼の動き方は本当に感心する。SAKURABAはシーンにとっても2023年のハイライトになるだろう。

13, Tade Dust - Forward March

ようやく準備が整ったシーンの侵略者。このEPはもちろん、Dリーグへの楽曲提供、自身のイベントArea81など、日本語ラップ村でも絶対に無視できないところまで登り詰めた。夜猫族から時は経ち、新たな仲間達とコミュニティ感を保ちながら、音楽で世界ともリンクしていく姿はまさに新風。そして、なんといっても声が良い。Chapter1 のMVはTOP BOYやuk grimeからありったけを吸収した質感がたまらない。

14, JJJ - MAKTUB

正直、前作のアルバムと間の『flame』や『loops』と向いてる方向が変わりすぎてついていくことが出来なかったけど、和田さんのインタビューを読んでやっと靄が晴れた。このアルバムの主題となっている鬱な感情は、仲間たちとともに導き出したJJJの新境地であるのだ。kamui的に言うなら、JJJでしか摂取できない栄養がある!1番好きな曲は“Oneluv“、16flip beats、Cleo Sol。

15, Madkosmos, UME - Tales Untold

OMSBの一昨年のEPでくらったビートメイカーMadkosmosと、京都出身のシンガーUMEの共作EP。以前から注目していたが、UMEはこの作品で覚醒したように見受けられる。自分の表現するべき対象を自分の内側にみつけたといったところか。ビートの壮大さや歌い上げる感じが、Ama Louの新譜を連想した。“Breathe in Blue“がマイベストトラック、ビートも凄まじい。

16, audiot909 - JAPANESE AMAPIANO

すごい。120%の使命感を持ったオタクにしか成せない諸行、リスペクト。ただ踊れるだけじゃなくて、少しの邪悪さを感じられるのもアマピアノに病みつきポイントな気がする。個人的には”Gas City feat. MORI” が一番好きです。和製Tyla計画プロジェクトがあるなら、SSWのASA Wu、後述のASOUNDのARIWATomiko Wasabiを推薦します!

17, YTG - FAR EASTEN BAT

キャッチーなリリックとライム(良い声)、バウンシーなトラップビートにおもしろフローは口ずさまずにはいられない。愛染との楽曲で”No War”(見つからない)という曲が存在する。そういうマインドをもちつつ、BURAVURA周りで一番トラップをやってる感じがなんか好き。3曲目、SKINSの客演のJNKMNの切れ味半端ない。

18, Peterparker69 - deadpool

コロナ期にPRKS9の記事からWATER DAWGS経由でY ohtrixpointneverのビートテープにハマり、同時期に先輩にJeterを教えてもらって曲を聴いていた。ライブに行くタイミングを逃しまくっていたら、ゆるふわのリリースレイヴにBoiler Room から直で勇者みたいな格好でかましてて、国籍やジャンルを超えた究極のポップを感じた。aryyのリリパでやってたTennysonの客演も半端なかった。とにかく、2人の天才にはこのまま突っ走って欲しい!

19, Tomiko Wasabi - 黒いお姉さん

内なるDIVA性は自分を感じなくなるほどのペインと、音楽に立脚した身体性を有することで目覚めるのだろう。成熟した初期衝動からスピットされる言葉たちはパンチラインの応酬である。5曲目のHairは、日本とギニアの部族のハーフとして、彼女が髪に関して経験してきたことやその昇華の想いが込められている。彼女の友人のヘアスタイリストが東京で開催したカーリーヘアのワークショップで、子供たちとHairをシンガロングしている姿はとても意義のある歌、活動だなと感じた。10月にはギニアに帰郷していたようで、その姿はまるでアルジェリア系フランス人のラッパー113が帰郷した心情を歌う楽曲“Tonton Du Bled“のMVのようであった。さらに成熟した彼女が何を歌うのか非常に楽しみである。

20, Lunv loyal - LOYALTY

ビートは大半がViryKnot、BERABOWとお馴染みのメンツであるがサウンド面では前作よりもギターや地域性などが色濃い楽音が多く、やりたいことをやった感が強い。一方で今年のハイライトになるであろう高所恐怖症も全員申し分ないほどリアルで、全員圧巻のライムとスピード感、内容であった。”Shibuki Boy”、”Iburi Gacko Flow pt.2”もよく口ずさんでいる。前述TadeDust主催のArea81でのライブもまじでかっこよかった。

21, LIL SOFT TENNIS - i have a wing

J-popとかロックをミックスしてエモいことを歌う人は増えてきている印象だが、彼らのなかでも『邪魔なやつはどいて』というストレートなメッセージを曲で成立させられるような存在はなかなかいないと思う。ベッドルームポップ感は前作のEPから漂っていたが、6曲目の”かんがえる”みたいなことまでやってしまうとは感服。純粋に好きな音楽を分解、再構築して作りたい音楽を作れるようになった感じがする、これからさらにネット世代のナードなバイブスを色んな音楽で聴かせてくるだろう。

22, ゆるふわギャング - Journey

ひたすらに解放、楽しいダンスがセットだ。駆け抜けるように同じテンションで一気に聴き通せる。今回のリリースパーティー、JOUNEY RAVEは前回の山奥から打って変わり、湖に浮かぶ廃ショッピングモールで行われた。一つの解放空間のようなもの上にある一夜の奇妙な旅であり、あそこまでがアルバムとセットのように感じた。Turnでのレビュー記事で書かれていたように『GAMA』を経て、これからは彼らの好奇心が赴くままが音楽に反映されると思うのだが、どんなことになるのだろうか。踊ってばかりの国とのコラボもかなり面白いロックなので、こちらもぜひ!

23, Olive Oil - No.00

Oliveさんのビートは色んな頭の振り方が出来て、それに集中していると時間がいつの間にか過ぎている。その複雑なビートにFEBBがぺったり力強い言葉と声でスピットした、”MURDER ONE”は鳥肌が止まらなかった。『トイレに流しても 叫ぶ海で』というラインは、死後に強まる念とか、言葉の偉大さを証明しているような心地であった。FEBBのラストアルバム楽しみです。今日のマイルス、いつも楽しく観てます。

24, 7 - 7

ZOT on the WAVE氏がディレクションを指揮した今作は、7がどこから来たのか、どんな性質を持っているラッパーなのかがわかりやすい作品であった。今まで見せてきたSAVAGEなサグいギャルとしての面ではない、曲中で忘れたいと語るリアルな学生時代のことも歌われていて、正直ドキッとした。マイベストトラックは”飛行少女”と”ねぇ”、『Call you 足りないから またしてる電話』とか、シンプルに歌いやすく口に出してみたくなるリリック。

25, Kamui - RAFRAGE

終わらない青春感が勇気をくれる、Kamuiからはそんなエネルギーをゲット出来る。雰囲気もかっこいいエナジードリンクみたいな感じ、RedBullとか、Monsterじゃなくて、サイバーっぽい文字で『e』みたいなのが書いてあるやつ。個人的には、”Late Flower” が出たときまじでビーフなんかどうでもよくなった。宇多田の原曲はどん底から人生を回想しているイメージで、サンプリングビートはその肩を借りて自分なりのメッセージをスピットするので、圧倒的な深みを持ってると感じた。”Critical”も半端ない。

26, AIWABEATZ - Like No Other 3

いわゆるヒップホップ的なバイブスからはするりと抜けて、ニューエイジ的な亜空間みたいなを漂ってる感じ。ビートにどんなメッセージや想いが込められているか、私には全然わからないが、お馴染みの仲間達はそれをラップで返しているのが凄い。嫌な想いはせず、そのコミュニケーションを観察している感じで、こちらも身を任せて聴いている。8曲目の“Robin Hood”が何となく好き。COVANのラップで思い出したけど、来年とうとうアルバムが出るらしい、すごく楽しみ。

27, OMSB - 喜哀

前作『ALONE』でそれまでの変化とフラストレーションを昇華したOMSBは、ヒップホップエンジン全開である。Red Bull64barsでOliveビートの上で蹴ったBIG- RE-MANのKANDATAへの想いやバッチバチ手抜きなしのラップはどの方向に走っても120%の力でバイブスを描写してくれる。”Memento Mori Again”は反則級のクラシック、ぶっ飛ばシット。OMSB自身も一番好きな曲だが、このトラックでラップしたことは野暮なことをしたと思うとツイートしていた。ド太いベースが入ってくるところ、脳みそがゆれるくらいの音で聴いたらきっと全力で吠えてしまう。

28, Kenayeboi - DTK

日本のトラップのラッパーで一番好き。あの超スケーターなライフスタイルは誰しもが憧れたことがあるのではないだろうか。スケーターを介せばプレーヤー同士オープンマインドになる精神は、全国のクールなラッパー達の間にも作用している。ラストの”Stay Misfits”はいつもイケイケなケネイの調子の良さとは違う、しんみりとしたバイブスがViryKnotのビートによって引き出されている。

29, JUMADIBA - Noodle

今年で出たアルバム・noboriもめちゃよかったが、体裁がちょっと余所行きな感じがする、こっちのほうが『KUSABI』からのヒリヒリした雑感があって個人的にはすきである。ビートは全てHEVENのRY0N4で、ジャケット通りの近未来感がある。元々作っていたのかAmazonのHEATプロジェクトが発端かはわからないけど、スピード感のあるplugっぽいビートの聴き心地と遊び心あるリリックはいつにもましてフレッシュ!もちろん今年の顔でJUMADIBAを聴いてラップを始めた、みたいな人がそのうち出てくるだろう。

30, CYBER RUI - ISSUES

音を聞けばわかる本気度、私のこのEPのフェイバリットはAttitude。ビートはLynnさん。シンガーのeillさん周辺から現れて、2023年はよく見かけた。上記のShowy Victorのアルバムや、Taeyoung Boyなどにもビートを提供している。デラックスアルバムはさらに音に振ってるんですが、こちらのほうが個人的には好き。ヘイトに負けないで、どんどん挑戦する彼女にまじでビガップ。ネットで簡単にリアクションをとれる時代だからこそ、ファンはアーティストの心理を考えて発言をすること、そしてダメなファンをことを注意することも、アーティストとのコミュニケーションだと思っていただきたい。

31, LANA - 19

世界がICE SPICE や Pink Pantheresなら、うちらはLANAである。POPYOURSでの”L7 bules”は何回観ても胸がいっぱいになる。唯一無二の歌声と等身大なギャルマインドはTikTokを中心とした若者に絶大な支持を得ていた。デビューEPという事で、客演も隙のない布陣で、”MAKUHARI”(←シンガロングも盛り上がりも半端ない)大ヒットからのツアー、EPリリースなど動きも完璧だった。個人的にはこの動きを、どこがサポートしているのか気になるところである。

32, XG - NEW DNA

これがワールドクラスのスケールといったところか。K-POPの発展を起源として、お茶の間あともう一歩のところにこの最先端のグループの存在があるのは日本のヒップホップにとっても嬉しいことである。yungxanseiがこのプロジェクトに関わっていながらシーンにいる事も嬉しい事だが、例えばCOCONAのソロアルバムが出るとして、現時点ではJP THE WAVYくらいしか客演候補が上がらない気がする。そういうワールドクラスみたいなことを意識するアーティストは、もっと増えて良いんじゃないかなと思う。ちなみに推しはMAYA。Simon a.k.a JAKOPSにビガップ!デビュー1年前にリーダーからメンバー外に外れたKAMIYAも日本語ラップのシーンと近いのでチェックして欲しい。

33, MaRI - PENTHOUSE

R&BのJUSMINEらがいる8ENTERTAINMENTからのリリース。JEZEE MINORやDJ RYOWらがサポートしたようで、ヘビーなセクシーさとダーティーなリリックがシーンに新風を吹かせた。ニート東京で盟友と語られていたHenny Kはアルバムをリリースして、新たな一面を見せてくれたがMaRIの次回作はどなるのだろうか。POPYOURSでのパフォーマンスはお決まりのシャウトで鳥肌、”BUMBUM”は何もわからないヘッズでも熱狂してしまうほど圧倒的にブチかましていた。特にMVもおもしろい”吸って feat. MonyHorse”がお気に入り。

34, ANARCHY - My Mind

STATIK SELEKTAHの全曲プロデュース、「ありがたいHIP-HOPが目の前にある」(4. “Pass the mic” )とは仰せの通りです。OG的なキーマンがこうして純粋にフィールしてる音楽として、好きな音楽にじっくり向き合って作品にしてくれることは本当にありがたい。ラップがうまいプレーヤーは有象無象だが、オーセンティックなビートを聞かせつつ、語りを進行できるラッパーは本当に貴重。車で聴きたい。C.O.S.Aとの"REACH“はMVのひとつひとつ動作が良い。

35, Naked Under Leather, 没 a.k.a NGS - Revolver

bringlifeが海風が届く、中規模都市の人間模様を描いた邦画だとするなら、こちらは三池崇のようなカオスさと緩急のあるオルタナティブ劇である。AVYSSのインタビューでもLil Yachty - 『Let`s Starts Here. 』が挙げられていたが、それらに呼応し、二人の特濃のアンダーグラウンド領域に引き込んで消化した感じがたまらない。正直、正統派なオルタナティブヒップホップとしてこの音楽性とカオスを更新出来るアーティストは今後日本で現れる気がしない。到達点ではないだろうか。“nazoloop 65“が特に好き。

36, Q/N/K - 21世紀の火星

ひとつ前の『Revolver』は現代の潮流に呼応したオルタナティブであったが、こちらはQNの別名義Earth No Madなどの尖ったビートが独自の進化を遂げ、音楽人間と合流したオルタナティブである。近年のQNは囁くようなラップスタイルや歌うことが多く肩の力がだいぶ抜けていた印象だったが、菊地成孔のシュルレアリスムみたいなポエトリー感と特異なトラックで、各曲それぞれの異なる夢のような世界感だった。”Life is beautiful” での『オレがおのうちまわって見つけかけたことを 天才 お前は屋根の上と 部屋の中でもう 掴んでるみたいだ』という菊地成孔のシンプルなリスペクトは、この1枚が出来た理由なのだと感じた。DOMMUNEで本人による完成視聴会があるので、そちらもぜひ。

37, Elle Teresa - Pink Crocodile

つけまやネイルというギャルフレンドリーなトピック、TikTokで踊れる曲など観ても聴いても楽しい本作であるが、”Temple”や”Mitte”、“未来“など聴ける音楽のバリエーションも増えていると感じた。コンスタントにいつもいい音楽を聴けるからすごい、個人的には昨年末に急にリリースされたの『Youngin Season 2』がオールトラップのミクステで結構よく聴いた。このアルバムで1番好きなのは”Bad Bitch From Shizuoka“である。

38, ZENDAMAN - NEW VIBRATION

レゲエはヒップホップの兄貴分であり、特に近年のレゲトン、アフロビーツブームはその線引きをほぼ無いものにしたといっても過言ではない。ZENDAやRUDEBWOY FACE(今年のリリースも最高だったのでぜひ)、音楽オタク達はそのことをよくわかっているだろう。ジャマイカで現地のコミュニティで修行している様子を師匠GACHAのチャンネルから日々アップしている。今作は長年ラブ&ピースと従来のサウンドを懐かしんでいたレゲエ村の凝り固まった歴史を更新したと思う。11月に出た、DJ TATSUKIの曲もチェックしてみて欲しい。ゼンダに初めてくらったのはDJ CHARIらのこの作品である、こちらも聴いてみて欲しい。

39, hyunis1000, caroline - SNOWDOME

同世代で一番信頼しているラッパーである。今年は骨折をして休んでいた期間もあったが、その間もbandcampで音楽買ったり、ワールドミュージックや変な音楽をディグ続けていたようである。結果二枚のアルバム、Neibissのシングル多数、残虐バッファローさんのリミックスアルバム(←これ本当に良いです)などがリリースされて、ファンとしては嬉しい。今作は2023年1枚目のcarolineとのジョイントアルバムで、割と寒い夜にゆっくり歩きながら沢山聴いた。”ZOU”、”DATA”が特に好きである、自分が自分であるために最後まで張ってた意地も全部剥がして素直な自分にしてくれる。いつもありがとう!

40, MARIA - True Color

やらかし番長ここにあり!私はなんだかMARIAさんが大好きでずっと聴いている。権力に対してポーズしたり、流行りに乗ったりせず彼女自身を音楽で見せてくれるのだ。特に盟友Lil’ Yukichiをプロデューサーに迎えた“Perfect“、全てのやらかしヒューマンに捧ぐ“やらかした””やRUDEBWOY FACEとの”True Color”は前に立って、私たちを快方へと導いてくれる。あと、これだけは言っておきたいのだが、町田Flavaで定期的に行われるGRINGOのMARIAさんのリリースパーティー回は本当に楽しい!! あと何回あるかわからないけど、まじでオススメ。最近、週刊文春から出たインタビューでは今まで語られてこなかった部分が多く載っているので、ぜひ↓(前髪かわいいです!)。

41, ASOUND - オリジナル 

バンドメンバーもボーカルのARIWAも若いながら演奏者として多くの経験を積んできたらしく、11月に町田でみたライブは個人的には2023年一番良かった。今作よりSony Music Labelからリリースしており、ラジオなどでもよく耳にする。鎮座dopenessとのMeditationリミックス、前述ZENDAMANとのレゲトンリミックスなど無限の可能性を魅せている。徐々に大きい舞台も増えているが、出来れば早めに小箱で目の前で感じて欲しい。前作の大名盤Feel Itも必聴。下はARIWAのロングインタビュー、チョコプラの松尾もファンだとのこと。

42, Big Animal Theory - HEAVEN

彼はビートでこの時代にスピットする。社会の周縁にある怒りや孤独、発狂したくなるような感情をビートが代弁してくれる。C.O.S.Aが客演でラップする”Drowing in Emotions”は鉄塊のようなハードな漢がこの刹那な世界を理解しつつ、進んでいく感情が描写されている。彼の作品でいつも印象的なのは、前向きな優しい曲があること。前作なら”On Your Side”、今作なら “Angel”あたりだろう。現代アートのような世間との距離感や動き方はなんだかいつも気になる、かっこいい。

43, Ryugo Ishida - The bread is baked

DJ JAMとRyugo Ishidaの暴走バイブス全開の1枚。台風直撃の車内で爆音で聴いて、豪雨の中車を進めたのが印象に残っている。暴れたいとき、雄たけびをあげながらなんかする時に聴いてみて欲しい。特に”High King”、”Loli Loil”、”ALIVE”あたりは現代のサイヤ人スイッチを押してくれるはずだ。多作家のアーティストのなにかに全振りした、1枚は結構おもしろい。

44, (sic)boy - HOLLOW

KMと(sic)boyのゴールデンコンビのメジャーデビュー1作目である。友達が彼は絶対売れるとの激押しで一応サンクラのHype`sから聴いていて、個人的には2020年の『(sic)‘s sence』が一番好きである。今作は先行シングルから豪華で、SEVENTEENからVERNONさんを迎えた”Miss You"、USエモラップのキング、nothing, nowhereを迎えた"Afraid??"は誰が聴いても好きなんじゃないかと思わせられた。一貫してロックとヒップホップのミクスチャーという、テーマには沿っているが今はロックに重心があるような作品だった。

45, Awich - United Queens

もう何度目かわからなくなってきたMステ、テレビの出演。様々なフェスの出演に加えて、自身のアルバム『THE UNION』のリリースとアリーナ公演、沖縄の仲間達とのコンピレーション『098RADIO vol.1』(“NINGEN State Of Mind II Remix”のAwichのバース震える)、そしてこの作品である。アリーナ公演での”Bad Bitch美学 Remix"はXでの反応を含め、今年のクライマックス感さえあった。このアルバムはシーンのQueen達の結束の1枚であり、特にCYBER RUIがフィーチャーされている”Shut Down"は最高である。軽ろやかドラムンベースにAwichからCYBER RUIへのエールが先行し、続くCYBER RUIのバースで返答していく様子はまさに”支えあってこそ長く持つ”である。ぜひ、ABEMAの見逃し配信でライブのパラパラダンスを見て欲しい。

46, JP THE WAVY - Hit Different

この人はもう本当にラップが上手い。なるべくフラットに音楽シーンを見てるつもりだけど、いま日本で1番仕上がってるラッパーだと思う。”Cho Wavy De Gomenne”が当たったのが2017年だけど、まだ一部からしかちゃんと光が当たってない気がする。今回のEPは客演こそ豪華だけど、全部JIGGなのできっと沢山やってる中から2人が納得行くものを選んだのだろう。ワイスピのサントラにも入ったり、アメリカや韓国ともかなり上手くやってる。ので、XGとやるなら今が良い!EPで1番好きな曲は”Ride With You”、明らかにラップが上手すぎるのは”Okay”、下の動画で確認してみてください。

47, NORIKIYO - 犯行声明

持病とはいえ今の日本で捕まるのはしょうがないと思う。が、司法のシステムが正常に働いていないということをリスナーに分かりやすく提示したという意義は、時勢柄MVPである。年末にも大川原化工機えん罪事件や、袴田事件など割と大きく報道されていたのが目に入るとNORIKIYOが頭に浮かんでいた。”オレナラココ”やアルバムを通しての、反抗とラスト3曲の想いのギャップがリアルで、やれることをやったとインタビュー等で語っていた意味がわかった。

48, MEZZ - MEZZ BUNNY

00年代のJ-R&Bの文脈と現代のクラブで遊びまくるギャルの合流点。2022年に出たdubby bunnyとのシングル"Gyal Drill"で、本人は「今後も、色々実験的な音楽を制作して発表していく」とPRKS9で語っていた。今作は全てdubby bunnyトラックで、リードシングルの”NEO時をかける少女は”Drillであったが、彼女が敬愛する なかむらみなみ とジャージークラブのトラックの上で暴れている”ROYAL MILK TEA”が個人的ハイライトである。ライブも観に行ったがかなりイケイケでかっこよかった。LYNNが客演としてバースを蹴っている、"Butterfly Soars"は正統派なJ-R&Bソングで個人的なプレイリストにも入れた。

49, JuggrixhSentana - JUUG SEASON Vol.1

Ollieには『ざっと10人以上によって構成される横須賀発クリエイティブコレクティブ』(2023 5月号)と記載されていたが、多分彼らしか実情は分かっていないだろう、YokosquadのMCである。03-performaceではDoja Catの”Like That"を大胆にサンプリングした楽曲を披露していた。"Yokosuka Life2"では R.I.P STICKY とシャウトを送っていたように、日本だとSCARSやFEBBといったラッパーたちを聴いていたようだ。日本にも色んなシーンがあるが今はこの周辺が一番エロい、つまりお洒落でリアルな迫力がある。SoundCloudにだけにしかない曲とかもあるので、ぜひディグって欲しい。

50, Yoyou - My Sta’

Jeter や hiphop和訳のeijin, Water Dawgsなどのchavrl周辺をTwitterでチェックし始めたときに、その周辺にいた不思議なギャルが彼女であった。2021年にでたギャルコンピのインタビューでなんとなくの出自は知れたが、なおわからないことだらけだったのでblackfileのインタビュー(下記リンク)には感謝している。自分は伝説のNoteをみれてないが、音楽に据えているのは救いやポジティブのようで、夏の夜の海のようなセーフスペース性を感じる。今作のプロデューサーはJUMADIVA - Noodle と同じくHEAVENのRY0N4、今確認したら年末にEPをリリースされていた、ので今聴いている。これでHEAVENのメンバー(Lil Soft Tennis, aryy, RY0N4)は全員今年リリースしていることになる。話は戻るが一番好きな曲は”いきる”である、『でもね』から入るのがいい。彼女に求心されるのは、そのあとに続くギャルのポジティブさを求めているからかもしれない。

番外編 7作品


・Saggypants Shimba - WINter  than summer
藤沢のニュースター、聞けばわかる。このMVを観ればさらにわかる。Yokosquadとも親交が深い。

・Only U, Tim Pepperoni, Puckafall - TORiO
Puckaビートはまじどんどん進化する。

・hyunis1000 - KUPTYTH
彼はゾンビから人間になったようである。前のアルバムも配信が開始した年の年間ベストに入っていた気がするので今回もそうしようと思う。先行シングル”TOYOTA CAROLLA”は巨匠RAMZA、前作からトラブル的に生まれた”In Earth (poivre Remix)”、名曲"ONE"などが収録されている。名作なので、まず買ってみてほしい。

AMO - F4MILY
前回のラップスタアでは、その兄貴性と空のような懐の広さに魅せられた。EPは一曲kandytownのNeetzからであるが、それ以外はKoshyのビートで恐らく全体としてのディレクションにも関わっているだろう。家族に対しての愛をふんだんに盛り込んだ、彼の現在位置をしめすまとまりのある快作だ。やはりラップスタアで披露した、”CROSS”が1番すきである。

・CHOJI, SMITH-CN - チョージとCN
ニート東京でいい人そうだなと思って気になってディグったら、すごいセンチメンタルなEPを出していた。昨日出たMVも凄くよかった、声も凄く好き。

・Huncho Fox, Loner Baby - Slime House
ビートメイカーの方、本場の方だろうな~と思っていたら、トラップホット地区こと福岡の方でした。声と重いトラップの相性がかなり好き。

・japanese south side boys - project 1
持つべきものはオタクの同志、Twitterで教えてもらった和歌山の高校生クルー。粗削りだがビートの間を縫うようなメロディーは彼らが敬愛するBADHOPよりハイセンスだと思う、未来を感じる。"044",”Same wahle",”Trip party"が特にお気に入り。中心メンバーのwick4eaは今年、二枚のEPもリリースしている。


お疲れ様でした〜!
ここまで見てくれた人はぜひハート押してください!まじ疲れた!
自分は大分偏ってると思うので、個人的にすごくバランスいいなと思うKAMAZOMBIEさんの動画を貼っておきます!もっと他の人のもおもしろいかも!

アーティストとそれを支える人々、エンジニア、YouTubeや文章で情報を残してくれるメディアの方々、先輩や友人にシャウトを送りたいと思います。

私は皆さんがが魂をかけてスピットしてくれた気持ちを、至らないですがこのような形で返したいと思います!!

日本のヒップホップや音楽で、この国がさらによくなりますように!

2024年も頑張りましょう!!!

この年間ベストのプレイリスト(spotify)はコチラ↓

オールジャンルの年間ベストはコチラ↓

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