見出し画像

今(2020年ごろ)1億5000万トンの海洋プラスチックは、2050年までに80億トンを超えて海の魚の重量と同程度に!

さまざまな海洋生物が、人類が環境中に放出したプラスチック廃棄物によって苦しめられている。プラごみは、明らかに生態系を破壊しており、その影響は我々人類にとっても目に見える脅威となって、その姿を現しつつある。我々はまずプラスチック廃棄物の排出量をゼロにしなければならない。さらに、これまでに放出して環境中に蓄積されているプラごみを回収無害化あるいは生態系へ影響を及ぼさない場所に完全に隔離する処置が必要である。プラスチックに対して我々が果たさなければならない責任は、化石燃料燃焼によって大量に生み出された二酸化炭素に対する責任の取り方と同じであろう。まずは、ゼロエミッションを実現し、蓄積量がそれ以上増えないようにすることが必要だ。さらに、ネガティブエミッションを実現し、環境中に蓄積しているプラごみを除去しなければならないだろう。そうしなければ、生態系へのプラごみが及ぼす悪影響を止めることはできない。

将来的に我々が処理しなければならないプラスチック廃棄物の総量は一体いくらに上るのだろうか?海洋環境に蓄積しているプラスチック廃棄物、いわゆる海洋プラスチックの総量を評価した研究として、以下のレビューがなされている。
UNEP Report 2021, "FROM POLLITION TO SOLLUTION", p47
- The volume of plastics in the oceans, which has been calculated
by a number of researchers during the past five years or so, is
estimated to be between 75 and 199 million metric tons (Jang et
al. 2015; Ocean Conservancy and McKinsey Centre for Business
and Environment 2015; Law 2017; IRP 2019; Lebreton et al. 2019;
Borrelle et al. 2020; Lau et al. 2020; The Pew Charitable Trusts and
SYSTEMIQ 2020). 

また、次のレポート
Ocean Conservancy, "Stemming the Tide: Land-based strategies for a plastic-free ocean", McKinsey Center for Business and Environment, 2015
のp14には、
- we estimate that the ocean may already contain upward of 150 million metric tons of plastic, based on global plastic production since 1950.
という記述がある。この数字の推定根拠はよくわからないが、WWFのレポート「海洋プラスチック問題について」でもこの数字は引用されている。

150億トンという数字は、75-199のほぼ中央値でもあり、現在のところ海洋プラスチックの総量は、およそ1億5000万トンを採用しておいてよいだろう。
 そして、これに毎年800万トンのプラごみが追加されていくのである。世界のプラスチックの生産量は大きく右肩上がりであり、近い将来も全く衰える気配はない。このままプラスチックの生産量の増加が続けば、2050年までに生産されるプラスチックの総量は、2015年までの総量の4倍になるという予測もされている。このまま生産量が増え、廃棄する量も増えると当然海洋プラスチックの総量も増えていく。

  海洋プラスチックが将来どのように増えていくのか、定量的な予測を行った研究("The New Plastics Economy - Rethinking the future of plastics", World Economic Forum, 2016, p14)によると、
[海洋プラスチックの重量]は、2014年時点で[海の魚の重量(812メガトン)]の5分の1程であったものが、2025年には3分の1、2050年には1倍以上となる
・石油の全消費量に占めるプラスチック原料としての利用割合が、2014年時点で6%であったものが、2050年には20%に上昇
・全二酸化炭素排出量に占めるプラスチック起源の二酸化炭素(生産時のエネルギー消費期限、プラごみの焼却処分、エネルギー回収時の焼却)排出量は、2014年時点で1%だったものが、2050年には15%までに上昇

"The New Plastics Economy - Rethinking the future of plastics", World Economic Forum, 2016, p14のFigure 5より。以下の仮定のもとの推定:魚の資源量は将来的に変化しない/石油消費量の年増加率は0.5%/プラスチック生産量の年増加率は2030年までは3.8%、2050年までは3.5%/二酸化炭素排出量推移は2℃シナリオを採用

この、海洋プラスチックが魚の重量を超える様子を西尾哲茂氏が分かりやすい図にしてくれていたので、以下に紹介する。

「どうする 海洋プラスチック 第2版」西尾哲茂、p4より

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?