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情景描写で、世界の見え方を考える

私はずっと、目に見えるものは、皆にも同じように見えていると思っていた。もし描写に違いがあるとしたら、それは語彙力といったスキルや文章をどれだけ書いてきたかという経験値の問題という認識だった。

けれども、とあるイベントに参加し、実は情景描写には個人のフィルターがかけられていることに気づき、その気づきを得た結果、私が次にやりたいちょっとしたことが見つかったという話を、今日は書きたい。

一昨日の夜に、尊敬する友人の ヨーリック が主宰する「言葉と遊ぼう」というワークショップに参加した。場所は渋谷-原宿のほぼ中間にある株式会社コルクのオフィス。そして「夜の原宿の街を10分歩き、できるだけ長い文章で書く。しかも目的なく」というお題を設定された。

端的に伝わる文章を良しとする最近の流れの真逆をねらい「目的とか何を理解させるとかなく、目で見たこと、耳で聞いた音、肌で感じたこと、頭で考えたこと、全部書き出してみる」ということをやってみよう、とのことで、初めてのことだったけれども、私の心はワクワクしていた。

その日がちょうどバレンタインだったこともあり、情景描写と言われていたにもかかわらず、私は勝手に自分のことを「帰宅途中にいつも見るあの人にチョコレートをあげようとする20代前半の女性」という設定にして、明治通りを渋谷駅方面から原宿方面に向かった。いつも見るあの人は、この通りで一番目立っているビルのweworkにいるフリーランスで働く人にしよう、ということだけを決めて周囲を観察し始めた。

双子コーデのあの子たちが持つ小さな紙袋はきっとチョコだな。友チョコ万歳。それにしても生足寒そう。
あちらの男女は、大学生くらいかな。男性がCACAO SAMPAKAの紙袋を持っている。恋人同士なのか、見つめ合っているからちょっとこちらも恥ずかしい。
カルバンクラインは20時閉店か。最後のお客さんがまだ商品を見ている・・・もう20時9分だけど。
さてようやくwework。やや混み合った1階カウンター付近に男性グループを発見。チェスターコートに黒のスリムパンツ、それに黒やグレーのバッグが流行っているのか。

そんなことをメモにしながら、またコルクオフィスにもどり、自分が見たこと、考えたことを文章にした。

語彙力や表現力が乏しいがゆえに、自分の考えを相手に伝えることは難しいという認識はあった。そもそも誰かに自分のことを理解してもらえると思うこと自体おこがましいのでは、とも考えていた。

が、参加者全員の描写を読んで個々人の特徴を捉えていくと、私が伝えたいことを伝えられない理由は、それだけではないとはっきりと理解できた。

具体的に言うと、私以外の参加者の描写は、行き交う人や車の音、点滅する車の光と影、公園で佇む自分の姿、至るところにある渋谷らしい落書き、ずっと気づいていなかった雑貨店の話など、広い視点からから細かい描写へと移っていくものや、動線に沿って進むストーリー、また五感を使った表現が多かった。

一方、私はというと「人間が好きなんだね」とヨーリックから第一声で言われるくらい、描写には人の特徴ばかりが挙げられていた。確かに私は「変な人が大好き」「人間観察が楽しすぎる」と公言していたけれど、正直なところ、ここまで差がつくとは想像していなかった。

なるほど、存在しているモノ・風景は一つしかなくても、それを見る人のフィルターを通すと、描写は全く異なっているのだ。

しかもこれは、シャッターチャンスが異なるからではない。私はスケッチするように静止画で人物を捉えていたけれど、他の人はムービー用カメラを回して、全体を引いて、人物に寄せて、それを繰り返し撮影していたんだとわかった。当然、ムービーのほうが多くの情報が伝わる。

ここまでくると、次の私のステップは自ずと明確になった。

私もムービーで撮影したい。

普段の仕事で使うパワーポイント作成テクニックでは、誤解がないように正確に書くこと、わかりやすさよりもデータを詰め込んでロジックが破綻しないようにすること、そんなことばかりに気を取られていた。

けれども、私がいま書きたいものは、自分の感情を読み解いた結果だったり、日々のささいな出来事たちだ。

「人物をそのまま描写するんじゃなくて、情景を描写して人物を表現すると良いよ」

「無駄と思える言葉もたくさん紡ぐ。そして最後に削る。そうすることで、さらに人が魅力的に見えるよ」

ヨーリックから言われたことをヒントに、伝える技術を磨きたい。小さな欲が芽生えてきた。

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うれしいな。幸せってこういうことだね。
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きゅうたろう

リサーチャー / 塾講師 などをしながらコミュニティ運営を学び中。 目標設定が苦手なので「できる」を増やして道をつくります。語り合う時間も一人の時間も、同じくらい大切です。感情の言語化にまだ慣れておらず四苦八苦中です。そんな私が自分を編集するために感情について書きます。

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