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究極の秘湯・カムイワッカへ! 世界遺産・知床で見た、娘のド根性【7月4日〜7月6日 北海道網走市〜斜里町〜羅臼町】


網走のキャンプ場で、迎えた朝。網走湖を望む絶景と青空の中、朝ごはんとラジオ体操を。なにこれ、めっちゃ気持ちいいじゃない。

娘は昨日に引き続き、遊具で遊びたいみたい。まあのんびりでもいいか、と、コインランドリーで洗濯をしながら、午前中は子どもたちと室内あそび。大人はロードバイクをレンタルして、交代で乗ってみたり。

そしてこの日は、ちょっとしたトラブル対応も必要だった。数日前、キャンピングカーのインバーターが動かなくなってしまい、電源が使えない状態になっていた。PCもWiFiもスマホもカメラも、旅に欠かせない必須アイテムたちのピンチ。調子を見ていただくために、都会に出るタイミングを待っていたのだ。キャンプ場から30分ほどのところにあった、網走市街のカー用品店へ行き、しばし待機。待ち時間は、娘と礼文島で拾った貝殻を使ったアクセサリーづくりを楽しんだ。娘の手先は本当に器用。ヘアピンにネックレス、ブレスレットに指輪まで、手づくりおしゃれアイテムがいっぱいになったね。

店員さんもちょっと手こずっていたけれど、なんとかインバーターは復活。ホッと一安心した頃は、もう夕暮れどき。次に向かいたい知床まで、少し車を走らせてみようか。道すがら、見つけた銭湯に入り、地元の人たちが集うラーメン屋に行き、あっという間に1日が終わってしまった。網走監獄は行きたかったけど、こういうメンテナンスの日も、必要だね。

子どもたちを寝かしつけてから、知床半島の根っこにある、道の駅 うとろ・シリエトクへ。明日の知床半島めぐりに期待を膨らませながら、私たちも眠りについた。

翌朝、早朝に車を抜け出すと、港の匂い。ウミネコの声。あぁ、知床半島まで来たんだ!気持ちが高ぶる。空が広い。

今日はお天気もなんとか持ちそうだし、知床五湖でも歩いてみようか。そんな話をしながら朝食を済ませ、トイレに行こうとした娘、キャンピングカーから降りた途端、「いたーい!」と泣き出した。どうやら出るときに踏み外し、右足をくじいてしまった様子。しばらく気持ちをなだめながら様子を見ていると、足首が腫れてきてしまった。「捻挫だなぁ」と主人。娘は歩くとき、びっこを引く状態。けっこう痛そうだ。

さて、どうしたものか。この状態で徒歩であちこち巡るのは無理がありそう。車の中にずっといるのも、子どもたちは窮屈だろうし…。いろいろ調べていると、船で巡るという選択肢が浮上。知床半島を海から眺めて、クジラやヒグマにも遭遇するチャンスがあるという。娘も「乗りたい!」と前のめり。それなら今日は、ちょっと贅沢してみようか。いくつかあるクルーズのプランの中から、知床遊覧船の「知床岬コース」をチョイス。船でしか行けない知床岬の先端、せっかくなので拝んでおこうじゃないの。道の駅のすぐ近くにあった乗り場へ娘抱っこで向かい、いざ、洋上へ!

乗り込んだのは、定員60名の小型船。海面も近く、スピードが出るとなかなかの迫力。息子も娘も、揺れに動じることなくご機嫌だ。

岩や滝など、見どころはアナウンスで知らせてくれる。自然がつくり出した美しい情景にみとれていると、「クマがいますよー!」の声。みんなの視線が、一斉に窓の外へと向けられる。「どこどこ?」娘も必死で双眼鏡を覗く。海岸をじーっと見つめていると…いました、ヒグマ!!

初めての遭遇に興奮していると、またすぐに次のヒグマが現れた。世界遺産でもある知床は、ヒグマの生息地。でも最近は、人間が餌をあげてしまったために住宅地などにも降りてくるようになり、ときには発砲しなくてはならないという不幸な結末も耳にする。ここ数日のニュースでも、北海道のあちこちでヒグマが目撃されていると言っていた。自然環境に生きる動物と人間の共生は、大きな課題。いざこうしてヒグマを目の当たりにすると、実感となって迫ってくるものがある。

船は、知床岬の先端へと進む。森も深くなり、景色に神秘性が増してくる。あぁ、なんて美しいんだろう。海の色も、果てしなく青く美しい。

知床岬をしばし鑑賞したあとは、折返し。3時間もの船旅に少しうとうとしていた私たちは、乗務員さんの声に起こされた。「イルカの群れです!20〜30ほどいますよ」。ヒグマに遭遇して満足していたが、今度はイルカとは! 外を見ると、黒い影がぴょんぴょんと海面に現れては消え、現れては消え…を繰り返している。近づいてみると、確かにそれは、イルカの姿。思わぬ遭遇に大興奮。シャッターを押したけれど…あら、残念。あの感じ、動画で撮っておくべきだったかなぁ。でも、本当にたくさんの野生のイルカに出会え、身近に感じることができた。娘も、うれしそうだったな。

こうして美しい自然と動物たちとの遭遇を楽しみ、3時間のクルーズは終了。娘も足に負担をかけることなく過ごすことができ、良かった。まだ腫れているので湿布を張り、道の駅でお昼を食べて、まあ今日はゆっくりしようかぁなんて話していると、ビジョンに流れる「車椅子を貸し出している」という文字が目に入ってきた。よく見ると、それは知床五湖の案内。公園内で車椅子を貸し出しているという。なるほど、その手があったんだ!娘に聞くと車椅子なら行ってみたいと言うので、小雨が降り出した知床半島を、北へ。途中、シカとの遭遇を楽しみながら、到着した知床五湖。車椅子だったのでガイドツアーは諦めたけれど、行ける範囲を徒歩で散策。霧も出ていて絶景!とはいかなかったけれど、鳥の声を聞きながら、神々しいほどの大自然を満喫できた。

帰り道、またしてもヒグマに遭遇。主人撮影。車のすぐ脇にいて、娘もカメラを向けていたけど、私はドキドキしてほとんど見られず。

私たちは、ヒグマたちの住処にお邪魔しているんだ、と改めて実感。彼らの静かな暮らしを守ってあげたいな、なんてことを考えながら、注意深く下山した。今日は国設知床野営場に宿泊。ここも、フリーサイトは大人400円という破格にもかかわらず、素晴らしく整った施設。環境に配慮して、バイオトイレまで導入されていた。北海道、本当にキャンプ天国だなぁ。娘の足の回復を祈りながら、シカも遊びに来るキャンプ場で一夜を過ごした。

翌朝は、知床の海を見ながらラジオ体操からスタート。娘の足はだいぶ良くなっているものの、まだ腫れている。うーん、どうしたものか。回復したら、娘も楽しみにしていたカムイワッカ湯の滝に向かおうと思っていたけれど…。カムイワッカ湯の滝は、活知床硫黄山の中腹から涌き出る温泉が川に流れ込み、川全体が流れる温泉のようになっている。普通に浸かる温泉ではなく、沢登りを楽しむ場所なのだ。さすがに捻挫の翌日に、沢登りは厳しいかな…?

娘にも相談し、普通に歩けて、ウォーターシューズが履けそうなら行ってみようということに。すると娘、痛さをこらえて少し右足をかばいながらも、歩き始めた。ウォーターシューズも、腫れた足には辛いのだろう、顔をしかめながらなんとか履いてみせた。怪我の具合はまだ心配だけど、娘のやる気の凄さに驚く。よっぽど行きたいんだなぁ。「明日にしてもいいよ」と言っても、もう娘の気持ちはカムイワッカに向いている。そこまで言うなら、と、行ってみることに。

深い霧の道を抜け、途中からは舗装されていない砂利道に。ただでさえ、揺れが大きいキャンピングカー。10kmほど続く砂利道は、乗っている私たちにも負担が大きい。秘湯へ向かうんだ、というドキドキが高まる中、麓の駐車場に到着。娘の足の具合で本当に行けるのか?息子はおんぶで大丈夫か?などなど、現場の様子や看板の注意事項などを確認しながら、しばし主人と相談。滝から降りてきた人々にも聞いてみると、「娘ちゃんなら楽しめそうよ〜。」「その格好(ラッシュガード+水着+ウォーターシューズ)ならバッチリ!」などと声をかけていただき、よし、行ってみよう!ということに。ママも一緒に頑張るよ!

最初、いきなり現れた急な坂にビビりながらもなんとか山を登り、硫黄の匂いの漂う滝に恐る恐る足を踏み入れる。すると、「あったかい!」と娘。上流では30度ほどの湯温とのことで、お風呂ほどではないものの、あたたかさを感じる。よく見ると湯気も上がっている。沢登りは冷たいイメージなのに、なんだか不思議。足元がぽかぽかとしてきて、末端冷え性の私にも心地よく、うれしくなる。すべらないように、流れに足を取られないように、一歩一歩、ゆっくりゆっくり、滝の上流へ。

足をかばいながらも、順調に登っていた娘。人が足を踏み入れられる最後の滝の下までたどり着いた。上まで行くにはかなりの急斜面。降りて来る人も、大人でさえ滑り、足を取られている様子がわかる。今の娘の足では、ちょっと厳しそう。「ここまでにしようか」と話すと、「やだ、行きたい」と。「でもここからはすごく急だし、今のこなつの足ではあぶないよ。また怪我しちゃったら大変だし」と話をしても、諦めきれない様子。目に涙を浮かべ、悔しそう。娘の想いを叶えてあげたいけど、でも…。私も迷った末、娘とどこまで行くか相談。私が下で必ずサポートすると約束し、娘が指を指した滝の中腹まで行くことで、納得してくれた。急な斜面を、慎重に慎重に、歩く娘。

約束のところまでたどり着き、納得した様子で笑顔をみせてくれた娘。すごい、やりきったね!捻挫していなくても怖いだろうこの滝を、よく登りきったなぁ。娘のド根性をしみじみと感じた瞬間。その勇姿を、ぎゅっと抱きしめた。

カムイワッカ、湯の滝を登るという行為も、景色も匂いも、ここに来るまでの道のりも、なんとも言えないワクワクが詰まっていた。秘湯好きがこぞって訪れるというのも納得。日本には、まだまだ未知の自然がいっぱいある。子どもたちと一緒に、これからもたくさん体験していきたいなぁと心から感じた体験だった。やりきった娘と、温泉らしく浸かってみたり、この環境を満喫して帰路へ。そうそう、息子も主人のおんぶで、一緒に体験できましたよ。

下山して遅めのランチを取ったあとは、大冒険後のお昼寝タイムに入った子どもたちを乗せて、知床半島をオホーツク海から太平洋側へ。知床峠を越えて、羅臼町の方まで車を走らせる。羅臼といえば、露天風呂がすごいらしい。自然そのままの姿で海に突き出したお風呂があると主人に聞き、ワクワクしながら向かった。海沿いの道を走ること30分ほど、海岸沿いに「相泊(あいどまり)温泉」の文字。でも道からは何も見えない。海岸へと降りる階段を行くと、青いビニールシートに囲まれた建屋が。海側に回ってみると、そこはお風呂。一応男女に分かれているものの、海に開いていて超ワイルドだ。

この相泊温泉、地元の方が管理されていて、入浴料は無料。源泉に温度調節のための水道が引かれただけの、自然なままの姿で海岸にある。羅臼にはこういった温泉が複数点在しているらしい。こんなワクワクのお風呂、入らない手はない。しかも今なら貸し切り!子どもたちは寝ていたので、先に主人がひとりで入浴し、あとで女子風呂に3人で行くことに。あがってきた主人は、「最高だった〜!」とご満悦。子どもたちを起こして、私たちもお風呂へ。湯温はちょうどよく、潮の香りがする。眼の前は海!わぁ、気持ちいい〜!娘も息子も、うれしそうに大はしゃぎ。他に誰もいなかったので、主人がこっそりパチリ!楽しいね〜!

娘は出たり入ったり。湯の中にはぬめっとした海藻も浮かんでいたりして、それを拾ってみたり。自然そのままの温泉を存分に楽しんだ。身体はポカポカ。大満足。今日はワイルドな温泉を2つもハシゴしちゃったね〜、地元の人にありがとうだね〜、なんて話ながら、今日のキャンプ場へ。途中で立ち寄った居酒屋さんでいただいた羅臼名物の「クロハモ丼」も、最高だった。

それにしても、今日の娘のド根性には驚かされた。一度決めたらやりぬく姿勢、前からすごいな、と思っていたけれど、大人でも恐怖を感じるようなカムイワッカで、痛みをこらえてよく頑張ったなぁ。普段は甘えん坊でこの旅でも何度も「抱っこ〜!」ってなっちゃう場面もあるけど、ここぞというときのパワーはものすごい。その強弱が娘の魅力だし、かわいいなぁ、と親バカにも思ってしまう。夕方にはすっかり、腫れもひいていて、明日からまた元気に遊べそうだね。

旅は、子どもの思わぬ表情に出会わせてくれる。これからの旅路も、一緒にいっぱいいっぱい冒険しよう!明日は道東へ向かいます。

貴重な時間を割いて読んでくださったこと、感謝申し上げます。みなさんの「スキ」や「サポート」、心からうれしく受け取っています。