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「ごめんね」よりも「ありがとう」の気持ちで。ファームインで実感した、巡る命のこと。【7月10日〜12日 北海道新得町】

旅のハイライトになりそうな、浦河べてるでの貴重な体験。余韻をそのままに、夜は少し北上して、忠類白銀町にある「ナウマン公園」の無料キャンプ場へ。何度も言ってしまうが、本当に北海道のキャンプ場は安くて充実している。ここも、炊事場やトイレはとてもきれいに保たれていて、夜はとても静か。運営している人と利用する人、双方がとても大事にこの場を保っているのだろうな。感謝。日の出も見られて、うれしい朝。ゆっくり朝ごはん。

今夜から十勝のファームインを予約しているけれど、午後出発でOK。さて、何しようかな、と思っていたら、公園内にパークゴルフを発見。北海道では盛んなのかな。河川敷や公園で、パークゴルフを楽しむ人々、特に中高年の方々の姿を良く見かける。「やりたい!」今日も娘はやる気満々。子どもサイズのクラブも借りられるとのことで、家族でチャレンジしてみたりして。

私たち夫婦のスコアはご愛嬌ですが、娘は9ホール合計198打!途中で飽きるかと思っていたのに、諦めずに打ち続けた娘、すごい。なかなかいい汗かいたね。そのまま道の駅でランチを取り、十勝へ出発。途中、黄金色に変化した小麦畑に出会い、季節が進んだのを感じる。思えばもう3週間近くも北海道にいるのだ。

小雨が降る中、到着した「ヨークシャーファーム」は、レストランを併設した、洋館風の宿。10ヘクタールもの羊牧場があり、羊追い体験など、本格的な牧場暮らしが体感できるらしい。ガーデンも美しく手入れがされていて、家庭的であたたかな空気が私たちを出迎えてくれた。

案内していただいたお部屋はこじんまりとしているけれど、落ち着いた雰囲気。家族4人でゆっくり寛げそう。今日から2日間、久しぶりのお布団での就寝。やはり車中泊で疲れもたまっていたので、うれしくてベッドにダイブした私。するとすぐに、子どもたちも馬乗りに。おーい、ママを少し休ませてくれー!笑

この日は宿に夕食もお願いしていたので、夕暮れのひとときは牧場を散策。BERRY GARDENでハスカップを摘んで食べ、羊たちと遊んで。明日からの牧場ステイがとても楽しみに。夕食には、ラム肉のシチューとステーキを美味しくいただいた。くさみがまったくなく、柔らかく口の中でほろほろと崩れていくラム肉の美味しさに、娘も夢中で食べている。「さっき遊んだ羊さんのお肉だよ」という私の言葉に少し不思議そうな顔をしていた娘。明日は羊追い体験。いのちの循環を、このステイで感じてくれるかな。

翌朝も霧雨混じりのお天気。空気も冷たい。でもあたたかなお布団でぐっすり眠れた私たちは元気いっぱい。十勝小麦のパンと十勝産のヨーグルトやクリームチーズ、手づくりジャムの幸せ朝ごはんをいただいたあとは、さっそく長靴を着用して羊追い体験へ。

牧羊犬のトッティーに連れられて、200頭もの羊の群れのもとへ。ヨークシャーファームでは牧草エリアが6つに分かれている。羊たちは毎日1つのエリアで過ごし、草を食べ尽くし、翌日には次へ移動。これを繰り返すことによって、草の状態も羊の健康もキープしているとのこと。10ヘクタールもの広大な大地で、自然の牧草と、レストランで使う無農薬野菜の皮や芯を食べて育つ羊たち。すぐ脇には、佐幌川の清流も流れている。もちろん人に管理されているのだけど、その暮らしは、限りなく自然に近く、自由であるように見える。

そんな羊たちに、まずはミルクやりを。哺乳するのは、ごく一部。母乳が出ない母羊の子どもか、育児放棄をされてしまった子だそう。ミルクを持った娘のもとにすぐにやってきて、ごくごく飲み始めた。そして羊追い。トッティーが全速力で走って追いやると、一斉に囲いの外へ。次のエリアのトビラを開けると、我先に、と中へ。す、すごい…! 新しい牧草があるエリアに入ると、みんな無我夢中といった様子で草を食べ始めた。

ヨークシャーファームでは、こうして手をかけて健康な羊を育て、生後12〜24ヶ月の羊肉をレストランで提供しているという。昨夜の美味しくほろほろのラム肉の味を思い出す。大切に育てられ、人々に愛されるお料理となって、食されていく羊たち。ファームインは、まさに巡るいのちを体感できる場。大切に育て、大切に食べるとはどういうことか、家族でまるごと体感し、学ばせていただいた。

この日は十勝周辺で乗馬やガーデン散策を楽しみ、馬、ヤギ、羊、鶏ともたくさん触れ合った。ふれあいの中で、最初はこわごわ餌をやるだけだった娘の行動も眼差しも、少しずつ変化し優しくなっていくのを感じた。

数日後、ある食事の席で、娘は、「野菜をいっぱい食べたほうがいいんだよ。だってお肉は動物のいのちをたべるんだから」と言い出した。最近、お肉が大好きになってきた娘。今回の体感の中でいろいろなことを彼女なりに咀嚼し、言葉にしてみたのかな。なぜそう思ったか、いつそう思うようになったか、などを聞いても、「前からそう思ってたの!」と恥ずかしそうに言うばかりで、本当のことは教えてくれないけれど。

そうだよね、「かわいそうだから食べない」という考え方もあるけれど、そうじゃなくてもいい。「ごめんね」よりも「ありがとう」。いただくときに、「ありがとう」「いのちをいただきます」の気持ちで食べれば、「ありがとう」が循環するし、お互いの命をいかしあうことができるんだと私は思う。「野菜をいっぱい食べる」に至るまでの娘の思考回路はわからないけれど、一生懸命な言葉、心に響いたよ。

翌朝、貴重な体験とあたたかなお布団に感謝してヨークシャーファームをあとにした私たちは、「共働学舎新得農場」へと向かった。ここは、さまざまな生い立ちや個性をもった方々がともに暮らし、自然の循環の中で勤労生活を送っている農場。高品質のチーズづくりが有名で、カフェも併設されているので気軽に訪れることができる。私たちも、まずはカフェ「ミンタル」へ。店内には、美味しそうなチーズがずらり。野菜やお蕎麦、関連書籍なども販売されていて、カフェは多くの人で賑わっている。娘はラクレットづくりの実演に、目が釘付け。

私たちもランチにピザとチーズの盛り合わせをいただきながら(チーズ、悶絶の美味しさでした…!)、しばし書籍などに目を通す。共働学舎をつくった宮嶋望さんの取り組みは、その農場経営手法だけでなく、生きづらさを抱えた人々が仕事を通して自分を取り戻していくプロセスとしても知られ、注目されている。

いろいろな理由から社会での居場所を見つけられない人がいます。心身に重い妨げを抱えている人がいます。私たちはそうした人々と共に、そしてそうした人々が共に働く場を北海道十勝、新得町の大地に営んでいます。人間は太古から、複雑に関わり合い相互に力を及ぼしながら社会を作り上げてきました。どんなに大きくて強いものも、つまるところたくさんの小さくて弱いものたちに支えられている存在です。忘れてならないのは、弱いものに対してたとえささやかでもつねに心を差し向けていること。(後略、ホームページより)

ここにも、いかしあう関係性が。今回、農場見学は叶わなかったけれど、心惹かれるものを感じ、書籍を購入。旅のお供にしようと思う。先日訪れた浦河町の「べてるの家」とも通じるものがありそうだ。

北海道に来て度々感じるのは、この地で生きる人々に息づく、いかしあいの精神。それぞれの場所で、手に届く範囲の人々や自然と強くつながり、関係性をあたためながら、お互いをいかしあい、生き抜いていこうとする姿勢を感じる。外に目を向けたり強いものに委ねたりするのではなく、目の前の弱さや現実を常に自分ごととして捉え、自分で行動する。そこに悲壮感のようなものはなく、少し肩の力が抜けていて、状況を楽しんでいるようにさえ見える。本州と海を隔てているからだろうか。北の大地で生きる人々の自立した生き様、たくましさが、私の心を惹きつけて止まない。

だからもう少し、この大地に身を置き、自然と人々の息吹を感じてみたいと思う。長引く北海道旅、もうしばらくお付き合いくださいね。



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池田美砂子

フリーランスライター・エディター、2人の子どものお母さん。人の言葉をありのままに聞くことで本質を見つめるインタビューがライフワーク。現在は主にウェブマガジン「greenz.jp」にて、「ほしい未来」のつくり手のみなさんの言葉を紡いでいます。

育休キャラバン 〜キャンピングカーで子連れ日本一周放浪の旅〜

2019年夏。家族4人、育休取って日本一周の旅路へ。0歳児と6歳児を連れて、キャンピングカーに乗って。家族の濃密な時間を、のんびり記録していきます。
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