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“自分の手でつくる”という豊かさを体感。「オークヴィレッジ」と「森の自然学校」、飛騨高山のものづくりの現場で体感したこと【7月28日〜30日 岐阜県高山市〜白川村】

軽井沢をあとにし、夜には山深い「道の駅風穴の里」へ。到着時はキャンピングカーの中に雨音が響き渡っていたが、朝には青空がひろがっていた。一山越えて、今日は飛田高山方面へ向かう。目的地は、木をいかしたものづくりを行う「オークヴィレッジ」、そして、ものづくりを体験できる「森の自然学校」。オークヴィレッジの工場見学のあと、森の自然学校では、主人が1泊2日でスツールづくり体験を予約していた。

飛騨高山に抜ける道は、新緑あふれる森の中を行く一本道。憧れのものづくりの現場を訪れるとあって、運転する主人もワクワクが抑えられない様子。後部座席の娘と私は、UNOで真剣勝負!に熱中していたら、少し酔ってしまった…。ともあれ約1時間のドライブを経て、まずは「オークヴィレッジ」のショールームに到着。

家具、日用雑貨、おもちゃから一枚板まで。さまざまな「木」の質感がいかされた商品がずらり。オークヴィレッジの商品からは、どこかぬくもりを感じるのはなぜだろう。8ヶ月の息子も、サンプルを手にとり、とてもうれしそうにふりふり。

私は飛騨高山のある岐阜県のおとなり、愛知県出身。そのせいか、オークヴィレッジの商品には良く出会っていて、両親からも娘へのプレゼントとして、積み木や木琴をいただいたりしていた。娘は、幼い頃から遊んでいる一つひとつ木の名前が記された積み木を見て、とても嬉しそう。ショールーム内の子どもスペースには、積み木や木の玩具のほか、木のボールを転がすと「どんぐりころころ」が流れる巨大な木琴も置いてあって、子どもたちも遊びに夢中。

ショールームの奥には、家づくりに関する展示コーナーもあった。1974年の創設当初から、持続可能な循環型社会を目指し、「木」という再生可能資源によるモノづくりを続けているオークヴィレッジ。家具では釘などの金具をほとんど使わないことでも知られているが、それは家造りにおいても同じ。日本の木造建築は、かつて100年の耐久性を兼ね備えていたが、それを支えてきたのは、古くからこの国に伝わる高度な技術「木組み」。オークヴィレッジでは、この「木組み」を進化させた技術を駆使し、100年の歳月に耐えうる素材の良さをいかした家づくりを行っている。自社で設計から施工まで一貫して行えることも、大きな強みだ。

工場見学もさせていただいた。素材をいかすものづくりの現場でも、やはり耳にしたのは木の特性をいかすお話。でも、「金具が悪いわけじゃないですよ」とスタッフの方は言う。木と木を組み合わせる「木組み」の技術は、木が温度や湿度といった環境によってかたちを変化させるときに、しなやかに適応できる。金属ではそうはいかないため、長い年月の中で木との間にずれや歪みが生じてきてしまう。金具は便利で良い面もたくさんあって、オークヴィレッジでも一部商品には使用しているが、長い目で見た耐久性という意味では、「木組み」の技術が優れているということ。「金具を使わない」というととても聞こえがいい。でもそれに固執しすぎることなく、目的や用途に合わせて最適解を生み出していくしなやかなあり方が、とても心地良く感じられた。

現在、日本の木造住宅の平均寿命は25年と言われる。木の育つ年月を考えると、このような消費がいつまでも続くはずもない。この事実を背景に高度な技術を磨き続け、持続可能なものづくりを続けるオークヴィレッジの魂に触れ、心が震える思いだった。

さて、オークヴィレッジをあとにし、向かったのは「森の自然学校」。車で5分ほど走り、国道から一本入った豊かな森の中に、その建屋は現れた。入口を入ると、木材や道具が所狭しと置かれている。ここで多くの人がものづくりを体験しているのだと思うと自ずとワクワクしてくる。

チェックインも早々に、「森の自然学校」代表の稲本裕さんに導かれてさっそくスツールづくりを始める主人。すると工作好きの娘も、やる気まんまんに。お人形のジェラートやさんがつくりたい!と、絵を描き始め、それを主人が設計図に落とし…あれ?目的が変わって娘の工作になってしまっている…。それでも、先生はやさしくあれこれアドバイスをくださり、主人が試行錯誤した結果、ちいさな木のおうちが完成した。娘は思い描いた通りだったようで、ニコニコご満悦。想像したものがかたちになるって、うれしいよね。

娘が満たされたところで、ここから大人の時間に…と思ったら、もう今日はタイムアウト。スツールづくりは、明日に持ち越しになってしまった。家族旅はいつだって、こうやって子どものペースに翻弄される。まぁ、それが楽しいところでもあるんだけどね。

美味しい夕食と朝食、あたたなかお布団と森林浴で心身ともにたっぷり充電し、翌朝からはパパが本格的なスツールづくりに挑戦。木の幹部分をいかした「耳」付きのスツールをつくるらしい。かんなで削り、ヤスリをかけて…私が宿で洗濯物を済ませて見に行った昼前には、もうかなりの工程まで進んでいた。集中して作業したせいか、主人は汗だく。おぉ、椅子っぽくなってる。

その横で…あれ?娘がまた何かつくっている。聞くと、「たすくのおもちゃ!中にお米入れるから持ってきて」と。持ち手があって、振ると音のするガラガラをつくるらしい。またもや稲本さんは娘のワガママを聞き入れてくださり、材料を用意してくださった。主人のスツールづくりに伴走するだけでも大変だろうに、娘のガラガラづくりにまでお付き合いしてくださるなんて、なんてあたたかな方なんだろう。

つくりながらの会話の中で、稲本さんは、ここでお客さんにものづくりを教え続ける想いを語ってくださった。もともとはお兄さんの稲本正さんが会長を務める「オークヴィレッジ」の一事業として展開していたものづくり教室だが、「森」と寄り添い、ものづくりの「楽しさ」を存分に味わってほしいという願いから、家具作りの事業とは別の事業体として独立した。以来、「森の自然学校」では、気軽に楽しみたい方から本格的に技術を学びたい方まで、さまざまなニーズに応える体験プログラムを展開。木工や漆塗り等、世代を越えてモノづくりの豊かさを体感できる場を提供し続けているという。なんと、小屋をまるごと施主と一緒につくることもあるのだとか。

「自分でつくる人を増やしたい」という稲本さん。その語り口や、娘の要望にも快く応えてくださったあり方からは、モノづくりに対する果てしない愛情をひしひしと感じ取ることができた。

あれこれ話をしながらも手を動かし続けていた主人から、「できました!」との声。ついに、耳付きスツールが完成!おぉ、かっこいいじゃないの。娘も一生懸命やすりをかけたガラガラ(写真で木のおうちの手前にある円筒状のもの)が完成し、ご満悦。おねえちゃんの手作りおもちゃで遊べるなんて、息子は幸せものだなぁ。手渡すと、さっそくふりふり、気に入った様子。

実はこれまでの旅の途中で、一度息子のガラガラを買おうとしていた私たち。そのときから娘は、「こなつがつくる!」と言い張っていた。こうやってプロの職人さんにサポートいただいて、旅の中で本当にかたちにできちゃうなんて、ただただ感動。モノづくりの楽しさ、喜び、豊かさ。そのすべてを、豊かな自然を感じながら、家族で存分に楽しませていただいた2日間。稲本さん、心から、ありがとうございました。この地での記憶がたっぷり埋め込まれたスツールもおもちゃも、大切に使わせていただきますね。

充実の2日間の余韻を味わいながら、翌日には世界遺産・白川郷も散策。岐阜の豊かな自然と歴史と文化をたっぷりと堪能し、夜には一路、滋賀方面へ。

次なる目的地は京都駅。娘が3泊4日のサマーキャンプへと旅立つ地。

新たなものがたりが、はじまります。









貴重な時間を割いて読んでくださったこと、感謝申し上げます。みなさんの「スキ」や「サポート」、心からうれしく受け取っています。