必読図書74選

経営がわかるマーケターになるための書籍74選

マーケティングって、本当に幅が広く、奥が深い。僕はいま46歳、マーケティングの世界で20年のキャリアを積んでますが、一日いちにち、仕事をするたびに、無知の知(自分が何を知らないのかを知ること)の地平線は広がるばかり。

でも、この世界、新たな知識を入れれば入れるほど、実践としての経験を積めば積むほど、「こんなクソおもしろい仕事はほかにない!」と思えるほど、刺激的で、魅力的です。

トライバルメディアハウスには、Tribal Professional Academy(通称:池塾)という実践講座があります。講師は私。隔週1回、全23回、1回1.5時間×2コマの勉強を1年間死ぬ気でやってもらう任意参加の通年プログラム。

コンセプトは、経営がわかるマーケター育成(裏目的はトライバルの幹部候補生育成)。即効性のある点としてのインプットではなく、3~5年後に漢方のように効いてくる骨太ハードカバーの本を読み、会社経営者としての僕とディスカッションを重ねる会。

第一期を2017年に行い、2019年4月から第二期(10人)を開校しました。で、せっかくなので、Tribal Professional Academyの課題図書として挙げている74冊を(数行の荒っぽいレコメンド文とともに)公開しようというのが本エントリー。

マーケティングの実務をやりながら、マーケティング会社の経営を12年やってきた経験から、マーケターとして知っておくべき知識と、経営者としての必須知識を両方(ある程度)カバーすることができるリストだと自負しています。

この世にある膨大な書籍の中から、タイミングや好みはあれど、だいたいこのあたりを読んでおくと損しないよと。

それでは早速いってきましょう。


1. 経営のリアル(ビジネス小説)

戦略プロフェッショナル

すべての理論は、現場で使ってナンボ。各論に入っていくと深い沼にハマりがちなので、まずは企業経営の現場を知ってほしい。それに最適なのが本書。長く読みつがれているビジネス小説は伊達じゃない。必読。

V字回復の経営

戦略プロフェッショナルの著者・三枝さんの著書。こちらも(クッソ)オススメ。田端大学ブランド人学部の課題図書にもなっていた様子。

戦略参謀

中~大企業の組織がいかにして腐り、個人のエゴや呪いによって衰退していくのかをリアルに描いたもの。戦略参謀の名の通り、経営企画室が主役の本だけど、創業経営者、二代目社長の葛藤やリアルが描かれていて自身も背筋が伸びた。

2. 企業経営理論

[新版]グロービスMBA経営戦略

経営理論はこれ一冊で良い!というくらいまとまっています。さすがグロービス。高いなどと躊躇するなかれ。3,000円の飲み会なんて一瞬で忘れるけど、この本は一生の財産になります。全ページ暗記パンで飲み込むこと。

成長企業の法則

成長戦略の良著って無いんですよね…。ちょっと癖がありますが、数少ない成長戦略をまとめてくれている本はこちらです。

マイケル・ポーターの経営戦略

あらゆるものがコモディティ化した高度成熟社会におけるマーケティング戦略とは、すなわち競争戦略です。緑色の原著は読むのが辛いので、こちらを読みましょう。

競争戦略が「競合をガチンコで殴り合って勝利すること」ではなく、「自社のコアコンピタンスを追求することで競争を無くしてしまうこと」(!)であることに気づき、感動するはずです。

ストーリーとしての競争戦略

500ページの超大作。「冗長で読みづらい」との声も多いですが、個人的には、競合から見たら「あいつらなんであんなことしてるの?バカなの?」と思われる「一見して不合理」にこそ差別的競争優位の源泉が潜んでいる、という視点にしびれました。長いけど、サラッと読めますよ。読んでみて!

経営は何をすべきか

完全にタイトルをミスってて、絶対売れてない本だと思うんですけど、経営者としてすごく良かった本。ミッションとは何か、社会的価値とは何か、従業員とはどんな存在か、などを学ばせてくれた良著。

ビジョナリー・カンパニー

知ってますね。読んでくださいね。知らないうちにすげーシリーズ化されてて4冊+アルファみたいになってるから、全部読んどきましょうね(そこら辺の新著読むよりこのシリーズ読んだほうがよっぽど得しますよ)

ハーバード・ビジネス・レビュー 2019年3月号[PURPOSE]

書籍じゃないですけど、これは読んでおいてほしい。企業は社会の公器。にもかかわらず、ビジョンの本は数あれど、ミッションに触れてる本って少ないんですよ。PURPOSEは、言っていることはほとんどミッションのこと。これからはミッション×企業文化の競争が本格化する時代だから、経営の視点からも、インターナルコミュニケーションの視点からも、ここはおさえておいてほしい。

マッキンゼー流 最高の社風のつくり方

社風は金を生むと断言していてむしろ清々しい本書。企業文化に近い「社風」に焦点を当てています。すべての「制度」は「風土」があって初めて機能しますからね。言語化が難しいものだからこそ、競争優位につながる。それが社風。

コーポレートガバナンスの教科書

「社長」や「常務」は会社法上、定められた法的な役職じゃなく、便宜上のあだ名だって知ってます?(笑)社長って一番偉いの?取締役会って何するの?監査役って何する人?など、いつも当たり前すぎてスルーしちゃうけど、実は経営上とっても重要なのがこのコーポレート・ガバナンス。他の本だと3秒で寝ちゃうけど、本書はめちゃくちゃわかりやすくまとめられています。この領域を学びたい人は躊躇なく本書へGO!!

3. 組織論① 組織構造論

グロービスMBA 組織と人材マネジメント

経営理論に続き、組織論も本書一冊でOK。暗記パンAGAINで全ページ摂取してください。

組織戦略の考え方

とはいえ、グロービスMBAシリーズは分厚すぎて辛い…という人は新書で全体感を掴みましょう。

人材マネジメント入門

こちらは、伝統的な人材マネジメント論のエグゼクティブサマリー版的位置づけ。ざっとサマライズしたい人はこちらでも可。

4. 組織論② 組織行動論

HIGH OUTPUT MANAGEMENT

組織戦略は、組織構造論+組織行動論+人的資源管理の3点セットなんですけど、組織構造論だけで動かぬのが生物である人間を扱う本学問の難しさ。組織行動論は、主にモチベーションやリーダーシップを学びます。教科書的な位置づけではありませんが、部下を持ったら、ないしは、部下を持つリーダーを複数抱える企業の組織マネジメントをするならば、本書を読まない選択肢はありません。しのご言わずに読んでください。

魅力的な組織を創るリーダーのための「自律」と「モチベーション」の教科書

「自律」―――。世界の経営者の永遠のテーマ、それが自律的社員。本書を読まずして、フラット型組織だ、ホラクラシーだ、ティール組織だなんて言わせません。

動機づける力

本当はね、動機やモチベーションなんて自分でなんとかしろよ、と思うわけですが、全員がセルフモチベートできないからリーダーなりマネジメントなり経営というものがあるわけでして。ということで、動機づけをキッチリ学ぶなら本書も必読です。

1分間リーダーシップ

SL理論(Situational Leadership:状況適応型リーダーシップ)の重要性と具体的方法を解説してくれている本。僕のリーダーシップの型は、ほぼこの本一冊でできていると言っても過言でないほど影響を受けました。必読。

5. 組織論③ 人的資源管理(HRM)

入門 人的資源管理

一般的に、「組織戦略」と聞くと、組織構造や動機づけ策をイメージする人が多いと思います。が、限られた(経営資源としての)人的資源をいかに最適化するかは、経営戦略上、とても重要なこと。具体的には、等級管理、キャリア開発、評価・昇給・昇格システム、福利厚生などなど。大学の教科書なので、キッチリと伝統的な理論が学べる一冊。

人事管理入門

いきなり分厚い教科書は辛い…という人は、日経文庫で全体を概観しましょう。1.5時間~2時間で読めます。

6. 組織論④ おまけ

NETFLIXの最強人事戦略

これはですね(人によると思いますが)クッソ良い本です。成長を志向するベンチャーは、どのような組織観を持つべきなのか、痛烈に教えられました。僕の指針をつくってくれた本。

7. 財務・会計

決算を読む習慣

文系のマーケターで、数字大好き! 決算書大好物! という人はほとんどいないですよね。まあ僕もそうでした。でも、これから経営者と会話ができるマーケターを目指すなら、決算書は読めたほうが良い。というか、日本人の「あいうえお」、料理の「さしすせそ」くらい基本中のキなので、とっととマスターしておきましょう。

財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)を勉強しようと、普通の本を手にすると、99%の確率で挫折するので、この本一択で学んでください。最高の良著です。

さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

さおだけ屋という誰もが知っているけど、どうやって儲けてるのか謎、という業態を例に、「儲かる」「儲からない」を会計学的にわかりやすく解説してくれた本。超大々ベストセラーとあって、本当にサラッと読めます。数字苦手!会計ツマラナイ!と思っている人は、まず本書を読んでみましょう。苦手意識がなくなります。

8. マーケティング論① マーケティング理論の変遷

[実況]マーケティング教室

マーケティングは、他の学問と比べると、圧倒的に歴史が浅い。それは、マーケティングが必要になった時代がつい100~200年くらい前からだったことに起因します。マーケティングは仮説の学問とも言われるように、成功と失敗の法則をスキーム化したり、フレームワーク化して発達してきたもの。だからこそ、マーケティングの歴史を時系列で学び、理解しておくことがとても重要です(未来は過去→現在→未来の同一線上にあるから)。

マーケティング1.0から4.0までの流れを一番わかりやすくまとめてくれているのが本書。マーケティングを勉強する人は、一番最初に読んでおきましょう。

9. マーケティング論② 戦略理論

マーケティング戦略[第5版]

マーケティング界隈はスピードが早いので、新刊がドバドバ出るわけですが、新しい情報を「点」で吸収するよりも、伝統的な理論を一度しっかり学んだ上で新たな情報を入れていったほうが良い。大量に存在するマーケティング理論をすべて網羅してくれているのが本書。

これから下記でも大量に紹介していく有斐閣(ゆうひかく)アルマのシリーズ。主に大学の教科書として使われているだけあって、伝統的な理論を学ぶのにピッタリ!本書も暗記パン対象なので、すべて体内に摂取して記憶・消化してください。

[改訂4版]グロービスMBA マーケティング

理論は有斐閣アルマで学び、今日的なフレームワークやケーススタディはこちらで、という分担が良いと思います。大枠の理論はこの2冊で十分。

10. マーケティング論③ 消費者行動論とSTP

消費者行動論(ベーシック+)

BtoCマーケティングで一番難しいのは、ターゲットとなる消費者がどのように考え、動くのかを予測すること。人間は感情を持った社会的動物なので、いつも合理的な判断で動くわけではありません。むしろ極めて非合理な思考と行動をとる。そんな難解な消費者行動を理論化してくれているのが、この領域。

当然、理論通りに動いてくれるほど消費者は簡単ではありませんが、予測が難しいものこそ一定のフレームで考えないと法則性が見いだせないとも言えるので、理論は大事です。読んどきましょう。

消費者行動論(有斐閣アルマ)

有斐閣アルマです。教科書なので、簡単ではありません。でも、これが「ザ・消費者行動論」なんです。逆に、本書を学べば、大学の学部生と同じ知識は手に入るんです。レッツトライ。

消費者行動の知識

上記2冊は自信ない…という方は、毎度おなじみ、日経文庫で全体を概観しましょう。2時間で読めます。

11. マーケティング論④ マーケティングリサーチ

マーケティングリサーチ入門

数字を扱うことから、リサーチにも苦手意識を持っている人は少なくないかもしれません。が、マーケターならリサーチからは逃れられません。統計や多変量解析などの難解な部分はスルーして、リサーチの目的、種類、効能など全体を把握しましょう。

心理マーケティングの基本

定性調査に絞った本。仮説の検証ではなく、仮説そのものをつくる定性調査がメインの人は、こちらの本の方が有益。インサイト、MROC(エムロック:Market Research Online Communities:オンライングループインタビューのようなもの)、グループインタビュー、デプスインタビュー、エスノグラフィーなどが学べます。楽しいよ。

インサイト

少し古いですが、インサイトを学ぶなら本書一択。この本を読むと「ああ、いままで違う意味でインサイトって言葉使ってたわー」となります。

12. マーケティング論⑤ 4P関連

デジタル時代の基礎知識[商品企画]

商品開発の世界って、驚くほど本が少ないんですよ。そんな中、2018年に出版されたのが本書。インサイト探索、アイデア出し、検証方法、競合分析、開発作業、テストマーケティングと、一連の流れを知ることができます。

製品開発の知識

上記の本もさらりと読めますが、より一層、サラリと行きたい人は、初心者の味方、日経文庫でどうぞ。

価格の心理学

製品開発同様、価格戦略も本が少ない領域。チャネルパワーがメーカーから組織小売業(チェーンストア)に完全に移行したことから、価格はメーカーがコントロールすることは絶望的にできなくなったわけですから致し方ないのかもしれません(あと理論化することがそれほど多くない領域とも)。とはいえ、価格は大事。利益の源泉。消費者との心理戦に勝利をするために本書で学んでおきましょう。

値上げのためのマーケティング戦略

「値上げのための」は釣りタイトルなのでスルーしてください。本書が言いたいことは、顧客の期待価値はなんなの? 我が社の商品・サービスは安売りしすぎなんじゃないの? ということ。事前期待のマネジメントをしっかりした上で、適性な価格をつけ、利益をつくりましょうよと。おもしろいです。

情報大爆発

ここからコミュニケーション論です。本書は2007年に出版された本で、ちと古いんですが、現在の流れは、ここから生まれたと言っても過言ではない歴史的転換点になった本だとも思うので、ざっと読んでおいてほしいぞと。AIDMAからAISASへ。という名言を残した歴史的一冊。

現代広告論[第3版]

広告は、なかなか「広告論」としての理論を学ぶことが少ないと思います。が、せっかくなのでこの機会に一度理論を勉強してみては。次から次へと出てくる新刊とバズワードに踊らされることが少なくなるかもしれませんよ。

明日の広告

こちらも2008年発刊と少し古い印象があるかもしれませんが、『情報大爆発』同様、いままでのやり方が通用しなくなってきた転換期に出されたもので、かついま現在でも広告業界のほぼすべての人が読んでいる名作中の名作なので、もし読んでいない人がいたらコッソリ、キッチリ読んでください。必読の書です。

パブリック・リレーションズ

厳密に言うと、PR(Public Relations)はマーケティング4P関連のカテゴリーではありませんが、便宜上、マーケティングコミュニケーションの中での紹介です。PRは、広告と違って専門書が少ない領域。だからこそ、しっかり教科書で学んでおくことをお勧めします。

影響力の武器

PR会社の人の必読書がこれ。人はどんなメッセージに影響を受けるのか、社会心理学や行動経済学とも隣接する「人の動かし方」がギッシリ詰まっています。ハードカバーで分厚い骨太本ですが、難解なことは書いていないのでアッサリと読めるはず。

戦略PR

初版は2009年とこちらも少し古いですが、「PR=伝統的なパブリシティ」という概念が一般的だった時代に、「(売れる)空気をつくる」という概念をつくり上げた金字塔的な本。まだまだ誤解している人が多い戦略PRをちゃんと理解し、「PR First, Advertising Second.」の効果を学んでおきましょう。

ブランドは広告でつくれない

PRマンが書いた本なので、若干PR原理主義に寄りすぎている感は否めませんが、広告でできることとできないこと、PRの強みを理解するには最適です。本書一冊ですべてを理解したとは思わないように注意しながら、ひとつの切り口を学んでください。

流通チャネルの転換戦略

広告・広報・マーケティング畑の人は、意外とチャネル戦略に疎いことが少なくありません。ですが、ECにせよ、リアルチャネルにせよ、商品を販売するためには必ず「チャネル(販売経路)」が必要です。

組織小売業(チェーンストア)の台頭とともに商店街と卸売業が衰退し、巨大なバイイングパワーに合わせた流通チャネル政策が中心になりました。一方、これからAmazonや直販ECの売上比率がさらに上昇していく中で、メーカーはどのようなチャネル思想を持って戦略を構築していかなければならないのか。過去、現在を学び、未来を見通す力を養っておきましょう。

流通・営業戦略

お約束の流通・営業戦略の有斐閣アルマ本。少し難しいですが、メーカーと小売業の製販同盟における共同商品開発やPB戦略なども解説されていますので、この領域を深掘りしたい人は手にとってみてください。

13. マーケティング論⑥ 効果測定論

[新版]目標による広告管理 DAGMAR

永遠のテーマである効果測定論。本当に良著が少ない。そんな中、この本はとっても良い本!なんですが、絶版かつAmazonには中古も売っていない状況。もしAmazonやBook Offで見つけたら即買いの一冊(たぶんプレミアム付いてて高いけど)

刺さる広告

ハードカバーで分厚く、かつ読みにくい本ですが、数少ない効果測定本の中では有益な一冊。上司から「キッチリROI測定しろやゴルァ!」とプレッシャーを受けている人は読んでみてください。すべては解決しませんが、一定の解は与えてくれるはず。

14. マーケティング論⑦ 店舗・売場理論

インストア・マーチャンダイジング[第2版]

チャネル同様、売場に疎い広告マンは少なくない。年間売上1兆円、直販EC大成功中のユニクロですら、EC売上比率は10%の1,000億円。残りはリアル店舗で販売されているわけです。ということで、店頭大事。マーケットシェア(市場占有率)は、チャネルカバレッジ×インストアシェアで推計できます。

インストア・マーチャンダイジング(ISM)は、インストアシェアや店内でのカテゴリーマネジメントにおける科学的な売場づくりの効果を教えてくれます。店頭フェチの僕にはたまらない一冊。これを読んだら、もう普通の目でスーパーやコンビニで買い物できなくなること請け合いです。

なぜこの店で買ってしまうのか

店頭というのは、ここまで科学的に設計されているのか! と目からウロコが1,000枚くらい削げ落ちる一冊。上記インストア・マーチャンダイジングとセットで読んでみることをお勧めします。後悔しませんよ。

15. マーケティング論⑧ ブランド戦略

ブランド戦略論

マーケティング≒ブランドマーケティングというくらい、マーケティングとはすなわちブランドマーケティングです。ブランドとは何か、どのような構成要素によってつくられているのか、どのように価値を上げるのか、などについてしっかり理論を学んでおきましょう。

ブランド戦略シナリオ

ブランドは文脈(コンテクスト)によって形成されているという視点でまとめられた本。電通の石田さんと、一橋大学の阿久津先生がコラボした実践×アカデミアが融合した良著。本書で紹介されているアセロラドリンクのブランドコンテクストマップは秀逸すぎて感動をおぼえます。

ブランディングの科学

従来のセオリー(99%のマーケターが信じる理論や経験則)は、そのほとんどが間違っている!という刺激的な主張の本。商品ごとのユーザー属性はほとんど変わらないからターゲティングし過ぎるのはダメ、ターゲティングしすぎると効率はよくなるが対象が狭くなりすぎるので獲得単価が上がる、ほとんどのブランドの売上は(ロイヤルカスタマー)ではなく、新規顧客やライトユーザーによって支えられているから、ロイヤルティマーケティングは無意味、など真左の理論を繰り広げます。

この世界、何が正解なのかは、自分自身の頭で考え、導き出すしかありません。どちらの主張も頭に入れた上で、自分の考えをまとめましょう。

16. マーケティング論⑨ リレーションシップ・マーケティング

ONE to ONEマーケティング

バブル崩壊による景気後退、新商品を新規顧客に売るプリマーケティングの一巡、IT分野の技術革新と低価格化、インターネットの商用化などが重なった1995年に発刊された(たぶん)世界初のONE to ONEマーケティング本。この本を転換点として、マスマーケティングからONE to ONEへ!という大きな潮流が生まれた気がします。

古い本ですが、1995年にタイムスリップした気分に浸りながら、時代が大きく変わろうとしていた当時の風景に思いを馳せてほしい一冊。

パーミッション・マーケティング

マーケティング界のカリスマ、セス・ゴーディンによる著書。初版は1999年。ONE to ONEマーケティングの隆盛によって、企業がユーザーのメアドを大量に収集し、ONE to ONEの名のもとにメール攻撃をしかけまくり、誰もが疲弊していた時代に登場した概念。

相手に連絡を取る際は、ちゃんと相手の許諾(パーミッション)を得てから送りましょうね、というもの。

ちなみに、この概念が流行ってから、どこの企業も「メール送って良いかどうかのチェックボックス」を用意したり、メルマガを登録する際に「どのカテゴリーに興味がありますか?」とパーミッションを獲得するようになったものの、本書が提唱する「パーミッションとは一度取ったら良いものではなく、取り続けることが重要なのだ」という肝心なところをすっ飛ばして言葉だけが先行してしまったことが残念でならない。

ONE to ONEマーケティングと合わせて、(買ってもらうまでの)マスマーケティングから(買ってもらってからの)リレーションシップ・マーケティング(CRM含む)へマーケティングコンセプトが移行した時代を旅してほしい2冊。

CRMの基本

CRM導入企業の95%が「我が社のCRMはうまくいっていない」と回答している事実はあるものの、これからのキャッシュレス化社会の中で、より一層「ポイント経済圏」を主軸としたCRMの概念はアタリマエ化していくでしょう。ということで、ONE to ONEなCRMによるLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)最大化を理解するために、しっかり基礎をおさえておきたい一冊。

17. マーケティング論⑩ サービス・マーケティング

真実の瞬間

国の産業構造は、経済社会・産業社会の発展によって、第一次産業から二次、三次産業へと高度化していきます(ペティ=クラークの法則)

日本も、いまやサービス産業(第三次産業)が全体の70%を突破しています。となると、製造業(第二次産業)を中心としたマーケティングで良いわけがありません(サービス業には、製造業とはまったく違う特性があるわけですから)。

サービス業において価値が創出されるのは、サービス提供者が(買い手に)サービス提供をする(価値がつくられ、交換される)瞬間であると既定し、その瞬間を「真実の瞬間」と呼んだのが本書。

1990年初刊発行の古い本ですが、歴史的転換点にもなった本なので、ぜひ原著で読んでほしい一冊。

ザッポス伝説

Amazonが心から欲しがった靴の専門EC、ザッポス。彼らの何がすごいのか。それは、「真実の瞬間」が(神話になるくらい)スゴイのです。読むべし。

顧客はサービスを買っている

タイトルはこれなんですが、キモは「事前期待のマネジメント」です。人は、超絶ウマいと言われている高価なフランス料理店で、おいしい料理を食べても死ぬほどの感動をしてくれません。なぜなら、事前期待が高いからです。逆に、すごく不潔で、美味しくなさそうな中華料理店に入ったら、水にうっすらレモンの味がしたら「やるじゃん親父!」となる。

つまり、顧客満足は、事前期待と事後評価のギャップで生まれるから、事前期待のマネジメントが大事だよ、ということを説いてくれています。事前期待が低すぎると買ってくれない、高すぎると買ったあとの満足度が下がる。永遠の課題です。

顧客の信頼を勝ちとる18の法則

「顧客の要望を自社製品で解決することができないのなら、競合製品をお勧めしろ」。これは、アドボカシー・マーケティングが提唱する概念です。

本書は、下記の著者、グレン・アーバン教授に師事した山岡氏が、書き下ろしたBrand Advocates(ブランドの熱心な支持者)をつくるための方法論です。

良著なので、ぜひ読んでほしい一冊。

サービス・マーケティング入門

ここまで紹介した本はどれも辛い…という人は、お約束の日経文庫でどうぞ。2時間で読めます。

サービス・ドミナント・ロジック

「この世には、2つのものがある。モノを伴うサービスと、モノを伴わないサービスだ。すなわち、どちらもサービスなのだ」というサービス中心の考え方(サービス・ドミナント・ロジック:SD-L)。

これからのマーケティングを考える上で、SD-Lはぜひとも学んでおいてほしい概念なんですが、いかんせん難しい。

この本とか、眠れない夜にピッタリの一冊です(3分もたない)。ということで、下記2本の論文を読み、興味が広がればネットの論文を漁って読んでみてください。その方が理解が早く深まります。

SD-L関連論文:製造業のサービス化

SD-L関連論文:文脈視点による価値共創経営

18. 社会学

社会学のエッセンス[新版補訂版]

マーケティングの大きな仕事として「消費者理解」があります。消費者がどのように思い、考え、行動するのか、を知るためには、消費者行動論や行動経済学が有効ですが、「人間は感情を持った社会的動物である」「社会の最小単位は家族である」などの言葉がある通り、消費者は社会の中で生きる社会的動物なので、社会を知ること、つまり社会学を学ぶことは、マーケターとしての必修科目であるとすら思えます。お約束の有斐閣アルマで理論をキッチリ学びましょう。

本当にわかる社会学

まあぶっちゃけ、有斐閣アルマの本は難解です(初心者にはとっつきづらいでしょう)。そんな人の味方が本書。比較的平易に社会学が学べる一冊です。

19. 社会心理学

複雑さに挑む社会心理学[改訂版]

社会学と心理学と社会心理学の違いってなんなのさ!を説明すると大変なので割愛しますけども、社会学が社会そのものを学ぶもの、心理学が人間個人の心理を学ぶもの、社会心理学は、個人が複数集まって、社会を形成した際に起こる人間心理の影響、といえましょう。

たとえば、個人的に「なにこれ、いらねー!」と思っていたものを、周囲の人みんなが「なにこれすごい!ほしい!」と言うと、自身の主張を隠す、または主張が変わる、なんてことが起こります。これも社会心理学の領域。

ほとんどすべての人は複数の社会をまたがりながら社会的生活を送り、その中で様々な喜怒哀楽、悲喜こもごも、数多くの意思決定をするわけですから、社会心理学は必須の学問であるわけです。有斐閣アルマで理論を学びましょう。

社会心理学キーワード

本書は、順を追って理解を深めていく教科書的構成ではなく、注目キーワード別に理解を深めていく方式をとっています。興味がある箇所だけ、つまみ読みができるので、お好みでどうぞ。

結婚の条件

マーケターとして駆け出しだった20代の頃、社会学にハマったとき、日本において「結婚」という概念や契約がもたらす社会的コンセンサスや幸福感たるやハンパなくおもしろいな!と、研究に没頭したことがあります。

モテる・モテない、イケメン・ブ男、美女・ブス、金持ち・貧乏、社長・平社員、20代・40代、恋愛、既婚・独身、釣り合い、上方婚・下方婚、勝ち組・負け組、恋愛結婚・見合い結婚、初婚年齢、29歳の焦りと39歳の焦り、結婚ゴール、一発逆転、カネをカオの交換、仕事か恋愛か…。ほんとね、社会学、社会心理学を学ぶなら、結婚観を勉強するの、本当におもしろい。中でも本書、とにかく景色が変わるから読んでみて!

負け犬の遠吠え

発刊された当時、「わかる!派」と「ふざけんな!派」で地球が二分されることになった話題の本。産業構造の高度化→都市化→核家族化→女性の高学歴化→女性の社会進出→女性の晩婚化と非婚化→女性の晩産化と非産化、生涯未婚率の上昇といった社会構造変化が社会に顕在化してきた2003年に「負け犬」という(あえて)刺激的な社会記号を引っさげて発刊された本書。女性の人生設計の中で否応にも時間軸を意識せざるを得ない妊娠・出産、そのための結婚を、どのように捉え、準備し、人生を設計するのか、ウェディング業界かどうかなどまったく関係なく、人間の感情と葛藤を学ぶ最良の一冊。

20. 日本の社会構造

これらのこと、即答できますか?

日本の世帯数は? 世帯あたり人員は? 一人暮らし世帯と夫婦+子ども二人世帯はどっちがどのくらい多い? 日本の生産年齢人口は? 65歳以上の人口は何人に一人? 日本の世帯年収の平均値・中央値・最頻値は? パラサイトシングル数は? 日本の男女別平均初婚年齢は?(都心部での平均初婚年齢とどのくらい違う?) 生涯未婚率はいま何%?(2025年には何%?それって何人に一人?) 年間の出生数は? 合計特殊出生率は?

これら全部、社会構造に関連する話です。そして、これらは10年スパンでの推移を知っておく必要があります。なぜなら、それが日本消費社会を知ることだから。

人口動態や世帯推移は、国が様々な統計を出してくれているので、それらを定期的にチェックするようにしましょう。代表的なものの最新版はこちら。そろそろ平成最後の30年版が出るはず。

平成29年版 厚生労働白書

21. 行動経済学

予想通りに不合理

社会学で、人間は感情を持った社会的動物であることを学ぶわけですが、同時に人間とは極めて合理的で、かつ非合理な生き物なわけです。普通に考えればAが得なのに、Bを選ぶ。口ではCと言いながら、実際はDを選ぶ。そんなことは日常茶飯事です(だから、すべての情報が頭に入っている完全競争市場において、人間は常に合理的判断をする、という経済学は、マーケティングでそのまま使うことはできません)

人間はときに非合理的な判断や行動をとる、ということがわかっているからこそ、そのパターンを知ることができます。それが行動経済学という学問。この世界を学び始めると、「そうそう!あるある!」とおもしろくて仕方がなくなります。本書は、行動経済学を学び始めるために、最適な一冊。

経済は感情で動く

こちらもベストセラーとなった本。ヒット商品がどのように生まれるのか、大衆心理も含め、学ぶことができる一冊。『予想どおりに不合理』とあわせて読みたい一冊。

図解雑学 行動経済学

図解雑学シリーズ。文字ではなく、チャートや図解で理解したい人にはこちらがお勧め(上記2冊は文字だらけなので笑)

マンガでわかる行動経済学

図解じゃなくマンガじゃなきゃ無理!という人はこちら。かわいいイラストで人気理論を学ぶことができます。

22. 起業論

起業の科学

大企業の社内ベンチャーや、スタートアップにおける起業が増えています。社内ベンチャーやスタートアップの場合、プロダクトを企画・開発し、グロースさせることが(ほぼ)経営そのものですから、その成功確率を上げるための学習は生存をかけた戦いです。

ベンチャー論の教科書を読んでもベンチャー経営の成功確率を直接上げることは難しいですが、本書は(いままであまりなかった)プロダクト企画のフレームワークを、ものすごくわかりやすく、簡潔にまとめてくれているため、これからプロダクトを軸に起業したいと考えている人は必読の書です。

本書を読めば必ず成功できるわけではありませんが、本書を読まず(使わず)起業することは大いに失敗確率を上げる要因になり得ますので、必ず一読し、大いに活用することを強くお勧めします。

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とりあえず以上です。

「何が74選だ、多すぎだろ○ね!」という声が聞こえてきそうですが、どれも良著なので、まあ読んでみなYO!!

「これも必読では?」というオススメがあれば是非ともコメントください。毒味してから追加を検討させていただきます♡

良い旅を!

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