ゼロイチ

0→1か、1→10か、10→100か、自分のポジションを見極めろ

ゼロイチとイチジュウ

よく、0→1(ゼロイチ)か、1→10(イチジュウ)か、って話あるじゃないですか。何もないところに新しい何かを創り出すことが得意か、その種を大きく育てることが得意かってやつ。

”0→1の人”は、無を有にする斬新な着想や想像力、初動の馬力がいるところの突破力が強い反面、腰を据えて継続することが不得手。一方の”1→10の人”は、新しいものをつくり出すことは不得手だけど、そのかわり腰を据えてうまくいくまで粘り強く継続することが得意、みたいな。

実はその続きがある

実は話はここで終わらない。1→10のあとに、10→100の人がいるのだ。たとえば、新規事業で考えてみましょう。

まったく新しい新規事業を立ち上げる際、最初に重要なのが、何をやるのかを決めること。アタリマエですね。

みんな『起業の科学』を読んで勉強していると思うんだけど、事業開発は、まずCPF(Customer Problem Fit)で顧客の課題を明らかにし、続いてPSF(Problem Solution Fit)でその課題を解決するアイデアを考えて、最後にPMF(Product Market Fit)として市場に投入して改善を続けながら顧客ニーズに合致するプロダクトまで落とし込むことをします。

こうやって書くと、このフレームワークを使えば誰でも再現することができそうに思うけど、当然、そんなに簡単な訳がない。仮に、CPFでかなり明確に顧客の課題を整理・抽出することができたとする。でも本番はここから。その課題を解決するアイデアを考える必要がある。ここは論理的に導出するものではなく、完全にクリエイティブな世界。つまり、”0→1”の人が最も得意とする仕事。

0→1(ゼロイチ)の仕事

”0→1の人”は、斬新な着想や想像力があるだけでなく、事業を始める際の一番重たいところを推進するパワーもある。自動車のマニュアル免許を持っている人はわかると思うけど、止まっている自動車って、動き始めるときが一番パワーが必要でしょ? だから一速ギアを半クラでパワーをかけるわけで。”0→1の人”はクリエイティブな一速ギア。『起業の科学』で言うPMFくらいまでに大きな力を発揮する人です。

1→10(イチジュウ)の仕事

”0→1の人”は、何回も繰り返されるPMFへの道のりで、だいぶ疲れてきます。このあたりから、”1→10の人”の出番がオーバーラップしてきます。MVP(Minimum Viable Product:必要最小限の機能に絞ったプロダクト)を改良しながら、なんとかPMFまで持っていかなければなりません。PMFまで持っていけば、そこでガバっとアクセルを踏むことができる。

バリエーションをつけてVC(ベンチャーキャピタル)から資本調達をするもよし、エンジニア、カスタマーサクセス、営業を増員するもよし。いずれにせよ、事業を加速させるタイミングです。このあたりから、”0→1”と”1→10の人”の活躍がオーバーラップし始め、後半に向かうにつれ、”1→10の人”の活躍が大きく事業伸長に貢献するようになる。

このタイミングでは、事業はまだ少人数のチーム。”0→1の人”(主に事業責任者であることが多い)、”1→10の人”(ゼロイチを補佐してなんでもやる人)、エンジニア、アシスタントの4~5人という状態。PMFが確認されたら(固定のユーザーが安定的に増加し始めたり、マネタイズが成功し始めたら)チームメンバーを増員し、10~30人チームにまで拡大する。このあたりまでは、複数の”1→10の人”が組織を引っ張っています。

10→100(ジュウヒャク)の仕事

ここからなんですよ、事業や会社って。事業や会社が成長すれば、当然、仕事を効率的に行うために、分業化が進みます。いままでは「一応、Webディレクターと言う名前がついてますが、まあ何でも屋ですよ、ハハハ」なんて言ってた組織も、例えばECなら、商品企画、生産管理、仕入管理、サイト管理、システム管理、カスタマーサポート、経理、人が増えるので労務、採用、急激に文化が崩壊して離職率が爆上がりするので人事企画、さらなる事業成長を考えて財務、広報……と、いわゆる一般的な企業の組織構造になっていくわけです。

ここで出番になるのが、ジュウヒャクの人。この段階では、事業や会社の8割以上の人が”10→100の人”になっているはずです。狭い領域の専門的な仕事を、粛々と、ミスなくこなしてくれる。一方、新しいことを考えたり、自分の担当領域以外の仕事も領域侵犯をしてマルチな動きをすることは苦手。でも、大きな売上を生む大きな事業は、多くの人が必要です。そのとき、安定的な運用のために必要なのは、”0→1”でも”1→10”でもなく、”10→100の人”というわけ。全員が”0→1”だったら、逆にミスが連発したり、運用が安定せず、会社がつぶれてしまいます。

ゼロイチが偉いわけではないが、希少性は高い

ということで、何が言いたいのかというと、必ずしも「”0→1”が偉いわけじゃない」ってこと。”0→1” ”1→10” ”10→100”は強みや機能であって、上下やヒエラルキーではない。だから、もしあなたが”0→1”や”1→10”じゃなくても、ぜんぜん卑下することはない。

ただし、労働市場の中で、どの人が希少性が高いかというと、それは”0→1”なのです。あくまでイメージだけど、0→1:1→10:10→100=1:9:90の感じだと思う。つまり、”0→1”は全体の1%、”1→10”は9%しかいない。

労働だろうが製品だろうが、市場というものは希少性が高いものほど価格が高くなるわけだから、当然、”0→1”の人は労働市場において高値で売買されやすい。”0→1”も”10→100”も仕事の尊さは同じだけど、希少性が違うのです。仮に、”10→100の人”がひとり退職しても、市場から調達することはさほど難しくない。ただし、”10→100”世界でも、トップレベルで仕事ができる人は存在するので、代替困難性(替えがききづらいこと)を高めれば、”10→100”でも希少部位に入ることは可能だ。

願望を混ぜず、己を知る

”0→1”の人が”10→100”をやっても、仕事が粗かったり、すぐに飽きちゃったりしてうまくいかない。”1→10の人”が”0→1”をやろうしても、斬新なアイデアやブルドーザーのような突破力を発揮することは難しい。

結局、己を知れ、ということだ。

ここで注意が必要なのは、”0→1”は華やかなイメージがあるからか、”1→10”や”10→100”の人から憧れのポジションに見えやすい。すると、自分は”1→10”なのに、もしくは”10→100”なのに、”0→1”ができる、もしくはできるようになりたい、と誤解したり、チャレンジしようとしてしまう。

志向することやチャレンジすることは自由だけども、餅は餅屋、あなたは世界に一つだけの花。自分が最も活躍できるフィールドで活躍することが吉だと、個人的には思う。

労働市場における自分の価値は、相対的に決定される。市場のニーズ、希少性、代替困難性だ。希少性や代替困難性を高めるためには(人より抜きん出るためには)自分の強みにレバレッジ(てこ)をかけ、加速的に成長しなければならない。弱みの場所で頭角を表すことは非常に難しく、頭角が現れなければ仕事も楽しめない。結局、自分の強みのフィールドを知り、そこで活躍する方が幸せだと思うのだ。

てことで、どのポジションだろうが、己のフィールドを見つけ、明るく楽しく元気よく働こうぜ!ということでおしまい。

PS

神まとめキタ!

(追記)
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