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認知症の母と沖縄移住 11 下見・生活物価

下見の期間中は、浦添市北部にあり、宜野湾市とも近接している格安コンドミニアム「もりもりランド」に拠点を置きつつ、周囲のスーパーに積極的に足を運びました。

朝食にシリアルやバナナ、ヨーグルト、カフェオレを採り、昼食には惣菜弁当を食べることで、あえてスーパーを利用する機会を設け、生活物価を把握しておくためです。

フルーツグラノーラを手に飲料コーナーに向かって、度肝を抜かれました。牛乳が1リットルではなく、946ミリリットル、米国統治時代のガロンの単位で売られていたこと……ではなく、値段が安いものでも240円、高いものになると、300円近くもしたからです。

東京下町の激安の殿堂では158円、近所のコンビニでも198円だというのに、コンビニよりも、40円近くも高いのです。

興味を引かれて、野菜コーナーをのぞいてみると、大根1本298円、ゴーヤー1本170円から200円、チンゲンサイが1袋138円、小松菜が1袋128円、もやしの小が48円と、東京下町の少々お高めのスーパーと同等か、それ以上の金額です。

沖縄は、食材や生活物価が高いとは覚悟していました。以前、八重山の離島に遊びに行った際に商店の棚に並んでいたキャベツが1玉500近くしていたことが、強烈に印象に残っていたからです。

船での輸送費がかかり、競争も少ないので値段が高くなりがち。頭では理解していたつもりでしたが、そうは言っても、沖縄本島であれば、離島よりも輸送費がかからないうえに、スーパーも全国チェーンと地元チェーンが競合しているので、価格もそれなりに抑えられるはず……。そんな期待を抱いていたのですが、もろくも打ち砕かれました。

食品の中でも、牛乳の価格はちょっとしたインフレ体験です。内地の製品ではなく、沖縄本島で生産している牛乳で、船での輸送費はかかっていないはずなのに、それでも240円以上。これはちょっとした衝撃でした。

私と妻は1日に5杯近くも、カフェオレを飲み、1度に3パック購入しても、二、三日もすればすぐになくなってしまうほど、牛乳の消費量が多いので、普段買っているものよりも、90円近くも高いとなると、年間ではかなりの支出増につながります。

下見期間中は、豆乳で代用することでやり過ごしました。しかし、いつまでも逃げ回ったり、物価が高いと嘆いてばかりいても、物事は少しも好転しません。移住直後から攻めに転じました。

東京下町の激安の殿堂と、お値打ちスーパーの値段を一覧表にまとめつつ、インターネットの情報や地元の人たちへの聞き取りで、安いと評判のスーパーを一軒一軒のぞいて、片っ端から値段を記録していきました。

宜野湾の海岸沿いにあるドンキホーテ、その向かいにあるイオン系列のビッグ・エクスプレス、そして地元チェーンで24時間営業の「丸大」、同じく地元チェーンで毎週土曜日に生鮮食品の特売を行なっている「かねひで」、業務用スーパーのAプライス……。

これらを回って、それぞれの店のお値打ち品をうまく組み合わせると、東京の下町のお値打ちスーパーとほぼ同じか、それよりも安い値段で販売していることがわかりました。

牛乳は215円(Aプライス)、大根1本151円(Aプライス)、チンゲンサイ1袋(60円)、小松菜1袋79円(ドンキホーテ)、もやし小37円(ビッグ・エクスプレス)、玉ねぎ1個37円(ビッグ・エクスプレス)、ネギ1本128円(丸大)、バナナ100グラム18円(かねひでの土曜日の生鮮食品特売デー)といったところです。

野菜の直売も安い。そう聞いて、JAの直売所ものぞいてみましたが、私が訪れた店では、にんじんとニラが格安だったものの、それ以外の野菜はかえって割高でした。

もう一つ、ユニオンという地元チェーンがあるそうですが、こちらは現金主義ということでした。私は普段、現金は持ち歩かない主義です。クレジットカードと家計簿アプリを連携させて、出費の記録を付けており、現金をATMから引き出すと、何に使ったかわからない使途不明金になりがちなので、ユニオンは除外しました。

宜野湾のドン・キホーテとビッグ・エクスプレスは、新居から自転車で20分から25分の距離にあり、往復すると、それなりの運動量になりますが、安く買い物ができて、筋力まで鍛えられる一石二鳥だと思って、楽しむことにしました。

沖縄では、面倒臭いので近所のスーパーで手じかに済ませてしまおうと思ってしまうと、急激なインフレに見舞われて、エンゲル係数が跳ね上がってしまいます。

これから沖縄本島への移住を検討されていて、生活物価を抑えたいという方はいっそ、宜野湾市に住むというのも一つの手ではないかと思いました。

ドンキホーテとビッグ・エキスプレスの両巨頭を短時間で効率良く回れるうえに、宜野湾トロピカルビーチも近いのです。ただし、普天間基地も目と鼻の距離にあり、軍用機が離着陸のために低空飛行をするので、その分、騒音は大きくなってしまいます。米兵も玉石混交で、規律意識の低い人がいて、時折、粗暴事件を起こしているので、治安への不安も高くなるでしょう。

実際に事件に巻き込まれるかどうかは、運と確率の問題なので、治安への不安はどうしようもありませんが、騒音対策だけを考えるのであれば、宜野湾市でマンションを借りる場合には、ドンキホーテとビッグ・エクスプレスの真近くは避けて、浦添市と境界を接する南部がお勧めです。

イオン系のビッグ・エキスプレスは、那覇市小禄や南風原町津嘉山、西原町小橋川、南城市佐敷津波古、業務用スーパーのAプライスは、浦添市勢理客や那覇市壺川にもあります。こうした格安スーパーへのアクセスから逆算して、物件探しを進めていくと、長期的に快適な移住生活を送れる可能性を高められます。

物価を把握するうえでは、中食と外食も欠かせません。下見期間中、お昼は弁当屋さんも良く利用しました。

沖縄は、共働きが多いためか、お弁当文化が発達しているようです。もりもりランドの近くにも、ワンコインで販売している弁当屋さんがありました。

日替わり玄米弁当の「うりずん」。

玄米に野菜たっぷりで彩りも鮮やか、スープまでついて500円。浦添市内の北部であれば、配達もしてくれるというから至れり尽くせりです。

沖縄には、400円や300円のお弁当屋さんもありますが、格安のお弁当屋さんは得てして、肉と揚げ物が多いので、白と茶色と黄色で、緑と赤が見当たりません。野菜が高いので、値段を抑えるためには仕方ないのかもしれませんが、その点、「うりずん」は野菜が豊富で健康に優しいのが嬉しいところです。

浦添市内の郊外でお昼に外食したこともありますが、600円代後半から800円代と、東京の下町とほぼ同水準。ソーキそばの(中)単品が700円というところもあり、あまり安さは感じられませんでした。

夜は毎日、決まった居酒屋に通い続けました。料理が美味しく、値段も手頃で、おかみさんがまかないを持って、テーブルにやってきて、一緒にお話をしながら食事をするというスタイルが気に入っていました。

夫婦二人でたらふく食べて、それぞれ酒を3杯ずつ飲んで、安い日で4500円、高い時でも7000円。オリオンの生ビールが中ジョッキ1杯380円、大ジョッキ1杯480円ということもあって、お安く抑えることができました。

お店の名前は、居酒屋「かよい船」です。浦添市北西部と宜野湾市南部を拠点に物件探しをされる方には、お勧めのお店です。

物価についてはあくまでも感覚値ですが、浦添・宜野湾エリアは、家賃の相場では、東京下町の6割から5割程度、生活物価は東京の下町並みかそれ以上です。習い事の月謝は、私は沖縄三線、妻はフラメンコを習っていますが、いずれも東京下町の半額、グループホームの月額費用は、東京下町の7割程度となっています。

土地の値段と人件費は安いので、家賃とグループホームの利用料と習い事の費用は大きく抑えられるものの、生活物価は東京の下町並みかそれ以上かかりそうです。

沖縄の給料は、東京の半分とも3分の1とも言われていますので、若くして沖縄に移住し、沖縄の企業で働くとなると、かなり苦しい家計のやりくりになりそうです。

移住するなら、沖縄の企業で働くよりも、個人事業主となって、内地や海外の人たちを顧客にして、彼らから売り上げを得る方が、経済的にゆとりのある生活を送れそうです。

自営に踏み切る勇気がない場合には、20代から40代は出稼ぎだと覚悟を決めて、東京で20年、30年、頑張って働いて貯蓄に励んで早期退職する、あるいは、定年を機に移住というのも王道だとは思います。

若いうちに楽しみを収穫できないことや、いざ退職をしようと思ったところで、自分自身や家族の健康問題などで夢を叶えられないというリスクもあるので、判断が難しいところです。

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