「九州Heaven Ride」という天国

招待制プライベート・イベント「九州Heaven Ride」を知る人は相当のマニアか変態だ。

毎年12月第一週週末に行われる。

例年、走行距離・約120~130Km 獲得標高3000m程度を走る。しかも、全走行距離の30%以上がオフロード(未舗装路というより悪路)なのである。そこを、ロードタイプ自転車で走破するrideイベントだ。脚に自信が無いと出場する気にならない。無謀にもほどがあるが、そういう企画なのだ。
しかもグループ全員でチェックポイントを制限時間内に通過して、全員でゴールしなければならない。これをジェントルマン形式と呼ぶ。

スタートは3分おきに20チーム。最後のスタートは1組目の60分後になる。だから脚力の強いチームは後半にスタート。女子Onlyチームは前半スタートになるように主催者が配慮する。
序盤は、様々な景勝地を周るのでスピードの速いチームはどんどん前に行く。
しかし、長丁場なのでそう簡単に優劣がつかないのが「九州Heaven Ride」の面白いところだ。

ルートMAPは直前にFacebookで配信される。そのデータをサイクルコンピュータに事前にインストールして走るのだが、コースの事前下見は禁止されている。要するにぶっつけ本番なのだ。もちろんGPSがその日、正確に作動するとは限らないし、分岐や曲がる地点の判断を間違えて、ミスコースをする事が多い。そうするとロスは10分以上、酷い時は30分以上もロスをする場合がある。脚の速いチームも、順位がカンタンに逆転してしまうのだ。コース選択が正確に出来るかは、頭脳明晰さや、冷静さ、そしてルート勘という地図認識能力や経験がものを言う。脚力や瞬発力だけでは完走出来無い。

(旧国鉄宮野原線・廃線跡トンネル・電気を入口で点けて出る時に消灯する)

もっとも重要なのは、パンクやメカニカル・トラブル(チェーンが切れたり等)などアクシデントがある場合にどう対処するかだ。基本的には自分で治す。そもそも、治せる人が出場している。チーム員の一人でも欠けると完走にはならない。だからみんなで助け合って走る。同じチーム員でなくても、他チームでも窮地の時は関係なく助け合って走るのだ。なんせ12月の山間部は晴れていても極寒である。困った時はお互い様。この世知辛い世の中で素晴らしいし、感動的でもある。九州という地域性もあると思うが、我関せずと、眼が三角になっている人はいない。ある意味で良識のあるド変態が集合しているのだ。

過去の「九州Heaven Ride」2014は伝説と化している。積雪スタートで始まり、ゴール前の阿蘇大観峰では、ダイヤモンドダストであった。Eyeウエア(ロード自転車用サングラス)の鼻の付け根部分のウレタン・ゴムが硬くて痛いな、と思っていたら凍っていた。夕陽の先の気温が表示される道路標識を見たらなんと「-2度」(驚)

丘陵を走り抜けている時、夕陽が山の向こうへ沈むのが見えた。ダイヤモンドダストと夕陽の混ざり合う風景は、感動的でさえあった。ほんの一部だけ露出している顔は、凍傷になりそうだった。心の中では何故かユーミン「ブリザード」が流れた。昭和世代の出場者も結構いる。

(残雪の江戸時代・参勤交代石畳。諦めて担ぐ。この頃には疲労はピークに)

チェックポイントは三か所。補給食や温かい飲料もある。主催者側のもてなしも素晴らしい。主催者の松崎さんは、オートポリス3時間自転車ロード耐久レースでチーム優勝のタイトルホルダーでもある。地域から補助金を貰ってるわけでもなく、スポンサーが付いているわけでもない。ボランティアの人達で成り立たせているのも、松崎さんの人柄だろう。阿蘇の大噴火や熊本大地震の苦難を超えて、毎年開催にこぎつけているのは、物凄いとしか表現できない。しかも参加チームは毎年増え続けている。今年は何チームになるのだろうか?

2014年。すべて時間制限をクリアした我々は、なんとかゴールしたのだった。完走6チーム中ぎりぎり6位(たしか最高平均年齢だと思う)これが、変態イベント中毒の始まりだったのだ。あれから毎年出場をし続けている。陽も沈む頃、みんなで肩を組んで並列走行ゴールをすると、言葉にならない達成感を感じた。

「人間は、キツくてつらい出来事ほど記憶に残る」これは元ホンダ技研副社長・元セガ会長の入交氏の言葉を記憶しているが、まさしくその通りだと思う。

(この写真は、九州Heaven Rideよりいただきました。感謝)

あの綺麗な景色を見る為に、なぜ苦難への道へ臨まなければならないのか。
この星の人間と言うやつは実に不思議な行動をする生き物である。
もし、挑戦する機会があなたにあるのであれば、その時は既にもう「こちら側」の特異な生命体であることは間違いない。元に戻ることは無いだろう。だからと言って、嘆く事のほどでも無い。自分がド変態であることには気がつかなくなっているだろうから。

毎年このイベントが終わると「ああ今年も頑張ったな。生き抜いたな」と感じてNHK「ゆく年、来る年」を見るのだ。今年もそうなるのであろうか。

それにしても「九州Heaven Ride」と言う名前。天国に近いからHeavenなのか。それとも地獄を見る前にHeavenを見るからか。Heavenとは天国に逝ってしまうからなのか。誰もそれを知る者はいない。



■ロードバイク アドベンチャーで検索されて読んで頂いた方へ。以下のマガジン登録をされると便利です。





この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

最後まで読んで頂きありがとうございます! また覗きにきてくださいね スキ♡を押していただけると励みになります コメントをいただけると嬉しいです 感想をツイートして頂ければもっと嬉しいです ありがたいなぁ。よい日をお過ごしください。

うう。涙脆くなりました
2

【Road bike adventure】

【ロードバイク・アドベンチャー】とは、子供のように道なき道を「どこまでも自転車で走りたい」オトナの冒険。 https://www.instagram.com/roadbike_adventure/ どこにも無い「ロードバイクだから感じられる大自然の満喫」を写真や動画を交...
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。