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企業に人柄を感じた日 #IKEUCHIORGANIC 今治訪問

穏やかな陽気だった。白い工場を見上げると空はどこまでも青かった。そして爽やかな風がボクを通り越して行った。これは日記である。それ以上でも以下でもない。


1:会社の人相

企業人なら誰でも「会社が●●って言っててさぁ・・・」というフレーズを聞くと思う。だけど「会社はヒトでは無い」ので「会社は喋らないです」と突っ込みたくなる。

「会社が●●って言っててさぁ・・・」という「会社が主語」になる場合は、個人が会社の犠牲になる時であって、「自分が言ってる訳じゃなくて・・・」という言い訳や、「諦めてください」を滲ませる時に聞く場合が多い。

だから「会社は喋らないです」(あなたの意見でしょ)と言いたくなるのだ。しかし殆どの場合「そうですねぇ」とか「仕方ないですよねぇ」と受け答えをするのが、古くて大きい会社の「コミュニケーション手順」(儀礼プロトコル)として確立している訳で、まずは受けとめる事が大事だ。しかしスタートアップ企業や、スモール企業でそんな事をやっていたら、チームは崩壊してしまうし、そもそも論でそんな項目は無い。

企業や組織には様々な顔があって、それは人相のように滲み出る。「神は細部に宿る」とは工業意匠の世界から広まった標語だけど、企業にも人相があり、それは「神は細部に宿る」と通じていると思う。


「神は細部に宿る」とは、20世紀のモダニズム建築を代表するドイツ出身の建築家・ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe)が「God is in the detail」と言った時から始まった。「ディティールにこだわってこそ、作品の本質が決まる。細かいところにまで気を配らなければいけない」という意味。言い換えると「物事を大きく見て、小さな事をおろそかにしてはダメ。細部にこそ人生の真実や、宇宙の真理が示されている。だから「神は細部に宿る」がわかる人は、本質が解かっている」と言える。


アル中で酒浸りのヒトの人相は、酒に塗れた顔つきになるし、スポーツ選手は、スポーツの持つ爽やかさと厳しさが潜んだ顔つきになる。40歳を超えると、人相はそのヒトの人生を表している。だから人相は大事だと思う。

広告会社時代から様々な企業を訪問してきた。仕事には「相手が何を望むのか?」は大事な基本情報だけど、数字や言葉だけでは「言い表せない何か」があると知った。


例えば、スズキ自動車の浜松本社工場の会議室は、体育館みたいな会議室で、業者は普段はそこで打ち合わせを行う(特別な場合は除く)ひとつひとつのテーブルには、長ーい10mくらいの蛍光灯の線が高い天井から垂れ下がっている。全体を照らす光は無い。入口で担当者が来るまで立って待っているのだけど(長椅子も無い)、壁には「今月の歩留まりランキング表」とか、下請け協力会社の成績表が貼りだしてある。全員が、それを見ながら待つ仕組みになっている。そこには「ミスや間違いは許さなぞ!」と「徹底した原価管理なケチっぷり」が彼らが信じている事だと可視化されている。まぁ対比したかった訳であって、別にDisりたいのでは無いから、スズキの人相については割愛する。


温かい、冷たい、理屈で動く、感情で動く、信念で動く。どれもヒトが起点で、人相とリンクしている。これが実は、一番大事な情報で、相手が「何を望むのか?」の「決定軸」を見定める事に大いに役立つ。例えば、競合プレゼンで勝負がつくのは、紙一重で勝敗が付く事が多い。それは「企業の人相」を見極めが出来たかどうか?で決まる。そう言っても過言では無い。

つまり「相手の役に立つ」の中にも「神は細部に宿る」があるわけで、企業や組織の深層や底流に潜む「何か」を感じる事が一番大事だと、無意識のうちに学んできたのかもしれない。

#IKEUCHIORGANIC  工場本社の門から入ると、左手にオフィス、正面に白いファクトリーがある。黄色いマークを見上げると、青い空に白地の壁に浮き上がっていて、気持ちいい風がボクを通り越して行った。


ああ「爽やかな風」みたいに清々しい人相だなぁ。


あとで「イケウチ 風」で検索してみた。神は細部に宿っていた。タオルは風で織られていた。




2:社会人の育ち

ヒトには出自がある。「どこの町で育ったのか?」とか「どこの学校で学んだのか?」とか「どんな部活をしていたのか?」とか「どんな家庭で育ったのか?」とかだ。恵まれておっとりと育った「金持ちケンカせず」な出自もあれば、極貧で雑草のように踏まれて、他人に翻弄されてタフに育ち「憎まれっ子世にはばかる」な出自もある。

ボクはサラリーマン家庭に育ち、両親の親(つまり祖父母の代)が比較的裕福だったので、お金に苦労した記憶は無い。しかし、ボスニア戦争並みの家庭内紛争が泥沼化して、常に内戦が絶えなかったので「覚めた子供」として「斜に構えて見る」育ち方をした。それは、酔っ払いったダメな大人を見る子供のようだった。

社会人として15年近く居た広告会社は、とても素敵なヒトが多くて、自由で、のびのびとした会社だったが、その中では極めて”〇くざ的”な部署からスタートした。だから、生き残るのが大変な試練に揉まれたのか、それとも元来の「株屋の相場師家系」の気質が蘇ったのか、「斜に構えて見る」に「マーケティング視点」が加わってしまった感がある。プレゼンでの、マーゲット事象の比喩なども、細かい所で表現が汚いし、企業人としてはエリートでは無かったので、「会社員としての育ちは悪い」方なのだ。

言うまでもなく「会社はヒトで出来ている」ので、ひとりひとりの「社会人としての育ち」は、会社の空気を大きく変えるほどの「パワー」があると思う。

 IKEUCHI ORGANIC 株式会社さんは、池内タオル株式会社さんとして 1953年(昭和28年)に創業して、リーマンショックで問屋さんからの連鎖倒産を経て現在に至る。さぞ海千山千の”タフな代表”なのだろうと、以前は想像していた。

お会いして、ニコニコした小さい目は、さんさんと輝く今治の太陽を浴びて輝いていた。そして、すくすくと育った”みかん”のように柑橘系な、穏やかな元オーディオ専門家だった。


「社会人の育ちが良い」なぁ。


人にはそれぞれ、人生の演ずる役割がある。役に恵まれて演ずるヒトもいれば、なかなか花の咲かない人生もある。一概にどれが良いとは言えないけど、上司に恵まれて健やかにスタートした人生は、羨ましいと思った。そして、自分が広告屋気質の”薄っぺらい”感が出ている事に気が付いて、恥ずかしくなった。社会人の”育ち”は、なかなか変わらないのかもしれない。

池内さんは、きちんとした大きな会社の豊かな土壌で育った温かい”お人柄”だった。

池内計司(いけうち けいし)
1949年愛媛県今治市生まれ。一橋大学卒業後、松下電器産業(現パナソニック)入社。松下時代はオーディオ事業で活躍。世界的名機「Technics」ブランドなど。1983年家業を引き継ぐため池内タオルに入社。代表取締役社長に就任。2016年6月からモノづくり伝道師などの役割り。代表。現職へ。



3:同時代を生きた空気感

阿部さんは「もとくらの深夜枠」FB動画で観たのが強い印象を持ったきっかけだったのだけど、灯台もと暮らしの記事の「タオルづくりは農業に似ている」に感じたのが最初だった。

ボクはいつも「文章を書く」って第一次産業的だなって考えている。農業と一緒で「コンテンツ情報発信の一次産業」的な存在なのではないかと。小説はテレビドラマ化や、映画化されて、また読まれる。読まれる動機やシーンも様々だけど、ゼロから1を生み出すビジネス生態系の起点付近にいる。


昔の農家は「農協に収めたら終わり」って仕事をしていた。現代は、全然違うスタイルを持つ農家が登場している。「どこで売るか」(売場)「どんな売り方をするか」(販促)「どんな風にたべてもらうか」(レシピ)「食べてどんな楽しみ方をして感じてもらうか」(ブランド)

タオルも単に「拭く」だけのモノでは無く、お米農家のようにブランドまで考えてやっていかないと未来は無いのだと思う。

昔の小説家は「出版社に原稿を入稿したら終わり」な仕事をしていた。だから書きあがると「脱稿」と言った。現代は、そんなやり方を続けていても売れない。売れる書籍は、そもそも論的に違う取り組み方をしている。「作る前から予告をする」(SNS)「作ってる途中から参加してもらう」(クラウドファンディング)「どんな売り方をするか読者ファンが参加できる」(コミュニティメンバーの参加)「どんな風に読んでもらうか複合エンタメ化」(クイズが入っていたり、質問に答えを書きこめる参加型)「読んでからどんな楽しみ方をして共感してもらうか」(ブランド+マーケティング活動)

もちろん書いたモノが良くないとダメなのであるけど、小説は単に「読む」だけのモノでは無く、お米農家を超えて”生む所”から”読んだあと”まで「サービス・デザイン」してマーケティングも考えていかないと、未来は無いのだと思う。特に新人は文学賞を取ってから、それを考えても遅きに失して苦しくなる場合が多い。それは執筆者としての落命を意味する。

だから「タオルづくりは農業に似ている」にも書かれてあった、「品質がよくて長持ちするタオル」と「品質がよくて長持ちがする文章」は、その底流の考え方に、相通じるものがあると思う。

阿部さんは、人懐っこい笑みを持つ不思議な方。同年生まれの同大学というのもあって、同時代を生きた空気感が絶妙だ。博多どんたく祭りの日に、福岡店でお会いしたのが初見だが、最初にあった気がしなかった。これも何かの縁かもしれない。


阿部 哲也(あべ てつや)
IKEUCHI ORGANIC株式会社 代表取締役社長。新潟県新潟市出身。慶應義塾大学卒。1991年証券会社入社。その後2000年 小売系IT系など取締役を経て2009年IKEUCHI ORGANIC入社。2016年6月より現職へ。



4:noteな出会い

自社メディア「イケウチな人たち。」は、「イケウチ”の”人たち」IKEUCHIORGANICの中の人は牟田口さんだけだ。各方面で活躍している協力者の方々が「イケウチのお客さん」や「関係する人たち」を取材して記事にしている。

いま「同心円状コミュニケーション」を展開して”新しい独自のコミュニケーション”を行って注目を集めていると思う。それは、牟田口さんならでは実現したのだと思う。

牟田口さんとは、2月にトークイベント登壇でご一緒して以来なのだけど、「イケウチな人たち。」はまだ未発表だった。

牟田口さんほど、ヒトの目をしっかりと見て、言葉を大事にして話す方はいない。じっくりと考えて話をする印象が強い。それは何度お会いしても変わらないのだけど、トークイベント登壇をお願いした時は、即断即決してもららえた。

この「何かを考える時間軸が長い」けど、決めると早い。というのは、IKEUCHIORGANICそのものを表している感じがする。たぶんだけど、この背景には、「自分達だけが良ければ良い」という工業化社会の「競争第一」や「金儲け第一」の思考様式ではなくて、「次の世代のためにどうするべきか」が、池内さんの人生観から引き継がれて浸透しているのだと思う。

「何かを考える時間軸が長い」というのは、別に会社に限ったハナシでは無いはずだ。人と人だって同じ事だと思う。厳密に言うと「信頼」と「信用」は違うけど、信頼できる人は「何かを考える時間軸が長い」。

「信用」は契約。金融的・思考様式で、長期・短期に関わらずドライに是是非非を判断するものだ。都会の人間関係は、この「信用」を基軸としたビジネス的な面積が大きい。

対して「信頼」とは、長期をベースとした「コミュニティの連続性」に存在意義がある。人間の繋がりであり土壌を醸成する大事な結節点だ。そして包摂性や、居場所の安心感につながる人間関係の起点でもある。



牟田口さんは、年に1回開かれる、本社工場へのファン・コミュニティを担当されているけど、最初にお会いして、その話を最初に聞いた時に、「イケウチ”の”人」で話すのではなく、「イケウチ”な”人」を話すひとなんだなぁと感じた。コミュニティそのものを行動していないと、これは出てこないしこれこそ IKEUCHIORGANIC そのものなんだと思った。


イケウチ ”な”⇔(”に””ぬ””ね”)”の”


牟田口さんの「イケウチ”な”人」「イケウチ”の”人」を実行している事は、今後の IKEUCHIORGANICなのかもしれないな。と思った。そこには”未来”があると感じた。



牟田口 武志(むたぐち たけし)
197年埼玉県生まれ。東京都在住。大学卒業後、映画制作会社、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社、外資系大手ECを経て、2015年IKEUCHI ORGANIC入社。広報・営業統括・EC・自社メディア「イケウチな人たち。」発起人・編集部など幅広い領域を担っている。




5:会社の人柄

会社によくあるケースは、映画「千と千尋の神隠し」の「顔なし」的なモノだと思う。「顔なし」は背が高く、黒い服で全身をまとい、白いお面をつけて登場する不思議な登場人物なのだけど、言語能力がほぼ無い役柄なので、「ア・・」とか「エ・・・」と弱々しい声でしか会話(というのか)しか出来ない。千尋でなければコミュニケーションが成立しないし、理解できない。何故か、体の中から砂金を出したりする。


「顔なし」は、現代における「残念な企業」そのものだと思う。

1:双方向のコミュニケーション能力が低い
(命令や発注は出来るけど共感は低い)
2:砂金(おカネ)で全てを解決しようとする
(発注権限を盾に優越的特権を乱用する)
3:嫌な事が起こると暴れる
(不祥事を起こすと隠ぺいする)


IKEUCHIORGANICは「残念な企業」の反対側にいる。


このところ、企業の中で「行き詰まったハナシ」が積もる日々だったのだが、「企業にも人柄がある」それも、素敵な人柄があるんだなぁと信じる事が出来た日だった。


企業にも人柄ってあると思う。


濃厚な時間だった。穏やかだけど、今治のミカンにふり注ぐ太陽のごとく強く、しっかりと日焼けのように、心に刻まれた日だった。




IKEUCHI ORGANIC 株式会社 
本社:愛媛県今治市延喜甲762番地
東京オフィス:東京都港区南青山6-2-13 2F
創業:1953年(昭和28年)2月11日


今治から松山へ向かう道中に、綺麗な海岸線がある。夕陽が沈むまであと少し。橙色に輝く水平線に、ぽつりぽつりとタンカーが浮いていた。聞けば、水はすごく綺麗らしい。夏はこの海で泳ぎたくなった。

そして、福岡にIKEUCHIORGANICのお店がある幸せと、牟田口さんに巡り会うきっかけになった、坂口さんとの縁を思い出していた。


その全てにnoteがあった。


ここまでお付合い頂いたあなた。今日も貴重な時間を割いて読んでくれてありがとうございます。

またnoteでお会いしましょう。


※これは僕の訪問記です。誤字脱字。間違いがあって気が付いた方は、コメント欄やDMで教えて頂けたら嬉しいです。がっつり集中したけど、移動とか色々あって、書くのに3時間かかった。今治また行きたい!次は自転車持っていきたい!




#noteとは #IKEUCHIORGANIC #新しいコミュニティの作り方 #noteの出会い #noteでよかったこと

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