「amazon銀行」からお金を借りる日

シリーズ【新・資本主義経済を旅する】第3回

アマゾンは「本」や「グッズ」を買うサイトだけではありません。サーバーを借りれる「AWS」もやっているし、金融ビジネスも既に行っています。あなたが、アマゾン銀行からお金を借りて、ネット通販をする日は既に訪れていて、さらに「スマホのこちら側」へ進出しようとしているのです。


米アマゾンの銀行業への進出、18年に中小銀買収で開始も 2017年12月19日

米アマゾン・ドット・コムの銀行業への進出は、思ったより早いかもしれない。金融機関は警戒する必要があるだろう。
CFRAの銀行アナリスト、ケン・レオン氏はネット通販の巨人であるアマゾンが銀行業に足掛かりを築くため、2018年に中小規模の銀行を取得する可能性があるとみる。「アマゾンは自動車ローンやクレジットカード、住宅ローンなど消費者向け融資における小規模ビジネスや個人とのより緊密なつながりを求めており、このような買収は銀行業への幅広い戦略的進出あるいは戦術的な動きとなる公算だ」と同氏は述べた。
下記より抜粋・引用。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-12-19/P16K2A6JTSEA01


■銀行にとって「脅威が見えにくい」会社
ベンチャー企業が主役のフィンテックにおいて、インターネット通販・大手のアマゾンは大きな存在感を示しています。アマゾンは、本だけにとどまらない品ぞろえの豊富さや、スピーディな配送などによって、多くの利用者が利用しています。もしアマゾンを使ったことが無い人は、これから書くことは理解できないかもしれないので、読み飛ばしてもらっても構いません。


「アマゾンが、いったいどう銀行に関係するんだ?」という疑問を持つ人が多いかもしれません。しかしアマゾンが、どのビジネスから「莫大なお金」を手に入れているのか理解することが、アマゾンが金融業に進出する事の大きなポイントだと思います。そこで、同社の収益モデル、つまりどのように、どこで稼いでいるのか?を最初に把握しておきたいと思います。


■アマゾンの利益構造
アマゾンの強みは、生活者に一番近いスマホのアプリで簡単に買えること、そして物流倉庫の効率的なオペレーションだと思っていないでしょうか。
メーカーや問屋までもが「自分の会社で物流機能を抱えるより、アマゾンを使ったほうが効率的ではないか」と判断するレベルに達しています。しかも、アマゾンの流通革命は、世界規模で実現されていると言えます。
しかし、アマゾンの利益構造を知っている人は、どれほどいるのでしょうか?
「EC物販」で儲けていると思っているでしょうが、本当にそうなのでしょうか。売り上げと、利益構造を調べてみました。

↑ アマゾンの地域別・総売上推移。
北米、特にアメリカ合衆国がアマゾンにとってだけでなく、ネット通販市場として巨大市場。近年の売上伸長が物凄い。


↑累乗的に伸びる売上、営業利益は2002年からようやく黒字


一般の小売店と変わらない利益率は、むしろ低い数値。アマゾンは「利益率の高いビジネスをしているから」ではありません。「スケールメリットを活かした薄利多売」の「規模の大きなビジネスをしている」をしている事がわかります。


「利益を出さずに、領域拡大を続けるモンスター企業」成長と拡大がアマゾンの正義で、利益はそのための成長エネルギー源なのです。利益を出すくらいなら生存のために投資を繰り返している会社と言えます。株主が、世界征服のためならば、未来への投資を認めている会社とも言えます。



↑アマゾンの四半期別の売上高

北米売上が売上が大きいのは、前述の通りです。■AWSとは、アマゾン・ウエブ・サービスです。売上は小さいですね。では利益ではどうでしょう?

Amazon Web Services(AWS)
わかりやすく意訳すると、AWSとは、アマゾン自身が使っているデータセンターを一般企業にも貸し出しているサービスです。
アマゾンのクラウドサービスの総称。アマゾンが保有する膨大なデータセンターを、使用量に応じた従量課金制で使用できます。
企業のシステム部は、自社サーバー保有の多額のシステム投資が必要なくなり、システムコストの削減が可能になります。
世界中に分散して沢山のデータセンターが配置されています。ですので障害に強いシステムを構成することができます。既に100万社を超える企業で利用されています。
https://aws.amazon.com/jp/


AWSの売上高は47%増の35億3600万ドル、営業利益は60%増の9億2600万ドルでした。AWSの営業利益は、北米地域の営業利益(8億1600万ドル)を超えました。

カンタンに言うと、AWSは、「濡れ手に粟」的さえ見えるほど、付加価値の高いサービスをしていて、ガバガバ利益出ちゃったよ状態の数字を出しているということです。「スケールメリットを活かした薄利多売」の「規模の大きなビジネスをしている」のに加えて、「利益率の高いビジネス」もしているのです。この豊富な資金源を、新領域へ振り向けていると考えたらどうでしょうか。


■アマゾンレンディングという金融業
アマゾンは、サイト内の「出品している法人」向けに、「Amazonレンディング」という運転資金のローンを提供しています。この取り組み(金融業)が、さらに拡大して銀行業へ進出しようとしているのです。それが、冒頭に書いた「アマゾン銀行」のベースと言えます。

Amazonレンディングとは、出品者への運転資金の融資のことです。
Amazonの売り上げをあげるために使うなら、Amazonが貸します。というEC物販に特化した資金ローンです。


【アマゾン・レンディング】の特徴。
●最短3日で融資を受けられる
●面談や捺印がない
●10万~5000万までの枠がある
●個人信用情報(CIC.JICCなど)を参考にしない。自己破産ブラックリスト者でも関係ない。


【銀行融資の場合】
融資申し込みをして、銀行が審査をはじめます。信用度を人間が判断して、支店長決済を経て、銀行内の承認をとって、面談してから、必要書類を整えて、合意書に捺印して、融資成立、やっと振込まれます。アマゾンのように、3日で完了はしません。数か月かかる場合もあります。

銀行融資は3~6年でゆっくりと返済していきます。
その間に返済の余裕が出来たら、借り換えなどでさらに融資を追加するのが銀行の儲けになります。
手数料も多くなるので銀行にとってメリットがあります。
長期契約なので、融資には慎重になります。
アマゾンの場合とは、そもそもの考え方が違います。


Q:【アマゾン・レンディング】はなぜこんなことができるのか?
●超短期返済(3~12か月)
●アマゾンの売上・在庫を担保にしている。アマゾンはデータベースで把握しているため容易に確認できる。
●出品者の過去実績や信頼度の情報をデータベースで把握しているため容易で、審査に時間がかからない。


【アマゾンで急に売れて、仕入れ資金が手元に無い場合などにメリット】
例えば、年利15%で100万円借りたとき、3か月で返済すると利息は3万8219円。100万円を借りて、3か月以内に3万8219円以上の利益を出せば良いことになります。3~12か月以内の返済という超短期融資。利子分を上回る利益率を生み出せれば、利用者(出品者・法人)が、最短3日で融資を受けられるメリットは大きいと言えるでしょう。


■あなたに融資する、アマゾンの強みは何か。
この10年でネット通販は一般生活に定着していて、アマゾンの物流機能は、消費者にとってはすでに「インフラ」になっています。
最大の強みは「商品の流れを押さえいて、取引実績のデータベースを持っていて、どんな条件で、どこまで貸していいかという与信判断が自動的にコンピューターが判断できる」ということです。
要するに、アマゾンは、あなたが「いつ、どれだけの数量が販売する事が出来て、どの程度の期間で資金回収できるか」というデータを手元に持っているから、自動で判断できるのです。そこに銀行員の姿はありません。


■銀行は「データベース」にアクセスできない。
ここで、視線を銀行側に戻してみましょう。
銀行は「貸出先企業の資金繰りの手当て」という重要な役割を担ってきました。しかし、それ以上の工夫はしてきませんでした。規制に囚われ、規制に守られ、規制に疑問を呈せず、人間がすべてを行っていたからです。
銀行員が、貸出先の日々の売上や支払を、リアルタイムで把握するのはほぼ不可能です。アマゾンは商品の流れを押さえ、それとデータベースを利用する事で、既存の銀行よりも優位に立つことができたのです。ネットの代表企業が、守旧ビジネスの代表企業に勝利した瞬間と言えるかもしれません。既存概念に囚われる恐ろしさは、こういう形で現れるのだと思います。


銀行での企業法人向けの貸出しは、これまで人がその中心的な役割を果たしてきました。単純に資金の不足分を貸し出すだけであれば、商流を押さえ、大量のデータを押さえるアマゾンのほうが競争優位に立てる状況が証明されてしまったのです。資金貸出しに工夫が必要ない単純案件であれば、「コンピュータに判断させるほうが安上がり」になってしまいました。これが、銀行の人員リストラをすすめる大きな動機の一つになっています。


■あなたの「給与振込」が、アマゾン銀行になる日。
もし、あなたが、中小のネット通販会社に勤務していて、日ごろからアマゾンも使ってEC物販しているとします。

ここからは、アタマを柔らかくして「想像」してください。

例えば、会社の給与振込を、アマゾン銀行の個人口座に指定すると、アマゾンポイントが毎月3000ポイント6か月付与されるとしたら、どうしますか?
アマゾン銀行と、あなたのアマゾン利用ポイントはデータベースで連結されています。

例えば、あなたの会社の社長に対して「社員への給与振込口座を決めてくれたら、アマゾン銀行は、会社へのアマゾンレンディング融資の利率を●%下げて、融資金額も増枠・拡大●●●万円しますよ」という取引条件を出したらどうなりますか?

妄想と笑ってますね(笑) アイデアの組み合わせとは、こういうレベルで始まるのです。


■アマゾン銀行が「いままでの銀行」より優位に立てるポイントは何か?
もし、アマゾンレンディングが拡大して、その仕組みを、中小のコンビニエンスストアのPOSデータとリンクする事を妄想してみましょう。イノベーションとは下方からじわじわと迫ってくるものなのです。

もし、本や雑貨やアパレルの範囲を超えて、生鮮食品や一般日用品までを範囲に取り扱うということになれば、どうなるでしょうか?取引の規模や頻度は、かなり大きくなります。

消費者が毎日のように何かしら購入する商品を手掛けるとすると、「いつ、誰が、何を買ったか」といったマーケティング・データは膨大なものになります。ビックデータと言われる「購買の統計情報」を牛耳ることになります。

アマゾン銀行が、融資先のコンビニエンスストアのPOSデータとリンクする。
アマゾンから見れば、「新しい接点」ができます。また商品の回転も速いため、取引業者の資金需要もさらに強いものが見込まれると想像できます。


「ネット×データベース×金融」が新しい金融サービスを創出しています。


■10年後の地元「地方銀行」の姿をイメージできますか?
2027年。あなたの給料は、地元の地方銀行から引き出すのでしょうか?
それとも、アマゾン銀行でしょうか?Lineとかアップルのスマホアプリに給与振込がされているのでしょうか。給与を現金で引き出すことさえ、無くなってしまうかもしれません。


アフター・ビットコイン―仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者
https://note.mu/ikematsu/n/n9d005678ce30



■地方銀行の生き残る道はあるのか?都会の人には肌感覚が無いでしょうけど、地方に行けば、大手都市銀行を使ってる人より地銀利用者が多いのが実情です。東京中心の目線では無く、地方ビジネスの目線から見たらどうなるでしょうか?

●「地銀の役割の再定義」はどうなっているのか?
●「地銀の信用の提供の再定義」はどうなっているのか?
●「地銀・イノベーションラボの創設」など新しい工夫を生活者目線で考えてみる。


地銀で働いている知人もいます。彼らの学歴や、エリート意識のプライドを乗り越えて、新しい「視点」からビジネスをデザインできるか?これから生き残り競争になるのでしょう。まだ都市銀行は人材が豊富なのでいいでしょうけど、地銀はそういうわけにはいきません。都市銀行のネットワーク傘下に入るというか、まずは当たり障りのない形で緩やかなに連携することで、生き残りをかけるというのが、大方のシナリオではないでしょうか。


地銀に必要なのは「再編」というより「再定義」なのではないでしょうか?「地銀・イノベーションラボの創設」など、金融ビジネスのアウトサイダーからのアドバイスを受け入れるような気運はまだありません。3年後にこのコラムを読んでみた時どうなるのでしょうか?楽しみにして待つことにしましょう。


「ビジネスの再定義」が求められています。
家族の事、子供のこと、自分の事。あなたの「人生の再定義」は必要でしょうか。それとも不要でしょうか。考える事に、原価はかかりません。知恵を巡らせる、家族やみんなと話し合う。みんなこの事実に向き合い「幸せ」に暮らせるようにしたいと願っています。知恵を出し合って、明日を明るく生き抜きたいと思います。


2018年まであと少し、新しい「再定義」の年を迎えようとしています。
小生も、新しい「取り組み」を始めたいと考えています。



池松潤 Jun Ikematsu 【略歴】
作家 Author
1966年生まれ。出身・東京。慶応義塾大学卒業後、大手広告会社・会社員時代にビジネスコラム・ビジネス書を執筆。出版社と本屋を廻って店長に挨拶したのはいい経験でした。ベンチャーリタイヤ後、作家となる。

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#amazon.com 株主至上・資本主義の果て

amazon.com とは究極の株主至上・資本主義。ウオッチした分析。日米の最新記事を毎日ウオッチしてるので、時々まとめてます。
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