本日、桜が咲きました。
2回目のデートから数日後、ぼくたちは公園の近くの駅で待ち合わせをしていた。きみは今日も少し遅れて駅に着く。
今日はお花見をしようと約束をしていたので、まずはコンビニに行って買い出しをする。小さなサンドイッチと少しのスナック。飲み物はお茶でいいときみが言う。
少しほろ酔いならきみに気持ちを伝えやすいかな。そんなことを考えていたが、毎度のことうまくいかないもんだね。
花見客で混み合う芝生の広場を歩き、シートを敷くための場所を探す。ぽかぽか暖かい、というか少し暑いくらいなのでぼくらは木陰に腰を降ろす。
公園にはたくさん人がいる。キャラクターの着ぐるみを着た大学生の集団、狭い広場でボール遊びするこども。ベンチに座ってゆったり桜を眺める老夫婦。そこから見えるいろんな人の話をして時間が過ぎる。
すこし肌寒くなってきたので、日のあたる場所に移動する。
きっかけを見つけたかのように、きみがお手洗いに立つ。
「広いから迷子にならないでね?」
「はーい!」
きみからLINEが届く。
「トイレめっちゃこんでる」
「こちらは気にせず、並んでて!」
どれくらい混んでいるかわからなかったが、あとから聞くと20人くらい並んでいたらしい。一人残されたぼくは、春の暖かさで軽く眠ってしまっていた。
目がさめると、きみが隣に座っている。
「ん、おかえり…」
「ただいま!そのまま寝てていいよ。」
その日は少し疲れていたので、お言葉に甘えることにする。正直いうと、口下手なぼくは会話のネタ切れだったので救われた。
きみもぼくの隣で横になる。ぼくがきみの目を見ると、恥ずかしそうに背中を向けてしまった。そのままにしておくと、二人とも眠ってしまっていたらしい。
ぼくがもう一度目をさますと、きみは仰向けにもどって眠っていた。
寝息を立てて眠るきみが可愛らしく思えて、手をそっと握ってみる。
きみの指が少し握り返す。きみは起きているんだろうか。手を握ってしまったものの、どうしようかと考える。
そうこうしているうちにきみが目をさます。目が合う。「恥ずかしいね」って二人で笑う。
「そろそろ起きる?」
ぼくが声をかけるときみは小さくうなずく。
握ったこの手をどうしたらいいかわからなくて手を握ったまま、ふたりは座る。
「あのさっ…!」
話し始めてしまったのにここで深呼吸をする。
「何回か一緒にいてすごく楽しかった。まだもっと一緒にいたいので、、、付き合ってくれませんか?」
すこしの間きみが黙る。
ぎこちない笑顔できみが話し始める。
「えっと…もう付き合ってると思ってたよ!」
ぼくは安心して顔がほころぶ。きみの顔にもいつもの笑顔が戻る。
手を握って座ったままのふたりは「よろしくお願いします。」と他人行儀で言い合った。
3月のおわり。桜の木のしたで花が咲いた。
”もう付き合ってると思ってた”なんて強がりも飲み込んで、花見客の中を通り過ぎていった。
date.2018.3.31
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