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Kendrick Lamarの最近のお洋服事情

  FUJI ROCK FESTIVAL '18以来の5年ぶりに今年のSUMMER SONICで来日を果たすKendrick Lamarであるが、楽しみすぎてどうしようもない。FUJI ROCK FESTIVAL '18の時は、自分は高校一年生の時でフジロックにすら行くことができなかったし、その時ちょうど部活の夏合宿と被っていて一時間以上座ってする意味のないミーティングのおかげでYouTubeの生配信でも見ることができなかった。その時の悲しさたるや、、、

 とまあ前回の来日の時にかなり悔しい思いをして、今回の来日はすごく楽しみなのであるが、個人的に密かに今回の来日で楽しみにしていることがある。もちろん、セットリスト、パフォーマンス、そして今回のツアーではかなり力を入れている舞台美術なども言わずもがなで楽しみなのだが、もう一つはどんな衣装でライブを行うかである。

 去年出した「Mr. Morale & The Big Steppers」で表舞台に再び出始めた彼だが、なんというか非常に垢抜けたなぁという印象を自分は抱いていた。というのもそれ以前のケンドリック・ラマーに対してみんなの抱いている衣装のイメージは、上下セットアップに足元はNikeのCORTEZ(コルテッツ)みたいな感じだと思うし、エイサップ・ロッキーやトラヴィス・スコットの衣装は気に留めるけど、もはやケンドリックの衣装を気に留めたことなんてないという人はたくさんいると思う。


 それでも似合っていてカッコいいケンドリック・ラマー先輩が大優勝であるのだが、何よりもこの時期のケンドリックは、LAギャングスタ達が愛用し履いていたNikeのコルテッツを履いていることが多かった。元々はケンドリックはReebokと契約をしていたが後にNikeと契約するようになり、そしてケンドリックはコルテッツとのコラボシューズも何足が出している。つまり、トラヴィス・スコット=逆さスウォッシュAir Jordan 1みたいな感じでケンドリック・ラマー=コルテッツというぐらい彼にとってアイコニックなアイテムであった。自分はこの時期の彼の洋服は大好きである。というか、自分は今だにケンドリックは上下セットアップにコルテッツやろ!!!みたいなのを思っている。そして、かつてBig Sean とコラボし、ケンドリックのヴァースで世間を騒然とさせた「Control」という曲でケンドリックはこんなことをラップしている。(「Control」についてこちらの記事で詳しく書かれているので気になる方は是非読んでみてください)


And I ain't rockin' no more designer shit
White T's and Nike Cortez, this red Corvette's anonymous
俺はこれ以上デザイナーズの服なんて着ない
白Tとナイキコルテッツと赤のコルベットは匿名だ

Nike Cortez
Nike Cortezを履くN.W.AのEazy- E先輩

 しかし、先ほども述べたが去年リリースされた「Mr.Morale & The Big Steppers」から以前とは衣装の方向性がガラリと変わる。そして、その兆しが見えたのは、もはや伝説となりつつある2022年のスーパーボールハーフタイムショーではなかろうか。ケンドリックが前作の「DAMN.」そしてBlack Pantherのサントラを出してから雲隠れしていたので、ハーフタイムショーはおおよそ4年ぶりに皆がケンドリックをお目にかかることができる大舞台でのパフォーマンスであった。(その前年の2021年にラスベガスで行われたDay N Vegasというフェスでケンドリックはヘッドライナーを務めていた)そして、その時に着用していた衣装はなんとなんと




全身Louis Vuitton!!!!!


サングラスは韓国発のアイウェアブランドGentle Monster
ブローチとジュエリーはどちらもTiffany 

 えええ、、、デザイナーズなんてもう着ないなんて言ってませんでしたか?大先生。ヴィトンですか、、、、そしてちゃっかりティファニーも、、、、、抜け目ないじゃん、、、、、、久しぶりに出てきてめっちゃスタイリッシュにフレックスするじゃん、、、、、、、なんて皆さん思っちゃうのは置いといて、自分もこの時は久しぶりにケンドリックを拝めると思って楽しみにしていたが、全身ヴィトン固めてきて雲隠れ前とは雰囲気変わりすぎてまあびっくり。けどパーフォーマンスはさることながら最高だったし、それにしてもマジでなんなんこの人スーツとサングラス似合いすぎカッコ良すぎやろ。

 それじゃあ、この全身ヴィトン固めに雷打たれるほど衝撃だったかと言われると全くもってである。というのも、ヴィトンのデザイナーがOff- Whiteというブランドを立ち上げ、現Ye(元Kanye West)の6枚目のスタジオアルバム「Yeezus」のアルバムジャケットのデザインも手がけるなどして、音楽業界にも影響を与えてきたヴィトン初の黒人でデザイナーに任命されたヴァージル・アブローであった。そして、ヴァージルは、ハーフタイムショー前年の2021年に41歳という若さで惜しくもこの世を去ったのである。

 ケンドリック自身もOff-Whiteをかつてはよく着用していたし、ヴァージルとは多少なりとも親交があったのではと思う。そして、何よりもヴィトン初の黒人デザイナーという偉業を成し遂げたヴァージルに対しての大きなリスペクトを示すためにハーフタイムショーという一年間で行われる最も規模が大きく注目されるライブでこの衣装を選んだであろうとその当時は思っているし、今でもそれは思っている。


 とかまあそういうことも色々考えたら、もうデザイナーズの洋服なんて着ねえとか言っていてもケンドリックなりに思い入れがあったと思うし、なんたってビッグ・ショーンとコラボした「Control」だって10年前の2013年にリリースされた曲だから、そんな間に受ける必要ないよねといった感じだ。


 そしてハーフタイムショーのちょうど三ヶ月後の5月13日に全世界の人が待ちに待ちに待ちに待ったケンドリック・ラマーの5作目のスタジオアルバム「Mr. Morale & The Big Steppers」がリリースされる訳だが、リリースされた瞬間は自分は授業始まる十分前だったので授業サボってニューアルバムを聴こうかと考えたが、雑念を持って本当に本当に本当に待望の新作を聴きたくなかったし、何よりもケンドリックに対して失礼だと思ったからすぐは聴かず授業終わったら速攻で家帰って、一人で座禅をしながら初めてこのアルバムを聴いた記憶は今だに鮮明に覚えている。


 こういった経緯もあり一曲目の「United in Grief」でアルバムの一番最初のヴァースにもなる

I've been goin' through somethin'
One-thousand eight-hundred and fifty-five days
I've been goin' through somethin'
Be afraid

って聴いた時は全身から鳥肌が立って我も忘れるほど興奮したし、ついにニューアルバムを聴けるという事実を改めて思い知らされ泣いた。(本当に家に帰って集中して聴ける環境でよかった。今までの人生で経験したことないアルバムリスニングであった)


 それで、しばらくはイヤホンが耳と同化してしまうほどニューアルバムをずっと聴いていたのだが、しばらくするとgeniusで歌詞が出たりするのでそれを頼りにしてアルバムを聴いていると、「N95」という曲でこのようなリリックがあることに気がついた、、、、

Take off the Chanel, take off the Dolce, take off the Birkin bag

Take all that designers bullshit off, and what do you have?

えー、言ってますね。なんなら「Control」の時より過激な発言してません?約10年ぶりにデザイナーズなんて着るな発言更新。シャネルもドルチェもつけるな、エルメスのバーキンなんて持つな、くだらないデザイナーズなんも着るなと言っています。彼にとってのくだらないデザイナーズブランドというのはここでは何かわからないけれど、上の三つが錚々たるブランドなのでなんとなくはイメージができるのではないでしょうか?

 まあ名指しであげたブランドの中で、ヴィトンは入ってなくてよかったなあという感じ。俺、ヴィトンは着るけどシャネルは着ないよと言った感じかな?けど、流石にこんな歌詞にも書いて名前あげて言ったらもう普通だったら着れないって、、、、


ジャケットはCHANEL22ss
パンツ、シューズはどちらもCHANEL22/23のメティエダール コレクション(CHANELが毎年12月に発表しているコレクションのこと)のもの


アイウェアはCHANEL2023 RECTANGLE SUNGLASSES
ジュエリーもCHANEL


、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、全身シャネルですやん。めちゃくちゃシェネルじゃん。まあこれは、CHANELの23FWのコレクションに訪れた時なので、全身シャネルなのは当たり前のことなのかもしれないけど、それにしてもねえ、、、

(ちなみに上のインスタグラムのポストのアカウント主はケンドリック・ラマーであり、ケンドリックのサブ垢的なもの。より日常のケンドリックが見れて面白いよ。)
 そしてケンドリック自身が創設したpgLangの共同創設者であり盟友、映像プロデューサーのDave Freeもシャネルにカスタムユニフォームを作ってもらっているほど。


pgLangはProgram Languageから取られている


 とまあシャネルのコレクションを存分に楽しんでいたようだ。Take off the chanelとラップしていたのはなんだったのであろうか。


先ほども述べたように、ケンドロリックはくだらないデザイナーズなんて着るなと言っていたわけだが、じゃあ彼にとってのくだらないの中に入らず、お気に入りデザイナーズのブランドは何なのであろうか?まず一つ挙げることが出来るブランドは、Martin Rose(マーティン・ローズ)であろう。もう知っている人は知っていると思うが、ケンドリック・ラマーはマジでマーティン・ローズ着すぎなんです。本当に、マーティン・ローズばっか。

 まず一番有名なケンドリックのマーティン・ローズルックはこれであろう。

Grammy Awards 2023の時


Martin Rose 23AW Look 21 
靴はNike ShoxとMartin Roseとのコラボスニーカー

キャップとサングラスを除けばランウェイのルックのまんま着用しているケンドリック。ここまで、どストレートにひねりなく着てこられたら一周回って面白くなってきてしまうほど。


ケンドリックの隣にいる女性は、高校生の時からの同級生で奥さんのWhiteny Alfordさん
「Mr. Morale & The Big Steppers」のアルバムジャケットに写っている女性である

 こちらが、Grammy Awards2016の時のケンドリックであるが、やっぱり垢抜けたなぁ。

 そして最近出されたケンドリックと従兄弟のBaby Keemの二人の曲である、「The Hillbillies」で、再び全身マーティン・ローズルックをかましている。


キャップが23SS Embroidered-slogan Hat
アウターがCropped Bomber Jacket
パンツがPainter Pants
シューズがBlack Bulb Toe Loafers


TシャツはMartin Rose とTommy Hilfigerとのコラボ

 すごくわかりにくいが、全身である。そしてThe Hillbiliiesはめっちゃ最近のオシャレなケンドリックの詰め合わせを見れるから個人的には大好きであるし、ビデオ自体もおしゃれでいい。

 
 関係ない話なんだけど、このMVでタイラー・ザ・クリエイターがカメオ出演しているが、実際にケンドリックとタイラーが関わっているというのは今までは見たことのない光景。コラボとかも一曲もしてないし。じゃあなんで、タイラーが出たかっていうと、ケンドリックの最新作をインタビューで褒めちぎっていたことがあった。それで、何か共鳴しあってこのようにカメオ出演に繋がったのかななんて思ったり思わなかったり。ひょっとしたらいつかコラボしたりしてね。超期待してます。タイラーが、ケンドリックのアルバムをめちゃくちゃ褒めまくってる事について詳しくはケンドリックの評伝の「バタフライ・エフェクト」の翻訳をした塚田桂子さんのnoteに書いてあるので是非読んでみてください。

 そして、話を戻すとこの「The Hillbillies」という曲はかなり服について言及してる事が多くてですね。
まず、ケンドリックが

And I’m best-dressed, movin’ forward, yeah

俺は1番オシャレで常に進化しているって言っている。やっぱり最近のデザイナーズの洋服着てる傾向だったり、このMVではかなり洋服に力入れてる事も伺えるから、最近は服装もすごくこだわって着用しているっていうのがまずこの歌詞から読み取れる。 それにしても最近は、Lil Uzi Vertが俺はAsap Rockyよりもオシャレでイケてるだとかつっかかってたりして、Hip Hop界隈のオシャレ番長争いが熾烈ですね。
そして、次に「N95」のようにケンドリックお得意のブランド名を出してくるんですけど

Ni**as konw that I'm best-dressed, too high-profile to access(
here right now)
I ain't even gotta fact check, all I'm wearin' is Wales Bonner

それが、Wales Bonner(ウェールズ・ボナー)という最近ノリに乗りまくっている新興ブランドなんですよ。グレイス・ウェールズ・ボナーという女性のデザイナーが立ち上げたブランドで、2016年に「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」のグランプリを獲得している。そういったこともあり、ルイ・ヴィトンのヴァージル・アブローの後釜のデザイナーはウェールズ・ボナーが一番の有力候補(それともうひとりいた有力候補は、それこそまさにマーティン・ローズであった)として挙げられていたぐらいだ。まあ結局はファレル・ウィリアムズになった訳ですが、、、、、

 とまあここでは最近ノリノリなブランドの名前をあげており、そして最後に愛用しているブランドをリリックに出してきます。

Yeah, Ni**as know that I'm best-dressed 
wear Martine when I board jets

皆は俺が一番おしゃれだと知っていて、そしてジェットに乗っている時はマーティンを着る。このマーティンは先ほどからずっと言っているマーティン・ローズですね。本当にマーティン・ローズが大好きなんですねケンドリック・ラマーさんは。


 そして、このMVで一つ日本のブランドを着用しているのが、世間で話題になったのかは分からないが、自分的にはかなり話題になった。それはProletareart(プロレタリアート)というブランドだ。最近は、Asap RockyやLil Babyなどのラッパーが着用してて話題に上がることが多く、かなりノリに乗っているブランドなのでついにケンドリックも着たか!!!とだいぶ(自分の中で)大盛り上がりでした。

元々、プロレタリアートのデザイナーの方は、デニムの産地で有名な岡山県倉敷市児島から始まった日本のKapital(キャピタル)というブランドの下で働いていたそう。そして、ここで面白い繫がりがあることにケンドリックがよく着用するブランドの二つ目はKapitalなんですよ。


デニムのセットアップはどちらもKapital
アイウェアはEnfants Riches DéprimésとJACQUES MARIE MAGEとのコラボサングラス


ヘッドウェアはEMILY DAWN LONGとMaria Doraとのコラボハット
アイウェアはGentle Monster
デニムのセットアップはKapital
ブーツはRocketbuster Bootsのウェスタンブーツをカスタムしている
後ろに座っているのは、従兄弟のベイビー・キーム

ちなみに自慢しちゃうと、自分このnoteを書いている途中でケンドリックの洋服を見すぎてサマソニに着ていくのも兼ねてなんか欲しくなっちゃって、この写真で被っているEMILY DAWN LONGとMaria Doraのコラボハット買っちゃったのでもしサマソニでこのハット被っている人見かけたらそれ多分自分です!なんてことはめっちゃどうでもいいですね。続けます。

Tシャツは先ほど歌詞で出てきたWales BonnerのRhythmo Tee
パンツがKapital
バッグはこれもよくケンドリックが着用しているBottega VenetaのCassette Camping
シューズはpgLangとconverse のコラボシューズ

とまあ、結構Kapitalを着用していることが多いんですよね。ケンドリックが日本のブランドを着用していることが多いというのは日本人としてすごく嬉しいことですね。ひょっとしたらサマソニでケンドリックが着用する衣装は、Kapitalなんじゃないかなーなんて自分は予想しちゃっています。日本でライブするんだから、普段よく着ている日本のブランドを着用してライブしてくれそう。前回のフジロックの時も、日本のブランドのN.HOOLYWOOD(
エヌ・ハリウッド)を着用していたので、Kapitalではなくても日本のブランドを着用するのに乞うご期待である。


FUJI ROCK FESTIVAL '18のグリーンステージ
N.HOOLYWOOD 18/19AWコレクションのもの

 とこのように今まで沢山写真付きでケンドリックの垢抜け具合を書いてきたのであるが、ここまでケンドリックを垢抜けさせ、俺は一番おしゃれで常に進化していると言わしめさせるのに至ったのには一人の大きな立役者がいる。それは、スタイリストのTaylor McNeill(テイラー・マクニール)さんである。

 アーティストのお洋服紹介でスタイリストを出してしまうのは非常にメタ的で、あまりよろしくないことというのは分かっているが、この人抜きでは最近のケンドリックの服装について語ることはできない。自分はここまで沢山ケンドリックのルックを紹介してきたが、もはや彼ではなくスタイリストのタイラー・マクニールさんを紹介してきたようなもの。

 
 ケンドリックの雲隠れ後のスタイリングはほぼこの人がしている。ほぼというよりか、MVの時もライブの時もケンドリックが表舞台に出ている時は本当に何から何まで全部スタイリングしていると思う。そして、タイラー・マクニールがケンドリック以外でスタイリングを手がけている著名人は、クエンティン・タランティーノ監督の「Once Upon a Time in... Hollywood」で有名になった、Margaret Qualley(マーガレット・クアーリー)そして、シンガーソングライターでラッパーのドレイク製作総指揮ゼンデイヤ主演ドラマ「euphoria」にも出演したDominic Fike(ドミニク・ファイク)などである。

 しかし、圧倒的にケンドリック・ラマーのスタイリングを手がけている事が多く、なんならpgLangお抱えのラッパー二人、ベイビー・キームとTanna Leone(タンナ・レオン)のスタイリングもしている。そして、Calvin KleinとpgLangのコラボした時の映像のスタイリングの担当もしているので、もはやpgLang専属スタイリストと言っても過言ではない。

 最近タイラー・マクニールさんがインスタでポストしたもので非常に面白いものがあった。

 おそらくこの人が手がけたスタリングした写真と過去のケンドリックの写真をつなぎ合わせたものになるが、これ何なんですか可愛すぎるでしょ。いいですねこれ。自分も欲しい。

 次にこちらは、マーティン・ローズの洋服をカスタムし、タイラー・マクニールがスタイリングしたものである。カッコ良すぎるでしょ、、


 この人のインスタのストーリーとかにしょっちゅうライブしているケンドリックが上がるのでおそらくツアーに帯同してる。だからこの人も日本にもくるでしょう!何回も言いたいが、ケンドリックはサマソニでどんな服装パフォーマンスしてくれるかな!!とすごく楽しみである。

 

 ここまで色々ケンドリックの最近のお洋服事情について沢山書いてきたが、結局自分は「N95」でラップしていたリリックが気になって仕方ないのである。もう一度そのリリックをここで示そう。

Take all that designers bullshit off, and what do you have?

 こんなことを言いながら沢山のデザイナーズの洋服を着ているケンドリック。彼にとっては珍しく矛盾しているのである。たったワンバースだろそんなにいちゃもんつけるなよと思いの方もいるだろうが、それは違うのである。常にコンシャスで自分に正直に向き合いながらラップし続けたケンドリック・ラマーにとってのワンバースの重みは、他のアーティストとは桁違いなのだ。そして何よりもワンヴァースという考えで一蹴してしまうのは、彼の芸術から目を背けることになる。なのでやはり自分は彼の着る服から生み出される矛盾というのを考えたい。

 まず一つ考えられる事としては、ケンドリックは衣服というモノが、自分自身の芸術性をアピールする手段としての有効なツールであるという価値を見出したのかもしれない。NikeコルテッツはLAのComptonという自分の生まれ育った場所と馴染みのがあり地元をレペゼンするのに最高の一足ではあったが、それだけでは定番すぎるが故に物足りないというのは否めないし、何よりも歳をとるにつれて「good kid, m.A.A.d city」や「To Pimp a Butterfly」で幾度となく語ってきた地元Comptonというフッドから彼の足が離れてきたという表れなのかもしれない。


 だから彼は、Nikeコルテッツという彼にとってのアイコニックな靴を手放したのだ。そして、結婚もして子供もできより家族や自分の事を以前より考える時間も増え、それが全身に発露として出てきて、結果としてデザイナーズの服を身に纏うという事になったのかもしれない。ケンドリックは足から体に表現のツールが移動したのだ。だからこそ、彼は今デザイナーズの服を着ているのだ。
 そして、最後に考えれる事としては、今作の「Mr. Morale & The Big Steppers」で彼は自分が神格化されることが嫌だと述べている。普通の人のように悩むし、浮気もする。男たるべきはセラピーに行かないと思っていたが、彼はセラピーに通いはじめた。ライターズブロックにもなった。俺も普通の人間で矛盾をするのだ。だからこそ、あのワンヴァースがありながら、デザイナーズの洋服を着るのだ。俺も普通の人間であるというのをデザイナーズの洋服を着て表したいのでなかろうか。セラピーに通うことと同様に彼にとってデザイナーズの洋服を着るということが、Mr. Moraleであることを辞め、そしてBig stepを踏み出したという表れなのかもしれない。

 と考えながらこの長い長い文を締めたいと思う。ここまで読んでくださりありがとうございました。ぜひケンドリックの洋服に興味もある人もそうでない人も、この文を読んでこれから意識してもらえたらすごく自分も嬉しいし、常に進化してオシャレになり続けているケンドリック自身も嬉しいだろう。



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