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#すべての人に日本語を。日本語教育機会を公的に保障するとボランティアの活躍の場は失われるのだろうか。


私は、ああ、私(たち)の発信は肝心なところに届いていなかったのだな、と思った。

以前、とある地方で講演をしたときに、地元でボランティアとして長年にわたって海外ルーツの子どもを支援なさってきた団体の代表の方のお話を聞くことがあった。

手弁当、手作り、愛情にあふれたサポートの中で、きっと子どもたちは安心して日本語を学んでいるのだろうな、と思うような活動紹介で、ボランティアの方々の取組に頭が下がる思いだった。

その代表の方のご講演の中で、日本語教師の(公的)資格化や日本語教育の体制整備が進むことで、ボランティアの活動の場が失われるのではないか、といったような趣旨のご発言があった。

いくら日本語教育推進基本法が可決成立され、自治体が日本語教育体制の整備を行い、日本語教師が公的資格化され、各地で活躍できるようになったとしても、ボランティアの方々、地域の方々の活動がなければ「共生社会」なんて実現しようがない。

その最先端をずっと担ってきて下さったボランティアの方々が、日本語教育を公が推進することで自分たちの活動の場が失われるのでは、という危機感を抱いているのだとしたら、それは、発信する側の怠慢でしかない。(心から反省。)まず、真っ先にお伝えするべき方々なのに。

「日本語を教える専門家としての日本語教師」には手の届かないこと

日本語教師が担うのは、おそらく、「日本社会への第一歩としての日本語力という”ツール”の獲得支援と、必要最低限の知識の提供」くらいであって、本当に社会で生きていくために毎日必要な、大切なサポートまでは提供できない。

たとえば、方言。国が公的に日本語教育を推進するとして、そこで組まれるカリキュラムは「標準語」がベースになるだろう。でも、海外にルーツを持つ子どもや外国人生活者が生きる社会には、その土地土地ではぐくまれた「方言」が存在する。その方言や土地の言葉1つ1つまで、日本語教師が教えきれるかというと、きっとそれは難しいと思う。

それから、地域情報。海外ルーツの子どもであれば、「学区」というとても小さな地域の情報が必要になるだろう。みんながよく行く駄菓子屋の名前。なぜか正式名称とは異なる公園の通称。

(私の自宅のすぐ近くにある公園は通称「どんぐり公園」で、もちろん、正式名称とは全く異なるが、小学生の息子に今日どこ行ってきたの?と聞くと「どんぐりー!」と答える。)

こうした、ちょっとした地域特有の、でも必要不可欠な情報や言葉は地域の人々にしか教えることができない。地域に暮らす外国人と地域の人々をつなぐことも、その地に住む人にしかできない。

本来であれば、役割分担必須なはずなんだけど。

ボランティアの方々の活動は、これからますます重要になる。それは「日本語の教育の担い手」というよりは、

『「地域社会」「生活の場」への架け橋』

として。そしてその架け橋的活動こそ、共生社会の実現にとってはなくてはならないものであり、地域に多様な人々が暮らす限り、持続させていかなくてはならないものだろうと思う。

・・・本来であれば、「日本語の教育をする専門家」(≒日本語教師)と、「地域との架け橋」を担うボランティアが役割分担し、協働し、それぞれになくてはならないものとして存在できることが望ましいと思う。(子どもの場合は、ここに「学校の先生」が基礎学力の獲得を支える専門家として存在するし、自治体の役割はそれぞれの役割を持つ人々をコーディネートしたり、サポートしたり、財政的に支えたりすることになるだろう)

だけど今は、日本語を教えることも、地域との懸け橋も、すべてボランティアの方々が担っている場合が多い。子どもの教育は、専門性のない学校の先生(たとえば、理科の先生が日本語学級を担当するとか)に丸投げ。

それを、少しでもお互いの得意なこと、で分業しつつ、協業できる体制に整備していくことが、これからとっても大切なことだと思う。

やっぱり#すべての人に日本語を、からはじめよう

そして、その第一歩はやっぱり、今の国会で提出されようとしている、「日本語教育推進に関する法律案」の可決・成立にかかっているのだとも。

日本語教育推進法の早期可決、成立を目指す署名キャンペーンは1月31日でいったん取りまとめの予定。まだ署名していない、という方がいたらぜひ、趣旨文を読んでいただいて、署名活動にご協力いただけたらうれしい。

今のままだと、私たち全員が持っているものすべてを最大限にフル回転させたとしても、課題は解決しない。国がまず、日本語教育の重要性を認め、責任を持てる法的根拠を作らないと。

署名キャンペーンサイト
#すべての人に日本語を
https://sites.google.com/view/japanese-for-allhttps://sites.google.com/view/japanese-for-all

お読みくださり、ありがとうございます!みなさまからいただいた応援は、私たちがサポートする困窮・ひとり親世帯の海外ルーツの子ども・若者が、無償で専門家による日本語教育・学習支援を受けるための奨学金として大切に使わせていただきます!