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海外ルーツの子ども・外国人の日本語教育「国が、自治体がなんとかすべき」とは、それは本当にその通りなんだけど。「日本語教師」が「食べられる」仕事になっていくことで、(一時的に)失うであろうものは大きいのか小さいのか。

約10年前、目の前に現れたたった1人の「この子」を支えることからスタートして、私が捉える「主語」は地域、自治体、都道府県、国と次第にどんどん大きくなってきた。

私は海外ルーツの子どもの課題の社会化を目指してきたし、その社会化の先には当然「政策化」が目標としてあったわけで、つまりこれまでの流れは私にとって順調な「ステップアップ」とも言えるのかもしれないけれど。

ともすると、「誰のために」がどこかに置き去りになってしまうこともあって、いかんいかん、とはっとする。そんな自分に気づくときには、いつでも現場に立ち返れる、というのは本当に貴重な、重要なことなんだと思う。(そして私は本当にその点で恵まれている)

その現場を、何年も共に守ってくれている仲間がいる、ということも含めて、少し「原点」に還りたくなるような。そんな感じ。つまり、このウェーブに流され気味、ということであり・・・仲間というアンカーの存在に感謝。彼女、彼女たち(うちは女性が大活躍する職場なもので。)が現場で子どもたちと向き合っている姿を文字通り、少し離れた場所から眺めているだけで、元気と勇気をもらい、自分の役割を再認識する。

日本語教育推進法の成立が目前にまでやってきて、たぶん、今海外ルーツの子どもや外国人に関わる人々の最大の関心事の一つは「日本語教育で食べていけるようになるのか」ということかなと思う。

海外ルーツの子ども支援で「時給または月給」を受け取っているというだけでもレアな状況で、泣く泣く子どもの支援をあきらめた、という日本語の先生もきっと少なくないだろうし。(子ども支援したかったけど、ボランティアしかなかったので、とりあえず留学生を教える日本語学校に就職した、という方、けっこういるように思う)

日本語教育または日本語教育を通した支援の領域で「食べられる」ようになる、という点においては、ぜひそうであってほしいという部分があるし、今でも、それを目指してやってきているつもり。

一方で、「誰かから(海外ルーツの子ども関係であれば、おおよそ国・都道府県または自治体から)給与を直接・間接的にもらう」ということと「現場の最前線で必要な質の高い支援を1人1人に最大限届ける」ための現場的”裁量”(支援における自由度)みたいなものは、残念ながら(でも当たり前のように)、トレードオフになるんだろうな、と思うと複雑な心境。

自治体の「委託」として団体が事業を受ければ、大かれ少なかれ、「できること」「できないこと」が(やや自治体主導で)定まり、最大公約数的な事業展開を目指すことになるだろう。必要性に基づいた柔軟な対応からは別のベクトルに進んでしまうことも珍しくない。それが「支援者」の「もっとこの子にしてあげたい」と思う気持ちとのズレを生むだろうし、ズレを修正しようとすれば支援者が「個人的に(持ち出しで)頑張る→バーンアウトする」というような感じになることも。

日本語教師が個人として自治体に雇用、または嘱託として働くのであれば、もちろん自治体のルールにのっとったこと以上のことは、よほどでなければできないだろうし。学校の中に入れば、学校の中のルールの範囲内でしか支援ができないだろうし。

現場で海外ルーツの子どもたち1人1人を支える支援者の人たちが、食べていけるようになってほしい

と思う反面、「政策化」のプロセスで定められるであろう、何らかの枠組みが、現状と支援現場にあるあるの「イレギュラー」を柔軟に内包し得る、大きく、やわらかいものであるようにと願う。

もちろん、自治体との「交渉」ができるような状況にあるNPOだったり、もともとの自分たちの活動自体をまるっと自治体に施策・予算化してもらえるような関係性にあったり、自治体が望む支援のカタチと自分たちの方向性がピタっと合致していたりすれば、もやもやすることもなく、「望ましいと信じる支援をしながらお給料を得る」という最適な状態を確保できるのだと思う。

でもたぶん、100%そうである状態というのは、今すぐにはやってこない。「(日本語学校以外の)地域等での日本語教育支援」で給与を得る、というのは、たぶん、思い描いている以上に、窮屈な状況を生むと思う。

(しばらくは、支援者の自由度や裁量の多寡と給与・待遇は反比例するんだろうと予測する)

それをすこーしずつ変えていくのが、政策化の先に待っているチャレンジの一つなんだと思う。道のりは長いですね。1つ1つ。

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