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日本語がわからないのなら、インターナショナルスクールに行けばいい?

外国にルーツを持つ子どもにまつわる誤解はけっこう多くて、その「誤解あるある」の一つが、この「インターナショナルスクールに行けばいいんじゃない?」というものです。

確かに(パンがなければお菓子を食べれば?的に)公立学校で日本語の壁に困っているのならインターにいければ苦労ないよね・・というほど簡単な話しじゃなくて。

なぜ外国人学校やインターナショナルスクール(以下、インター)ではなく、地域の公立学校に行くんだろう?

【経産省『内なる国際化研究会』報告書、p8より抜粋】

いくつかの理由を考えてみました。

1)インターや外国人学校の学費が払えないから

インターも外国人学校も、授業料や寄付金のみで運営されているところはどうしても学費が高額になります。インターの場合は、1年間に200万円程度。外国人学校の場合も、月々3万円~5万円程度で、負担ができない家庭も少なくありません。

2)地域にインターや外国人学校がないから

インターや外国人学校の数は限られていて、全ての外国にルーツを持つ子どもがアクセス可能なエリアにあるわけではありません。経済産業省が発表した『「内なる国際化研究会」報告書』では、「インターナショナルスクールは、ゼロの都道府県が35あり、地域的に偏在している。」との報告も。

日本語を母語としない生徒を数多く受け入れている私立の学校もありますが、同様に数に限りがありますし、1)の学費の問題もあります。

3)これからずっと日本で暮らしていくから

かつては外国人の方というと「デカセギ」のイメージが強かったかもしれませんが、今は全国的に、定住・永住志向の高まりが指摘されています。政府方針でも、定住促進の方向に動いていることもあり、今後も、この傾向が弱まることはないと思います。

実際に、現場でこれまで支援をしてきた約500名の子ども達の家庭のうち、「いずれ帰国する」予定があったのは、わずか3%でした。

4)日本にルーツを持っているから

 →文科省の調査でも明らかになっていますが、今、「日本国籍を持つ、日本語指導を必要とする子ども」が増加しています。日本国籍を持つお子さんの場合、外国人保護者の方が「この子は日本人だから、日本でしっかり教育を受けさせたい」と希望しているケースも多く見られます。

5)その他

 →1)や2)の条件がクリアにされていたり、いずれ帰国をする場合でも「せっかく日本にいるのだから」との教育方針で、あえて日本の学校を希望なさるケースも。

「いつか帰るから」、はもう古い

他にも理由があるとは思いますが、主だったところはこのような理由で、それぞれの理由が複合的に重なる場合も含めて、5)以外のケースでは、そのご家庭にとって公立学校以外の選択肢がないという状況です。

なら帰国すればいいじゃないか、と思われる方もおられるとは思いますが、グローバル化が進む現代の社会の中で、人の移動は必然とも言え、この流れが完全に停止することは考えづらいものですし、4)のように日本にルーツを持つ子どもも増えて行く事が予想されます。

日本語がわからない子ども達の公的な領域での教育支援の必要性は、今後一層高まっていくでしょうし、「いつか帰るから」「勝手に来たんだから」と目を背けることは、将来の日本の社会にとって何のメリットも生み出しません。

何よりも、子ども達には出自や国籍に関わらず、適切な教育機会を得る権利があります。日本の子も、日本にルーツを持つ子も、海外にルーツを持つ子ども達も、多様なバックグラウンドを持つ子ども達が共に学びあえる教育の場は、きっと未来の日本の新たな力となると信じています。

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この記事、1年半くらい前に別のところで書いたものを再編集したものなのですが、つい最近も「インターナショナルスクールはダメなんですかね?」と聞かれたこともあり、改めて掲載しています。

たぶんこの1年6ヶ月の間にだいぶ状況は変わっていて、「公立学校に日本語を母語としない子どもが通う事」自体は「そういうこともある」程度に受け入れられ始めているように感じます。

それでも、この問いに限らず、外国ルーツの子どもたちに関する「誤解あるある」はけっこうあって。誤解が正しい理解に至るまで、繰り返し、繰り返し発信していけたら。


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