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トイレやお風呂に似た感覚で携わっているーー坊薗初菜(無隣館)

「なんで演劇に関わっているの?」「どうして演劇づくりに携わっているの?」

そう聞かれると、少し緊張します。 その理由を伝えることで自身をさらけ出すことになるかもしれない。うまく伝えられないもどかしさから、説明しやすい理由をでっちあげてしまうかもしれない。

私以外の演劇づくりに携わっている人はどう考えているのだろう。そんな疑問から「なんで演劇づくりに携わっているの?」というテーマで色々な方に話を聞きに行く連載の第4弾。

今回は、無隣館に俳優として所属する坊薗初菜(ぼうぞの・はつな)さんに話を伺います。

グレーテル役をやりたいと伝えたら「可愛い子じゃないとだめだよ」と言われた

ーー演劇づくりに携わるきっかけはなんだったのでしょうか?

保育園のとき、発表会で『ヘンゼルとグレーテル』をやることになったんです。そこで、老婆役をやったのが初舞台。印象に残っているのは、「グレーテル役をやりたい」と先生に伝えたら「可愛い子じゃないとだめだよ」と言われて。

ーーえっ。

そこから女優は美人しかなれないものだと思ってました。でも演じるのは好きだったから、高校卒業後に声優になろうと考えて専門学校に通って。声優の活動を続けていくなかで、やっぱり舞台に立ちたいと思うようになり、23歳のときに舞台作品に携わるようになりました。

自分を成長させるツールとして活用していた

ーーそこから10年以上、演劇づくりに携わっているのはどうしてなのでしょうか?

最初は、自己啓発のために携わっていました。自分を成長させる手段として活用していたというか。

俳優の仕事は作品の登場人物を演じること。演じるには、登場人物と自分自身の違いを自覚する必要があります。登場人物のことはもちろん、自分自身のことも知らないといけない。そういう作業におもしろさを感じていて。

ただ、俳優として続けていくなかで少しづつ変化はあります。いまはやれるだけで幸せ。別の言葉にするんだったら、演劇に携わることが自身の心のバランスを取ることに繋がっていたことに気づいて。

だから今は携わる演劇公演の規模とかはあんまりこだわっていなくて、安心して表現できる場所を持ちながら長く携われたらいいなと考えています。

ーー演劇づくりの魅力はなんでしょうか?

稽古場や舞台上で通じ合える瞬間をもてることですね。たとえば、戯曲の場面設定や解釈、登場人物像が一緒だったとき。あるいは、舞台上で共演者の微細な変化を受け取れたときに「ああ気持ちがいい」となります。

作品づくりの場所を選ぶ基準は仲良くなれそうかどうか

ーーどんな作品に出演したいと思いますか?

作品づくりの場所を選ぶ基準は、その現場の企画者や演出家と仲良くなれそうかどうか。気の合いそうな人のところ。企画者・演出家の人柄が稽古場の雰囲気に反映されることが多い気がしていて。気の合う人の場所の方が自分らしさを出せたり、心のバランスが取りやすいんです。

ーー気が合うかどうかの判断はどのようにしているのですか?

それは直感ですね。

ーー直感。その直感は外れたことはありませんか?

ないですね。相手側が「気が合うな」と感じているかどうかはわからないけど(笑)。

ーー長い間、演劇づくりに携わっていて辞めたいって思うことはなかったのでしょうか?

ないですね。続けるしかないと思ってます。トイレとかお風呂くらいの感覚で演劇づくりに携わっているので。勿論これまで携わってきて苦しいこともあったけど、それも含めて心のバランスとるためのことだったのかもしれないと思えています。

ーー今回お話を伺って、坊薗さんは他者と繊細にコミュニケーションを取りながら場づくりしていける方なんだと感じました。率直なお話をありがとうございました。

文責:木村和博
撮影:木村恵美子

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