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マンガレビュー『ドラえもん のび太の恐竜』藤子・F・不二雄(1980)のび太が見せる親心

※2000字以上の記事です。
 お時間のある時に
 お付き合いいただけると嬉しいです。

今日、3月15日は
アニメ『ドラえもん』の
映画版第1作目

『のび太の恐竜』が
公開された日です。

『ドラえもん のび太の恐竜』は、
『大長編ドラえもん』シリーズの
1作目として、

1980年、
『月刊コロコロコミック』に
掲載されました。

同じ年の3月15日に
劇場版が公開され、

今も続く、
映画版『ドラえもん』の
記念すべき1本目の
作品となったのです。

その後、『のび太の恐竜』は
2006年にもリメイク作品が
公開されています。

今日は、そんな記念日にちなみ、
私が過去にブログで書いた
同作品のレビューを掲載します。

ピー助との出会いと別れ

『ドラえもん』の映画と
連動した『大長編』シリーズの
記念すべき1作目として
描かれた本作には、

通常通りのエピソード
として描かれた、
一話完結のプロトタイプが
存在するようです。

そんな経緯もあって、
いつも通りの
『ドラえもん』の型に沿って、
物語がはじまります。

スネ夫が自宅にある恐竜の化石を
ジャイアンやしずちゃんに自慢し、
のび太だけ仲間はずれにして、
全然見せてくれません。

のび太は例のごとく、
「僕だって、恐竜の化石を見つけてやる」
と大見栄をきり、

あくる日から化石の発掘に勤しみます。

そして、見つけたのが、楕円形の岩石でした。

ドラえもんに見せても
「ただの石なんじゃないの」と、
鼻であしらわれてしまいます。

ところが、
これにタイムふろしきをかけて、
時間を巻き戻してみると、

のび太の言うとおり、
これが大きな卵だったのです。

周りに隠しながら、
卵をふ化させることに成功すると、
かわいらしい恐竜の赤ちゃんが
生まれてきました。

恐竜の赤ちゃんは
「ピー助」と名付けられ、
卵からかえった時にはじめて見た
のび太のことを親のように慕います。

このエピソードは、
『のび太の恐竜』の
タイトルが示す通り、

のび太とピー助の
親子愛のようなものが
メインテーマになっていて、

なんと言っても、
二人の仲が微笑ましいです。

『ドラえもん』においては、
のび太がはじめて見せた
親心ではないでしょうか。

また、ピー助の表情やしぐさが
これまた愛くるしいので、
二人の出会いと別れが
より一層胸に響くのです。

ひみつ道具を使った
物語の組み立て方

ピー助のことを周りに隠しながら、
育てていくわけですが、
徐々に自宅には収まらないほどの
大きさになってしまいました。

ドラえもんとのび太は
タイムマシンに乗って、

ピー助が本来、
生きていたはずの時代に
帰してあげようとしますが、
簡単にはいきません。

ピー助を突け狙う黒い影が
二人に迫っていたのでした。

タイムマシンが
故障してしまったことによって、
いつものメンバーを巻き込み、
(ジャイアン、スネ夫、しずちゃん)

恐竜が生きていた時代での
大冒険がはじまります。

『ドラえもん』といえば、
子どもの頃にみんなが
空想するような

「こんなこといいな、できたらいいな」
というアイテムが登場するのが、
作品の肝ですよね。

ストーリーというよりも、
そのアイテムが
おもしろいというのが、

子どもの頃に観た
『ドラえもん』の印象です。

大人になった今、読み返してみると、
藤子・F・不二雄は
物語の組み立て方が
本当に上手いと感じます。

『大長編』シリーズは、
歴代のひみつ道具が
多く出てくる作品なので、

ともすれば、
なんでもアリのストーリーに
なりがちなところを

しっかりと制約を設けて、
ひみつ道具を
物語の骨子に仕立てています。

なおかつ、
自然なストーリーの流れの中で、
決して作者の「ご都合主義」を
感じさせない点が凄いですね。

最近、藤子・F・不二雄の歴史を
調べていて、

有名な『ドラえもん』
『キテレツ大百科』などの他にも
たくさんの作品を
手掛けていたことを知りました。

その中で、
ドラえもんの『大長編』シリーズが
はじまる少し前の頃には、

『ドラえもん』とは
異なる新しいタイトルを
多く手掛けていた時代もあります。

(『T・Pぼん』‘78~86、
 『ミラ・クル・1』‘79など)

それらの作品の中では、
長編のストーリーを
描くことに力を入れていたようで、

そこで培われたものが
『大長編』シリーズに
引き継がれたのでしょうね。

壮大な冒険物語

『大長編』シリーズと言えば、
いつもの仲間たちとともに、
異世界を旅する楽しさが魅力的です。

「いつもの仲間たちとともに」
というところがミソですね。

定番のところで言うと、
のび太がいつになく勇ましかったり、
ジャイアンがいい奴だったり、

「いつもの仲間」が
いつもとは違う表情を
見せてくれるのが醍醐味です。

私も遠い昔の子どもの頃、
『ドラえもん』の映画を観ながら、
親も先生いない世界で旅することに
憧れを感じたものです。

そんな中にも、ちょっとだけ、
お母さんのことを思い出して、
ホームシックになる姿が描かれたり、

リアルな子どもの姿に
共感できるところが、
『大長編』シリーズの
いいところです。

藤子・F・不二雄は、
過去の作品が
アニメ化する際に、
(『モジャ公』だったはず)

「家出」を「いいこと」のように
描いたストーリーを
改めさせたという話を
聴いたことがあります。

この『大長編』シリーズも、
子どもたちが
現実世界とはかけ離れた世界に行き、

大冒険を繰り広げる話
ではありますが、
最終的には家族が待っている
おうちに帰り、

日常に戻ることを
前提とした冒険譚です。


【作品情報】
初出:『月刊コロコロコミック』
   1980
著者:藤子・F・不二雄
出版社:小学館

【作者について】
1933~1996。富山県生まれ。
’51年、藤子不二雄として
(藤子不二雄Ⓐとのコンビ)
『天使の玉ちゃん』でデビュー。
‘88年、コンビを解消。
代表作『オバケのQ太郎』
(‘64~’66/藤子不二雄Ⓐとの共作)、
『パーマン』(‘67)、
『ドラえもん』(’69~‘96)

【アニメ版】


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