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一人のクリエイターとして、京都アニメーションへの想いを綴る

7月18日に起きた「京都アニメーション放火事件」。日本史上に残る悲惨な事件はアニメファンという枠を超え、世界中の人々をショックと悲しみで包みました。
僕もその中の一人で、この二日間は頭がずっとグチャグチャしており、どこかに吐き出さないと心が耐えられなかったのでこのnoteを書くことにしました。

最初の報道から時間が経つに連れ、犠牲者がどんどん増えていく。現場検証が進むに連れ、その悲惨さがより鮮明になっていく。悲しみや悔しさという言葉では表現できません。心よりご冥福をお祈りいたします・・・

京都アニメーションという会社は僕にとって本当に大切で、思い出が詰まった会社。この会社が世に送り出した作品たちで僕の青春は彩られ、人生観は大きく変わり、クリエイターとして成長することができました。いわば恩人みたいなものです。就職も考えたほど。

「数多くの名作アニメを世に送り出した・・・」
「けいおん!などの作品で知られる・・・」

ニュース番組の報道でそういった解説がなされ、アニメの映像が流れる度に心臓がキュッと締め付けられます。こういう形で『けいおん!』とかの映像をテレビで観たくはなかった・・・

『けいおん!』が僕のアメリカ生活に彩をもたらした

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19歳、アメリカへ留学したときのこと。寮にはたくさんのウェイウェイした白人系アメリカ人たちが住んでおり、共通の趣味などあるはずもなく、新しい環境に馴染むことができない僕は友達を作ることができませんでした。

そんな僕を救ったのが『けいおん!』でした。

ある日、一人の学生が部屋でギターを弾いていました。彼はいわゆる長身かつブロンド系の白人。イケメンで髪は長く、めちゃくちゃチャラそうなやつが大音量でギターを弾いている。

「ぜったい仲良くなれへん」

そう僕は決めつけていたのですが、ふとギターを見るとそれはGibsonの「レスポールスタンダード」。ギターにはそんなに詳しくないのですが、このギターだけはなぜか知っていました。

そう、『けいおん!』主人公の平沢唯が演奏するギターです(通称ギー太)。

「それってレスポール?」

僕は思わず声をかけてしまいました。彼は謎のアジア人から急に声をかけられたことにビックリしつつも、非常に嬉しそうな表情をしました。というのも、ギターの銘柄に詳しい人が周りにはおらず、しかも極東から来た男が知っているとなれば彼からすると天変地異のようなこと。

(当時の写真。まんま平沢唯。)

早速、ぼくはそのギターがなぜ日本で有名なのか?『けいおん!』とはどういう作品か?を色々と教えてあげました。彼自身はアニメなんて全く観ないし知らない人だったのですが、やはり音楽関連ということで『けいおん!』には興味津々。北米版のブルーレイを2期まで購入し、一緒に全部鑑賞しました。

その3年後には一緒に京都アニメーション本社にも訪問をしています。

そんな彼とはもう8年の付き合いで、昨年は親友代表としてアメリカでの結婚式にも招かれました。『けいおん!』がなければありえなかった出会い。京都アニメーションのおかげで僕のアメリカ生活は彩り豊かな楽しい生活となりました。

僕の世界を広げてくれた『氷菓』

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僕が一番好きなアニメ、『氷菓』。好きすぎてブルーレイを持っているのにブルーレイボックスを購入したぐらい好きです。ポスターを額縁に入れ部屋に飾るぐらい好きです。本当に最高なんです。

2012年に『氷菓』を観たとき、僕の中におけるテレビアニメの定義が根底から覆されました。日常で起こる些細な出来事をここまで美しく、面白く、魅力的に描くことができるのかと驚愕しました。

なによりも作品やキャラクターへの愛が繊細な描写を通じて表現されており、心の温度や体の体温が感じられるようなアニメーション。キャラクターの心情がひしひしと伝わる演出。作り手のみなさまの情熱や優しさが反映されている結果だと思います。そんな綿密な描写方法やカット方法などを当時の僕は細部まで研究し、自身の初監督作品に反映をしました。

今でもコンテンツ制作にて人物を描くときは京都アニメーションの作品を参考にしています。

なぜ我々は「創る」のか

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京都アニメーションの企業理念って本当に素敵で、クリエティブ・クリエイターに対する真摯な想いがぎっしりと詰まっているんですよね。

クリエイターというのは世の中をよりよい世界にするために、日夜頑張って幸せを届ける物語を作っています。京都アニメーションという会社はまさにそうで、創る人も、創ったモノを楽しむ人も、みんなを幸せにしてくれる。

ロゴマークにも書かれているとおり、一人一人のスタッフが「創造」に携わっている。一人がみんなを、みんなが一人を大切にし、優しさと情熱のこもったストーリーを生み出している。

そんな僕たちの人生を変えてくれた、たくさんの名作たちを世に送りだした作り手たちの尊い命が、一瞬にして絶たれました。

たつき監督のツイートが、僕が抱いている想いそのまんまでした。

文化の消失

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世界の財産である京都アニメーションの人材と作品。八田社長がおっしゃっていましたが、過去の作画や資料なども「一切合切ダメ」と全てが焼失されたとのこと。そう、もう何もかもがないんですよ。

海外メディアがこういう見出しをつけて報道していました:

「人類と芸術における多大なる損失」

下記のツイートがこのやるせない想いを代弁してくれています。

何十年も、みんなで一生懸命頑張ってきて、世界中の人々に物語を提供し、夢と希望を与え、よりよい世界を作ろうとした。それが1日で全て消えた。
僕たちクリエイターはなんのために頑張って創っているのでしょうか。

人生とはなんなのでしょうか。

最後に

社員、経営者、ご遺族の方々、ファンのみなさま。また元の生活に戻るのには時間がかかると思います。僕も少しでもお役に立てられるのであれば貢献をしたい。アニメイトさんが募金を募り始め、続々と支援が集まってきている様子。会社からの募金の呼びかけもあるかもしれない。そういった部分からでも少しづつサポートできればと思います。

一ファンであり、一クリエイターとして、これからも京都アニメーションを応援し続けたいと思います。

下記のファンアートによって非常に元気付けられました。この出来事を忘れずに、僕自身も創り続けていきたいです。

https://www.facebook.com/sydusart

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