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バクチク現象2023

はじめに。
わたしはレポートが下手です。
感想文も子どもの頃から苦手です。
短期記憶が弱いです。
でも、会場に行くことが叶わなかった方とお約束をしました。
お見苦しいとは思います。記憶違いも多々あると思います。
ポンコツなわたしなりの思い出をとりとめもなく綴ります。
ご容赦ください。


開演。
BUCK-TICKのテーマが流れ、スクリーンには回転する逆ピラミッドに刻まれた数々の「BUCK-TICK」のロゴが投影されました。
これまでの歴史を辿るように流れていくBUCK-TICKの姿。

そしてメンバー4人の登場。
最後にステージ上段の中央に等身大の櫻井さんのシルエットが映し出されました。

どんなコンサートだったか大きく結論だけを言えば、メンバー生演奏に合わせて、櫻井さんの声と映像が流されていくというスタイルでした。

はじめは、スクリーンに櫻井さんの歌う姿は投影されませんでした。
声はあるけれども姿はない。
「不在」という現実を突きつけられました。

コンサートの進行の中で、ときおり差し込まれるスクリーンの演出。
縦に五分割されて演奏しているメンバーが映し出されます。
左から今井さん、アニイ、何も映っていない黒み、ゆうたさん、星野さんという並びでした。
(この演出は、曲によって時折差し込まれます。最後もそうでした)

今日の進行はずっとこのままなのもしれない。
それがBUCK-TICKの決めた未来なら、「不在」という現実を受け入れていくひとつの修行として受け止めよう。
辛いけれど悲しいけれど、覚悟を決めました。

けれど、3曲目だったでしょうか。
声だけでなく、櫻井さんのこれまでのステージでのパフォーマンスも映し出されました。
姿が見られた安心感と、ステージにはいない喪失感が同時に襲ってきました。

そこからは櫻井さんの姿ありの曲、なしの曲、様々でした。
スクリーンの中の櫻井さんは、変わらず美しくて優しくて心に響く歌声を届けてくれました。

スタッフさんの技術に唸りました。
ステージで展開されている曲とは違う曲のプロモから、うまく口のカタチが合う瞬間を引っ張ってきて編集されたものもありました。

(短い時間の中でそのアイディアを出した方も、繋げた編集さんもあっぱれですよ!)

順番は前後するかもしれません。

愛しのロックスター
アニイの還暦ライブのときの映像が使われました。
スクリーンの中で、ISSAYさんと楽しそうに歌う櫻井さんの姿がありました。
今年逝ってしまった二人の共演。
かなしい愛しいサプライズでした。

緊張が走った瞬間があります。
序盤だったかもしれません。

静寂の後、ブルー暗転の中で、上手から黒衣のマントの人物が現れました。
深くフードをかぶり、ゆっくりと燭台の3本の蝋燭に火をつけていきます。
「誰? まさかゲストボーカルの登場だったりするのだろうか。お願いだからそれだけはしないでほしい」
と強く願いました。
「一体アレは誰なんだろう。この後何をするのだろう」
という不安と緊張が会場を包んでいた気がします。

その人物は燭台をステージのセンターに置き、去っていきました。
胸を撫でおろしました。
同時に、メンバーや運営はわたしたちファンの気持ちをわかってくれているという安心にも繋がりました。
Lullaby Ⅲ
Romance
スクリーンで燭台を持ち歌う櫻井さんと、ステージ中央に立つ燭台を見ながら聴きました。

その後は、不安はほとんどなく楽しめました。
「ほとんどなく」というのは、やはりどこか未来への一歩でありながら、もしかしたら結末になってしまう可能性もあると思ったからです。
あまりに、あまりに過去の映像を走馬灯のように見せていくからです。
正直、怖かったです。

アニイの表情がとてもかたかったのも気がかりでした。
一人でもいなくなったらBUCK-TICKは終わりと言っていた人です。
ファンクラブの会報でバンドの継続を発表してくれてたとはいえ、やってみたけれどダメだったということもあるからです。

人の心は変わります。
わたしたち以上の深い哀しみをメンバーは背負っています。
信じていないのではなく、感情が捉えにくい表情たったがゆえに想像できなかった。
悪い方に想像してしまう自分が怖かった。

今井さんが、何度も何度も客席に声をかけてくれてました。
星野さんがいつも以上に歌っていました。
櫻井さんの姿だけがない「いつも通り」と「いつもと違う」が同居している時間でした。

FUTURE SONG
今井さんの櫻井さんのツインボーカルの曲です。
でも今回、星野さんがしっかり歌っていました。
星野さんが歌っていけそうなものは歌っていく、そのトライでもあったのかもしれません。

わたしは星野さんの声が好きです。星野さんがコーラスで入る曲が好きでした。櫻井さんとのハモリはとくに大好きでした。二人の声の相性は抜群だからです。

ABRACADABRAの『月の砂漠』『ダンス天国』は、やっとその時代が来た! と興奮しました。
もっともっと二人のハーモニーが聴きたかったです。

さくら
スクリーンの縁に咲く桜の花。右上に月。
その中央で歌う、大写しの櫻井さん。
お母さんの死と向き合い綴った歌詞を聴いているわたしたちは、今、あなたの死と向き合っているよ。
もうお母さんには会えましたか?
そんなことを思いました。

太陽とイカロス
ホールツアーで見た映像とともに櫻井さんの姿はなく、声と生演奏で届けられました。

memento mori
櫻井さんが客席にライトを順に当てていく映像に合わせて、同じ角度でステージ上から客席を照らすライトがありました。
まるで今、櫻井さんが客席にライトを向けているかのように。

いないけれどいる。
ゆっくりと不在を受け入れていく儀式のようでいて、でも姿はなくても想いは言葉は声は「今、ここにいる」と思わせてくれる演出でした。

アンコールでのMC
(すべてニュアンスです)

最初はゆうたさん。
結成からの歴史を辿り、思いを語ってくれました。
堪えきれず涙を流す一コマがありました。
「BUCK-TICKは5人です」
という力強い言葉をくれました。

アニイがゆうたさんを褒めました。
アニイの口から「BUCK-TICK第2期」という言葉がありました。
表情のかたさ、その真意にそれまでの不安は杞憂だったとこのときにわかりました。
アニイが大丈夫なら大丈夫だと思えました。

兄弟のコメント中、ギターズの二人は椅子に座っていました。

星野さんの番がきて、マイク前に立ちました。
「不安だったよね」という言葉のあたたかさに涙がこぼれました。
「パレードは続きます」と言ってくれました。5人で続けるのだと。
いつもコメントはチャラいのに、しっかり決めてくれてモーレツにかっこよかった!

今井さんはたくさん話してくれました。
「なに死んでんだよ」「あっちゃんはそのへんにいる」「泣いてもいい、号泣してもいい。でも苦しまないで。あっちゃんが死んだことよりも、生きていたことを大切にして」

LOVE ME
冒頭、アクシデントがありました。
櫻井さんの「自分を愛して(愛しましょう)」という曲入り前のMCの途中で、アニイが叩き出してしまったのです。
「やっちまった!」という感じで笑うアニイがスクリーンに大写しになりました。
(そういうところをしっかり抜くカメラマンさんと、スイッチング担当の方のセンスが抜群です。ファンの「見たい」瞬間をちゃんと捉えてくれる)
会場の空気が和らぎました。
アニイの笑顔が見られて良かった。

仕切り直して曲に入ったのですが、今度は入りのタイミングが変わったことによって、櫻井さんの声と映像の櫻井さんの口が合わないという事態が起きました。
こ、これはどうなるのか? やりなおしか?
固唾をのんで見守っていると、櫻井さんの声が消えました。
(どうにか合わせようと技術スタッフさんが調整をめっちゃ頑張ってる時間です、きっと)

オーディエンスの我々は、目の前のメンバーの演奏に合わせて歌い、手を振りました。
(この曲はみんなが車のワイパーのように手を振ります)
このトラブルを我々が繋ぐんだ! という想いで一体となっていました。
映像のズレとボーカルの消音は、メンバーよりも先に、わたしたちが気づいていたと思います。

しばらくして星野さんがスクリーンを振り返りました。
アイコンタクトでトラブルが伝わり、メンバーもどうしようか演奏しながら探っているようでした。
でも、さすが今井さんです。
「ここだ」という瞬間を掴み、立て直しました。
いや強引にみんなで(メンバーだけでなく、オーディエンスの我々も含めた“みんな”で)やりきったという方が近いかもしれません。
櫻井さんの不在をみんなで乗り切った一曲となりました。

終盤にも櫻井さんの姿を映さない曲がありました。
最後にもう一度、現実をつきつけられました。
あえて「不在」を見せる演出。
改めて、これは心の修行だと思いました。

死を否定せず、受け入れていく。
櫻井さんの綴ってきた歌詞にもあった心のように思います。
櫻井さんはその死生観をわたしたちに伝え続けてきました。
それを現実として受け入れていくことを教えられている気がしました。

つらい時間でした。
悲しい時間でした。
けれども楽しくてカッコイイ時間でした。
いつもと変わらないものと、変わってしまったものが混在する時間でした。

アンコールが終わり、終演かと思いました。
最近は、長めのアンコールが1回あってエンディングの映像のコーナーになるからです。
ところが照明が変わらない。
察したオーディエンス、すぐにアンコールを手拍子が始まります。

メンバーがすぐに再登場しました。
そして、New World
2回目のアンコールはこの1曲でした。

エンディングの映像の後、来年の武道館の発表がありました。
客電がついた後のことです。
いつもならば、すぐに終演のアナウンスが流れます。

ところが。
スクリーンに「BUCK-TICK」の文字が映されました。
またいつもとちがう演出。
悪の華が流れ出しました。音だけです。
戸惑いながらも退出する人、客席で曲に乗る人、様々でした。
曲の途中で終演のアナウンスが入りました。
お見送りの曲としてかけてくれていたのでした。

それでも、かかっていたら聞いてしまいます。
時間が許す人たちは、曲の最後まで聴ききったのではないでしょうか。
曲が終わり、自然と拍手が湧き起こりました。

そこには、BUCK-TICKへの感謝と、この時間を共有した人たちは「大きな喪失を受け止め、新しい一歩を踏み出したね。お疲れ様。自分たちもよく頑張ったよね」という労いと、この場に来られなかった人へ「ちゃんと見届けたよ」という想いが込められていたのではないかと想像します。

さいごに。
どの曲のときだったか記憶が定かではないのですが、櫻井さんの存在を感じる時間がありました。
櫻井さんは武道館の最後列まで、歌を表現を届ける人です。いつも櫻井さんの想いで空間が満たされるのです。

いつもと変わらない感覚。もしかしたら演出による錯覚かもしれないけれど、空間を満たす存在がふと訪れた瞬間があったんですよ。
たぶんほとんどの人が感じたのではないかと思います。
いないのにいる。不思議なステージでした。
だから、今井さんの「あっちゃんは、そこら辺にいます」には深くうなづいてしまいました。

どの曲だったか記憶が定かではないのですが②
曲終わりで、ステージ上段の中央に櫻井さんの等身大のシルエットが映りました。
始まりと対になるような演出でした。

素敵な時間でした。
これまでと同じBUCK-TICKにはなり得ない。
五つの星がそこにあるとして。
ひとつの実体は消えてしまった。
その欠けたものは、記録に残された声と姿と、そしてわたしたちの想いで埋めていくのかもしれないと思いました。

常々、BUCK-TICKについて感じてきたことがあります。
ことあるごとに Twitterに書いてきました。

変化し続ける普遍。まるで宇宙。

きっとまたいつものように変わるんですよね。
いつもとは違うカタチで。
4人になっても5人というBUCK-TICKの姿に。
ファンも一緒につくるBUCK-TICKに。
そんな気がしました。
LOVE ME での一幕が、それを物語っていたとわたしは感じました。


(セットリストを振り返って思い出したことがあったら、加筆修正します)


以下は、 コンサート直後にTwitterに勢いで綴って取り下げたものです。

一瞬一瞬がかなしくてたのしくてかっこよくてやさしくて、メンバーの決意のコメントを聞くまで緊張しっぱなし。アクシデントもあってヒヤヒヤしたり、そこはいつものライブで。でもいつもと同じじゃなくて。楽しいけどみんな大きな修行をしてきたような感じ。お見送り曲に悪の華という粋な計らい。人生は愛と死。

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