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SDカードの規格と動画撮影の話(長い)

①前置き(長い)

今どきは、そこそこの値段と容量のSDカードであればFullHDの動画なんぞ難なく撮れてしまうので、あまりSDカードの速度を気にしたことのある人はいないと思う。

特に、僕が所属していた某大学某放送研究部では、某大先輩のチョイスにより部のスタンダードと化しているSDカードがあり、とりあえず同じ物を買っとけ!という人も多くいた気がする。
(勿論、基本的にはそれで全く問題無い。)

しかし近年、お手頃価格で簡単に高ビットレートの4K動画が撮れてしまうようなカメラが多数発売されており、またSDカードの速度(というかその規格)を気にする必要が出てきたように感じられる。

2016年のCP+(多分)で、新たに「ビデオスピードクラス」が発表されたのもそうした背景があった為だろう。
規格多すぎてゴチャゴチャだけど。
(それを一旦整理したくてこのnoteを書いている節もある)

僕自身、LUMIX GX7MK2を購入したことで4K動画とミラーレスに(若干だが)目覚めつつあり、改めて動画のビットレートとSDカードの速度の関係、規格ついて調べ直し、まとめてみることにした。

以下、あくまでも「一素人の認識」なので、細かなミスはお赦しくだされ…
明らかにこれ間違いだよっていうのがあればご指摘下さい

②動画のビットレート(Mbps)をMB/sに変換する

動画のビットレートは基本、
Mbps(メガ ”ビット” パー セコンド)という単位で表される。
この動画のデータ量は1秒間にうんちゃらメガ"ビット"です、ということ。
対して、SDカードの転送速度なんかは、
MB/s(メガ "バイト" パー セコンド)という単位で表される。
1秒間にうんちゃらメガ "バイト" を転送出来ますよ、ということ。

同じビーでも、小文字bは"bit"、大文字Bは"Byte"なのが紛らわしく感じられるかも。
パーは/なので、MbpsをMb/s、MB/sをMBpsと表記しても間違いではないし、実際にそう表記している商品やWebサイトもある気がするが、混乱を避ける為に、MbpsとMB/sで分けるのが一般的という印象。

んで、1Byte = 8bit(さすがに皆知ってるよね?)なので、
1MB/s = 8Mbpsということになる。

理論上は、SDカードの転送速度が動画のビットレートを下回らなければ、「カードへの書き込みが間に合わなかったので記録を停止しました」なんて事態にはならないはず。

つまり、
"記録したい動画のビットレート(Mbps)を8で割れば、
その動画の記録に必要な、SDカードの最低限の書込速度(MB/s)が分かる"

ということ。簡単ですね。多分。
つまり、

24Mbpsの動画なら最低書込速度は3MB/s
100Mbpsの動画なら最低書込速度は12.5MB/s
400Mbpsの動画なら最低書込速度は50MB/s

勿論、あくまでも超てきとーに計算した必要最低限の速度なので、それ以上の速度を「キープ」出来るのが重要。

③SDカードのラベル・パッケージの速度表示は罠

じゃあさ!!とりあえず40MB/sとか60MB/sとか書いてある安いの買えば4Kとか余裕ぢゃん!?!?90MB/sとか200MB/sとか高いだけぢゃん!?!?
はい、罠です。
まず第一に、

本体やパッケージの転送速度表示は"メーカーの自称最速値"にしか過ぎない

ということ。
第二に、

一つしか速度が書いていない場合は、だいたいは"読込速度の最速値"のみ

ということ。
一般的に、フラッシュメモリの書込速度は読込速度よりも遅くなる為、あえて表記しないのでしょう。
※スペース的に読込速度しか表記されていないというケースもあります※

つまり、90MB/sとだけ表記されているカードは、

あくまでも例です、画像はトランセンドより


「メーカーが最速で読込90MB/s出ると言ってるだけ。実際の読込速度はそれより遅いかもしれないし、書込速度に至ってはクソ遅いかもしれない」
ってことなんですね。
まあ、読みで95MB/s出るってことは結構良いSDなのは間違いないんで、クソ遅いなんてことは無いでしょうけど、
"Class10"や"U1"で保証されている最低速度、10MB/sという数値まで落ち込む可能性も理論上はあり得る訳です。
(最低速度保証の規格については後述)

あくまでも例です、画像は東芝より

こちらの例の場合は、R(読み)95MB/s、W(書き)90MB/sと表記されているので、読み書き共に、それに近い速度が期待出来ます。
ただしこれも、最高速度はメーカーの自称値に過ぎず、実際の速度は、規格で保証されている最低速度10MB/sの付近まで落ち込む可能性も0ではありません。

メーカーサイトには、最高速度について

東芝の試験結果に基づいています。実際の読み出し / 書き込み速度は使用する機器、ファイルサイズ等の条件によって異なります。

と注意書きがあります。

ただ実際のところは、「メーカー自称の最高速度」は大体それに近い数値が出るので、そこは過度に心配をする必要はありません。
あまりに違う速度が出るとさすがに問題でしょうし。

ただし、あくまでも"最高速度"なので、瞬間的にその速度が出たとしても、連続的にその速度が出続けるとは限らない、ということだけ覚えておいて下さい。
特に動画撮影はまさにその"連続的"な使用になるので、要注意です。

④最低速度を保証する規格「スピードクラス」

もちろんそんな酷いことをするメーカーはそういないでしょうが、理屈では
どんなにクソ遅いカードでも、最高速度を盛りまくって販売することは可能
な訳です。

それでは困るので、SDカードの最低転送速度(読み・書きどちらも)を保証する、「スピードクラス」という規格があります。今現在では下記の3種類。

画像はSDアソシエーションより

・SDスピードクラス 
Class 2からClass 10まで。それぞれ、クラス数MB/sの最低転送速度を保証。
つまりは、10MB/sがこの規格で保証できる最低転送速度の上限。
基本的には、ほぼ全ての機器との組み合わせに適用される規格。
ロゴマークは、アルファベットのCの中にクラスの数字。
・UHSスピードクラス
UHSというインターフェイスでデータ転送する際に適用される。
クラス1(通称U1)、クラス3(通称U3)の2つが存在。
ロゴマークは、アルファベットのUの中にクラスの数字。
U1で10MB/s、U3で30MB/sの最低転送速度を保証。
UHSについては後述。(スピードクラスと非常に紛らわしい)
・ビデオスピードクラス
動画記録を考慮したスピードクラス。
V6からV90まで。それぞれ、クラス数MB/sの最低転送速度を保証。
ただし、V30はUHS-I(*)以上対応のSDカードのみ。
V60、V90はUHS-II(*)またはIII(*)対応のSDカードのみ。
ロゴマークは、そのまんまアルファベットのVとクラスの数字。
*UHS-I、UHS-II、UHS-IIIはUHSの規格であり、上のUHSスピードクラスとは別物なので要注意。


これらは、SDカード全体の規格として定められているので、メーカーの自称値に比べるとかなり信用のおける規格です。

UHS非対応の機器&SDカードの場合、SDスピードクラスとビデオスピードクラスのV6/V10が適用され、
UHS対応の機器&SDカードの場合、UHSスピードクラスとビデオスピードクラスのほぼ全てが適用されます。
(V60とV90は、UHS-IIまたはUHS-IIIのみ)

同じ保証速度でも、ビデオスピードクラスの方がより動画記録に適した基準での数値になっている(はず)なので、超高ビットレートの動画を扱う場合は他の規格よりもビデオスピードクラスを基準に考えた方が良いでしょう。

UHSスピードクラス3で30MB/sが保証されているのにも関わらず、ビデオスピードクラスでは10MB/s保証のV10になっている、なんて製品も存在しているので、つまりそういうことかと。

⑤UHSとUHSスピードクラス

UHSスピードクラスの項で、UHSなるワードが出てきました。
"UHS"は、"Ultra High Speed"の略で、SDカードの高速転送インターフェースの名称です。
ネーミングセンスよ

インターフェースと言っても、通常のSDカードとカードの形状は同じで、互換性もあります。データの転送方式(や転送クロック)が変わっているだけです。
※UHS-II以降では端子の数が増えます。詳しくは後述

現在、UHSには

UHS-I→最大転送速度 104MB/s
UHS-II→最大転送速度 312MB/s
UHS-III→最大転送速度 624MB/s

の3つの規格があり、これらのUHSに対応したSDカードは、従来のSDカードより高速なデータ転送が出来るという訳です。

ただし、UHSを使用するには、SDカードだけでは無く、機器側もUHS規格に対応している必要があります。片方だけがUHSに対応していても意味がない…

また、UHSには後方互換性があるため、SD/機器がUHS非対応・UHS-I・UHS-IIのどの組み合わせでも特に問題なく使用できます。

ただしその場合、非UHSとUHS-I/UHS-IIの組み合わせなら非UHSでの転送、UHS-IとUHS-IIならUHS-Iでの転送、と行った具合に、転送に使用される規格は下位の規格に合わせる形になります。

ちなみに、今現在はSDカード/機器共にUHS-I対応の物がほとんど

UHS-IIの場合は、カード自体が高価な上にUHS-IIに対応している機器も上位〜最上位クラスのカメラ等に限られており、まだまだ普及率は低めです。
UHS-IIIはそもそも2017年に発表されたばかりの規格で、対応製品は出ていません。

赤丸で囲い拡大したローマ数字がUHS-I/UHS-IIを表しています。
UHS-Iモデルが最高速度95MB/sに対し、UHS-IIモデルはなんと300MB/s。
UHS-Iでは規格自体の限界が104MB/sで、それ以上の速度は出せない...
元画像はSandiskより。

また、UHS-IIのSDカードは接続端子の数が増えているので一目で見分けがつく。
追加されたもの以外の端子の配置は従来どおりなので、UHS-II非対応の機器とも互換は効く。
画像はLEGITREVIEWSより。


次に、UHS"スピードクラス"の話。
④のスピードクラスで説明した通り、これには

UHSスピードクラス1 (U1)→最低転送速度10MB/s
UHSスピードクラス3 (U3)→最低転送速度30MB/s

の2つのクラスがあります。
UHSスピードクラスは、
"UHSでデータ転送を行う際に適用されるスピードクラス"
であり、UHSそのものとは別の規格です。

また、UHS非対応のSDカード/機器を使用する場合は、UHSスピードクラスは無効となります。

UHSは、データ転送のインターフェイスの規格。
対してUHSスピードクラスは、最低転送速度を保証する規格
です。
非常に紛らわしいですが、

UHSがローマ数字(I、II、III)
UHSスピードクラスがギリシャ数字(1、3)

で表されているので、そこで見分けるようにしましょう。
また、UHSスピードクラスに"2"はありません。

赤丸で囲ったローマ数字がUHS、
青丸で囲ったギリシャ数字がUHSスピードクラスを表す。
つまり、左のSDはUHS-I・UHSスピードクラス1(U1)、
右のSDはUHS-II・UHSスピードクラス3(U3)に対応しているということ。

元画像はTrancsendより。

紛らわしい出品の一例。
商品名に「UHS-3」とあるので、UHS-IIIに対応した超最新鋭のSDカードかと思いきや、実際は「UHSスピードクラス3」を略しただけ。
このSDカードのUHSは「I」だ。そりゃそうか。

⑥実際にSDカードのラベルを見てみよう

ここで3つほど例を出しますが、ぜひ皆さんもお手元のSDカードで試してみて下さい。

以下、各SDカードの製品画像はAmazonより

初手から変化球(?)、microSD。

超小型なmicroSDの世界でも、ここで紹介した規格の知識は通用します。
各表記の説明は画像の通りで、このmicroSDの場合、
保証される最低転送速度は30MB/s(U3とV30)となります。

ただし、U3とV30はどちらも"UHS"対応が必須となるクラスなので、UHS対応していない機器にこのSDカードを使用する場合、保証される最低速度は10MB/s(SDスピードクラス10)に落ちることになります。

※SDスピードクラスの表記が無いのは、microSDで表記を入れるスペース的余裕が無い為でしょう。
UHSに対応しているようなSDはまず間違いなくSDスピードクラス10も満たします

UHS-Iに対応するカメラなら、最低でも30MB/s≒240Mbpsの書き込み速度は出る訳なので、なかなにイケてるmicroSDですね。

お次は、モンスタースペックのSDカード。
各表記は画像の通りですが、見るからにメチャ速なSD。

このSDの場合、保証される最低転送速度は、

UHS非対応機器の場合:10MB/s (SDスピードクラス10)
UHS-I対応機器の場合:30MB/s (UHSスピードクラス3)

※④で軽く触れていましたが、V90はUHS-Iでは適用されない規格なので注意が必要。
UHS-II対応機器の場合:90MB/s (ビデオスピードクラス90)

となります。

UHS-II対応カメラとなら、90MB/s≒720Mbpsの動画も撮れる!!
もはや凄すぎて想像もつかない!!!
これぞ正に、きたる8K時代を想定したSDカード、ということなんでしょう。

ラストは、このnoteの冒頭で触れた某放送研究部御用達のSDカード。

各表記の説明は画像の通りですが、速度に関してだけ言えば、
規格で保証される最低転送速度は10MB/s
ということになります。

10MB/s≒80Mbpsあれば大抵のフルHD動画は余裕で撮れますが、100Mbps前後がスタンダードとなる4K動画では雲行きが怪しくなってくるでしょう。

実際にこのSDカード数枚で速度テストを行ったところ、ほとんどの個体が読みで80MB/sオーバー、書きで70MB/sオーバーという良好な結果が出たので、ほぼほぼ問題は無いはず。

ただし、2枚ほど書きが20~40MB/sしか出ない個体も存在したので、こういったSDで高ビットレートの動画を撮るのは少なからず運の要素が絡んでくる、ということになる。

なぜなら
あくまでも"保証される最低速度"は10MB/sに過ぎないのだから...

※実際にこのSDカードで、LUMIX GH4の"4K 24p ALL-Intra 200Mbps"を撮ろうとして「SDカードへの書き込みが間に合わない」と記録が停止した事例があります。
200Mbpsでも、書き25MB/sあれば問題無いはずなのに...

⑦2018年夏現在、一眼カメラ4K動画事情!!

SDカードの速度(特に"最低保証転送速度")が大事なのは分かったけど、実際今の一眼動画のビットレートってどんくらいなの...?という話。

記憶の範囲内で現行機種の4K動画の最高ビットレートを列挙していく。

・Nikon D7500/D500/D850→100Mbps
・Canonは4Kに対応してない機種ばっかなので確かめていない
・Fujifilm X-H1→☆200Mbps☆
・Fujifilm X-T2/X-Pro2/X-T20→100Mbps
・Sony α6300以上→100Mbps (*1)
・Olympus E-M1 Mark II→☆237Mbps☆
・Panasonic Lumixのほとんど→100Mbps
・Panasonic Lumix GH5/GH5S→☆400Mbps☆(!?!?) (*2)
・Panasonic Lumix GH4→☆200Mbps☆ (現行機種じゃないけど一応)

とまあ、こんな具合である。
ほとんどの機種は100Mbps前後だが、動画にやたら気合の入った機種になると200Mbps以上になってくるということです。

特に、LumixのGHシリーズはガチ動画機なので、さすがとしか言いようがない。(4KでなくFullHDでも当たり前のように100Mbpsとか200Mbpsとか出してくるから怖い)

もし、こういった一眼カメラたちで4K動画を撮るのなら


100Mbps(≒12.5MB/s)、200Mbps(≒25MB/s)の動画を撮りたい!!
→UHS-I、UHSスピードクラス3、ビデオスピードクラス30以上

400Mbps(≒50MB/s)の動画を撮りたい!!("今は"そんなん撮れるの自体が2機種しかないが…)
→UHS-II、ビデオスピードクラス60以上

のSDカードを買おうね!!
メーカーの自称最高値や、速度テストの速度だけしか見ていないと、
痛い目をみるかもしれないよ!!!


というのが結局言いたいことでした。
なんかメチャクチャ長くなったけど、誰か暇な人が読んでくれて、何かの手助けになったらラッキーですね。


*1
SONYのαシリーズの場合、そこらのSDカードで4K 100Mbpsを撮ろうとすると
「UHSスピードクラス3のカードじゃねーと撮らせねーよ!!」
と門前払いされました。
60Mbpsに落とすとOKです。
つまり"そういうこと"なんでしょう。



*2

LUMIX GH5 / GH5Sは、400Mbpsという超高ビットレートの4K動画が撮れてしまう。
(MOV、4K24p、All-Intra、4:2:2、10bitで400Mbpsだったはず)
(納得の超高画質オールスター感)

理論上、400Mbpsを撮り続けるには、SDカードの書き込み速度は50MB/sあればいい。

だったら、

自称最高書込速度90MB/sで、速度テストでも85MB/s近く出ている。
ただし、最低保証の速度は悲しいかな10MB/s。

俺のこのSDなら余裕じゃね??と思って試してみたところ

駄目でした。
計測ソフトでの結果では50MB/sなど余裕のハズなのに、
何度やっても15秒程度で記録停止になります。

皮肉にも、

メーカーの自称最高値や、速度テストの結果だけしか見ていないと、
痛い目をみるかもしれないよ!!!

の裏付けになってしまいました。

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