見出し画像

Tech Open Air 2019 day.1(前編)NBT Session - Next Big Thing

さて、ベルリンのtech & artカンファレンスであるTOAの初日です。

初日のプログラムは基本的にサテライトカンファレンスで埋められています。
ベルリン市街の様々なワーキングスペースで、カンファレンスやPitchコンテストが行われるのです。

全てのセッションで印象に残っている光景があるのだけど、それは会った人に実際に口頭で話すとして、noteでは以下2つのセッションに絞って代表的に感じたことをここでは述べていきます。

Go Big: The NBT Pitching Session
Rising Female Founder Stars 5th Edition

特にRising Female Founder Stars は今回どうしてもその雰囲気を見てみたかったセッションの一つだったので、ちょっと無理をして入れてもらったのです。

まず前編は「①Go Big: The NBT Pitching Session」から。

ちなみに市内の移動はUberが速い。
SFOなどと比べたら到着に時間がかかったり、TAXI連携側のUberは結構ドライバーチェンジなどが相次いだりしてサクサクっといかない場合があるけど、それでもサテライト会場は本当にあちこちに点在しているため、Uberじゃなかったら希望のセッションを全部見ることはできなかっただろうと思うくらいです。

Go Big: The NBT Pitching Session

NBT = Next Big Thing

NBT自体は(米)WSJの表彰の名前だったりエコロジカルカンパニーにも同名なものがあったりと、間違えられがちですが、ここのNBTはこれです。
EUのIoTスタートアップのピッチコンテストなのですが、オーディエンスは

・Mentor for Investor(投資家のメンター役)
・Founders(創設者)
・C-level leadership(要はCxO)
・... and Public guest

しか入れません。
入り口で「あなた誰?誰かの紹介?それともリーダー?」と聞かれます。
リーダーだと言うと名刺を見せろという。なかなかの厳重ぶり。(僕がアジア人だったから?かもしれない)

権威を重んじる土地柄を感じました。

内容はIoTスタートアップといえばうまいことまとまっていますが、その中でもservice development platoform(サービス開発するにあたっての基盤)と呼ぶべきレイヤーの起業家がほとんどでした。主なラインナップは

deepatom - For Industory 4.0(製造工程のAIによる最適化)
ZkSystems - blockchain for industrial IoT(言葉のまんま)
Journey Protector - Traffic Big Data Analyst Service
XIBIT - Actionable AR Device
DAPPEX / NIMA ASGHARI - exploring / pioneering Autonomous Assets

飛び入り参加
/dev/guard

こんな感じ。

Pitchは厳密にフォーマットが決まっているのかなんなのか、ほぼ全てのピッチが

・社会問題提起に始まり
・ビジネスで解決する課題抽出
・Solution Idea
・Competitive or 可能性

という内容構成で、それに対してNBTの Advisor of Investorが質問をする、という流れです。
中身と雰囲気はとにかく質実剛健で、シンプルに削ぎ落とされていて、とてもクールにまとまっていました。
ただ、USや日本のPitchのようなPassionableな内容はほとんどなく、投資家向けのビジネスライクな内容が淡々と語られている、といった印象でした。

登壇者や会場の人たちと話した内容を、要約すると、こんな感じ。

XtoCは勘所がある距離に魅力的な市場がない。
USや日本もそうだけどBusiness PersonはXperienceの開発に躍起になってる。
私たちの国はXperienceの評価は哲学に基づいている。
だから、Success to Globalとはならない。
Local Successを目指すならtoCもいいが、僕らが目指しているのはExponential Innovationだからね。
Global Businessが求めるものをよく理解することが大切なのさ。
他のPitch会場ならばそういうの(toC Business)もあるけど、EUのCustomerの哲学を知る必要があるよ。
例えば、最も強いのは”Fassion & Cool” この2つの哲学の理解がまず、最初の一歩だろうね。

個人的には飛び入り参加のdevguardのピッチでArvid E. Piccianiと直接話ができたことが非常にエキサイティングだった。
若くてとても才能というか魅力あるエンジニアの一人。いつか会ってみたいと思ってたので、幸運でした。

僕の最近の知見は全て/dev/guardに入れてある。
コードを見てもらうのが一番速いよ

ってことなんで、実際に見てみた。 github/devguardio
なるほど。QUIC protocolがよく研究されています。
QUICPを研究している企業は具体名は控えるが日本にも存在します。
IoTのようなカジュアルレスポンスの連続のような通信を繰り返す場合で(規格の発展途上さを鑑みると99.9999999%[テンナイン] = 100%と取り扱って構わない状況であれば)積極的に適用すべきTCPの次世代プロトコルの候補に上がるような存在ですが、それをhttp2間とのインターフェースを滑らかにしようとしているところなど、とても面白い。

QUIC/http2周りの整理はこの資料が非常にわかりやすい

今度IoT系の技術デューデリの依頼が来たら、彼にお願いしてみようと思いました。

二分されているEU Tech Scene

EUのTech Sceneはこうだ!
と言い切りたかったのだけど、会場で話されていたことを振り返ってもやっぱりどの角度から見ても、大きな意味で二分していると言わざるを得ない。
どうやら、EU 自体でも大切に取り扱っている「根本的な思想」レベルでの概念が違う取り組みが2つあるのです。

①スケールすることを目指し、高いテクノロジーを基盤としたplatform/社会貢献思考

一つ目のシーンは、このNBTセッションの他参加チームのラインナップを見ても臭ってくる、「スケールすることを目指し、高いテクノロジーを基盤としたplatform/社会貢献思考」です。

スケールすることを目指し、高いテクノロジーを基盤としたplatform思考

UXを研究し、ユーザー向けのサービスとして形作ってリリースする米国スタートアップがあって、そのハードな要求や、先進的なMotion Library、哲学を持ったSecurity Tech.などのplatform技術でそれらのサービスを下支えするという役割を明確に意識している様でした。

それが、哲学大国であるEU Tech シーンから米国の様な巨大な市場にアプローチする1番の近道なのさ。だからこそEUのNBTは最もプラットフォームに対しての「こうあるべき」という哲学がまだ醸成されていなく、薄い分野であるIoTをメインに捉えているんだ。

そう言われると、納得がいきます。

スケールすることを目指し、高いテクノロジーを基盤とした社会貢献思考

ちょっと前のFLEXBUS(エンジニアが愛するScrum on Agile の応用でのビジネス構築に純度高くチャレンジしたチーム)の存在やJourney Protector、/dev/guardも大きくはそれに入るが、スタートアップが社会インフラ課題に挑んでいると言うのもひとつの特徴です。

FLEXBUSのビジネスストラクチャ。Scrum Developmentがベースになっていて、純度が高い。

社会インフラの課題は解決に何十年もかかるプランが組まれていることが多いし、それに合わせたNPOが立ち上がっていることだってある。
そういう課題、もしくはそういう課題にこれからなりそう、またもしくは、誰かの生活の礎になっているばかりにそれが課題として認識されていないケースに対しても、テクノロジック・アントレプレナーが積極的に挑んでいる。
欧州、特に英国のSocial Crowdfunding、中間支援団体、NPOの関係性は持続的社会の実現を何よりも念頭に置いています(という社会的メッセージを出しているように見える)が、それはスタートアップの事業選びにも色濃く影響を与えているように見えました。

上記、社会的課題へのアプローチも、Globalな共通項が発生する可能性が多く含まれているという点が「スケールする」という目的にマッチしています。
同時にビジネスの破壊的発展の可能性を意味していて、シリコンバレーのビジネスの選び方にも少し似てなくもないが、それよりもずっと哲学的(ここも後ほど解説します)です。

社会的課題へのアプローチは、大義に挑んでいることが大切なのであって、プロダクトアウトカムの瑣末な差には目を向けないという風潮もあるようです。
大義に向けた支援は一般的に、かつ積極的に行われますし、大衆メディア的なクラウドファンディングプラットフォームが存在しないのはもしかしたらそのためなのかもしれません。
良いものには哲学的な共通項を通じて支援が集まる。そういう社会構造になっているかのようです。

EUは哲学的な思想のそれぞれ色濃い小国の集まりなだけあって統一的な市場が存在しないので、EUのエンドユーザーに向けてサービスを打つ、という概念が「スケールビジネス」としては認識されないできています。

だからハイテクノロジーの実験場・適用すべきフィールドは、あくまでUSにあるという認識が強いようで、これは非常に合理的な考え方だな、と感じました。

広義な意味でのファッション市場とのコラボレーション

もう1つのシーンが「広義な意味でのファッション市場とのコラボレーション」です。これに関しては、同じくらいのボリュームを持って語らなければならないので、後日書く後編に譲りますが、①のシーンと対義を示す面白い存在となっています。今回僕が最も興味深かった観点の一つです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?