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娘が泣いた日。

うちの娘Nはもうすぐ13才になろうとしている12才。

彼女はなかなか泣かない。

前回しっかり泣いたのは2-3年前か。

泣くのを必死で我慢する、と言うようなタイプでもないと思うし、そう言う表情を見た覚えもない。

そんなNが昨夜泣いたもんだから、私は一瞬「何が起こったのか」よく分からなかった。

顔を手で塞ぎ、何かを我慢しているような、待っているような仕草。

「泣く娘」をすっかり忘れていた間抜けな母である私は、思わず「笑い出すのかな」と思ったほどだった。

学校から出た宿題(もしかしたら学校で答えを出し切れなかったから宿題とされたのかも知れない)はTEDの動画を観て、スピーカーに対する「質問」を5つ作りなさい、と言うもの。

ちなみに、その動画はこちら。

「ティーンネイジャーは何故わざわざリスクを犯す行動をしてしまうのか」

動画自体は「TEDでわざわざ話すような事かな」と私は感じたのですが、ま、先生のお考えもあるのでしょう。

「私が考えるような質問はもう出ちゃってるんだよ、それじゃダメなんだって」と言うN。「そもそも、この人が何を言おうとしてるかよく分からないんだよね」と少々ふてくされ気味。

「いやぁ、だから、そう言う事でしょ?「質問を考える」にはこの人の言ってることをしっかり理解することが必要なんだから。要は先生は、「質問を考えること」を目的としてこれを観せているのではなく、「しっかり理解してもらおう」と思って、その宿題を出してるわけよ」

なんて、大人らしく言う私。じゃ、私が観てみよう、英語字幕出るのよね?よしよし、、、

私の英語力なんて知れている。大筋は分かるものの、質問が出てきても「これって、もしかしたら、もう彼女はスピーチの中で説明してるのかも?」と、娘に聞く始末。「日本語の字幕も出せるんだけど、ちょっと変なんだよ」と言う。自動的に英語字幕を日本語に翻訳するそうな!

娘には「英語で理解しないと意味ないじゃない、ズルじゃない?」なんて言いながらも私は、その自動翻訳日本語字幕で観る。。

ほうほう!そう言うことね。 確かに途中で「何?」と言う翻訳が出てくるものの、すごいね、技術の進歩は!とふと隣の娘を観ると、彼女も一生懸命日本語字幕を目で追っている。

そこで気づいた。

読めない漢字も多いのだ。

Nは0才から2才までは日本の保育所に通ったものの、それ以外はずっと今行ってるウブドのインターの学校に通い、日本人学校のないバリ島に唯一ある「日本語補習校」にも通っていない。私がしっかり向き合って日本語を教える機会もそんなになく、でも、持ち前の読書力(漫画が多いのだけれど)で多くの漢字を読むものの、やはりそこは海外暮らし。実際、その動画の中には中一には読めない漢字もある。(今、ドリルで4年生の漢字をやっている)

一緒に動画を見直し、私なりの「質問」に繋がりそうな話をしてみるものの、「うーーん」とイマイチな答え。

「学校でもう7回ぐらい観たんだよ。でも、5つも質問なんて出てこないんだよ」と否定的なことしか言わない。「でも、やるんでしょ?一つはママが思ってる質問書いたら?こんな感じで他にない?そこまで「知りたいこと」じゃなくても、理解してます、て証明のための質問作りなんだから良いんじゃない?」と言う私に

「そんなので良くないよ、皆、ちゃんとやってんだよ、どんどん質問出すんだよ、知らないよ、分かんないんだもん!」と軽くキレ出した娘に、私は「じゃ、やらなきゃ良いよ、大したことも言ってないし、大した質問も出てこないよ、しませんでした、って先生に言ってやれ」とピシャリ、と言ったところ、顔を覆ったのでした。

しばらくポカンと、とそのまま眺めていた私。

その様子を見てささっと寝室に移動していく賢明な男性陣。(夫と息子)

静かに涙を流しながら、しゃくりあげながら娘が少しずつ話す。

「クラスメート(7年生になった所で人数が少ないから8年生と一緒の授業。合計10人足らずのクラス)は、全員ネイティブスピーカーなんだよ。(英語を母国語とする国出身者)聞いたこともない難しい単語がどんどん出てきて、それでどんどん皆質問して、先生とやり取りしてて。Nは動画の意味すらちゃんと分かってなくて。 それでもなんとか質問したら「それはもう出てきてる質問だよ」って言われて。」
と言葉を絞り出す。

クラスの中でポツンと一人分からない娘が居る。でも、必死で付いていこうと頑張ってる娘が居る。

まだ始まって1週間ちょっとのクラス。

おい!先生よっ、しっかりうちの娘をフォローしてやってくれよ、と一瞬思ったものの、「なんか、そうとも違う気」がする。

黙って頑張ってて、ようやく「ママ手伝って」と言ってきたNが、そして思わず私にこぼした感情に、私はちょっと驚いて、それが、ちょっと嬉しくて、そして、湧き起こる「娘!えらいぞ!あんたは一番頑張ってる!」という想い。

昔 あんなに小さかった娘が今はこんなにデカくなって、肩を震わせて泣いている。でも、それは誰かに対して怒ってる、のでは決してないようで。それがまた、娘の人間の器をあらわしている。

親バカで良い!あぁ、なんて偉大な(でかいし)素敵な子なんだろう!

デカい母娘は抱き合って、話し合い、「じゃ、もう一回一緒に観る?」ともう一度動画を観直しました。

「ママ、どちておばちゃん(どちて坊や、とか2才?3才児が居ますが、私も彼らに負けず劣らずの「どちて?どちて?」と普段しょっちゅう思ってるわけです)が本領発揮で、今回も実はいっぱい質問あるのよ。5個以上あるのよ、だから、Nも「そうだね、確かに」と思うのがあったら、それ書きな」と「どちて?」しまくりました。ま、良いでしょ、今回は、せんせ!

2才半の時に初めて行ったウブドの学校。そこに彼女は10年います。

入って数日後に行われたパフォーマンスの日、派手な衣装と反比例するかのように、表情は硬く、私が見たことも無いような目をしていました。

あの時もお家の端っこで泣いていたN。「みんなが言ってることも分からないし、Nの言うことも誰も分かってくれないんだよ」と。

大きくなって、今、教室で また少し取り残されてるかもしれないけれど、ぎゅっと拳を握って食らいつこうとしている10年後のNがいる。

すごいね、だって、あなたは母国語である日本語を操り、インドネシア語を理解して、更にネイティブの子達の中で英語の授業ついていこう、としてんだもんね。ママはね、一番あなたが頑張ってると思うよ!知らんけどっ(関西風)

思わず泣いてしまって本人もスッキリしたいみたいで、そして可笑しかったみたいで、笑いながら、「でもね、クラスの子たちはね、皆、良い子ばっかりなんだよ。ははは」って。

あぁ、N最高。私はあなたと出会うために生まれてきたんだな、と思った、そんな「娘が泣いた日」でした。

最後まで今回も読んでくださってありがとうございます。このブログ、たくさんのお友達や家族も読んでくれています。お願いが!娘に会ったら「泣いちゃったブログ」のことはどうぞ秘密にして、ギューって着ぐるみにするみたいにハグしてやって下さいな。

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