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宇宙杯で印象に残った5句

先日、大盛況のうちに
グランドフィナーレを迎えた「宇宙杯」

句を鑑賞する機会を増やしたく、「こう、お詠みになったのか!」と目からうろこだった5句を、
わたしなりに鑑賞してみようと思います。

そのまえに、さらっと反省会をば。





わたしの投句した3句には、春らしさが足りなかった。そんな気がしています。


(ホストのかっちーさんは、「季節あっての季語。春らしさとは何? ということ」と仰っていました。その季節「らしさ」、わたしも作句するときに、いつも問うていこうと決めた次第です)




予選・決勝に残り、そして私設賞に輝いた句を読むと、

  • 希望

  • 新しい

  • ぽかぽか

  • 美しい

  • ゆったり

  • いのちの芽吹き

  • 軽やかさ


などなど、
なるほど、春は明るく前向きなイメージなのね、
と、納得しました。

このイメージからいくと、わたしの句、
春にしては重たかったのです。


たとえ悲しいことを詠みたくても、
そこまで深刻にせず、なんといいますか、

「ポジティブに変換できる余裕を残す」

ことが大事なんだと感じました。

(美しく、儚く切なく)






わたしの句は、春の季語を使っていても、
春らしくなかった。

春は別れの季節。
じっさい、悲しい別れもたくさんあった。

そのことに、真正面から
向きあいすぎたのかもしれません😅




次回、参加するときは


季節のイメージを思い浮かべてから


作句します!




それでは、印象に残った5句の鑑賞、

はじまります!







予選に残った句から


陰陽を整えて生け木瓜の枝


陰陽とは
中国の思想に端を発し、森羅万象、宇宙のありとあらゆる事物をさまざまな観点から「陰」と「陽」の二つのカテゴリに分類する思想。
陰と陽は互いに対立する属性を持った二つの気であり、万物の生成消滅と言った変化はこの二気によって起こるとされる。
Wikipediaより


「陰」に偏りすぎると「冬」になり、
また、ちょっと偏ると
センチメンタルな秋になり、

「陽」に偏ると「夏」になる。

ふたつの、どこにも偏らず、
「中庸」であることを意識して、

「まっすぐ」整えて、木瓜の枝を生ける。


重たい気持ちを引きずらず、
かといって「テンション高めで行こう!」
というわけでもなく、

ちょっと感傷にひたるわけでもない。



あくまで「中庸」
ちょうどいいバランスを意識して暮らす。


こんなふうに「春」が詠めるなんて
俳句っておもしろくて奥深いです。


まっすぐ生けられた枝を思い、
こちらの背筋もしゃんとしました。


背筋を伸ばして、襟を正して
まっすぐ歩いていく、
真新しいスーツを着た新入社員の方々が

木瓜の枝から浮かんできます。


「春」をとらえた切り口の
おもしろい一句です。







「ジュピター」の蝌蚪五線紙をうごめきて

審査員賞「かっちー賞」受賞句



これは……読んだ瞬間、うなりました。



「ジュピター」
曲名が入っていて、いいですね☺️

平原綾香さんの歌が有名ですが、
もともとは、ホルスト作曲の交響曲
「惑星」の第4曲です。




オーケストラの譜面、ということは
見開きA3サイズの白紙に、たくさんの
五線の川が流れていて、その川の中に、
これまた沢山の音符(=蝌蚪/オタマジャクシ)が、泳いでいる。ということですね_φ(・_・フムフム


ピアノ講師だったころ、子どもたちに音符の存在を教えるとき、わたしを含めてどの講師も、音符をオタマジャクシに、しょっちゅう例えていました。じっさい、音符をオタマジャクシで表している教本もあります。


なので、わたしにとって
「オタマジャクシ=音符」の例えは

ピアノ講師あるあるみたいに思っていて、
それでも一句詠んでみたら、


五線なる小川スイスイ数珠子かな


という、「音符ってオタマジャクシみたい」
程度の句しか詠めず、

「なんだかなぁ」と頭を抱えていました。



それはさておき、ジュピターの譜面にある「オタマジャクシ」は、きっと「泳いでいる」と言えるほどの数ではない量なのでしょう。


だってオーケストラですもの。


たくさんの楽器が使われているはずですから、そのぶん、大量のパート譜が存在し(バイオリンだけでも、第1、第2とあります)、書かれている音符の数も半端じゃないと想像できました。


だから「うごめきて」という表現に
なったんだろうと思いました。


見開きA3サイズの白紙に書かれた、たくさんの五線の小川。そこにうごめく、ちいさなちいさな蝌蚪=音符たち。


まっくろな譜面が想像できるだけでなく、

「うごめく」という表現からも、
なにやら複雑な動きをしたメロディーや、和声進行などの、大量の音符が浮かんできます。



極めつけに、壮大な交響曲が頭のなかで鳴りひびき、「やられたーっ!」と唸ったわけです。




ちいさくて細かいところから、いきなり
スケールの大きな世界に飛び込めるのも
おもしろいですね。


音楽を専門に学び、仕事にまでしていたのに、
なかなか「音楽」を、わかりやすく伝わるように詠んだり書いたりすることができない、と

ずっと悩んでいるだけに、



「音楽は、こんなふうに詠む!」と、

教えられたような気がする句です。






決勝に残った句から


線香の煙いつしか龍雲に

審査員賞「おとや賞」受賞句



亡き人を偲んであげたお線香が、上へ上へと
立ちのぼり、ついには龍のかたちをした
雲になった。



お線香をあげた、そのときは
たいせつな人をうしなった悲しみに、
暮れていたのかもしれません。

けれども、のぼりながら
龍に変わっていく煙をずっと見ているさまを
想像すると、なんでしょう。


あんなに悲しかったのに、
どこか、すかっとしたような。


胸のうちにあった重たい気持ちが、
お線香の煙のように、細く細く、空へ。

いつしか心は軽くなり、
(この「いつしか」が、時間の経過、それも
すこし長めでゆったりした経過を、表していると思います。)


鉛のような悲しみは、
カッコいい龍に。



こんなふうに、悲しみを昇華できたら
素敵だなぁと思いました。


悲しむことも、悪くない。

時間がかかっても、
めぐる季節、流れる月日が

きっと癒してくれるから。


龍雲を見る、その日を信じて
泣きたいときは、思いきり泣いて

心の沈むときは、沈むままにしておけばいい。


沈めば、あとは浮上するしかないし、
溜まった「落ち込み」というモヤモヤも、
ガスが抜けるように少しずつ出ていってくれる。


時間は、かかっても、
きっと、こころは軽くなる。

だって、いまは春だから。



そんなことを思わされる一句でした。

なるほど。
悲しみは、こう詠む!








馴れ初めを祖母は語らず桃の花

大賞おめでとうございます! 


「馴れ初めを祖母は語らず」
この流れが絶妙ですね。


おばあちゃんが、おじいちゃんとの出会いを
話さなかった。なぜだろう……。


すごく若いときに、いちどお見合いして
すぐに結婚。しあわせな新婚生活が
はじまった矢先、夫は戦地へ。

二度と帰ってくることは、なかった……。


みたいな悲恋を、勝手に想像して
胸が締めつけられてしまいます。うっうっ😢

(必ずしも、そういった背景が句にあるとは
限らず、あくまでも私見で勝手なことばかり
言っています🙇‍♀️💦)


おじいちゃんと出会ったのを

「すごく若いとき」と思ったのは、
きっと下五の「桃の花」に

可憐な少女を感じたからだと思います。はい。


読めば読むほど想像がふくらむ、
「絶品」の一句。

納得の大賞受賞句です!!



私設賞受賞句から

海風がはずむ団らん清明祭

「うつスピ賞」「これ母きらり賞」受賞句。


「海風がはずむ団らん」

上五〜中七の、この流れが
とても爽やかでいいですね☺️

そよそよと涼しい、潮の香りのした
風を感じられます。



沖縄出身&在住のわたし。

沖縄は、美しい海がセールスポイント!

と、理解はしているのですが、
日常では、なかなか海になじみがありません。


(海は観賞用。ドライブで遠出のときに
「きれーい!」と愛でる程度で、
めったに泳ぎはしません。
あと浜下りのときお世話になる
くらいでしょうか😅)



清明祭(シーミー)でウートートー(お祈り)する
お墓だって、どれも山か小高い丘の上にあるのです。

(海沿いにあるお墓、山にあるそれより少ない気がします。わたしは、あまり見たことがないんです)


なので、「清明祭→海風」という発想が
新しくてステキ! と感動しました。


シーミー(清明祭)については、こちら↑で詳しく




そして、たとえ海辺のお墓が少なかろうと、
「沖縄といえば海!」のイメージは、
確固たるものであるわけで、


それを、この句は
いい意味でうまく使っています。


上五の「海風」が、下五の「清明祭」に
ナチュラルにつながっていって、読む人は

「あ、沖縄の風習かな?」

と、察するかもしれません。
そして、中七の「はずむ団らん」


「お墓」をわざわざ出さなくても、

「沖縄のひとは、この時期お墓でごはん食べるんだー」

と、「シーミー」に、
導かれていくんじゃないかと。



なるほど、かなり作り込まれた佳句と
お見受けいたしました!

地元民……いや、少なくとも「わたし」には
詠めないシーミーの句です。



「いつやるのお墓でランチ清明祭」

なんていってる場合じゃないぞSazanami!




以上、印象に残った5句を鑑賞してみました。
最後に二句。


五月雨や葉末しずくに映る宇宙

五月雨や歌くちずさみ駆ける吾子


お粗末さまでした🙇‍♀️



いつもありがとうございます^ ^


はじめての「鑑賞記事」

難しくて長ったらしくなってしまいました💦


今後も、記事にする、しないは別にして

なんらかの形で「俳句鑑賞」続けていきます!


いただいたサポートで、たくさんスタバに通いたい……、ウソです。いただいた真心をこめて、皆さまにとどく記事を書きます。