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「音楽(歌)とは、歌だけではなく前奏も間奏も休符もぜんぶ音楽であり歌だよ」ということを2歳クラスの子と本気で議論した話。

「音楽とは?」について、2歳クラスの男の子と本気の議論をしました。

アンパンマンが好きな1歳クラスの赤ちゃんと一緒にアンパンマンマーチの歌を歌っていたときのこと。

片言で歌を歌うようになった1歳の子が「あーいーとーゆうきだけーがーとーもだーちーさー」と歌ったあとに、私がアカペラで「ターラッターラッ タララララッタッ タッタラタッタッタッタッタ」と間奏の小節を歌うと…

突然、ひとりの2歳クラスの男児が私に向かって、「ちがうーっ!!!」と割り込んできて、そーだーおそれないーでーの部分を大声で歌い出しました。(補足すると、歌詞めちゃくちゃ間違ってましたが…)

つまり彼が言いたいのは、アンパンマンの歌にはターラッターラッなどという歌詞はないから俺の歌うAメロの歌詞(めっちゃ間違ってましたが)が正しい。Ikuyo先生の間違いを俺が指摘して正しい歌を教えてやってるんだぞ!ということでしたが…
次の瞬間、彼は私に一喝されることになりました。

「違わないよ。これが音楽。
音楽には歌のところだけではなくて、前奏(イントロ)と間奏があるの。私が歌ったのはその、間奏という部分。歌のパーツだけをとってこれが正しい音楽!というのではなく、音楽は歌以外の部分(前奏・間奏・さらには休符)もぜんぶ音楽。ぜんぶのもつ感情を歌ってこそ、歌であり音楽なの!」

私は相手が子供でも(自分の子も保育園の子達も)こういう場合は相手を子供とは思わずに容赦なくガチで話します。
案の定、私の話は3歳3ヶ月の彼には難しかったようで1度では通じず、自己主張が強い年齢である3歳の彼は反発してさらにむきになって言い返してきて、ほぼ私と口論になりました。

そして、彼がさらにむきになってアンパンマンマーチの出だしを歌いだし、とーもだーちーさーが終わった直後。
それに繋げてアニメの主題歌どおりの構成で私がさっきの間奏を歌うと…

突然彼の目が大きく開いて表情が変わりました。「あーーーーー!!!」

たった今聴いたものが、いつも聴いてて彼の耳が覚えていたアンパンマンのオープニングのとおりだったことで、彼は私の言ったことを理解したようでした。

彼は私の目をみて弾けるように声を上げて笑いだし、続いて私が彼と同じように声を上げて笑いだしました。
ほかの子供達が不思議そうに見守るなか、私たちは喧嘩して仲直りしたウッディとバズのように手を打って肩を組んで、もつれるようにいつまでも声を上げて笑いころげ、その様子はまさにアメリカ映画の男同士の友情シーンでした。

彼は何かを発見したようで、そのあと私が歌った間奏パートを同じようにアカペラで熱心に練習しだし、お迎えにいらしたお母様には
「ママ!あのね!音楽だよ! Ikuyo 先生がね、音楽ってね…」
と、さっき彼が発見したことを彼の言葉で熱心に伝えていました。

よく、子供は大人の言ったことではなくやったことを覚えるし真似すると言いますが…
言ってわからなかったことは、実際目の前で大人がやってみると、最終的にはちゃんと子供に伝わるものなんですね。
彼のような頭のいい子は特にかもしれません。
彼の能力を高く買っていたからこそ、私も容赦はしませんでした。

前から思っていたけど、その男の子はルックスがよくて頭の回転も早く、人の注目を集めたり愛されやすいお茶目でちょい悪なキャラクター性があるので、将来バンドをするようなことがあればロックバンドのvo.やギターボーカルなどのフロントマンに向くと思います。

権力(私が権力かは謎ですが)に自分の言葉で主張して真っ向から向かってくる度胸も、ロックですものね。

ですが、何かを理解した途端に、その瞬間からすぐに私の歌ったパートを練習しはじめた辺りも、彼はボーカリストやギタリストに向くと思いました。
イントロのカッコいいギターリフや、間奏のいかしたソロを試行錯誤しながらアレンジを作り、本番でカッコよく弾き歌う彼の姿が目に浮かびます。

私は自分の教え方を上手いとは思わないし、むしろ子供相手に同じようにむきになって言い合うような稚拙な先生だなと思ってますが、そのかわり対等に本気で話をします。

もっと教え方が的確で上手な先生はいくらでもいらっしゃるので、見習って私も大人としての対応ができるように努力しなきゃと思う一方で…

彼らがなぜそう言ったのか…に、同じ目線からも考えて本気で向き合うことや、言ったことを大人の自分がまずやってみせることも、大切にしていきたいと思いました。


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