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『季刊 自治と分権』89(秋)号 ブックレビュー

元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術 改訂第4版
吉田 利弘 著
ダイヤモンド社


ブックレビューまとめ
・リーガルマインドとは、「物事の正義や公平の感覚」
・憲法は、全ての法令の土台であり、国民が権力を持つものに向けたルール
・未来の法情報の集め方は、内閣法制局のウェブサイト、各省庁の「概要」、各省の審議会情報の「答申」及び「会議録」

行政職員が身につけるべき基本的なスキルとして、接遇、文書、法務、財務及びシステムの5つがあります。

法務は、事務を遂行する上での根拠であり、公務員にとって必ず身につけるべきスキルになります。
しかし、業務が増え続ける中で、関係法令を読み込む時間が取れないとの声もあります。
また、新入職員は条文の読み方を職場で教えてもらえず、自分で身につけようと思っても読み方がわからないケースもあるでしょう。

なお、公務員の仕事でダイジなことは、リーガルマインドです。難しい条文が読めることだけではありません。

元衆議院法制局の著者によると、リーガルマインドとは、「物事の正義や公平の感覚」のことです。法律の条文やテキストを漫然と読んでも身につくものではないと述べています。

法律が実現しようとする価値を学ぶことで、共通する正義や公平の感覚を学ぶことができ、正義や公平の広がりに触れることができるとしています。

では、どのように法律を学び、理解できるようになるのでしょうか。本書では法律の基本ルールから始まり、図解術で読解する方法を丁寧に解説しています。

法律編の内容を一部紹介します。
憲法は、第98条1項により最高法規とする規定があります。著者は、一般的に書かれているようなピラミッドの頂点ではなく、全ての法令の土台だと表現しています。
なぜなら、憲法は国民が権力を持つものに向けたルールだからです。法律は国会で制定することができますが、憲法は国会だけでは変えられません。

ところで、広く原則となる規定を一般法といい、特別な対象、時期及び地域などに限って適用される規定は特別法といいます。
例えば、本来対等である労使は、企業相手では労働者が力不足になります。民法だけに任せておくと不利な条件で働かされるため、労働者を補うために最低限の労働条件を定めているのが労働基準法という特別法だと解説しています。

そして、未来の法情報の集め方として、内閣法制局のウェブサイトと各省庁の「概要」を紹介しています。「概要」とは、忙しい議員のために原則、A4用紙1枚で法案の内容をまとめたものです。
さらに、将来の法律の姿は、各省の審議会情報の「答申」で知ることができ、「会議録」により、どんな趣旨で改正がされているのかを理解することができます。

このように、憲法、民法、刑法、行政法の読み方・学び方について、練習問題を通じて学習できるようになっています。

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