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価値観のパラダイムシフト

2023年3月8日に開催された KK G-LINE CONNECTIONトークセッション#4「持続可能なまちづくりビジネスモデル」を聞いてからの感想文。(メイン写真は、セミナーのうち、重松さんのレクチャーの一部を勝手に画面キャプチャしたものである。)

1.価値観のパラダイムシフト
 バブル時代までは、お金を稼ぐことや多くのものを所有すること、都市計画分野においては、完璧なまちをつくること、まちづくり分野においては、手弁当による組織論に基づく取り組みが、価値観のゴールだった。特に不動産業界では、土地をもつことが勝負のような世界だった。
 しかし、バブル崩壊、コロナ過、人口減少時代に伴い、価値観の非常に多様化している。暮らし方の豊かなさ、歩く際の気持ち良さ、誰も経験できない限定された体験やチャンス、本物など、一言で示せないほど、人の数ほど、多様化していると言える。大都市か地方かという2軸に分けることも難しくなり、異なる両極端の要素を取り入れてあるミックスタイプも注目を浴びている。

2.農耕民族
 資本主義では、大量生産をゴールとした分業、大きなリスクを背負った投資、成果主義、定刻出勤などが求められていた。しかし、世界的になかった人口減少・高齢化に入っている日本では、そのようなやり方のままだと、ものことが動かなくなるというのが表面化されている。人口が減りつつある地方都市がもっとも証拠であろう。
 そこで、事業主もよし、お客さんもよし、地域もよしという3方よしという考え方のもと、地域密着型で誠実にプロジェクトに取り組んでいる人たちが全国各地で見られている。初期投資は少なめで、長期的な目線で地域に入り込んでおり、小さな実験を繰り返しながら、観察した上で、やり方を変えている。つまり、時間軸を取り入れることで、失敗のなく、持続的に成長しつづけている。
 これらの取り組み方式がかつて日本をはじめ、アジアの農耕民族時代のやり方に非常に似ている。毎年季節ごとに土地を耕し、気候に合わせ、状況に合わせ、微調整しながら、農作物を育てていた。
 熊本大学土木学科の星野先生が発刊された『災害と土木-デザイン』の後半に提唱されている「開蔵」の概念ともつながる。日本の土木は、自然と戦おうとしてきた経緯はあるものの、ありのままの自然を尊重しながら、大自然を読み取った上で、ちょっとした編集をすることが本来の土木ではないのかという。

3.スキール:ビジョン・バランス・役割
 いろいろ言っても上記の動きはすべて実験で過ぎず、メインストリームになっているわけではない。
 まず、ゆるいビジョンとそこに向かっていく仲間や関係人口の構築から難しさを感じる。特にテレビや新聞だけでなく、SNSやYouTubeなど、情報媒体が多種類で情報も溢れすぎている現代社会において、似たような価値観やビジョンをもつ人たちを横繋げたり、一緒に動いていくことも大変である。そこで、ビジョンづくりとその共有がもっとも大切である。例えば、東京首都高速道路をニューヨークのハイラインのように、歩行者天国化することによる空間の豊かさをビジュアルで示し、その良さを伝えている重松さん。今は、KK G-LINE CONNECTIONの仲間と一緒に本気で計画の実現に向けて動いている。きっと実験しながら、環境を改善していくというタクティカルアーバニズム方式も取り入れているのでしょう。
 また、利他性と自己性のバランスがあると思う。まちのためというスローガンのもと、1回くらいはマルシェなど取り組みができるかもしれない。ただ、ちょっとした出来事(クレーマーがいたとかコロナ過とか)で遠慮したり、はじけてしまい、取り組みが継続しなくなった場合がほとんどであろう。なので、自分がわくわくする、好きなこと、自分を支えてくれるもの、自分にいいことなど、自己性も同時に大切なポイントである。すなわち、楽しいマルシェ方式と深堀りする勉強会は相互補完関係であり、両方を繰り返すことが大事である(吉原勝己さんがおっしゃっていた)。
 最後に、ビジネスとの両立は非常に大事かつ難しいテーマである。すなわち、稼ぐことばかりフォーカスを当てると、地域との付き合い方が難しくなるし、利他性や地域性ばかりフォーカスを当てると、サスティナビリティと遠ざかるわけである。
 そこで、一番ハッとさせられたのが、(株)umariの古田秘馬さんがおっしゃったこと。LP(初期投資者)・GP(経営責任者)・MP(運営責任者)をきちんと分けて、役割を決めること。補助金による取り組みの場合、サービスなど運営費ばかり気にしがちであり、まちづくり会社の場合、初期投資のみ、眼が行きがちで、ビジネスの場合、ランニングコストや収益など経営ばかり気にしがちであろう。そこで、上記のように3つの役割をしっかり考えてもらうことで、収益性と地域性、公共性がバランスよく取ることができるはず。


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