谷口敦史 jardin du I'llony

芦屋、青山、パリで小さな花屋をして行ったり来たりしています。毎月20日はパリにいて、1…

谷口敦史 jardin du I'llony

芦屋、青山、パリで小さな花屋をして行ったり来たりしています。毎月20日はパリにいて、10日は日本にいます。 世界一好きな花屋ってありますか?

マガジン

  • AVEC LES FLEURS

    日本人花屋ではじめてパリに支店を出した小さな花屋の物語。全13話毎回30枚ほどの写真とともに。

  • メニル通りの愉快な仲間たち

    パリ16区ヴィクトルユーゴーの小さな通りメニル通り。 メニル通りにあるレストランLa Coincidence (コアンシドンス)を舞台に繰り広げられる日常を一匹のブルドッグ・マルセルがつれづれなるままに紹介する日記。

最近の記事

第13話 Pas à pas

ここは 南仏サントロペ。 モナコ公国プリンス・アルベール2世後援の 舞踏会BAL DE L'ETE の装花のために来ている。 依頼してくれたのはイタリアの由緒正しき貴族の家柄である コロンナ家のプリンセス・キャサリン。 世界中からジェットセッターたちが集まるようなパーティだ。 そして今回も装花を担当したアーティストとして、 キャサリンは舞踏会のディナーにおれを招待してくれ 多くの参加者たちから称賛の声をもらった。 参加者たちも華やかな会場をとても喜んでくれて

    • 第12話 L'ouverture

      営業権の種別変更とファサードの変更の手続きで、 4ヶ月から半年は店をあけられないという 役所の手続きがあると聞かされ、 またしてもオープンが先送りに。。。 ということにはならず。。。。 もう開けちまおうぜ。 ということにしました。 結局、ファサードの変更はぜず、ガラスの内側に ATSUSHI TANIGUCHI florist jardin du I'llony ASHIYA TOKYO PARIS とロゴをはっただけ。 テントは昔のボロのまま、 営

      • 第11話 Première

        少しずつ寒さもやわらいできて日も長くなり始めていた。 什器なども順調に出来上がっていて、いよいよオープンが見えてきていた。 いやー、店出す前はいろんな人からフランスはいろいろ遅れるよ遅れるよと いやというほど聞いてけど 全然工事とか遅れへんやんフランスっ!ちゃんとしてるやんっ! そんなことを思いながら、 パトリシアのショールームの仕事の準備は工事中の店の中での作業となった。 会場装飾と呼べるくらいの装花をパリで初めてやってみてわかったのは 日本と比べてはるかに

        • 第10話 ciel nuageux

          鍵をもらっていよいよ自由に出入りできるようになった物件。 夜中に一人ボーッと過ごして店のことをイメージする。 陳列台と作業台。 どういう風なレイアウトが仕事しやすいかなぁと あれこれ考えるために数日だがなるべく多くの時間を物件ですごした。 内装工事は、この物件にたどり着く前に、見つけたものの 並びに花屋があるために諦めた1区の物件。 その物件を紹介したら俺より先に スルスルっと出店成功した日本のアパレルブランド1LDK。 その内装を手がけたTEE PEE A

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        • AVEC LES FLEURS
          1本
          ¥100
        • メニル通りの愉快な仲間たち
          1本

        記事

          第9話 la confiance

          クリスマスがおわり新年を迎えてもパリではノエルの飾り付けはのこったままだ。 アトリエ(兼住まい)と店予定地のちょうど真ん中に位置するヴィクトルユーゴー広場の噴水も この時期はダサいクリスマスツリーが数本飾られていてテンションが落ちる。 しかしこれがあるからこそ、暖かくなって天気のいい日に 噴水から水が天高く吹き出してるときを見たときの 気持ち良さがある。あー、はやく春にならないだろうか。 市場にも未だにペイントした木が残っていたりして、やる気ない感が半端ない。

          第8話 la possibilité

          夜10時まで日が沈まず晴れの日が多い6月の代償のように、 冬は日も短く寒くほとんどの日が曇り空のパリ。 寒さとともにランジス市場の花たちの顔ぶれも変わってくる。 パリ近郊の生産者が持ちこんでいるブースが並ぶ一角も、 生命力が溢れていた季節から徐々に活気がなくなってくる。 ノエルのデコレーションに使われる赤やゴールドやシルバー、 白などにペイントされた枝や花は日本でも見かけるが、 フランスの市場の方がはるかにたくさん見かける。 最近はツリーにも白だけでなく赤やピ

          第8話 la possibilité

          第7話 Atelier

          韓国から帰ってきて、日本では芦屋と青山での仕事の他に 岡山でのレッスンと新潟での大きな結婚式の打ち合わせにと移動しまくる日々だった。 たくさんの人と会うたびにパリへの挑戦の期待の大きさを感じた。 日本でいる間に、ネットでアトリエとして仕事を始める物件を探した。 アイロニーパリ店予定地からヴィクトルユーゴー広場を挟んでちょうど反対側。 店からは200メートルくらいだろうか。 凱旋門までまっすぐ伸びる大きな通りアヴェニューヴィクトルユーゴー沿いに ちょうどよさそうな

          第6話 Reprise

          判決がでると聞かされていた10月になっても、話が進む様子はなかった。 このままではオーバーステイになって滞在すらできなくなるということで、 予定していたパリ滞在を早めに切り上げて帰ることにした。 急な変更だったので、安いチケットを探していると韓国経由のチケットが出てきた。 そういえば、最近フェイスブックをみていると韓国のフォロワーが多い。 韓国の人からのメールで、写真集フラビュラスを買いたいという問い合わせも頻繁に来るようになっていた。 パリの人気フローリストが韓

          第5話 Misérable.

          お城でのウェディングの仕事から帰ったら残りの滞在期間中にもしかしたら契約が進むかもしれないと思っていた。 パリ進出で、ビザの取得手続きと契約書のチェックはサポートしてくれる会社を探して依頼していた。 その人たちにもマダムの弁護士から連絡があったらしく、話が進み始めたことを喜んでくれていた。 しかしここからが一番つらい時期だった。 7月、進展の連絡をまったが、結局なんの連絡もないまま滞在期間が終了。 来月にもちこしか。。と思ったがパリはほとんどの人たちが8月バカンスを

          第4話 mariage

          クレモンスから紹介してもらったナターリアのお母さんの持っている物件は 16区victor-hugo にあった。 初めて訪れた場所だった。凱旋門のあるシャルルドゴールエトワール駅から2番線に乗り換えて一駅。 ヴィクトルユーゴー駅を降りて地上に上がると、Place Victor-Hugo ビクトルユーゴー広場。 中央に噴水のある大きなロータリーで、凱旋門の周りほどではないがたくさんの車がぐるぐる回っている。 広場の周りを歩いてみると、あきらかに住んでいる人たちの雰囲気が

          第3話 rencontre

          アイロニーはもともとマンションの1室でのウェブショップからスタートした店で 今も店頭販売よりもウェブショップからのオーダーのほうが多い。 芦屋の店も、人通りの多いところとは言えないし、 青山店にいたっては、表参道から根津美術館へと向かう通りでカルティエやプラダの並びとはいえ 友人でさえみつけられないほどわかりにくい古いビルの2階にある。 ふらっと通りかかりに来店する人はほとんどいない。 インターネットを通じて見つけてくれた人が店に行ってみようと思ってきてくれる。

          第2話 étranger

          ようやくの思いで物件契約を終えたらすぐにでも開店したい気持ちだったが、あいかわらずパリはそんなに甘くはなかった。 また新たな問題が浮上した。 その新たな問題の話のまえに、ながれながされここまでたどり着いた漂流記をお話ししておこう。 パリに出店したいしたいとなにかのたびに口にしていた。 大半の人が冗談だと思っていたし、大風呂敷をひろげているだけだろというリアクションだった。 俺自身も東京の店が店として成熟、そしてそれによって会社がしっかり利益を生み出せる体制を確立して

          芍薬 Etched salmon エッチドサーモン

          Etched salmon (エッチドサーモン) 芍薬、ピオニー、ピヴォワンヌ、の季節がやってきました。 なかでも、ここ最近とくにたくさん目にすることになった お気に入りの品種があります。 エッチドサーモン。 画像管理ソフトで調べると、一番初めにとっているのは2010年。しかし記憶を辿ると芦屋店を一人でしている15年くらい前に花をトラックに積み込んで行商に回ってきていた姫路生花の大西が、これ絶対買ったほうがいいと押し売りしてきたのを覚えている。 冷蔵トラックにたくさんの花を乗

          芍薬 Etched salmon エッチドサーモン

          Avec les fleurs 第1話

          いちばんはじめに花を贈った記憶は母親へのものだ。 和歌山県の片田舎の町で洋裁の仕事を趣味程度にしていた母は花が好きで 二つ年上の兄と二人で、誕生日だったか母の日だったかに何かをプレゼントしようかと相談して、 すぐに 花にしよう と決まるくらいだったような記憶がある。 その後は学校の先生や、好きな女子と。。。 昔から 花を贈る ということは俺にとってワクワクすることだった。 だからといって、自分が花屋になるとはこれっぽちも思ってはいなかった。 2015年2月6

          Avec les fleurs 第1話

          花屋になるためには何から始めればいいですか?

          花屋になるためには何から始めればいいですか?という質問をたまにうける。 アイロニーで働きたいと履歴書を送ってきてくれて面談する人にもよくかんじることなんだけど、 まず花屋のことを知らない人が多い。 知ってる花屋を思いつく限り挙げてみて、アイロニーと最も競合になるところとの差異を説明してください。とか質問してみると、 誰でも知ってる大手の名前が出てきたりすることもある。 というわけで、花屋になるためには何から始めればいいですか?という質問には まずは100人の花屋を

          花屋になるためには何から始めればいいですか?

          「フレンチスタイル」や「パリスタイル」ってどんなの?

          『フレンチスタイル』や『パリスタイル』ってなんですか?(フラワーデザインにおいて) 生徒さんやインスタライブを見ている人などから、よく聞かれる質問です。 その都度わりとしっかり答えていたのですが、 たくさん疑問のある人がいそうなので、 そういう人が検索したらこの記事が出てくらいにならないかなぁと思って、note やブログ用に書き起こそうと思います。YouTubeで同じテーマで喋っても検索にかかりやすいかもしれない。    初めて読む人も多くいることを想定して、まずは自

          「フレンチスタイル」や「パリスタイル」ってどんなの?