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義理の妹とアイスクリーム

4年前、僕は愛する人と結婚するため、アルゼンチンへ移住した。移住当初、友人がいなかった僕の唯一ともいえる友人が嫁の妹だった。当時11歳の彼女と僕は、二人きりでよくGridoというアイスクリーム屋さんへ行ったものだ。

彼女の大好物はドゥルセ・デ・レチェ(アルゼンチンの代表的スイーツでミルクキャラメルのこと)。いつも2つのフレーバーを頼めるダブルアイスを頼むのに、決まって彼女は2つのドゥルセ・デ・レチェを頼む。

「たまには違うフレーバーを頼めばいいじゃん」、僕は言った。

「これでいいの。私はドゥルセ・デ・レチェが好きだから。シュンこそ、たまには、本当に好きな味だけ頼んでみなよ」

「僕はクレマアメリカーナが好きだから、いつもこれを頼む。そして、もう1つは色々と試したくなるんだ。君のお姉さんには一途だから、アイスには浮気したっていいだろ」、気心しれた彼女の前では思わず下らない冗談を飛ばしてしまう。

「Que tarado(バカみたい)」、彼女は笑いながら言う。そして、月日が経つにつれ、彼女とアイスを食べることは少なくなった。


あれから4年後の今日、家から離れた場所にあるアイスクリーム屋さんの前を通ると、そこには義理の妹がいた。彼女のお供をしているのは、彼女と同じ位の年頃の男の子。

「両親にばれないよう、離れたところでデートしてるんだな」と思っていると、彼女たちが1つのダブルアイスクリームを一緒に食べていることに気づいた。

1つはフルーツ系のアイスだろうか、よく分からない。だが、もう1つのチョコほど暗くなくて、優しい茶色のアイスは間違いなくドゥルセ・デ・レチェだ。

好みというのは、そう簡単に変わるものではない。

彼女は今、好きな人と一緒に、お互いの好きなフレーバーのアイスを食べている。通り越しに見た光景だが、僕の心を一日中温かくし、昔の記憶を思い出させた。

今度久しぶりに、義妹をアイスにでも誘おうかな。

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