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アンデス山脈を車で超える。アルゼンチン~チリ旅行記

陸路で国境を超えたときの感動、その感動は日本人の心に永遠の余韻として残り続けるだろう。島国日本に住む限り、陸路での国境越えは不可能だ。

僕が初めて陸路での国境越えをしたのは約3年前。アルゼンチン嫁家族と一緒に初めて車でチリへ行った時だ。

アンデスの山を登って国境を超えたときの感動は忘れないし、未だにワクワクする。2017年12月、再びチリへ行ってきた。

今回はアルゼンチン・ネウケン州からチリのテムコへの旅行記を紹介しよう。

ネウケン州といってもピンと来る人はいないだろう。しかしパタゴニアと言えばどうだろうか?

ネウケン州はパタゴニア地方に含まれる。強風が吹き荒れ、一年中乾燥している地域だ。

旅のルートは上の通り。ネウケンから西へ一直線と向かい、チリのテムコへ向かう。目的地到着までの見どころは主に3つ。

・アルゼンチンパタゴニア風景

・アンデス山中にある国境超え

・チリパタゴニア風景

アルゼンチンとチリの国境はアンデス山脈上にある。アルゼンチン側からアンデス山脈を上り、パスポートセンターへ向かう、そしてアンデス山脈を下るのだ。

また陸路で移動するメリットの一つとして、アルゼンチンパタゴニアとチリパタゴニアを楽しめるということがある。同じパタゴニアでも、アルゼンチン側とチリ側では表情が全然違う。

それは、上の地図を見てもらえば明らかだ。国境を境にすると、アルゼンチン側は緑が少ない、対してチリ側は緑豊か。

この3つのポイントに注目して、読み進めてもらいたい。

1日目:出発

出発はいつも朝早い。この日は、朝の5時に義母が車でやってきた。早めに出発する理由は、パスポートセンターで並ぶのを防ぐため。実はチリはアルゼンチン人の大好きな旅行先で、パスポートセンターは常に混雑状態なのだ。

手軽に行ける上に、チリは物価が安い。特にクリスマス前ということもあり、大量のアルゼンチン人がクリスマスプレゼント調達へ向かうことが予想される。

普段は銀行で何時間も待つアルゼンチン人だが、旅行となると別のようだ。

出発して45分ほどは、特に見どころもない。6時ころの朝焼けは綺麗だった。奥に向かうほど、ピンクが濃ゆくなる空は思わず写真に収めてしまうほど。

景色は相変わらず殺風景だが、その殺風景さと空の美しさが絶妙に良い。

ただ、いつまでも空ばかり見ていられない。風景も変わらず、早起きしたこともあり強烈な眠気が襲ってきた。

睡魔と戦っていると、義母が「シュン!ヘスース!ヘスーース!」と叫ぶではないか。

ヘスースの正体はジーザス(Jesus)。巨大なキリスト像が迎えてくれていた。

定かではないが、このキリストの両手を差し出すポーズは、人に温かさ・優しさを与えるとかなんとか。

その後は味気のない光景がどこまでも続く

どこまでも

どこまでも。

インスタ映えする光景ではないが(チリ側はインスタ映えする)、この土地の広さには毎回息をのんでしまう。建物が一切ない、あるのはどこまでも伸びるように続く大地だけ。これがアルゼンチンの魅力だ。

車を走らせ続けると、やっとアンデス山脈を登るときがやってきた。

アルゼンチン側アンデスは地球を十分に感じられる。

木と武骨な岩ばかりだが、それが逆に良い。この道を通るたびに、何とも言えない高揚感に襲われる。空が近いのもアンデス山脈を登っている証拠。

旅行時期は夏だが、ここら辺まで登ると空気が冷たくなってくる。ジャケットを忘れてはいけない。

パスポートセンター到着。

スタンプを押してもらい出発。といきたいところだが、まずはマテ茶で小休憩。冷たい空気のなか飲む熱いマテ茶は最高だ。

「チリへようこそ」の看板。

ついに陸路での国境越えを果たした。味気ない看板だし、陸路での国境超えが当たり前のアルゼンチン人たちのテンションも相変わらずだが、僕は密かに興奮していた。

奥に見える建物で入国スタンプを押してもらったり、手荷物検査をしてもらったりする。そのあとは、ひたすら山を下るだけだ。

壮大な自然を前に一枚。この時ほど、カメラの腕があればと願ったことはない。

チリの通関を通ると、「いい旅を!」と書かれたゲートが。このゲートをくぐると、急に緑が増えてくる。

アンデス山脈を下り続ける。アルゼンチンでは見られなかった緑も増える。国境を境にして、これほどまでに自然の表情が変わるのも興味深い。

親子ツーショット写真。普段はクールな嫁も、母親の前だと娘の顔に。

チリは緑豊かで美しい。写真をたくさん撮ろうと思ったが、ここからは道が蛇行する。車酔いしやすい方は酔い止めを持っていこう、嫁みたいに苦しみたくなければの話だが。嫁がダウンしたので、僕が息子の寝かしつけをすることに。

写真は撮れていないが、後半にチリからアルゼンチンへ帰る際の光景を紹介しよう。

チリからテムコまではそう遠くない。3時間ほどかけて予約しておいたアパートメントに到着。

チリではホテルよりもアパートメントを借りるのをおすすめする。他は知らないが、テムコに限ればアパートメントの方が安い。何よりキッチンが付いているので、醍醐味の一つチリの食材を思う存分堪能できるのだ。

レストランもいいが、スーパーや市場で買った食材を、その土地の調味料で調理するのも悪くない。

遅めの昼食はロンガニーサとマッシュドポテト、そして目玉焼きだ。ロンガニーサは、香り高い細いソーセージ。味はサラミを上品にした感じで、見た目以上にボリューミーである。

初日はとにかく疲れたので、この後シエスタ(昼寝)をして、ショッピングに行って終了。ディナーに何を食べたかは覚えていない。


2日目

2日目は8時ころに起床。もっとゆっくり寝たい気持ちもあったが、前日の夜、義母にデートに誘われたため早起きすることに。女性から誘われたデートは断るべきではない。

義母「明日、面白いところに連れて行ってあげるから、8時ころに起きてね」

8時に起床した僕に対して、義母が起きたのは9時30分。シャワーを浴びているのを待っていたりしたら、結局10時にアパートを出ることになった。アルゼンチン人のルーズさは、もう慣れっこだ。

義母が連れて行ってくれたのは、市場。チリの野菜や果物、魚介類が激安価格で売られている。

午前中は開いているお店がまだ少ない。

ここは義母が必ず訪れる店らしい。サーモン2㎏を購入。ランチはサーモンで決まりのようだ。

積み重ねられた野菜たち。

チリはアボカドが安い。チリのレストランでホットドッグやサンドイッチを購入すると、高確率でたっぷりのアボカドソースがついてくる。

忘れてはいけないのがイチゴ。というのも、嫁の大好物がイチゴだからだ。チリに来ると、イチゴを買い、嫁が皆に生クリームつきのイチゴをふるまうのが家族の伝統行事だ。

野菜もあれば、

大きなスイカもある。

だからホテルではなくアパートなのだ。ここで食材を購入して、アパートでチリの食材を堪能する。さすが義母、経験値が違う(嫁はベーコンが食べたいという理由で、ホテルを推していた)

細長いプラスチック袋にサラダを詰めて販売。

アパートに戻るまでの約15分間、義母が先住民マプチェ族について話してくれた。マプチェ族はアルゼンチンにも住んでいるが、チリにも住んでいる。

さらに言えば、テムコの路上で野菜販売している人々の多くはマプチェ族らしい。マプチェ族については、別の機会に詳しく書くとしよう。

ランチは義母特製サーモン。まあチリのサーモンは美味しい。味付けは塩だけ。しかし、それがいい。ほろほろと身が崩れ、サーモンの味を堪能できる。

チリのサーモンは美味しいし、チリ人の親戚たちもサーモンをしょっちゅう食べる。

ランチの後はシエスタをとって、スーパーへ。

チリに行ったアルゼンチン人が高確率で買うお土産がこれだ。嫁もいつも自分用に大人買いする。今回は売り切れていたが、ホワイトチョコレートのドーナッツが絶品。

百貨店Ripleyで嫁は服を購入。ジーンズにバラや花の刺繍を施すのが流行りらしい。あとジーンズにヒップアップモデルがあって驚いた。日本にもあるのかな?

夕方になると嫁の親戚がやってきたので、一緒に公園へ。

カップルが人目をはばからず大胆なキスをしている光景にはラテンを感じる。ただアルゼンチンでも普通なのでもう慣れた。独り身には少々辛い光景かもしれない。


3日目

3日目は義母と別行動することに。疲れがたまっていたのであろう、息子は11時まで熟睡していた。

嫁のお気に入りのレストラン(名前は忘れた)。ここのロミート(サンドイッチ)が絶品だ。

アボカドソース、トマト、卵、牛肉などが入っている。アルゼンチン人が野菜を食べないのに対し、チリ人はよく野菜を食べる。とにかく濃厚なアボカドソースがおいしい。これはチリならではの味だと思っている。

ちなみに義母と別行動をとった理由は、嫁は義母の料理があまり好きじゃないからだ。肉料理は好きだが、スープ系は嫌い。

2日目の夜に「明日のランチはスープになる。旅行に来たら、いつも3日目はスープなの。だから私はレストランに行きたい」と僕に告げた。

予感的中、スープだ。しかし僕は義母のスープが好きだ。野菜のうまみもあるが、ゴロゴロとした牛肉をじっくり煮込んでいるのでコクが深い。

息子が義母と昼寝をしている間、嫁とデートに。向かう場所は、いつものカフェMarrietだ。このカフェに訪れるのが、僕たちの定番。1つのケーキをシェアして頼む。これが2人で決めた唯一のルールだ。

頼んだのはMazmillano。なかに挟まったパイのサクサク感としっとりとしたスポンジ。チョコレートの甘みをラズベリーの酸味が中和する。辛口嫁も大絶賛のケーキだった。

ディナーは路上販売のウミータ。ウミータとは、すりつぶしたトウモロコシを玉ねぎや香辛料と一緒に炒め、トウモロコシの皮で包んだ具材を蒸したものである。

アルゼンチンにもあるが、チリのウミータは格別に美味しい。味に変化をつけたいときは、塩ではなく砂糖をまぶす。


4日目

明日の朝にはアルゼンチンへ出発することになる。買うべきものも全て買ったので、4日目はのんびりと過ごすことにした。遅めに起床した後、レストランへ。

クラシックな雰囲気のレストラン。うっかりしていたが、まだやり残していることがあった。

それが魚介類のスープを頂くこと。スープといえどたっぷりの魚と野菜が入っていて、ボリューム満点だ。まずはそのままの味を楽しむ、そしてレモンをたっぷりとかけるのがチリ流だ。

夕食はチリ人親戚と一緒にロンガニーサを食べた。親戚が言うには、チリではマリファナを吸う人が多いらしい。家で吸う分には問題ないようだ。ちなみにアルゼンチンも家で吸う分には問題ないらしい。

どうでもいいが、嫁が谷間に入れたタトゥーはマリファナの葉っぱにそっくりらしく、親戚と母親にからかわれていた。


5日目:カントリーロード・テイクミーホーム

チリに来るときは早朝5時出発だったが、アルゼンチンへ帰国するときは朝の10時に出発だ。名残惜しいのかもしれないと思ったが、チリからアルゼンチンへ帰国する際はパスポートセンターが混まない。単純に急ぐ必要がないのだ。

チリからアルゼンチンへ戻るときは、のどかな道を通る。チリでは馬に乗って移動する人を良く見かける。

この道を通るたびに、いつも"Take Me Home , Country Roads"が頭の中で流れる。

Country roads, take me home

To the place, I belong 

West Virginia, mountain mamma

Take me home,

Country roads

                                                       ~ 完 ~

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