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ナラティブ・アプローチとアプリシエイティブ・リーダーシップ。

ここ半年ほど、私は、ナラティブ・アプローチに触れる機会に恵まれています。 ニュージーランド在住のカウンセラー 国重 浩一 さん(コウさん)によるデモセッションやワークショップ、日本体験学習研究所(JIEL)主催のAIアプローチアドバンス講座での学びが印象深いです。

ブリーフセラピーに分類される「ナラティブ・セラピー」は、人生に大きな影響を与えている辛い記憶を、セラピストの問いかけをきっかけに、自らを元気づける異なる意味付けに転換する「物語の書き直し」が有名です。
また、同セラピーは、本を読んだだけでは、「なるほど、こういうことか!」と理解できない、特別な訓練が必要なセラピーと言うことでも有名です(笑)。

ナラティブ・アプローチの哲学・姿勢をご紹介しましょう。

<ナラティブの哲学・姿勢>
◎ 「人が問題なのではなく、問題が問題なのである」
◎ 「その人の人生の専門家は、その人自身である」
◎ 「問題の浸み込んだ物語」と「オルタナティヴ・ストーリー」
  出典:ナラティヴ実践協働研究センター

特に一つ目の「人が問題なのではなく、問題が問題なのである」は、私の頭を混乱させます。 とは言え、「なんとなく、イメージとしては理解できる」と思いますし、同じように感じる方は少なくないのではないでしょうか。

職場やプロジェクトチーム、学級や部活動、はたまた家族の間でも、特定の人を指して「あの人の行動・言動が問題だ」とする場面は多く見られます。 しかし、別の職場やチームでは、同じ人が同じことをしていても、特に問題視されないこと、逆に「すごいね。それはあなたの強みだと思う」と言われることもあるでしょう。

ナラティブ・アプローチでは、その人の「あたりまえ」や「当然」に疑問を持ち、積極的に「何が、そのようなことを生じさせるのですか?」と問いかけることで、「問題」を人から切り離し、「問題」として取り出します。
また、その問題に名前を付けたり、紙にイメージを描いたりすることで、具体的に取り扱えるようにします。

人を責めず、問題による影響を弱めるために何をどうできるかを考える-
その方が、具体的に対応可能ですし、何より人に優しいと思います。

例えば…
私は、以前勤めていた会社で、「あの人は、済んだ問題を蒸し返す面倒くさい人だ」と言われることがありました。 恐らく、仕事の途中で「目的・目標に向かっているか?」、「このまま最後までやりきれるか?」と言う思いが頭をよぎると、「○○のためにやるんですよね」や「×月×日までに△△まで終わらせるんですよね」と、確認することが多かったからだと思います。

ナラティブ・アプローチでは、私に対して、「何が、あなたにそう言わせるのでしょうか?」と言った問いかけをするでしょう。

その後の流れ(仮)は、次のようになります。
「不安や恐れ、心配といったものだと思います」
「そのことについて、もう少し話してみてください」
「そうですね、手順通りに進めることが重視され、目的はどこかに忘れられている、と感じています。 当初決めたゴールにたどり着けないだろうとも、思っています」 …

この流れで話を進めていくと、きっと私は「不安や恐れ、心配を口にする」ことではなく、「業務の目的・目標を、紙に書いて職場に貼り出したり、グループウェアのポータルサイトに表示する」ことを選ぶでしょう。 その方が、実効性がある上、私自身にも職場の仲間にも優しいと感じるからです。

さて、このナラティブ・アプローチの哲学・姿勢は、アプリシエイティブ・リーダーシップ(価値探求型リーダーシップ)と親和性が高く、「第3回AIアプローチ アドバンス講座」でも紹介され、実習もしました。 実習を通じて、アプリシエイティブに話を聞いてもらうことは、とても心地がよく、また自分自身の強みを再認識でき、「頑張ろう(頑張れそう)」と思えることを知りました。

問題に直面したとき、科学的に「必然」を追いかけていくと、当事者は最終的に「袋小路」に追い詰められた、苦しくて辛い気持ちになることがあります。 そのようなときに、リーダーが「原因追及(ギャップアプローチ)」から「価値探求(ポジティブアプローチ)」へ、アプローチ方法の切り替えを促すことができれば、仕事や職場に希望が生まれます。

ナラティブをうまく使うアプリシエイティブ・リーダーシップ。
それは、「袋小路に追い込まれた絶望感」から部下を開放し、「ゴールを目指す希望」を与えるリーダーシップだと、私は考えます。

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