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熟成させた日本酒は美味しい?

日本酒についての質問で難しいことの1つは「飲み頃はいつか?」ということ。
同じお酒でも、ワインは日本酒より熟成した時の味がイメージしやすいです。

ワインの飲み頃は、明らかに香りが華やかになったり、渋みが柔らかくなったりするのですが、日本酒はそもそも味の幅がワインほど広くなく、繊細な違いであるため、熟成しても分かりやすい変化というのがあまりありません。

それでは、日本酒を熟成させる意味は何でしょうか?
どうなるのか分からないのであれば、やってみよう!ということで、IMADEYAでは5年ほど前から日本酒を熟成させるための熟成庫を作り、テスト的に熟成させています。

定期的に熟成させたお酒をテイスティングして、その可能性を確かめてみようと思います!

チョコレートに合う!まるでカラメルのような香りの熟成酒


日本酒の熟成もいくつかタイプがあるのですが、分かりやすい熟成酒は、飴色のような色の濃いもの。
こういったタイプのお酒は長期熟成させていることが多く、熟成中に糖とアミノ酸が反応して起こる「メイラード反応」によるものです。
この熟成酒は香りにも特徴があり、強弱はありますが、その多くにカラメルのような香りがあります。
肉の煮込み料理や中華料理など、味の強い料理には日本酒は合わせづらいと思われていますが、このタイプの日本酒はこういったお料理にぴったり。メイラード反応というのは、糖とアミノ酸が多ければ多いほど強く出る反応で、それらが多いということは味にボリュームがあるということ。
日本酒に限らず、料理とそれに合わせるお酒の「強さ」を合わせることはとても大事なので、味の強い料理にボリュームのあるお酒はよく合うのです。
私が一番好きなこのタイプの熟成酒の飲み方は、チョコレートと合わせること。カカオの香ばしさと熟成酒のカラメルのような香ばしさが一つになり、口の中でお互いの香りが広がっていきます。
どこかで飴色の日本酒を見つけたら、ぜひチョコレートと合わせてみてください。

メイラード反応した日本酒は、和菓子にもよく合います。

繊細さをそのまま残した、低温で熟成させた酒


上に書いたような日本酒は、低精白米(あまり削っていないお米)で仕込んだものであることが多いです。お米を削らない方がアミノ酸が多く米に残るので、その分メイラード反応が起きやすくなります。
でも、日本酒は低精白のものだけではありません。低精白のお酒は旨みが強く力強い味のものが多いのですが、大吟醸のような繊細なお酒もあります。

ところで、話は変わりますが、SF小説や映画などに出てくる「コールドスリープ」はご存知ですか?(私は藤子・F・不二雄の「カンビュセスの籤」という漫画が大好きでした!)
コールドスリープは、人体を低温や冷凍の状態にし、宇宙へ向けて長期間移動させたり何十年も先の世界を若い体のまま生きられるようにしたりする技術です。

私たちは、このコールドスリープと同じように、繊細な大吟醸は0度と低温で熟成させています。
人間は低温の状態だと若いまま保たれるようですが、日本酒の場合はどうでしょうか…?

結果から言うと、味は大きく変わりませんでしたが、口当たりが驚くほどなめらかになっていました。
味の変化は、やはりアミノ酸が多い低精白のお酒の方が大きいのですが、このなめらかさは低精白のお酒よりも大吟醸に分かりやすく表れています。
味は好みがあるので良し悪しを決めるのは難しいのですが、口当たりに関してはよりなめらかな方が良いお酒とされています。
恐らく蔵のフラッグシップとしていることも多い大吟醸クラスのお酒は、いいお米を選んで使っていることが多く、そのお米の質が熟成させることによって表れてくるのではないか、というのが私たちの見解です。
ワインも、味は様々ですが、良いワインの条件の1つに良いブドウからできた質感の良さがあります。きっと日本酒のお米もそういうことなのだろうなと、今回熟成酒をいくつか飲んでみて感じました。

まだまだ分からないことだらけの日本酒の熟成ですが、フレッシュなだけが日本酒の美味しさではない!ということだけは確実です。
今あなたが飲んでいる日本酒も、熟成させたらもっと美味しくなるかも…?

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