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無農薬のお米で造ったお酒は美味しい?

去年から始めた山梨のペイザナ農事組合法人で栽培したお米をどぶろくにするプロジェクト、今年も無事稲の収穫を終えました。

【自分たちの育てたお米でどぶろくを造りたい!ペイザナ×とおののどぶろくプロジェクトについてはこちら】
https://note.com/imadeya/m/m4233e5e89d4a

去年は稲が稗(ひえ)などの他の草に負けてしまい、収穫はしたものの精米してみるとなんと3分の1ほどしか実が入っていなかったのですが(涙)、今年は去年の失敗を踏まえ、きちんと草取りをしたところ籾殻に入っている状態で去年の2倍弱の収穫量がありました!
精米してみないことには実が入っているかどうか分かりませんが、ひとまず去年より収量が増えたので一安心です。

今年の草取りの様子。1日中ずっとこの姿勢で、翌日からの筋肉痛が激しかったです…。

※去年のお米で造ったどぶろくは、近々いまでや清澄白河店で販売予定ですのでお楽しみに!
いまでや清澄白河店のインスタグラム
https://www.instagram.com/imadeya_kiyosumi/

ところで、山梨で栽培したお米も、どぶろくを造ってもらっている遠野の佐々木さんのお米も、農薬や化学的な肥料を使用せずに栽培しています。佐々木さんのお米に関しては有機肥料も一切使用していません。

今年は私も去年より多く山梨に通い、田んぼに携わりましたが、その中でよく話していたのが、無農薬や無施肥で栽培したお米と、それらを使用した慣行栽培のお米ではお酒になった時にどう味が違うのか、ということです。

お酒の種類が何であっても、それがどのような原料からどのように造られたか、というのは味に反映されます。ということは無農薬・無施肥で栽培したお米のお酒と、そうでないお米のお酒ではもちろん味は違うはず。

私たちは、「ブラインドテイスティング」という、事前にお酒の情報を見ずに飲んで、お酒の味から逆算して造り方や原料の状態を探って何のお酒かを当てるということをたまにやるのですが、今回は農薬を使っていないお米が原料なのか、使ったお米が原料なのかに絞ってブラインドテイスティングをしてみました。

今回飲み比べてみたのはこちらのお酒です。

木戸泉酒造 afs(アフス) オリジナル
https://www.imaday.jp/c/nihonsyu/2589

木戸泉酒造 木戸泉×つるかめ農園 afs 源
https://www.imaday.jp/c/nihonsyu/gd11904

木戸泉酒造は、千葉県いすみ市の海の近くにある酒蔵。「afs(アフス)」というのは、木戸泉が昭和30年から取り組んできた独自の製法、「高温山廃仕込み」、「一段仕込み」で仕込んだお酒です。

この変わった名前の由来は、この製法の開発に関わった3人の名前の頭文字です。

【a】安達源右衛門 新潟県住乃井酒造の先々代社長
【f】古川董 千葉県醸造試験場(現千葉県産業技術支援研究所)初代所長、当時の木戸泉技術顧問
【s】荘司勇 木戸泉酒造先々代社長

「高温山廃仕込み」とは、通常、水にお米や米麹を入れてお酒を造るところを、55度のお湯にそれらを入れて仕込む製法、一段仕込みとは、日本酒の通常の仕込み方である、原料の米・米麹などを3回に分けて仕込む「三段仕込み」ではなく、原料のお米と米麹を一度に全て入れて仕込む製法です。
これらの製法で仕込むと、甘味と酸味が強調されてまるで白ワインのような味わいになります。

なぜこのような製法が考え出さられたかというと、まだ空調がなかった時代に、海外で美味しい日本酒を飲んでもらうため。afsが造られた昭和30年頃にも日本酒は輸出されていたのですが、従来の造り方だと赤道を通って輸出された日本酒はとても飲めるものではなかったそうです。
輸出の過酷な状況にも耐えられる酒質の日本酒を造ろうと、afsが生まれました。

無農薬のお米を栽培しているのは、木戸泉酒造と同じくいすみ市で農業を営むつるかめ農園さん。
つるかめ農園さんは農薬も肥料も使用していません。田んぼは水田というだけあって、多くの水を使用します。そこで農薬や肥料を使うと、その先にある川や海にまで影響を及ぼします。そのため、つるかめ農園さんでは何も使用しないようにしているそうです。

それでは、両方のお酒をブラインドで飲んでみましょう。

①香ばしく熟したリンゴのような香りがあり、まるでアップルパイ。少し煎った糠のような香りも。飲むと強い旨みが口中に広がり、味わいにもアップルパイのような風味がある。そしてその奥にまた糠っぽさを感じる。強い旨みとしっかりバランスを取る強く鋭い酸味があり、余韻にはその酸の印象が残る。

②柚子ジャムのような甘さと柑橘の香りがあり、①にあったような香ばしさはほとんど感じない。旨みは凝縮感はあるが、横に広がるというよりも、直線状にまっすぐに伸びていく。蜜のような風味と爽快感のある酸がバランス良く続いていく。

正解は、①がafs オリジナル、②木戸泉×つるかめ農園 afs 源。飲み比べた印象は、afs オリジナルの方が豊満で、木戸泉×つるかめ農園 afs 源の方がタイトでスリムでした。

正直なところ、農薬の有無は味にどこまで影響しているのかは分かりませんが、①のafs オリジナルは、味わいから栄養をたっぷりもらって育ったお米なのだろうな、という予想ができました。対して木戸泉×つるかめ農園 afs 源は全体的にスリムな味わいで、贅肉のない美しさを感じました。

お米はブドウに比べて、その原料の特徴の違いが分かりにくいと言われていますが、今回同じ製法で原料のお米が違うこの2つを飲み比べてみると、明らかに味わいが違って私たちも改めて原料の大切さを知りました。

造り手それぞれに考えがあり、何が正解かは簡単には言えませんが、お米の栽培の仕方で味に大きく違いが出る、ということは確かなようです。

こうして何かテーマを決めて飲み比べてみると、そのお酒が造られた背景を知るきっかけになり、より深く楽しむことができます。
何かお酒を飲む時は、1種類だけでなくぜひ飲み比べてみてください。そうすれば新しい発見がきっとあるはずです!

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