狐は春の夢を見るか

(※一度、うpしてた文章投稿サービスが提供終了してしまったので新しく別サービスで投稿し直しました。
前の文章は元々バックアップしてないので、前と文章違いますがご容赦ください。)

『櫂くんと昔馴染み組が平安クトゥルフに挑むようです』の続編偽卓『櫂くんとその昔馴染み組が和風クトゥルフに挑むとか挑まないとか』のイメージについてです。ここまでいくと卓関係あるのかというか、さすがに自重すべきかと動画化はしません。


舞台は現代。
大学生の探索者たちが京都旅行に行ったついでに怪奇に巻き込まれる話。
シナリオとしては基本ルルブの「死者のストンプ」を和風に改変するつもりでした。
NPCに毛玉こと壬生達也。

壬生の行動指針……目的としては、『自身の力の核である翡翠の勾玉を見つけ出し、それを砕いてもらうこと』です。
過去、一度勾玉を取り戻した壬生ですが、信頼の証として加茂に勾玉を預けていました。しかし。
「加茂、前にお前に渡した勾玉は如何した。最近見ていない気がするんだが」
「ああ。無くした」
「はあ!?」
と加茂が紛失(?)させ、以後見つからず。
というのも加茂が故意に隠したからではあるのですが。

隠した理由としては、壬生に対する危惧からです。
壬生の同胞は全滅したと言っても過言ではない状態で、帰るところも行くところも無かった訳ですが、そんな壬生に居場所を与え、心を溶かしたのは加茂を筆頭に管森や秋時達なんですね。ただ、壬生は人間自体は嫌いなままなのであくまでも例外ができたというだけです。
だからこそ、自分達が亡き後壬生はどうするんだ?ということを加茂は考えています。生きる時間が違うので遅かれ早かれいつかは壬生を置いていくことになります。
壬生の思うままにのんびり天命まで生きてくれればいいとは思うけれど、それができるような器用な性分ではないと、むしろ真逆の不器用な性分であることも十分理解しているので最悪の場合後追いしかねないと心配しています。(そしてその予感は的中しており、人間より生死に対する意識は低いので、壬生は壬生で「彼奴が彼岸へ渡っても付いて行こうか」とフワッと考えてます)
なので自決できないように力の核である勾玉を隠し、念には念を入れて壬生自身には勾玉の力を利用できても破壊することはできないという呪がかけられています。
それでも壬生は京から離れず生き続けます。
彼等が生きた地を離れることができない。例え彼等の墓があった場所に、建物が建とうとも。
それは呪でもなんでもなく、ただの壬生の感情に依るものです。

遠い昔にかけられた、「俺が死んでも、後追いはしてくれるなよ。でないと絶縁だからな」と陰陽道を極めた陰陽師の言霊が今も尚、壬生を縛り続けています。


そして、近頃現代の京の様子がおかしいことに気づき、単身で探っています。その中で探索者達と邂逅するという流れです。初邂逅時に、"彼等"にそっくりな探索者達を見て壬生は動揺します。
現代探索者組は平安組の子孫か、血の繋がりはない転生体なのかは定めてないので好きなように捉えて頂いて大丈夫です。
そして加茂俊樹が翡翠の勾玉を所持しています。子孫設定なら勾玉は家に代々伝わっているor転生体なら生まれつき所持していたという設定になります。


・NPCとしての壬生
一応お助けポジション。ただあまり積極的には手を貸してはくれないです。
何度か出会っている状態で助力を乞うと、渋々ながら協力してくれます。もしかしたらプラス補正して説得か信用で振らせるかも。
そしてどれだけ仲良くなったとしても、壬生が京を離れて探索者達に付いてくることはありません。
基本的に率先して肉盾になります。
もし、壬生の過去や目的を尋ねても曖昧に濁して答えてくれることはありませんが、ある一定のトリガーを踏んだ状態で心理学を振ると、感情の揺らぎが見えることもあります。ただ、現状の壬生の大部分を占めているのは諦観と寂寥。
翡翠の勾玉を見つけた後であれば、静かな決意を感じることができるでしょう。


・事件解決後
シナリオ中に加茂俊樹が翡翠の勾玉を壬生に見せていれば、解決後に「一つ頼みたい」と加茂に対し静かに切り出してきます。(もしくは「力を貸す代わりに、願いを聞いてくれ」と交換条件で共闘をしてもいいと思います。)
「其れを砕いて呉れないか」と。
断ると、頭を下げてもう一度頼みます。
壬生の願いを叶えてもいいし断ってもいいです。断ってもしばらく粘りますが最終的には諦めます。
ちなみに「砕くとどうなるんだ?」と尋ねても答えてくれることはありませんが、静かに微笑むぐらいはするかもしれません。

砕くことに頷いた場合、「お前が彼奴の力を継いでいるのなら、『砕けろ』と念じるだけでいい」と教えてくれます。
ぱきん、と音を立てて勾玉が砕かれた瞬間、鮮烈な白い光が辺りを包みます。そして探索者達は見ます。


現世ではない何処か。其処に壬生が立っている。その壬生の前に誰かが立っている。
懐かしい、声がする。

「おや、ようやくですか」

嗚呼、覚えている。何処か楽しげな声。何時だって些細な口喧嘩をした。
「本当ですね。とても長い時が経ちました」
穏やかに笑う顔。初めて出会って、刃を向けあったことが嘘のような。
「全く、加茂にも困ったものです。『彼奴が来る迄、川は渡らない』なんて言うのですから!どれだけ僕達が渡し守に睨まれたことか!」
「そう言って、管森様も留まったじゃないですか」
「其れは一言くらい文句を言う為ですよ。呆けた顔の毛玉殿にね」
赤と青。そして。

「……遅かったな」

視界が滲む。
感情の読みにくい不遜な声。背筋の伸びた自信に溢れた立ち姿。幾度だって夢に見て、幾度だって思い描いた。
嗚呼、嗚呼。
呼ばれる迄もなく駆け出す。感情が詰まって息が出来ない。もどかしい、もっと速く。もっと速く。足がもつれてまろびそうになっても、唯、彼の人の元へ。

「……行くぞ、晃陽」

そしてまた、白い光が視界を焼く。
次に目を開いた時には元の場所に戻っていて、先程の場所の影も形もない。砕いた勾玉も無い。
壬生も、居ない。

そうして奇妙な京都旅行は幕を閉じるのでした。



微妙に歌詞にかかってるとかかかってないとか。
出逢えたらもう約束はいらない。