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石榴喰らう/補足あるいは蛇足的擬似短歌

イメージで投稿した『石榴喰らう』(五態七首)
https://note.mu/imai_kiyomi/n/n70e93c8c69b4

サイト連載中の漫画『覡中劇』のストーリーに合わせ、吉祥果(石榴)をテーマにした連作画。ここではその五枚のイラストそれぞれ短歌もどきと補足的解説を付けている。内容的に被ってしまうがなにとぞお許しを。

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題名一覧

左上「夜にはじけよ」  右上「鬼祓」
真中「破瓜」
左下「ハーリティ」  右下「童子面」

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夜にはじけよ

吉祥果 夜にはじけよ 血肉めく 舌に絡みし母の味かな

現在、プロフィールのヘッダ画像にも使用しているイラスト。この一枚から石榴を巡るイメージが広がり連作となった次第についてはブログを参照されたい。元画像の色調を弄っている。
石榴は食用果実だが(黒ザクロは薬扱い)外皮には毒性があり、多量摂取で中毒を起すと嘔吐や麻痺のほか、黒内障・複視・視野狭窄など眼に関する症状が出る模様。形状の類似からGrenabe(手榴弾)の語源にもなっている。


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破瓜

踏み潰せ 指汚せ刺せ 紅の滋味 孕める妹のくちもとこほる

滋味(じみ) 妹(いも)

「くちもとこほる」は「口元」「朽ちも」と、「毀(こぼ)る」「子放る」「凍る」を掛けたくてわざと旧かなづかいに偽している。『破瓜』も「墓」に掛けたくて使った。「破瓜」の意味はいく通りかあるが、物語上の流れでは全て当てはまるので、どの意味でも解釈可能。この二人は一枚目の「夜にはじけよ」のキャラ(主人公)の両親にあたる。


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童子面

吾が相貌は 仙境滋童の面似つ 嬰児籠満ちたる赤子に賜う
幾たびと生まれ出ずるも報いとす 届け吉祥果 吾等の祈り

相貌(かお) 面(おもて) 嬰児籠(いじこ)

本来、二枚目の『破瓜』に描いていた構図の一部だったが、一枚にまとめきれず独立させた。よって背景の柘榴の枝は同じもの。仙境滋童は謡曲「菊滋童(枕滋童)」と解して頂ければ幸い。用いられるシテの童子面は覡中劇本編『花伽ぎ』第二幕表紙のモチーフでもある。嬰児籠は赤ん坊を入れておく古民具。


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ハーリティ

菩薩めく娘に纏わせて瓔珞の 紅珠飾りけり 鬼子母神絵図

娘(こ) 紅珠(たま)

今回は裸身を描いた上に布服を塗り重ねたが、自己満足に過ぎないこの工程は何らかの意味を持つだろうか。絵図は同音の「得ず」「獲ず」あるいは「穢ず」を想起さすべく選んだ。ハーリティ(訶梨帝母[かりていも])は鬼子母神の梵名。本来、鬼子母神像は柘榴の枝を持って片手に子供を抱く。物語上そう出来ない詫びと慰めにしたいがため、狂ったように装身具を描き足している。指はインド舞踊のさい、アルタという染料で染めるのに倣った。


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鬼祓

子ォとろ子とろ 戯れ歌に聞く鬼が今 父と名乗りて我が身浚いき
代わりにと差し出す柘榴熟れ乱る 戯れに喰らえ 此の実魂ごと

魂(たま)

「子をとろ子とろ」は子捕り鬼という遊戯の童謡。一番前の「親」とその後ろに繋がった「子」らが逃げ、鬼役が追いかけ後ろの子から捕まえていく。手繋ぎ鬼の一種になるのだろうか。子供の頃似たような遊びはしたが、歌は成人してから知った。
あくまでフィクションという言い訳と、このキャラクターが戒律を犯す暗喩も含め、数珠の玉数や袈裟は実際と異なる描写にした。モデルとなった宗旨に対し何ら含むところは無い旨ここにお断りしておく。


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あとがき(らしきもの)

こんな補足をつけるなら最初からこのテキストだけで纏めておけば良さそうなものだが、横長の画像は勝手に縮小されてしまい拡大出来ない。イメージならばクリックで元の大きい画像が見えるが、逆に画像一枚につき500字しか説明文を付けられず、文字の大きさを変えたり強調を使えない。文章を丸ごと画像化する案も考えたが、文中に複数リンクを自由に貼りたかったので断念し、二つに分ける苦肉の策となった。面倒にも両ノートを開き閲覧して下さった方にひたすら感謝申し上げたい。
ありがとうございました。

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