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データを駆使して、爆速でフラフープを回せるようにした話【スポーツ×データ分析】


天高く馬肥ゆる秋ですね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。
秋はスポーツの秋でもあります。馬だけではなく肥えてしまった皆様、運動をしましょうね。

さて、というわけで今日は運動のお話です。会社でめちゃくちゃ面白いおもちゃを手に入れたので、それを使って、スポーツにデータのメスを入れようとしています。今回はフラフープができない人を爆速でできるようにしたという話です。データをうまく扱えば、専門家がいなくてもそれらしきことが可能になるかもしれない、ということです。

おもちゃ

※私がおもちゃと呼ぶときは、自分の好奇心と目的意識を満たすものに対する最大限の敬称です。

これです。e-skin MEVA。

Xenomaさんが開発している、腰・膝・お尻・かかとの動きが精緻にわかる素晴らしいスマートファブリックです。

最近のモーションキャプチャだと、Open Poseなどを用いて映像で解析するという方法もありますが、このモーションキャプチャの利点は、

・高レート(100fps)でデータ収集ができる。
・3次元的な位置関係が正確にわかる(カメラだと複数台必要)
・着るだけでデータが取れる(カメラのように被写体を写し続ける必要はない)

あたりかなぁという感じです。実際にサクッとデータが取れて、非常に面白いです。

きっかけ

アックスチャレンジの記事にも書いた通り、「2年目はデータサイエンス」の年です。ものづくりとデータ分析を掛け合わせ、他にはない最高のスポーツコンサルチームを作るという目標を掲げているところで、このe-skinに出会いました。

アイスクライミングで苦手な動きや上手い人との比較ができれば、意識すべきポイントを抽出できるかもしれない、そう思い購入し、まずはフラフープで何ができるかの可能性を検証したわけです。

被験者

まずはこんな感じでした。できない人・まあできる人・超できる人の3方いたので、とてもいい比較サンプルが取れました。
上手い人は全然無駄なく回せていて、上手い…!ちなみに真ん中が弊社CEOです。有名人なので顔出し出演です。

今回の主役は左の「可」の人、高橋さんです。まずは軽いデータ採りのつもりでしたが、「いや、これフラフープできるようになるまでやってみると面白くない?」と天啓が降り注ぎ、ミニクエスト「高橋さんのフラフープ成長日記」が始まりました!

分析

実際に分析した内容と結果を載せていきます。私が分析するときは

・仮説
・結果
・次へのアクション

を意識しながら進めていくので、その流れに沿って書いていきます。

分析1. まずは単純な時系列データ

仮説 : 上手い人とそうでない人は明らかに傾向が違うだろう

まずは単純に動きの時系列データを可視化してみました (縦軸 : 動きの速さ、横軸 : 時間)。両者とも同じスケールです。さて、どちらが上手な人でしょう?

というわけで、上手な人は無駄の少ない動きをしているというのが一目瞭然でした。上手い人のやり方を分析して、マネすべきところを探ってみよう。という展開になりました。

Action : 上手い人を真似て、無駄の少ない動きで回せ!

分析2. 各部位の周期を眺める

上手い人とそうでないひとは何が違うのか。そこでまた一つ仮説を立てました。

上手い人は周期にばらつきがなく、一定のリズムで回しているはずだ。さらに、各部位がきちんと連動いるはずだ。

そこで、各部位の周期を出してみて、比較してみることにしました。(自己相関関数を使っておおよその周期を出しています)。下図の山の頂点がおおよその周期です。上手なひとと、そうでない人の違いはその連動性に出ていることが見て取れると思います。

ここで面白いことが2つわかりました。1つ目は、上手な人はみなほとんど同じ周期でフラフープを回しているということです。次の3つのグラフを見てください。上手な人達は各部位の連動が取れているので、殆どの部位が同じ頂点に集まります。調べたところ、おおよそ0.6秒で回していることがわかりました!これを第一フラフープ速度と名付けました。(円運動かつ、フラフープの重さと半径に相関がありそうなあたり、第一宇宙速度を彷彿とさせませんか???)

更にもう一つ、詳細に分析をしていてわかったことがあります。「高橋さんのフラフープ成長日記」にて、二日目のデータを見ていると、お尻のリズムが取れてきた一方で、全く連動していない箇所があったのです。詳細を掘り下げると、それは「膝のZ軸」でした。つまり、お尻だけ回そうとしていて、膝を使えていなかったわけです。上手な人はこの膝の上下動がきちんとできていたので、それを意識すれば変わってくるかもしれないと思いました。

Action
・第一フラフープ速度のリズムを意識する
・膝を柔らかく上下動を意識

分析3. 各周期での動きを眺める

さて最後に、もう一つ分析を加えました。「1周期での動きを切り出して」の分析です。

仮説 : 反復運動だから、一周期毎の運動を取り出して見てみると、癖などがわかるのではないか

と思い、実際に実施してみました。(1周期の切り出しは、歩数カウンターで使われているような手法を少し改良しつつアドホックにやりました。)
下図は、フラフープを回せてた人の中で、5周分のお尻の動きを上から(xy平面で)眺めたものです。これは結構面白くて、上手く回せている人でも結構クセが違うなと言うのがわかります(1人目は横回しなのに対して2人目は縦回し)。

ちなみにクセがすごい最後の人は弊社CEOです。(実はこの図、最後だけ縮尺×1.5です)

ここでおもしろかったのは、「軽く八の字を描くような軌跡になっている」というところです。クイッとフラフープを上げているのかもしれません。フラフープを回すときは、腰やお尻は無意識のうちにそのような動きをしているのです。こちらも高橋さんに意識してもらうようにしました。

Action : 8の字を意識して、無駄なく回す

結果

分析によってわかったことがこちら

• 動き過ぎない
• 第一フラフープ速度を意識
• 意識するのは膝の上下運動
• お尻は軽く8の字で回せ

※ これらの条件を満たすための最も効果的なトレーニングは、第一フラフープ速度0.6秒にメトロノームをセットし、軽くお尻の8の字を意識しながら膝をちょこんと曲げるというトレーニングを繰り返すことかもしれないと思ったがしかし、あまりにシュールなのでなかなか提案できませんでした。

これらを意識して改善に取り組んだ結果がこちら

結果、3日でミニクエストクリア
勤務地が少々離れているため、初日以外私が見たのは彼のデータと、iPhoneで撮られた動画だけです。フラフープの動きを見たところで、とやかく言えるほどその道に詳しいわけでもありません。それでもこのくらいの結果は出せるのです。

まとめ

モーションキャプチャ、試験的に使ってみましたがとてもおもしろかったです。製造業的観点だと、"上手な人を真似る"というのは、昨今技術継承問題でかなりホットなトピックです。このようなキャプチャを使って、カンコツの真因をつかめる可能性があるなと感じました。

今回はフラフープという単純なタスクでしたが、十分な手応えを感じることができました。玄人の眼と組み合わせると、さらに効果的なカイゼンが行えると思います。人の動きに対する分析は、面白いし、とても効果的であることを実感しました。

さて、いよいよアイスクライミングがシーズンインです。今期は門田ギハードさんに加え、女子アイスクライミングの小武芽生さんも加わったアックスワールドチャレンジ。データ×ものづくりの可能性を信じ、全力でサポートしていきます!

ではでは、続報をお楽しみにっ


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