見出し画像

#03 THE GUILD勉強会「データ×UXデザイン」 (2/2)

前回の続き。

本稿では後半2つについてレポートします。


デザインとコミュニケーションで改善するデータのUX

3人目のスピーカーは、THE GUILDの安藤剛さん。


安藤さんは様々な企業とお仕事をされる中、どこの企業もデータ分析はしているけど、あまり社内を巻き込んで効果的に活用できているところは少ないのでは?と感じていらっしゃったそうです。
事実、米国と比べて日本企業のデータ活用率はまだまだ…ということは


では、なぜ活用がすすまないのでしょう?
まずはこちらをごらんください。よくあるデータのダッシュボードです。なにかに似ていませんか?


…そう!飛行機のダッシュボードです。


飛行機のダッシュボードを前に、パイロットでない普通の人は、どんなアクションを起こしたらいいのかわかりません。

データのダッシュボードにも、これと同じ現象が起こりがちです。
専門外の人が見た時に「グラフが何を表しているのか判らない」故に「コミュニケーションが生まれない」という問題。

ちなみに、コミュニケーションがなぜ重要なのかというと、データ分析において、一次情報(現場の意見)はインプットとして大変重要であること、そしてデータを活用する人が増えるほど議論の質が高くなり、組織が賢くなることが期待できるからとのことでした。

データの活用が進まない原因に、そもそも「データのUXが悪い」…という仮説が見えてきました。
この課題を、デザインとコミュニケーションで改善しましょう!というのが今回のテーマです。


THEME1: デザイン的アプローチ

「データ」と「デザイン」…と聞いて、インフォグラフィックを思い浮かべる人も少なくないのではないでしょうか。

一口にインフォグラフィックといっても様々なものが存在しますが、大きく2方向「探求型」と「ストーリーテリング型」で整理することができます。


次に、インフォグラフィックの主要な利用シーンとして、以下の3つが挙げられます。

どれもインフォグラフィックですが、見た目はだいぶ異なります。

マーケティング(赤)であれば、販促やPR目的での利用を見込んで「訴求、記憶保持」が重視されます。エディトリアル(青)も本や雑誌を想定しており、優先度のトップは「訴求」。
対して、学術・科学(黄)は訴求よりも「理解、記憶保持」が優先されます。

同じデータでも、視覚的に美しくすることで訴求力が高まり、受け手に認知、記憶に残りやすくなるということが言えそうです。そして、以下は統計的にそれを証明しています。

全く同じデータを表す「怪獣のグラフ」と「棒グラフ」を見てもらい、アンケートをとった所、全ての項目で「怪獣のグラフ」が「棒グラフ」を上回りました。

だからといって、なんでもかんでも怪獣のグラフのようにデザインしよう!ということではありません。
そのデータで何を伝えたいのかどんなメッセージを込めるのかを考えて、見た目を整えることが、UX改善へのアプローチとしてデザイン的にできることのひとつである、というお話でした。


THEME2: コミュニケーション的アプローチ
ダッシュボードからのコミュニケーションがなかなか生まれにくいとすると、ダッシュボード以外でのデータ共有方法を考えて見るものいいかもしれません。
例えば、こちらはnoteさんの分析チームが実際に取り組んでいる施策です。(redashと連携して、Slack上にデータがアップされる仕組み。)

Slackを活用すると、気になるデータに気軽にリプを飛ばすなど、カジュアルにコミュニケーションが生まれやすくなります。
また会話が可視化されることにより、他の人がどのようにデータを見ているのか知ることができ、さらに、誰がどんなデータを気にしているのかも見えてくるので、重視すべきKPIを全員で理解、共有することにもつながります。

★あわせて読みたい★
データ視覚化のデザインまとめ



創業140年の古い会社でデータの民主化を進めた話

最後のスピーカーは、日本経済新聞社の鈴木陽介さん。

創業140年という歴史ある企業で、データの活用の転機が訪れたのは2010年、日経電子版のスタートだったそうです。
それまで読者との直接のつながりがなく(間に新聞販売店を挟むため)誰がどのように、何の記事を読んでいるのか把握することはできていませんでした。

しかし、電子版のスタートで読者が直接クレジットカード決済を行うことができるようになり、読者の属性などCRM(Customer Relationship Management)の土台が整い始めました。
さらに2015年に英国のFinancial Timesを買収したことも大きな契機となり、全社的にデータ活用のムードが高まっているのだそうです。


データを取れるようになったので、チームでわかりやすい共通目標を設定することができるようになりました。
(日経さんでは、このエンゲージメント指標を5段階に分け、それぞれの数値に最適化した施策に取り組まれているそうです。)


というわけでここまでは、データを取れるようになって、整えるところまできたお話でした。ここからはそれらのデータをどう活用(民主化)していったかについて。

前述の安藤さんのお話にもありましたが、高機能なツールを導入したのに使われなくては意味がありません。(でも実際問題よくある話。)


主にビジネス企画、デザイナーを対象とした、3ヶ月間のデータ分析トレーニングを行っているそうです。(講師は外部に委託。)

トレーニングの目的は「施策を打つ際の基本姿勢を身につけること」ではあるものの、その内容はSQL基礎から、それぞれの現場用途に応じたカスタマイズまで。
今では200人以上の非エンジニア社員がSQLの基礎知識を持ち、中にはデータ道場での知見を活かして、担当領域のUI改善でクリック率を4倍に伸ばした…なんて方もいたそうです。

★あわせて読みたい★
Gunosyデータ分析ブログ



余談

the guildさん主催の勉強会、前回に続き非常に濃度の高いお話を聞くことができ、とても有意義な時間を過ごさせていただきました。
本編とは全く関係ないのですが、ふたつほど「ステキ!」と思ったことがあったので書きとどめておきたいと思います。10000%の主観です。

(1)座席配置
可動式のイベント会場だとよくあるのですが、前後左右で綺麗に座席が並んでいるパターン。そう、前の人と被って正面が全く見えないパターンです。
しかし、そこはDMMさん!ちゃんと互い違い座席が並べられていて、前列の人の間からちゃんと正面が見えるパターン!!心の中で、そっと拍手を贈らせていただきました。

(2)カイゼンされたキュウケイ
前回の勉強会は、2時間ほぼノンストップのトークセッション形式でした。テーマがやや私にとっては難易度の高い内容だったため、集中力の維持がなかなか厳しく、終了後のアンケートに「トイレ休憩があると嬉しいです。」と書いてみました。
すると!なんと!今回は講演とパネルディスカッションの2部構成になり、間に休憩があったのですごく助かりました!ありがとうございました!(そこ)


この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?