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ConnectUp with Oisix ra daichi 〜これからのデザイナーって?〜 レポート

Oisixさんで行われた「ConnectUp with Oisix ra daichi 〜これからのデザイナーって?〜」に行ってきました。

登壇者は田村大輔さん(株式会社パーク)と、小玉千陽さん(ium inc. 代表/THE GUILD)のおふたり。「これからのデザイナーって?」というテーマについて、トークセッション形式でお話を伺いました。

今年5月に経産省が出した「デザイン経営宣言」や、ジョン・マエダ氏の「Design in Tech Report」からも読み取れるように、企業がデザイナーに求める役割の幅はぐっと増えてきています。そんな中、事業立案やコンセプトメイクにも携わって、”領域を横断したデザイン”を実践しているおふたりが考える、これからのデザイナーとはどんな人なのでしょうか?

まずはおふたりのご紹介から。

田村大輔さん
株式会社パーク 代表取締役/コピーライター

代表取締役でありコピーライターである田村さん。コピーライターという立場からの、ディレクションやプランニングについてお話いただきました。ブランディングからサービスのUI、商業施設のプロデュースまで幅広くお仕事されています。
http://parkinc.jp/

小玉千陽さん
ium inc. 代表/THE GUILDパートナーメンバー/デザイナー

デザイン事務所、フリーランス、広告代理店などで活躍された後、独立。UI、UXの領域を中心に、グラフィックから、WEBデザイン、フロントエンドエンジニアとしてもお仕事をされています。
https://ium.jp/
http://theguild.jp/


テーマ1: サービスや企業の価値を高めるためにデザイナーには何が必要か


デザインをデザイナーだけのものにしない。(小玉さん)

デザイナーといえば、カンプを作ってデータを納品するのがお仕事…というイメージがまだまだあるかもしれませんが、小玉さんはさらに「一歩踏み込む」ことを大切にしているそうです。

クライアントからの要望をそのまま受けるというより、そもそも本当に必要な策はこれでいいのか?など、深く考えること。また、クライアントサイドにもデザインに対する知識を持っている人や勉強している人が増えているので、そういった人を積極的に巻き込んでいく。さらに必要であれば、社内(特に経営層など意思決定者)のデザインリテラシーを高めるために、上位層を巻き込んでのワークショップなども行ったのだとか。

ここからここまでがデザイナーの仕事!と切り分けるのではなく、クライアントに寄り添い、彼らの持っているものを引き出すことで企業やサービス価値をより高めることができるのではないでしょうか、とこのことでした。

とはいえ、中には「ここしか頼んでないよね?」というクライアントも一定数いる。そういった場合は信頼関係を築くに尽きるそうです。

日頃からプラスアルファの提案を心がけてはいるものの、例えばクライアントから「1」の依頼があれば「1.2」のものを出す。うまくいったら次は「1.5」といったように、徐々に携わる比率を上げていき、何かあれば相談してもらえる関係値を長期的に構築することが、信頼関係にもつながる。
さらに、プロジェクトが動いていいない時でも、関連しそうなネタがあればSlackに投稿するなど、コミュニケーションが生まれやすい雰囲気づくりも心がけているそうです。


ビジネスの話ができるに尽きる(田村さん)

クライアントが次にどこへ向かおうとしているのかに目を向ける意識を持つべし。求められているデザインやクリエイティブ領域だけでなく、さらに周辺(例えばデータとか)も含んだ話だできるといいのではとのことでした。

例えば、掲げたれたKPIをどうやって達成するか?と考えていくと、自ずと上流、源流にたどりつくはず。そういう時、決算書を読むなどして、クライアントがこれから何をしたいのか?を知り、そのためにいま何をするといいか?という逆算した提案ができるといい。

ちなみに、田村さんが協業するにあたって最初に先方にお伝えするのは以下の3つだそうです。


①いきなりクリエイティブには着手しません。
(見た目のいいものをつくることは簡単だけど、筋道ができていないとハリボテになってしまうから)
②クリエイティブの決定権を持たせてください。
(クライアントの満足度のために作っているわけではなく、本当の目的は世の中に届くかどうか。想いの意訳作業に関してはこちらがプロなので、ジャッジは任せてほしい)
③マーケティングよりも”想い”をベースに作ります。
(マインドセット)


上流に携わる上で、デザイン領域以外で必要とされるスキルは?

田村さん スタートアップ系の依頼が多いので、AIだったりバーチャルYoutuberだったり関わる業界は様々。最低限の事業理解をするために本を読んだり、市場調査を行ったりしつつ、その先どうなるかという視点でも考える。

小玉さん 好奇心を持って視野を広げて置くこと。アンテナを張って世の中の流れに関心を持っておくことを心がけている。twitterで気になったものがあればすぐに調べたり本を読んだりする。

コンセプトメイクや戦略立案にデザイナーはどのように関わっていくべきか?

田村さん 関わるべき。クライアントの戦略や将来像を理解した上で作った方がよりよいものが作れるし、先方の腑落ち具合も変わってくる。また案件が長引くほど、ステークホルダーが増えるほど「なんとなく好き」で決めたものは収拾がつかなくなる。それを回避するためにも、初期段階で「共通のものさし」を共有する必要がある。コンセプトメイクをきちんとやっておくと、背骨(筋)の通った状態でプロジェクトを進めることもできる。

小玉さん UIやUXでの相談が多いが、そもそも「ユーザー目線」が上層にも共有できていないと難しいことは多々ある。例えばECサイトの中で、情報過多が起きていた場合。ここはユーザー読まないし、削った方がコンバージョンも上がる…と言っても、ビジネス要件が絡んでいる場合は、戦略までに踏み込まないと改善にならないなど。踏み込んだ結果、実際にコンバージョンアップにつながったこともある。

戦略が決まってしまっている、デザインの力が及ばない…という時はどうしますか?

田村さん マインドセットを切り替えないと難しいかもしれない。実績を残して上から下る。ただし気をつけたいのは、作り手の信じるものが絶対と過信しないこと。こちらの理解度が不十分だったというケースを疑うことも必要。

小玉さん そういった時は数字を上げることで種を撒き、信頼関係を築く。



ということで約1時間弱のトークセッション、たのしく拝聴させていただきました。

質疑応答でも触れられていましたが、昔なら1万時間かかっていたものが、今なら5000時間で済むかもしれないし、デザイナーの選択肢は広がっている。世の中を動かすのにデザイナーが関与しやすい流れにはなっているので、興味があるところを伸ばしていくのがよいのでは?というお話がありました。

ビジネスとかデータ分析とか勉強しなくちゃ…と思いつつ、全部に手を出してデザインも中途半端になってしまうのは本末転倒なので、取捨選択することも大事だな…など改めて考える時間になりました。

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