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マネーフォワード クラウド経費はCXをどう測っているか

はじめまして。マネーフォワード クラウド経費の事業部長をしています、今井と申します。SaaS大好き野郎です。

今回は、マネーフォワード クラウド経費がカスタマーエクスペリエンス(CX)をどう測定し、カイゼンのヒントを得ているかについて書きます。

カスタマーの「サクセス」の定義

カスタマーサクセスが盛り上がっている昨今ですが、みなさんは顧客がサクセスしている状態をどんなふうに定義していますか?マーケティングやセールス系のサービスを手掛けている場合は、顧客の売上やコンバージョンなど、計測可能な到達地点があると思います。

私たちマネーフォワード クラウドが扱っている業務系サービスにおけるカスタマーサクセスは、業務効率化による工数の削減度合いなどがあります。

私たちのカスタマーサクセスは「負の解消」

その中で私たちが扱う経費精算という業務では、負の解消が大きな目標です。これまでセミナーに登壇する際、「経費精算が好きな人はいますか?」という質問を数十回行ってきました。驚くべきことに誰一人として手が上がったことはないです。それくらい、経費精算というのは「業務として必要だけれども、誰もこの仕事を好きな人はいない」、そういった負のカタマリのような業務という性質があります。

私たちは、この「経費精算は面倒」と感じる気持ちをプロダクトを通じて解消できているのか、良いカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供できているか、それを測定しながらサービス改善を進める必要があります。

「負」がどこにあるのか、を確認する

経費精算の業務には、「経理担当者」「承認者」「一般従業員」の3人の登場人物が出てきます。そして、経費精算業務に使う累積時間がもっとも長いのは一般従業員であり、この人たちの支持を得られなければ、問題を解決したとは言えません。

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『マネーフォワード クラウド』『マネーフォワード ME』利用者1284名を対象にしたアンケート調査等をもとに算出

アクセスログでは見えない「負」

私がコンシューマ向けサービスのPMをやっていた時には、アクセスログにこそユーザーの心理が現れていると考えていました。ユーザーは「使う」「使わない」を自分の意思で選択できるので、気に入れば利用し、気に入らなければ利用しません。様々なカイゼンを実施しても、アクセス数が全く変わらないという失敗もたくさんしてきました。ある意味成功と失敗がとても明確だったと思います。

一方で業務系サービスの場合、ユーザーが好むと好まざるに関わらず「使わない」という選択肢はありません。その業務をこなすために、自分ではなく会社が導入を決めたそのサービスを使わざるを得ません。よってアクセスログは参考にはなれど、私たちの提供するCXが成功か失敗かを示す指標になるとは言えないのです。

そしてカスタマーサクセスが普段接しているのは経理担当者ですが、彼らを通して一般従業員や承認者というエンドユーザーにサービスを提供している、という構造です。

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窓口となる経理担当者は普段から接しているため、サービスに対してポジティブなのか、ネガティブなのかを肌で感じ取ることができますし、フィードバックも常に得ています。ですが、最大の負のありかである一般従業員は私たちから遠く、フィードバックを得られる機会は稀です。さらに「経理担当者が社内の意見を集約しているか」もそれぞれの経理担当者の方のスタンスに寄るところが大きく、実態を把握していない場合の方が多いです。

従業員のCXをどう測定するか

CXを測定する手法として、例えば次のような3つの指標があります。


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・CES(Customer Effort Score)  :顧客努力指標
・CSAT(Customer SATisfaction) :顧客満足度
・NPS(Net Promoter Score)  :顧客ロイヤルティ

※画像はWOOTRIC社ホームページより引用

総合的なCXの指標として、その企業やサービスに対する愛着や信頼の度合いを示すNPS(顧客ロイヤルティ)を例にして、一般従業員のCXを測定します。

CXを測定してわかること

トレンドを見るのには全体のスコアも参考になりますが、実際に活用して改善に繋がるのは、特定のセグメントに絞った時のスコアです。法人単位や、利用するユーザーの役割ごとに見ることで、CXを改善するヒントが得られます。

一例として、法人の従業員数を軸にプロットしたスコアを見てみましょう。縦軸に登録ID数(≒従業員数)、横軸にNPSスコア平均値からの差分を表しています(※NPSスコアではありません)。

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縦軸:登録ID数(≒従業員数)
横軸:NPSスコア平均値からの差分(※NPSスコアではありません)
※マネーフォワード クラウド経費を導入している一部企業を対象とし、一定数の回答を得られた企業のみプロット

このプロットから傾向として読み取れるのは、従業員数が多くなるとロイヤルティが下がる傾向にある、ということです。

従業員数が少ない会社であれば、サポートする範囲は限定的ですが、数百名の規模になってくると、経理担当者一人が受け持つ従業員数が増加し、きめ細かいサポートをすることは難しくなってきます。

一般的にSaaSのエンタープライズユーザーのChurn(退会)は非常に少ないです。ですが、従業員のロイヤルティも低くなる傾向にあり、「退会はしない(できない)が、サービスの事は誰も気に入っていない」そんな負がたまりやすいのがエンタープライズユーザーの特徴と言えます。

また、NPSが平均よりも高い企業を細かく見ていくと、

① ITリテラシーが高い(IT企業など)
②最近サービスを利用開始した
③経理担当者自身のロイヤルティが高い(使い方を工夫している、当社とのコミュニケーション量が多い)

という傾向があります。

■①ITリテラシーが高い場合

①の「ITリテラシーが高い」は、もともとサービスを利用する学習コストが低い人たちであるため、導入や運用がスムーズだということが言えます。ただ、これは企業属性なので、打ち手でカイゼンしていくことは難しいです。

■②最近サービスを利用開始した場合

②の「最近サービスを利用開始した」はどういうことかというと、サービスローンチからカイゼンが進み、機能が充実している状態で使い始めていたり、オンボーディングのプロセスが磨かれた状態で使い始めていたりするので不満が少ない、という傾向があります。

一方で、長く利用している企業の場合は、後からリリースされた機能を使っていないことが要因となり、サービスに不満を持つ傾向があります。利用開始当時は機能が足りず、いわゆる「運用でカバー」を選択し、そのままの運用が継続しています。現在はプロダクトで解決できる状態になっていても、プロダクトが持つポテンシャルを引き出せていない、ということがよくあります。ここはまさにカスタマーサクセスがカイゼンできる部分です。

■③経理担当者自身のロイヤルティが高い場合

そして③の「経理担当者自身のロイヤルティが高い」の場合は、うまく社内にサービスの利用方法が行き渡り、一般従業員のロイヤルティも高くなる傾向にあります。これは現時点では仮説ですが、経理担当者をサポートしてロイヤルティを高めていくことで、従業員のロイヤルティも高くすることができるのではないか、と考えています。

最後に

CXを測定してわかったことを使って、実際にどう改善していくのか?という部分については取り組みを始めているところなので、後日またnoteに書きたいと思います。

SaaSのCXを高めたい、もう結構やっているよ!という方はぜひお話しさせてください。ご連絡お待ちしています!


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