マガジンのカバー画像

ハノイで読んで考えたこと

16
こちらは自分の読書記です。ベトナムに関するものが多くなるかとは思いますが、その他中国に関してや、また全く違う分野の本についても、読んで感じたことを、書き綴っていきたいと思います。
運営しているクリエイター

記事一覧

【読書記】北関東「移民」アンダーグラウンド;ベトナム人Bộ Độiから見える日本社会の変化

【読書記】北関東「移民」アンダーグラウンド;ベトナム人Bộ Độiから見える日本社会の変化

毎回読ませる!安田峰俊さんのルポ

今回ご紹介するのは、これまで自分の読書記で何度も紹介している安田峰俊さんの最新作、「北関東「移民」アンダーグラウンド」です。彼が元々得意としていた中国関連から、現在はその取材力を発揮し、在日外国人、特にベトナム人に関して、多くの面白い記事を書いています。今回も読む前から、その刺激的タイトルと表紙からして期待大でした。

ボドイの日常=日本の非日常(けど現実)

もっとみる
【読書記】シン・中国人:今の中国の若者をリアルに感じるために

【読書記】シン・中国人:今の中国の若者をリアルに感じるために

春の読書週間第2弾、今回は「シン・中国人-激変する社会と悩める若者たち」(ちくま新書)です。著者の斎藤淳子さんは、随分前になりますが、北京でインターンをしている頃に仕事を教えてもらった先輩。現在は様々なメディアに発信するライターとして活躍されています。「結婚・愛」といった普遍的な切り口を通して、現代中国社会・経済のリアルがわかる一冊です。

金銭感覚についていけない!

ベトナム在住が17年目とだ

もっとみる
【読書記】「横浜中華街」とベトナムのチャイナタウン

【読書記】「横浜中華街」とベトナムのチャイナタウン

今回は久々に読んで考えたこと、今回読んだ本は「横浜中華街 世界に誇るチャイナタウンの地理・歴史」です。在ベトナムの華人の人たちに関心を持っている中、この春に一時帰国した機会に「そうだ、中華街に行こう!」という心構えでいたところ、書店でばったり出会ったこの本を読んでみました。ベトナム華人社会との比較の視点でも、とても勉強になりました。

「世界に誇るチャイナタウン」横浜中華街

言わずと知れた横浜・

もっとみる
【読書記】越境の中国史 南からみた衝突と融合の300年

【読書記】越境の中国史 南からみた衝突と融合の300年

2022年も押し迫ってきました大晦日、師走の慌ただしい時期ではありますが、最後は「ハノイで読んで考えたこと」で締めたいと思います。今日ご紹介するのはこちら、「越境の中国史 南からみた衝突と融合の300年」です。

実は著者の菊池秀明先生の本を読むのは二冊目、この読書記でも紹介させてもらった太平天国の乱を描いた岩波新書「太平天国 皇帝なき中国の挫折」を読んでから、華南からの視点を大事にして中国を考え

もっとみる
【読書記】国家の「余白」メコンデルタ 生き残りの社会史

【読書記】国家の「余白」メコンデルタ 生き残りの社会史

久々のこの読書ノートシリーズ、今回は更に久々に本格的な学術研究書、「国家の「余白」メコンデルタ 生き残りの社会史」(京都大学学術出版会)を読んでみましたので、ここにご紹介したいと思います。

実は大学院時代には人類学を学び、人類学研究の世界に憧れも持つ中で読んだ本著。最初は「こんな500頁以上の大著、読み切れるかなあ?」と思いつつ、読んでみるとかなりすいすい読めました。加えて、インフルエンザになっ

もっとみる
【読書記】「傀儡政権」と日越中仏の歴史が交わったハノイの瞬間

【読書記】「傀儡政権」と日越中仏の歴史が交わったハノイの瞬間

さて今回はまた読書記シリーズ、に加えて少しハノイ歴史探訪も入っています。今回読んだのはこちら、「傀儡政権 日中戦争、対日協力政権史」(広中一成・著)です。

「傀儡政権」側の人たちの思い「漢奸」(中国を裏切った中国人、売国奴)と自国民である中国人に罵倒されてまで、日本に協力して傀儡と呼ばれる政権を担った人たちは誰なんでしょうか?これは自分の素朴な疑問でした。著者も書いています通り、中国の歴史の中で

もっとみる
【読書記】「低度外国人材」の送り先で読んだ『「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本』

【読書記】「低度外国人材」の送り先で読んだ『「低度」外国人材 移民焼き畑国家、日本』

4月末の連休から続く読書週間は、ベトナムにおける新型コロナ感染の再燃によりすっかり電子書籍「読書月間」。あちこちに行きづらいのはストレスたまりますが、これだけは唯一ステイホームの良いところでしょうか。

少し前の「【読書記】ハノイで読んだ「現代中国の秘密結社」とベトナムの秘密結社?」に続き、今回はまたしても安田峰俊さんの著作。そして舞台は日本ながら、ベトナム人に関することも多いと楽しみにしていたこ

もっとみる
【読書記】「太平天国 皇帝なき中国の挫折」(そして黒旗軍へと…)

【読書記】「太平天国 皇帝なき中国の挫折」(そして黒旗軍へと…)

ゴールデンウイーク読書週間(もう月間?)読書記第三弾、今回はこちら「太平天国 皇帝なき中国の挫折」(岩波新書)です。

「秘密結社」大躍動、としての太平天国の乱「何でまたいきなり太平天国?」と思われるかもしれません。実は、こちら少し前にnoteで紹介した「現代中国の秘密結社」著者安田峰俊さんと、今回紹介する「太平天国」著者の菊池秀明氏が対談をしておりまして(以下ツイート先参照)、こちらを見て二つと

もっとみる
【読書記】ハノイで読んだ「現代中国の秘密結社」とベトナムの秘密結社?

【読書記】ハノイで読んだ「現代中国の秘密結社」とベトナムの秘密結社?

再び感染拡大云々で少し騒がしくなっているベトナムなので、4連休から続いている「読書週間」。今回は発売以来読みたいなあと思いつつようやく今回手を付けられましたこちら「現代中国の秘密結社ーマフィア、政党、カルトの興亡史(中公新書)」を読んでみました。

いつも新刊が出るたびに楽しみにさせて頂いている安田峰俊さんの近著です。彼の著書に関するnoteは以下などもご覧ください。

アウトローとオーソリティー

もっとみる
土葬の国で読んだ「土葬のある村」:日本とベトナムの土葬文化比較

土葬の国で読んだ「土葬のある村」:日本とベトナムの土葬文化比較

ある日ツイッターのタイムラインにふと紹介されていた、この本に目が引かれました。

土葬の村、少しおどろおどろしげなタイトルとカバーですが、ふっとその場で電子書籍版を衝動買い。というのも、実は最近ベトナムの身内に不幸があり、家族ともども悲しみに暮れつつ、至近距離でベトナムでの葬送文化に触れていたからです。そして土葬と言えば、ベトナムはまだ「土葬のある国」であるからです。

日本にもまだ(僅かに)残る

もっとみる
語られ始めた知られざる日越関係;小松みゆき著「動きだした時計〜ベトナム残留日本兵とその家族」

語られ始めた知られざる日越関係;小松みゆき著「動きだした時計〜ベトナム残留日本兵とその家族」

今回は「ハノイで読んで考えたこと」、小松みゆき著「動きだした時計〜ベトナム残留日本兵とその家族」です。ハノイ在住の日本人の間では殊に著名な小松みゆきさん。最新著作は、彼女のライフワークであるベトナム残留日本兵とその家族に関して、その歴史を掘り起こした小松さんの自伝とも言える一冊です。現在日本との行き来ができない中ですが、電子書籍のおかげで自分も発売後タイムリーに読むことができました。

小松みゆき

もっとみる
『ベトナム戦争の記録』;多角的で濃厚な現代史ドキュメンタリー(1)

『ベトナム戦争の記録』;多角的で濃厚な現代史ドキュメンタリー(1)

本日は「読んで」ではなく「観て」ですが、ケン・バーンズ&リン・ノービック監督「ベトナム戦争の記録」を観て考えたことを。2017年リリースなので最新というものではありませんが、気になりつつもまだ観たことがありませんでした。大変引き込まれるドキュメンタリー番組です。

まずはご推薦までに最初に白状するのですが、実はまだ全エピソード10話の内の4話までしか観ていません。「じゃあなんで先走ってnoteにす

もっとみる
「ジェトロ ベトナム人材調査歴史と文化から見たベトナム人~人材育成と活用への心構え~」ベトナム歴史・宗教研究家大西和彦 編著

「ジェトロ ベトナム人材調査歴史と文化から見たベトナム人~人材育成と活用への心構え~」ベトナム歴史・宗教研究家大西和彦 編著

今回は本、ではないのですがツイッター上で歴史に詳しい新妻さん(noteもやられています)に教えて頂いた、、大変興味深いレポートを読みましたので、以下自分が特に印象に残った点をご紹介いたします。著者はベトナム在住者には有名な、ベトナム歴史・宗教研究家の大西和彦先生です。

全文についてはこちらリンクから皆さん読むことができますので、特に「人材育成と活用への心構え」の部分はそちらでお読みください(自分

もっとみる
「幸福な監視国家・中国」を読んで、ベトナムについても考えたこと

「幸福な監視国家・中国」を読んで、ベトナムについても考えたこと

夏休みの帰国を機に、ちょうど発売のこの本を読むのも楽しみの一つでした。今回はその読書録、そしてまたちょいとベトナムに翻って考えたことをお届けしようと思います。

監視されている人の視点からの「監視国家」検証「中国はカメラだらけで…」「新疆ウイグル自治区住民への監視は酷く…」というニュース報道は多くあります。その中で本著では、それを一見「進んで」受け入れているかのような中国の普通の人たちの行動を「功

もっとみる