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ハノイに残る古戦場、清朝との戦いを偲ぶドンダー公園

今回はハノイ在住日本人もあまり知らない(と思う)、ベトナムの英雄ゆかりのハノイのある公園のご紹介です。なぜ知らないと思うかというと、何を隠そうハノイに11年以上も住んでいる筆者がこれまで行ったことが無かったからです(*^-^*)

英雄Quang Trung帝とドンダーの戦いについて

まずはそもそも誰の、何のための公園かということを少しだけ。実はこの場所は、1789年に当時のベトナムと、中国、乾隆帝時代の清軍との有名な戦い、ドンダーの戦いが行われ、それを記念して作られた公園なのです。

当時ベトナム内での勢力争いで苦しい立場に追いやられた黎朝末期の皇帝Lê Chiêu Thống(黎昭統)は、黎朝を擁護するとして清軍を引き入れてしまい、清軍はその勢いでタンロン(現在のハノイ)を占領してしまいました。清軍は、ハノイの西にあるドンダーの丘に堡塁を作って、黎王朝打倒間近、南部からやってきた「タイソン蜂起」の英雄、グエン・フエ(Nguyễn Huệ:阮恵)の軍隊を待ちかまえ、ここで大きな戦いが起きました。このドンダーの戦いに勝利したグェン・フエは清(中国)の侵略を退けた英雄として、そして黎朝を打倒しタイソン阮朝を創設した皇帝として崇められ、そのおくり名にクアンチュン(Quang Trung:光中)を送られた、そういう歴史がある場所なのです。

そして、その戦いが起こったとされる旧暦1月5日には、毎年盛大な催しが行われます。ここ数年は首相も祭りを訪れるのが恒例なほどの盛大さです。北からの脅威を跳ね除け、独立を保ったという象徴なのでしょう。

古戦場は独立の証し&市民の憩いの場

それではどんなところかなと、まずは中にと思い、もっとも正門らしい場所に来たらここは閉鎖中。ぐるっと回った公園入り口から中に入ります。

中に入るとそこには大きな広場があり、英雄の像が右に、真ん中には廟が、そして左には「ドンダーの戦い、今年は230周年!」と大きな弾幕が貼られています。でも雰囲気は公園そのもの、子供が遊んでいたり、おばあちゃんがエアロビしてたり、おじいちゃんたちが散歩していたりと、何とも平和なものです。

こちらがこの戦いを率いた当時の阮朝の皇帝、Quang Trung(光中)帝です。戦いの当時の名前、Nguyễn Huệ(阮恵)の名前も見えますね。

戦いの様子を壁画にしていますが、やはり象がたくさん見えるのが目を引きます。今はハノイの街で象を見ることはないですが、18世紀の当時はより普通に見かけ、そして使役されていたのでしょう。特に南からやってきたタイソン阮氏軍は沢山の象を連れて参戦したと言います。

真ん中には立派なQuang Trungを祀る廟があります。

中に入ると、ベトナムのお寺・廟によくいる鶴・亀が両脇に構えた立派な祭壇が。ただ、人や神仏にあたる方は祀られていませんでした、既に廟の外に乗り出しているからここには飾らなくても良いということなのでしょうか!?

その隣は Gò Đống Đa 、Gòとは「盛り土、丘」のこと。周りを歩くと、まるでここに古墳でもあったかのような雰囲気があるような、無いような。ここが古戦場だったのでしょうね。

ぐるっと一回りして公園を出ると、隣にある小学校。名前はまさに「Quang Trung小学校」、英雄の名前がそのまま学校に活きています。それ程「何がある」という歴史名所ではありませんが、歴史に残る出来事に思いを馳せながら歩いたり、丘を登ったりするのはなかなか乙なもの。ハノイにいると運動不足になりがちですので、ハノイ市民の皆さんと運動しながら歴史探訪は如何でしょうか?


11年間ベトナム(ハノイ)、6年間中国(北京、広州、香港)に滞在。ハノイ在住の目線から、時に中国との比較も加えながら、ベトナムの今を、過去を、そして未来を伝えていきたいと思います。