見出し画像

え!? T-Quarterですか?

T1/4のネーミングは、関橋英作さん。いや、それ以前に、畳屋さんたちと畳のブランド「TATAMI-TO」の名付け親でもある。

関橋さんとぼくは、ほぼ同じタイミングで山形にある東北芸術工科大学の教授に就任したが、そんなこと知る由もなく、学食でバッタリ会って「何しているんですか?」と顔を見合わせた。お互い、長い業界歴のなかで旧知の仲だったが、向こうは広告全体を指揮するクリエイティブ・ディレクター(それも外資系広告代理店の副社長まで務める偉い人)で、ぼくは現場をまとめるCMディレクター。「差しで仕事をした」という感覚ではなかった。大学でも映像学科と企画構想学科で距離はあったが、さまざまなプロジェクト(地域連携案件など)では関橋さんなしにはできなかったことばかり。退任される去年まで本当にお世話になったし、何しろ気が合った(と思っている)。

ぼくが「畳プロジェクト」に熱を上げると、「わかってますよね?」と関橋さんを引きづりこむ。そんな関係。最初に「畳を応援するプロジェクトをやりたい」とお話しした時から「TATAMI TOMORROWみたいな感じで行こうよ」と仰っていたし、「畳屋さんと畳の新しいブランドを立ち上げたい」と相談して出てきたネーミングが「TATAMI-TO」で、2017年2月に東京銀座・資生堂の花椿ホールに約300人を集めたトークイベントのタイトルは「世界は畳を待っている」だった。そうそう、26日から始まる「しあわせが変わる、明日の畳展」も関橋さんにお考えいただいた。つまり、いつも前を、可能性の方を向いている。開かれている。関橋さんご自身が、そうなのだ。

大治将典さんから1/4サイズの畳の提案があってから、ぼくたちはしばらくの間「1/4畳」(よんぶんのいちだたみ)みたいな呼び方をしていた。試作が軌道に乗り始めた頃、関橋さんに「ネーミングを考えてください」とお願いした。しばらくして、「こんなのどう?」と送られてきたメールには「T1/4」と書いてあった。「へー、Tatami1/4(たたみよんぶんのいち)か。いや、文字通り”ティーよんぶんのいち”かな?」と思ったら、「T1/4と書いて、T-Quarterと読ませる。暗号みたいなのがいいかと思って」と関橋さん。いまにして思えば、それどころではなく「黄色や赤やブルーとか、いろんな畳の色があったらパリなんかで受けるんじゃない?」とまで仰っていたから、どこまでもぶっ飛んでいる。というより、外国のマーケットを肌感で知っていらっしゃるのだと思う。関橋さんは最初から、「世界に打って出る」あるいは「YMOのように世界で流行らせて日本に逆輸入する」(喩えが古いね笑)イメージで、畳の未来を見ているようなのだ。

もっとも、関橋さんの「黄色や赤やブルー」みたいな話は、ぼくも大治さんも軽くスルーする。わざわざ「手工業デザイナー」とまで名乗る大治さんが、邪道に走るわけがない。「モノ好き」過ぎて、結局「王道」や「職人技」を求めてしまうぼくは、あくまでもホンモノ志向(だと思っている)。

いや、待てよ。「好き」を「数寄」と書いてみる。そうか。千利休がそうであったように、数寄は、アバンギャルドなのだ。いまでいうなら「ぶっ飛んでいる」。もしかしたら、関橋さんこそ、ほんものの「数寄者」かもしれないな。(T1/4誕生秘話、続きます。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?