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食品の「生」って何?

先日、「生ワイン」を飲んだ。
銘柄は、樽出し生ワインのカベルネ・ソービニヨン(赤)。
メーカーは、洋菓子で有名なシャトレーゼだった。
どうやら、無殺菌・無濾過で瓶詰めしたものらしい。

「イヅッツ、イヅッツ、ワ~イン」のCMで、信州人には馴染みのある井筒ワインにも、「生ワイン」「生(き)ぶとう酒」がある。
こちらも、無殺菌・無濾過で瓶詰めしたものを指している。


ところで「生」って何?

さて、食品で「生」を使用しているものとしては、

●「生クリーム」

厚生労働省・乳等省令で「生乳または牛乳または特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したもの」と定義し、生乳を分離して脂肪分が多い部分を取り出したもの。
商品名に「種類別:クリーム」などと書かれているもの。
脂肪分は18%以上と規定。
(1)乳脂肪分が一定以上のもの


●「生菓子」…和生菓子や洋生菓子

厚生労働省・食品衛生法で「出来上がり直後において水分含有量が40%以上(餡、クリーム、ジャム、寒天またはそれに類するものを使用している場合は30%以上)の菓子」と定義。
また、水分30%以下の食品について、使用する材料によって「半生菓子」とする場合がある(明確な定義はない)。
(2)含水率で規定


●「生ビール」

公正競争規約(ビールの表示に関する公正競争規約(第4条第2項))で、「熱処理(パストリゼーション)をしないビール」と定義。
(3)「加熱しない」ものを言っている


●「生醤油」

もろみを搾った後、加熱処理(火入れ)しないで、微細なフィルターで菌を除去したものを指す。
(3)「加熱しない」ものを言っている


●「生チョコ」

これもまた、公正競争規約(チョコレート類の表示に関する公正競争規約 )で、「チョコレート加工品(チョコレート生地を全重量の40%以上使用したもの)のうち、
・クリームが全重量の10%以上、かつ、
・水分(クリームに含有されるものを含む)が全重量の10%以上
となるものを生チョコレート」と定義。
(4)クレームと水分の量で規定


●「生ハム」

非加熱食肉製品と呼ばれるもので、法令で定められた方法で塩せきした肉を低温でくん煙・乾燥熟成させてつくったもの。※1 最下部に注釈


●ところでブームとなった「生キャラメル」は?

パッケージには「生タイプ」とあるが?
花畑牧場のホームページも見たが、説明は無い。

一方の生キャラメルの一般的な処方例としては
  ・牛乳600ml
  ・動物性生クリーム300ml
  ・はちみつ50g
  ・グラニュー糖200g
  ・バニラビーンズ(もしくはバニラエッセンス)適量
であるといろいろなHPで紹介されている。

花畑牧場の本品のパッケージの原材料表示には、
  ・生クリーム
  ・牛乳
  ・水あめ
  ・グラニュー糖
  ・はちみつ
  ・無塩バター
  ・バニラビーンズ
とあり、配合量の多い順に並ぶルールから、生クリームを多く使用していることが分かる。
また製法として、これらすべて鍋に入れ、強火で約40~50分混ぜ続け、荒熱を取り固めれば完成とのこと。

上記の(1)で規定しているものは、乳等省令上の生クリームであり、生キャラメルには当てはまらない。
また(2)のように、含水率はパッケージに栄養成分表示がされておらず(表示義務ではない)不明。
更に、(3)の未加熱には当然ながら当たらない。

2008年5月2日、花畑牧場は「生キャラメル」の商標登録が申請されたが、2009年3月31日 拒絶査定されている。考えるに、花畑牧場で商品名として単に付けているもので、たぶん生クリームの含有量が多いからつけているのだと思われる。(あくまで私見ですのであしからず)


そういえば、「生パスタ」なんていうのも

これは乾麺と違って、生地を練って製麺した柔らかいままのもの、ということらしい。


それにしても、日本人は「生」表記が好きだなぁ。

こんな寒い時期、猪鍋の生煮えでE型肝炎ウイルスによる劇症肝炎での死亡が、北海道や東北地方で聞かれることがある。
「生レバー」なんていう、微生物学的にはとんでもないものもあったけれど、これは消費者保護の観点から、喫食出来ないように法令で規制をかけざるを得なかった。
この「生」の言い回しには、普段食べている状態とは異なり、新鮮さやら柔らかさやらを伝えようと、いろいろな場面で用いているようにも感じられる。


鶏シャーシュー?って

2022.07.01の報道で「鶏白湯ラーメンの鶏チャーシューによる食中毒」が挙げられていた。
原因となる食中毒菌はカンピロバクター・ジェジュニ。
19名の患者を出したが、幸いにも軽症らしい。
後遺症が残るかが心配である。


レア(生)な食肉を好む人は多い

「レアステーキ」や「ユッケ」

「牛肉」については、厚生労働省が生食用食肉(生食用として販売される牛の食肉(内臓を除く。))について、食品衛生法に基づく「規格基準」と「表示基準」を設定している。

  • 腸内細菌科菌群が陰性であること

  • 加工及び調理は、生食用食肉に専用の設備を備えた衛生的な場所で行うこと

  • 加工に使用する肉塊は、枝肉から切り出された後、速やかに加熱殺菌を行うこと

  • 腸管出血性大腸菌のリスクなどの知識を持つ者が加工及び調理を行うこと

(概要は東京都ホームページを参照)


「生レバー」は禁止

平成24年7月から食品衛生法に基づいて、牛のレバーを生食用として販売・提供することを禁止。
牛のレバーを安全に生で食べるための方法がないため。
もし生で食べると、腸管出血性大腸菌による重い食中毒の発生が避けられない。


「鶏のたたき」「鶏わさ」

「鶏肉」について、東京都では生食用の衛生基準が無い。

一方で、鶏肉の生食文化がある地域は、個別の衛生対策を行っている。
・宮崎県:「生食用食鳥肉の衛生対策」というガイドラインを策定(平成19年)
・鹿児島県:「生食用食鳥肉等の安全確保について」というタイトルでホームページに注意点など掲載中


※1 法令からみた「生ハム」の製法

非加熱食肉製品と呼ばれるもので、法令で定められた方法で塩せきした肉を低温でくん煙・乾燥熟成させてつくったもの。
原料は、と殺後24時間以内に4℃以下に冷却し、かつ冷却後4℃以下で保存したもの。
pH6.0以下の鮮度良好で微生物汚染の少ない原料肉を使用し、主に凍結原料(豚ロース肉)を使用。
原料肉の解凍は、食肉の温度が10℃を超えないように冷蔵庫内の自然解凍または水解凍を行い解凍中の肉温は4℃以下に保持。
またこの他に発酵乳酸1%溶液(原料肉1:解凍液1)で一晩解凍する場合もある。
解凍し終わったら脂肪を極力除去し、また肋骨を抜いた後のバラ山は一般的に除去。
規定上、製造に用いる原料肉は肉温が10℃を超えないように実施しなくてはならない。
塩漬法は発色剤(亜硝酸ナトリウム)を使用する場合としない場合があり、主に発色剤を使用して製造する。
発色剤を使用する場合、乾塩漬法・湿塩漬法または一本針注射器による注入法が用いる。
いずれの場合も肉隗のままで原料肉の温度を5℃以下に保持しながら、水分活性が0.97未満になるまで実施。
なお、これは最終製品の水分活性が0.95未満の製品を製造する場合の基準で、最終製品の水分活性0.95以上のものについては、この限りではない。
ただし最終製品の水分活性によって保存温度が異なり、0.95未満の製品についいては10℃以下、0.95以上の製品では4℃以下の保存温度。
一方、乾塩漬法では原料肉の重量に対して6%の食塩・塩化カリウム、またはこれらを組み合わせ、および200ppm以上の亜硝酸ナトリウムを用いて塩漬。
また、湿塩漬法・一本針注入法の場合、15%以上の食塩・塩化カリウム、またはこれらを組み合わせ、および200ppm以上の亜硝酸ナトリウムを用いて塩漬。
乾塩漬法・湿塩漬法ともに2~4℃の冷蔵庫内で10日前後塩漬。塩漬期間中は均一になるように漬け込み肉の上下を毎日入れ替え。
塩漬終了後、表面部の塩分濃度が高くなっているので"塩抜き"を実施。5℃以下の水温で、水分活性0.94以下塩分目安5.0~6.5%まで塩抜きを行う。
その後、ケーシングで重填し、スモークハウスに入れて乾燥し、ドリップ(肉汁)が出なくなった時にスモーク。
乾燥は18℃±2℃で1~2日程度肉温20℃以下、湿度目安70%以下風速は微風(2~3m/分以下)、スモーク時間は20分前後。
スモーク終了後は熟成室に移して、室温が18℃以下・湿度70%程度で約2週間乾燥させる事によって、水分活性が0.94以下にする。


2014.12.28 facebook ノートから転載・改編
2022.07.02 食用生肉関連を追記

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