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ポジショニングの明確化からはじまるファンドレイジング~NPO法人2団体を勝手に分析してみました~

ファンドレイジングの支援のお打合せや営業をする際に必ずお伝えをすることに「ファンドレイジング戦略の概要」があります。大きく3つあって、①ポジショニングの明確化、②ファンドレイジング体制づくり、③ファンドレイジング施策実施です。

ファンドレイジングのご支援をする時には、この中でどこの支援を求めていますか?と必ず確認するようにしています。それぞれの内容については、以前noteでまとめましたので関心がある方はそちらもご覧ください。

ポジショニングの明確化がファンドレイジングのはじまり

NPOで重要なことはビジョン・ミッションと言われていますが、昨今様々な社会問題に対する活動団体が増えてきている中で、自団体の特色を持って活動をするには、団体のポジショニングを明確にすることが重要です。ここをきちんと設定できると、そのあとの戦略・計画が立てやすくなりますが、逆に決まっていないと、一貫性がもてず代表の思い付きでPlan-Doを繰り返す団体になってしまいます。

今回は引退馬に関する活動をしている2団体をピックアップし分析してポジショニングを探ってみました。

◆分析対象の2団体の紹介

①認定NPO法人引退馬協会

1997年に馬の共同所有を目的とした活動を開始、2011年にNPO法人化。複数の会員で馬を所有するフォレスターペアレント会員が有名です。

②NPO法人吉備高原サラブリトレーニング

2016年にNPO法人として運営を開始する。岡山県吉備中央町のふるさと納税の仕組みをつかった資金調達を行っています。リトレーニングは再訓練の意味で、これまで速く走ることだけに特化して育てられた馬を、人を乗せてゆっくり走ったり、障害物を超えたりなど乗馬用に育てなおすことを主な活動として行っています。

◆団体が取り組む問題を知る

2つの団体が取り組む問題は、競走馬が引退した後に9割の馬が殺処分になってしまう問題です。毎年7000頭が産まれ、毎年5000頭が引退していく競走馬。寿命が30歳といわれている馬が4歳~6歳で引退し、9割が殺処分されてしまいます。2団体のポジショニングを考える前に、社会問題の構造を捉えていきます。

現在競馬の売り上げ高は年間2兆7950億円で、対前年比で101%で増えており、平成9年をピークとする4兆円にはおよばないものの、第二の競馬ブームといえます。優勝賞金の80%が馬主にいくため投機的な考えとして速い勝てる馬を生産することが強化されます。

競走馬の生産数が増えると引退馬の数も増えていきます。競走馬は産まれてから引退までは以下の流れがあります。レースに出るところをピークとして生産・育成・引退の流れがあり、新しい馬の生産への投資のために、引退後は食肉業者に50万円売った方がよいという投機的な考えになります。

現在の殺処分が増えるループになってしまっている原因は、競走馬の生産・育成が中心となったエコシステムになっており、引退後の維持費の負担感が大きくなっていることです。

こうした流れを変えていくには、引退後の維持費負担感を減らすための仕組みの提供や、殺処分の代替策や社会的な抑止力を用意することで、業界が持続可能であることをアピールし、それが新たな投資を呼び込み発展していくという、全体の仕組みを変えていくことが必要となります。

引退馬協会と吉備高原サラブリトレーニングの2つの団体は、上の図の赤枠で示している、引退馬に新たな価値を生む仕組みを提供するために活動をしていると言えます。

◆団体のロジックモデルを考えてみる

団体それぞれの社会問題を解決するための設計図といえるものがロジックモデルです。受益者の中長期の変化を成果と事業の結果の関連性を表すものです。本来は団体の様々な関係者と話し合いながら決めていくものですが、分析する際はご提案時の仮説として1人で作成します。今回は吉備高原サラブリトレーニングのものを作成しました。馬のリトレーニングの受入れ頭数を増やす、質を高める、受入先を増やす、年間5000頭を受け入れるために全国ネットワークづくり、業界全体のルールを変えるPRや働きかけなど、中長期の団体が目指すものが見えてきます。

◆収支の構造をみて現在の活動を見る

それぞれの団体の収入と支出を見ることで、何でお金を得て、何に使っているのかを明らかにすることで、現在の活動はどうなっているのか、中長期的な方向性に沿っているかを見ることができます。

引退馬協会は馬の共同オーナー形式の会員および一般会員を多く集めることで寄付を集めていることがわかります。一方、吉備高原サラブリトレーニングはふるさと納税制度を活用して不特定多数の方々から競走馬のリトレーニングのための寄付集めをしています。

そして費用構造を見ると引退馬協会は事業や事務局スタッフを複数名雇い、共同所有している馬を預託金を払い再訓練のための施設にだしたり、良い環境の牧場で静養するなどさせています。吉備高原サラブリトレーニングは再訓練に特化しているので、様々な牧場から馬を預かって約6ヶ月の再訓練をしたり、訓練後の馬をリトレーニングセールでセカンドキャリア先に売却したりすることが主となるので、事務局スタッフは最小で、ほとんどがリトレーニング費用となっています。

このようにお金の入りと出を見ていくと、具体的な活動に重点を置いているところはどこかがわかります。

◆提供している情報提供を確認する

こうした事前情報をまとめてからホームページや事業報告書を見ていくと団体が目指していることがわかってきます。

引退馬協会は馬一頭いっとうにフォーカスをしてみんなで大切に見守っていく姿勢が見えてきます。引退馬の引き取りだけでなく、共同所有者を集めて馬のお世話や乗馬の講習会をするなど、会員が馬に愛着を深めてもらえるようなはたらきかけをされていることがわかります、


吉備高原サラブリトレーニングは、馬の再訓練にフォーカスした情報提供や施設見学をオープンに行っています。

◆団体のポジショニングを明確にする

これまでの情報をまとめていくことで、各団体のポジショニングの仮説を持つことができます。

引退馬協会は、馬一頭いっとうの情報を適切に伝えつつ、イベントや講習会などで馬への愛着を深めてもらうことがメインとなってきます。会員の愛着度が高まることでさらなる支援の獲得や、支援者の拡がりが見込めます。そうした支援者への情報提供のために最近ホームページをリニューアルされたのもうなずけます。

吉備高原サラブリトレーニングは、引退馬のサイクルの中で、リトレーニングという一部分を担っています。専門的機能があることから、引退馬協会のように馬一頭いっとうの視点ではなく、リトレーニングされた馬が社会問題解決にどのように寄与できるのかを拡げていくことがこれから重要になってくると思います。例えば、地元の高齢者施設に定期的に出向きホースセラピーをしたり、障がい者の方に馬のお世話をしてもらうことで就労につなげたり、こども達に馬に親しんでもらうなど、地域の中で馬が関われる場をつくりだして、それに合わせたリトレーニングを開発していくのが次のポジショニングとしてありえるのではないでしょうか。

◆まとめ

最近、様々な団体さんとファンドレイジングのお話をしていくと、「この団体はどんなポジショニングを指向されているのか?」が気になるようになりました。ビジョン・ミッションはわかるのですが、それをどう実現していくか具体化したものがポジショニングだと思います。ポジショニングを明確にすることで、組織の意思決定がしやすくなったり、職員との意識合わせもできるようになります。ファンドレイジングを進めるために、ポジショニングを確認することをしてみてはいかがでしょうか。

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今給黎 辰郎

今給黎 辰郎(いまきゅうれいたつお)認定ファンドレイザー・認定講師 NPO法人フローレンスや日本ファンドレイジング協会でのファンドレイジングの経験と、非営利団体向け支援者管理システム「GOEN DRM」での支援者管理の知識を活かしてフリーのファンドレイザーとして活動をしています。

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