ファンドレイジング計画のつくりかた~NPO法人ペアレント・サポートすてっぷの事例紹介①~

ファンドレイジングの研修では「ファンドレイジングの計画をつくってから具体的な施策にとりかかりましょう」と伝えています。しかし、手間がかかるので、無計画でとりあえず実施されているケースや、団体内でコンセンサスがとれていない中で進められていることが多いのではないでしょうか。

そこで、今回は岡山県倉敷市のNPO法人ペアレント・サポートすてっぷ様のご協力を得て、実際に現状分析→ドナーピラミッド作成→ステップアップ戦略作成の実例を公開いたします。リアルケーススタディとして是非ご参考ください。

1.団体紹介

NPO法人ペアレント・サポートすてっぷ様は岡山県倉敷市周辺で障害児の保護者が同じ立場の保護者を支援する、ピアサポート活動されている団体です。一軒家をつかった「保護者の居場所うさぎカフェ」や地域での障害児の保育や教育をする際に重要となる情報満載の「倉敷子育てハンドブック「ひとりじゃないよ」(現在Vol3)」の発行など、されています。

さらに、平成30年7月豪雨災害で被災した真備町にカフェの開設をしたり、被災地支援を行っている支援者向けの活動のためにクラウドファンディングをしたりと、着実に活動をされている団体さんです。

活動報告書をみると2017年度の収入は、①会費:36,000円、②寄附金:680,000円、③助成金:670,000円、④事業収益:1,400,000円という規模です。ファンドレイジングはイベント、講演会、カフェの際に寄付金を募ったり、ハンドブック販売の際に寄付を募ることをメインに行っておりましたが、これまで現状分析やファンドレイジング計画をたてることはありませんでした。

まだ2019年5月18日現在、2018年度の活動報告書は公開されておりませんが、トヨタ財団や他民間財団の助成金の採択や、倉敷市高梁川流域地域づくり連携推進事業の採択などからも、団体が行っているピアサポートの質の高さが社会的に認知されており、地域で成長を期待されている団体といえます。

2.現状分析

団体の寄付データは、2015年~2018年の期間中で別々のエクセルファイルで管理されていました。今回はそのデータを受領し、以下の分析項目に沿って加工しました。


①支援数・支援金額傾向

各年の寄付件数・金額と、4年間の合計数・合計金額・平均金額を表示しました。寄付金額が毎年増加しているにも関わらず寄付件数が上下しているので、個別の寄付キャンペーンの寄付数・金額・平均を見ていく必要があることがわかります。また、2018年は豪雨災害が発生した年なので、被災地関連のデータがわかるように表示しています。


② 寄付回数別寄付者数と寄付金額の比率

次に見ているのは、単発寄付者か複数回寄付者の寄付者数と寄付金額の比率を集計しました。

まずは、寄付回数別の寄付者数は82%が単発寄付者で、18%が複数寄付者となっています。

次に寄付回数別の支援者の寄付金額比率を見ると、複数回寄付をする支援者が寄付金額全体の45%を占めています。このことから、複数回の寄付者は数としては少ないが、寄付金額の貢献度は高いといえます。


③イベント別支援数、支援金額

1.支援数・支援金額の現状分析にて、件数が上下しているが金額は増加していることから個別の寄付キャンペーンの寄付数・金額・平均を見ていく必要があるとお伝えしました。それに応えるチャートになります。

イベント・講演会などで寄付を募る時がありますが、どうしても単価として2000円程になってしまします。(空白)になっているデータについてヒヤリングしたところカフェ参加者からの現地での現金受領のご寄付であることがわかりました。このご寄付は、当事者がカフェに参加し、この活動の意義に共感して寄付されるもののため寄付単価が6000円台と、他の寄付に比べて高い金額帯になっていることがわかります。


④ドナーレンジチャート

4年間の合算にて、寄付金額毎に人数、金額、比率を集計したものが以下となります。1万円~10万円の寄付者数は全体の11%なのですが、寄付金額は56%を占めていることがわかりました。

団体さんの感覚では、ボリュームゾーンである2千円未満の支援者は認識されていましたが、5千円~2万円の金額帯の寄付者がこんなにもいたことにびっくりされていました。


⑤高額寄付者リスト

4ドナーレンジチャートにて高額寄付者が誰であるかをリストにしたものが以下となります。注目すべきポイントは、個人の寄付者は複数回寄付をすることで累積として高額寄付者になっていることです。


現状分析からわかること

これまでの分析で、この団体の寄付者は、一番人数が多い「2000円未満の単発寄付者」と、寄付金額の影響が大きい「累積で大口の寄付となる複数回寄付者」の大きく2つに分類することにできます。こうした特徴を捉えた上で、次にドナーピラミッドをつくっていきます。


3.ドナーピラミッド作成

現状分析のデータを提供した上で、ファンドレイジングに関わる代表・事務局長・スタッフの方とドナーピラミッドを作り上げるワークショップをしていきます。

ワークショップでは、ドナーピラミッド作成に重要となる「潜在支援者と支援者の基準の明確化」、「潜在支援者・支援者の洗い出し」、「ステップアップ戦略の作成」の3つに沿って作成していきます。

皆さんからのご意見をとりまとめていきます。今回のワークショップで作成したものは以下となります。最初に「潜在支援者」ってどんなものがありますか?と細かく聞き取っていきます。そして、どんなアクションがあったら潜在支援者は「支援者」に変わりますか?と質問し基準を探っていきます。皆さんがぱっと思い浮かべる「寄付をする・しない」の基準以外の、「個人情報を取得する」観点がでてくると議論が拡がっていきます。ドナーピラミッドの上の方は、複数回寄付や大口の寄付になりますが、どのカテゴリーでや、どの期間でといったような実態に合わせて聞いていくと納得度の高いものが出てきます。


ワークショップで作成したドナーピラミッドを整理して配置しなおしたのが以下のものです。ポイントとしては、「個人の連絡先を獲得し個別に連絡できるようになるタイミングをどこにもってくるか」「カフェ、講演会、ハンドブックなど1回目→2回目と増やす取組みをどこにおくか」「大口寄付者のお気持ちをうけとめる寄付プログラムをどう用意するか」などが挙げられます。


4.ステップアップ戦略の作成

ドナーピラミッドが完成したら、上の階層にいくためのステップアップ戦略を考えていきます。一律に上にあげることは資源が限られているNPOでは難しいので、同じ階層で横の拡がりが大きい、波及効果が大きいものに絞り込んで考えていくとよいです。また、考えていく中で現状で足りないものを赤字で書き込んでいくと、次の投資対象が見えてきます。

ステップアップ戦略1:広報手段の確立

ステップ1は広報に関するところです。この団体さんはカフェの情報提供や、参加者との問合せ対応でLINE@を使用されています。現在登録者が190人の状況でしたが、機能として便利で運営負荷も少ないということでした。また、わざわざ団体のメールマガジンを新たに発行するのも運営負荷上難しいとのことでしたので、そこに集中させていこうということになりました。

1-2ではその波及効果について記載しています。LINE@での情報提供により利用者のスマホを介したやりとりが多くなるので、その融和性が高いクレジットカードの寄付の追加を記載しています。これまで現金、銀行振込、募金箱が寄付の手段だったので、そこにクレジットカード寄付を加えると、寄付のハードルが下がる可能性があります。また、現在寄付のランディングページがないので、その提供と合わせて行うとより効果的になります。


ステップアップ戦略2

現状分析では、カフェ参加者、講演会・イベント参加者、ハンドブック読者からの振込みの寄付が最初の寄付の導線でした。団体に対して初めて寄付をされた時に、きちんとお礼をすることによって2回目の寄付につなげます。団体さんの具体的なタスクとしては、初めての寄付者に対するお礼の具体的な対応(お手紙を送る、電話するなど)やプロセス(どのように記録に残し、団体内で共有し、担当者に対応依頼するかなど)を団体内で決めて、準備をすることになります。

また、1回目⇒2回目の寄付に壁があることから、ここに対しても1回目の寄付者に対するアプローチを検討することが次のアクションになります。


ステップアップ戦略3

NPO法人ペアレント・サポートすてっぷは、自費出版にて障害児の保護者向けのハンドブックを3冊発行されており、これまで7500冊が読まれています。購入者は市内外の障害児の保護者なので、このハンドブックは受益者にアウトリーチする方法としてとても重要です。これまでは購入者を把握することはできませんでしたが、読者から感想のお手紙やFAXが多く寄せられることから、アンケートフォームにつながるQRコード付きの愛読者カードを挟んだり、LINE@の登録を促すチラシを入れることでカフェのご案内や個別相談の予約につながります。また、ハンドブック購入者に対して、新しい冊子のご案内もできるようになるため、連絡先の取得は重要です。


ステップアップ戦略4

これまで2015年と2018年の2回クラウドファンディングに挑戦されていて、どちらも目標達成しています。地元の支援者がしっかりいるので、書籍の発行やイベントなどを行うような使途が明確な寄付集めにはクラウドファンディングを利用するのがよいです。

活動地域が岡山県に限定されるため、ReadyforやCampfireなどの全国区のクラウドファンディングを利用しても支援者の拡がりはそれほど見込めないかもしれないので、手数料の安いクラウドファンディングと地域で絞ったFB広告や検索広告を織り交ぜるとよいかもしれません。


ステップアップ戦略5

現状分析では、個人の寄付者が複数回寄付をしていくことを積み重ねることで大口寄付者になることがわかりました。また、現状で累積して1万円~3万円の寄付者もいることから、今後大口寄付者となる候補の支援者が複数人数いることがわかりました。そのため、こうした支援者の共感を見える化するために、3年間もしくは5年で5万円となるマンスリーサポーター制度を用意することで、「集計してみたら大口寄付者でした」ではなく「候補者にきちんと大口寄付者になってもらう」ようにしていきます。


ステップアップ目標づくり

ステップ1~5までの内容を具体的な目標値とアクションに落とし込んでいくことで、ファンドレイジングのステップアップ戦略に沿ったアクションをとることにつながります。


対応するシステムの紹介

今回のステップアップ戦略に出てきた中で、「クレジットカード寄付の受付・寄付のランディングページ」「手数料の安いクラウドファンディング・検索広告」「マンスリーサポーター制度」の提供が必要となってきます。現在の様々なベンダーがサービスを提供していますが、今回の複数の要件を満たすのは「congrant」が考えられます。単体で機能を提供しているベンダーはありますが、データのエクスポートやインポートの手間がかかりますし、そうした作業をする担当者がいないので、データが分散し分析したいときにできなくなってしまいます。

また、売上1000万円以内であれば寄付額100万円までクレジットカード決済手数料が免除されたり、google検索広告のサポートを受けることができるので、組織の規模感的にも最適かと思います。


まとめ

最初はエクセルで分散していた寄付情報も、まとめて分析することで現状がわかり、支援者の特徴が見えてきます。それをふまえた上でドナーピラミッドを作成し、潜在支援者と支援者の基準を明確にして、ステップアップ戦略を考えると、納得感のあるファンドレイジング計画をつくることができます。

対前年度10%アップでえいやで作ったファンドレイジング計画が多い中で、スタッフ全員の納得度が高い計画がつくれることは、団体のファンドレイジングに大きな影響を与えます。是非団体内でもやってみてください。

もし外部の支援が必要ということでしたら、現状分析4時間、ワークショップ4時間、資料作成4時間でトータルで12時間くらいでできると思いますのでお声かけください。

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今給黎 辰郎

今給黎 辰郎(いまきゅうれいたつお)認定ファンドレイザー・認定講師 NPO法人フローレンスや日本ファンドレイジング協会でのファンドレイジングの経験と、非営利団体向け支援者管理システム「GOEN DRM」での支援者管理の知識を活かしてフリーのファンドレイザーとして活動をしています。

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